2016/07/03(日) - 03:53
第103回ツール・ド・フランスが開幕!ノルマンディー地方を走る第1ステージは落車が多発する荒れた展開となり、大集団スプリントでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)が勝利。自身初のマイヨジョーヌを獲得した。
第103回大会のグランデパールはノルマンディー地域圏のマンシュ県。「西洋の驚異」と称され、年間300万人の観光客が訪れるユネスコ世界遺産モンサンミッシェルの前で3週間の戦いが動き出した。
2014年7月22日に完成した橋の上で行われた正式なオープニングセレモニーの後、本土に戻って正式なスタート地点へ。赤いディレクターカーに乗るクリスティアン・プリュドム氏がスタートの旗を振るとすぐ、ボーラ・アルゴン18によるエスケープが始まった。
メイン集団を抜け出したヤン・バルタ(チェコ、ボーラ・アルゴン18)とポール・ヴォス(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)にはリー・ハワード(オーストラリア、IAMサイクリング)がジョイン。3名が先行する形で今大会最初のカテゴリー山岳、20km地点の4級山岳アブランシュに差し掛かる。
ここで単独アタックを成功させたヴォスは、そのまま19km先の4級山岳シャンポーまで独走。2010年ジロ・デ・イタリア第5ステージで新城幸也(当時ブイグテレコム)と一緒に逃げた30歳のドイツ人が2つの4級山岳を連取し、3度目のツールで初めてマイヨアポワ着用の権利を得た。
ペースを弱めたヴォスにはバルタとハワード、そしてアレックス・ハウズ(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)アントニー・ドゥラプラス(フランス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)が合流して先頭は5名。メイン集団から4分30秒リードを稼いだものの、ロット・ソウダルやエティックス・クイックステップが集団先頭を固めて追走の意思を見せる。英仏海峡から海風が吹き付けるコタンタン半島の海岸線で先頭グループのリードは縮まった。
横風区間でキャノンデール・ドラパックやモビスター、エティックス・クイックステップがペースを上げたことで集団後方では脱落する選手が続出する。総合系チームはエースを守るために集団先頭をキープ。するとフィニッシュまで81kmを残したところで集団前方を走っていたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)が落車した。
コーナーで前輪を滑らせて勢いよく前転したコンタドールはそのままコンクリートの中央分離帯に衝突。後続のブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)やルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)も避けきれずに落車してしまう。コンタドールは右肩や右腕にダメージを負いながらも再スタート。メイン集団はスピードを弱めてコンタドールの復帰を待った。
レース後半はコタンタン半島を横断して東海岸へ。残り57km地点で先頭グループからアタックしたのは、出身地ヴァローニュ近くを通過するドゥラプラス。結果的に敢闘賞を獲得して観客を沸かすことになるローカルライダーにはハウズが飛びつき、2人で風が吹く平坦路を逃げ続ける。
逃げを射程圏内に捉えたメイン集団は、風を警戒するスプリンターチームや総合系チームに先導されながら逃げ吸収のタイミングを調整。ピリピリとした雰囲気に包まれた集団内では落車が続発し、残り27km地点では新城幸也(ランプレ・メリダ)も転んでしまう。右肩に打撲を負い、左親指と人差し指を突き指した新城はドクターカーで簡単な処置を受け、集団内でフィニッシュしている。
向かい風、横風、追い風と風向きが変わる中、先頭ドゥラプラスとハウズは残り5kmを切ったところで吸収。大集団が追い風に乗って猛烈なスピードでフィニッシュに向かう。第二次世界大戦中のノルマンディー上陸作戦の際、「D-デイ(1944年6月6日)」に連合軍が最初の上陸作戦を行なったユタビーチが近づくと、スプリンターチームが人数を揃えて先頭でトレインを走らせた。
ロット・ソウダルとカチューシャの赤にエティックス・クイックステップの青、そしてディメンションデータの白が混ざってフラムルージュを通過する。横風による分裂に加え、ミカエル・モルコフ(デンマーク、カチューシャ)らがフェンスと接触して落車したことで集団はバラバラに。混沌とした集団先頭では10名ほどが抜け出す形となり、グライペルの最終発射台グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ソウダル)がリードアウトして最終ストレートを駆け抜けた。
残り300mで最初に仕掛けたのは、ヘンダーソンの番手につけていたカヴェンディッシュではなく、さらにその後ろのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)だった。勢いよく加速したアルカンシェルにカヴェンディッシュとマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が反応し、そこからカヴェンディッシュがもう一段スピードアップ。低いポジションでもがき続けたカヴェンディッシュがサガンを追い抜き、キッテルを振り切った。
「今日は何としても勝ちたかった。エドヴァルド(ボアッソンハーゲン)をはじめとするチームメイトの信じられないほど素晴らしい献身のおかげ。エモーショナルな勝利だ」。愛娘デリラグレースとともに表彰台に上ったカヴェンディッシュは感無量の表情で話す。リオ五輪のトラックレースで金メダルを目指すマン島の超特急が2年連続ステージ優勝。ツールでキッテルを下すのはこれが初めて。
カヴェンディッシュはツールでのステージ通算勝利数をメルクス(34勝)とイノー(28勝)に次ぐ27勝に伸ばし、ボーナスタイム10秒を獲得したことで自身初のマイヨジョーヌを獲得。10度目のツールで初めて袖を通したマイヨジョーヌにキスをした。また、カヴェンディッシュは全グランツール(ジロ、ツール、ブエルタ)で総合リーダージャージを着た3人目のイギリス人となった(デーヴィッド・ミラーとブラドレー・ウィギンズに次ぐ)。
スプリント直前の落車にはエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)、サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18)、ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が巻き込まれている。集団が割れたため多くの選手が遅れてフィニッシュしたものの、残り3kmを切ってからの落車のため救済措置が取られ、それ以前に遅れていた選手を除く176名が同タイム扱いとなっている。落車したコンタドールを含め、総合有力候補たちはタイムを失うことなく波乱の初日を乗り切っている。
ツール・ド・フランス2016第1ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 4h14’05”
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
5位 エドワード・テウンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
6位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
7位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
8位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
9位 ダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)
10位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ソウダル)
117位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 4h13’55”
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) +04”
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) +06”
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) +10”
5位 エドワード・テウンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
6位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
7位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
8位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
9位 ダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)
10位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ソウダル)
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 56pts
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 40pts
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 29pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ポール・ヴォス(ドイツ、ボーラ・アルゴン18) 2pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 エドワード・テウンス(ベルギー、トレック・セガフレード) 4h14’05”
2位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
3位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
チーム総合成績
1位 ロット・ソウダル 12h42’28”
2位 トレック・セガフレード +01”
3位 エティックス・クイックステップ
ステージ敢闘賞
アントニー・ドゥラプラス(フランス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)
リタイア
なし
text:Kei Tsuji in Utah Beach, France
第103回大会のグランデパールはノルマンディー地域圏のマンシュ県。「西洋の驚異」と称され、年間300万人の観光客が訪れるユネスコ世界遺産モンサンミッシェルの前で3週間の戦いが動き出した。
2014年7月22日に完成した橋の上で行われた正式なオープニングセレモニーの後、本土に戻って正式なスタート地点へ。赤いディレクターカーに乗るクリスティアン・プリュドム氏がスタートの旗を振るとすぐ、ボーラ・アルゴン18によるエスケープが始まった。
メイン集団を抜け出したヤン・バルタ(チェコ、ボーラ・アルゴン18)とポール・ヴォス(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)にはリー・ハワード(オーストラリア、IAMサイクリング)がジョイン。3名が先行する形で今大会最初のカテゴリー山岳、20km地点の4級山岳アブランシュに差し掛かる。
ここで単独アタックを成功させたヴォスは、そのまま19km先の4級山岳シャンポーまで独走。2010年ジロ・デ・イタリア第5ステージで新城幸也(当時ブイグテレコム)と一緒に逃げた30歳のドイツ人が2つの4級山岳を連取し、3度目のツールで初めてマイヨアポワ着用の権利を得た。
ペースを弱めたヴォスにはバルタとハワード、そしてアレックス・ハウズ(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)アントニー・ドゥラプラス(フランス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)が合流して先頭は5名。メイン集団から4分30秒リードを稼いだものの、ロット・ソウダルやエティックス・クイックステップが集団先頭を固めて追走の意思を見せる。英仏海峡から海風が吹き付けるコタンタン半島の海岸線で先頭グループのリードは縮まった。
横風区間でキャノンデール・ドラパックやモビスター、エティックス・クイックステップがペースを上げたことで集団後方では脱落する選手が続出する。総合系チームはエースを守るために集団先頭をキープ。するとフィニッシュまで81kmを残したところで集団前方を走っていたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)が落車した。
コーナーで前輪を滑らせて勢いよく前転したコンタドールはそのままコンクリートの中央分離帯に衝突。後続のブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)やルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)も避けきれずに落車してしまう。コンタドールは右肩や右腕にダメージを負いながらも再スタート。メイン集団はスピードを弱めてコンタドールの復帰を待った。
レース後半はコタンタン半島を横断して東海岸へ。残り57km地点で先頭グループからアタックしたのは、出身地ヴァローニュ近くを通過するドゥラプラス。結果的に敢闘賞を獲得して観客を沸かすことになるローカルライダーにはハウズが飛びつき、2人で風が吹く平坦路を逃げ続ける。
逃げを射程圏内に捉えたメイン集団は、風を警戒するスプリンターチームや総合系チームに先導されながら逃げ吸収のタイミングを調整。ピリピリとした雰囲気に包まれた集団内では落車が続発し、残り27km地点では新城幸也(ランプレ・メリダ)も転んでしまう。右肩に打撲を負い、左親指と人差し指を突き指した新城はドクターカーで簡単な処置を受け、集団内でフィニッシュしている。
向かい風、横風、追い風と風向きが変わる中、先頭ドゥラプラスとハウズは残り5kmを切ったところで吸収。大集団が追い風に乗って猛烈なスピードでフィニッシュに向かう。第二次世界大戦中のノルマンディー上陸作戦の際、「D-デイ(1944年6月6日)」に連合軍が最初の上陸作戦を行なったユタビーチが近づくと、スプリンターチームが人数を揃えて先頭でトレインを走らせた。
ロット・ソウダルとカチューシャの赤にエティックス・クイックステップの青、そしてディメンションデータの白が混ざってフラムルージュを通過する。横風による分裂に加え、ミカエル・モルコフ(デンマーク、カチューシャ)らがフェンスと接触して落車したことで集団はバラバラに。混沌とした集団先頭では10名ほどが抜け出す形となり、グライペルの最終発射台グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ソウダル)がリードアウトして最終ストレートを駆け抜けた。
残り300mで最初に仕掛けたのは、ヘンダーソンの番手につけていたカヴェンディッシュではなく、さらにその後ろのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)だった。勢いよく加速したアルカンシェルにカヴェンディッシュとマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が反応し、そこからカヴェンディッシュがもう一段スピードアップ。低いポジションでもがき続けたカヴェンディッシュがサガンを追い抜き、キッテルを振り切った。
「今日は何としても勝ちたかった。エドヴァルド(ボアッソンハーゲン)をはじめとするチームメイトの信じられないほど素晴らしい献身のおかげ。エモーショナルな勝利だ」。愛娘デリラグレースとともに表彰台に上ったカヴェンディッシュは感無量の表情で話す。リオ五輪のトラックレースで金メダルを目指すマン島の超特急が2年連続ステージ優勝。ツールでキッテルを下すのはこれが初めて。
カヴェンディッシュはツールでのステージ通算勝利数をメルクス(34勝)とイノー(28勝)に次ぐ27勝に伸ばし、ボーナスタイム10秒を獲得したことで自身初のマイヨジョーヌを獲得。10度目のツールで初めて袖を通したマイヨジョーヌにキスをした。また、カヴェンディッシュは全グランツール(ジロ、ツール、ブエルタ)で総合リーダージャージを着た3人目のイギリス人となった(デーヴィッド・ミラーとブラドレー・ウィギンズに次ぐ)。
スプリント直前の落車にはエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)、サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・アルゴン18)、ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が巻き込まれている。集団が割れたため多くの選手が遅れてフィニッシュしたものの、残り3kmを切ってからの落車のため救済措置が取られ、それ以前に遅れていた選手を除く176名が同タイム扱いとなっている。落車したコンタドールを含め、総合有力候補たちはタイムを失うことなく波乱の初日を乗り切っている。
ツール・ド・フランス2016第1ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 4h14’05”
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
5位 エドワード・テウンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
6位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
7位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
8位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
9位 ダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)
10位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ソウダル)
117位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 4h13’55”
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) +04”
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) +06”
4位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) +10”
5位 エドワード・テウンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
6位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
7位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
8位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
9位 ダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)
10位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ソウダル)
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 56pts
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 40pts
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 29pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ポール・ヴォス(ドイツ、ボーラ・アルゴン18) 2pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 エドワード・テウンス(ベルギー、トレック・セガフレード) 4h14’05”
2位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
3位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
チーム総合成績
1位 ロット・ソウダル 12h42’28”
2位 トレック・セガフレード +01”
3位 エティックス・クイックステップ
ステージ敢闘賞
アントニー・ドゥラプラス(フランス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)
リタイア
なし
text:Kei Tsuji in Utah Beach, France
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Team dimension data(チームディメンションデータ) アイフォンカバー(ホワイト・iphone SE / 5 / 5s / 5c)
Team dimension data