ドロミテの名高い峠を6つ詰め込んだ最難関ステージでエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)が勝利。ニーバリやバルベルデを振り切ったステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)がマリアローザを獲得した。



モビスターがメイン集団をコントロールするモビスターがメイン集団をコントロールする photo:Kei Tsuji


5月21日(土)第14ステージ ☆☆☆☆☆ アルパーゴ(ファッラ)〜コルヴァーラ 210km5月21日(土)第14ステージ ☆☆☆☆☆ アルパーゴ(ファッラ)〜コルヴァーラ 210km image:Giro d'Italia獲得標高差5400mという途方もないクイーンステージ。ドロミテ山塊を代表する標高2200m級の峠を連続して越え、コルヴァーラへの緩斜面を駆け上がってフィニッシュを迎える210kmコースは間違いなく今大会最難関だ。

1級山岳ポルドイ峠の登りに差し掛かる1級山岳ポルドイ峠の登りに差し掛かる photo:Kei Tsujiアルパーゴをスタート後しばらくは平坦路が続くが、コースは標高2239mの1級山岳ポルドイ峠(9.3km/平均6.9%)に向かって徐々に上昇を開始する。登り基調にも関わらず平均50km/h近いペースで進んだメイン集団は大きく2つに分断し、先頭では37名の大きなグループが形成された。

マリアローザのアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)マリアローザのアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji青空に岩山が突き刺さった独特の山岳風景が広がるドロミテを進むうちに、先頭集団はモビスター率いるメイン集団から9分ものアドバンテージを築き上げることに成功する。

グルペット内で下りをこなす山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)グルペット内で下りをこなす山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsujiティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)やカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、モビスター)、ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)らを含む先頭37名の中で攻撃的な動きを見せたのはNIPPOヴィーニファンティーニで、マリアアッズーラを着るダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)が1級山岳ポルドイ峠を先頭通過してみせる。この日の山岳先頭通過は1回だけに終わるが、合計37ポイントを加算したクネゴは山岳賞ランキングにおいてただ一人3桁台のポイントで首位を独走中だ。

続く2級山岳セッラ峠(5.5km/平均8.0%)で先頭からダビ・ロペスガルシア(スペイン、チームスカイ)が飛び出したものの、チームスカイのステージ連勝の目論見は失敗に終わる。3級山岳ガルデーナ峠(5.8km/平均4.4%)でロペスガルシアが吸収されると、今度は昨年ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝しているルーベン・プラサ(スペイン、オリカ・グリーンエッジ)が独走を開始した。

モビスターが徹底的にコントロールするメイン集団は徐々に人数を減らし、胃腸のトラブルによってライダー・ヘシェダル(カナダ、トレック・セガフレード)はリタイア。この日はポイント賞2位のアルノー・デマール(フランス、FDJ)やプリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ)もバイクを降りている。



マリアローザを着て走るアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)マリアローザを着て走るアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) photo:Kei Tsuji
先頭を独走するルーベン・プラサ(スペイン、オリカ・グリーンエッジ)先頭を独走するルーベン・プラサ(スペイン、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji1級山岳ジャウ峠で先頭プラサを追うダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)とカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)1級山岳ジャウ峠で先頭プラサを追うダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)とカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji
3級山岳ガルデーナ峠を降る選手たち3級山岳ガルデーナ峠を降る選手たち photo:Kei Tsuji


2級山岳ヴァルパローラ峠でアタックするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)2級山岳ヴァルパローラ峠でアタックするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji快調に2級山岳カンポロンゴ峠(6.0km/平均5.8%)を先頭通過したプラサだったが、この日最大の難所である1級山岳ジャウ峠(9.8km/平均9.4%)の登りが始まると徐々に失速。ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)、カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)、ゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、ジャイアント・アルペシン)がプラサに代わって先頭に立つという慌ただしい展開となる。

ニーバリ、クルイスウィク、シャベスの3名に追いつくイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)ニーバリ、クルイスウィク、シャベスの3名に追いつくイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) photo:Kei Tsuji最大9分まで広がったタイム差は、1級山岳ジャウ峠でのアスタナのペースアップによって5分を割り込む。急勾配の登りをハイペースで進むメイン集団からはマリアビアンカのボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)、そしてマリアローザのアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)が脱落した。

カウンターアタックで飛び出すステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)カウンターアタックで飛び出すステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsujiメイン集団は先頭アタプマとシウトソウから4分遅れで1級山岳ジャウ峠の頂上をクリア。下り区間で挽回したアマドールは一旦は集団に復帰するものの、間髪入れずに登場する2級山岳ヴァルパローラ峠(11.5km/平均5.8%)で再び脱落。コスタリカ人として初めて手にしたマリアローザが手元から離れていった。

ハイペースで2級山岳ヴァルパローラ峠を登るエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)とステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)ハイペースで2級山岳ヴァルパローラ峠を登るエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)とステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsujiこの日最後のカテゴリー山岳である2級山岳ヴァルパローラ峠では逃げグループとメイン集団で同時にアタックがかかる。残り26kmで先頭グループからアタプマが、そしてメイン集団からはニーバリがアタック。アタプマは独走で2級山岳ヴァルパローラ峠をクリアしたが、ニーバリはライバルたちのマークから抜け出すことができなかった。

先頭アタプマに合流したステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)とエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)先頭アタプマに合流したステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)とエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiニーバリのアタックによってマリアローザ黄信号が灯ったのはバルベルデだった。モビスターのエースはニーバリの加速に対応できずに失速して脱落。一方でニーバリにはエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)とステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)が合流。そこからシャベス、クルイスウィクの順でアタックがかかるとニーバリが遅れた。

ニーバリを振り切ったクルイスウィクとシャベスが快調に2級山岳ヴァルパローラ峠を駆け上がり、それまで逃げていたシウトソウとプライドラーを頂上手前で吸収する。「バルベルデの脱落は耳にしていたものの、クルイスウィクの加速には対応できなかった。あまりのハイペースに自分のリズムを刻むことが精一杯だった」というニーバリは下り区間で挽回したもののライバルたちには追いつけなかった。

先頭アタプマは残り5kmから始まる最大19%の激坂もリズムよくクリアしたが、総合ライバルたちを引き離したいシャベスとクルイスウィク率いる追走フループによって残り2kmで吸収されてしまう。

こうして形成されたアタプマ、プレイドラー、シャベス、クルイスウィクの先頭グループ(シウトソウは脱落)が残り1kmアーチを切る。コルヴァーラに向かう緩斜面でもペースは落ちず、残り150mの最終コーナーを曲がってスプリントがスタート。最もフレッシュな状態でスプリントに挑んだシャベスの圧勝だった。



スプリントで先頭に立つエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)スプリントで先頭に立つエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji


クイーンステージを制したエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)クイーンステージを制したエステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji「ジロでステージ優勝するという夢が叶った。しかもクイーンステージという大舞台でだ」。身長164cmの小柄なコロンビアンクライマーは終始満面の笑みを浮かべ、表彰台でプロセッコを振り回した。

37秒遅れでフィニッシュするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)37秒遅れでフィニッシュするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji「オリカ・グリーンエッジと契約してからというもの、チームはまるで家族のような存在になった。2013年の事故で右腕に重傷を負った時、医師には『もうレース復帰は無理だ』と言われた。だから右腕を挙げてフィニッシュしたんだ」。クイーンステージを制したシャベスは総合3位までジャンプアップに成功している。

ニーバリが37秒遅れ、アマドールが3分52秒遅れたためマリアローザはステージ2位のクルイスウィクの手に。大会初日にオランダ人(ドゥムラン)が着たマリアローザが再びオランダ人の手に戻った。

「マリアローザに近い存在だとは思っていたけど、自分が着ることになるとは思ってもみなかった。明日も今日のような冴えた走りができればマリアローザを守れるだろう。疲れ切っているけど、疲れているのは全員同じ。明日はさらにライバルたちからタイムを奪いたいとも思う」と新リーダーは語る。

「登坂が得意な自分にとってジロは特別な存在であり、これが6回目の出場。昨年はジロ3週目にコンタドールやアル、ランダと山岳で競り合ったものの、1週目の遅れを最後まで挽回できなかった」と語るクルイスウィクはニーバリから41秒、シャベスから1分32秒の総合リードを得ている。マリアローザ争いはクルイスウィク、ニーバリ、シャベスの三強の中で争われることになりそうだ。



マリアローザに袖を通したステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)マリアローザに袖を通したステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji



ジロ・デ・イタリア2016第14ステージ結果
1位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)      6h06’16”
2位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
3位 ゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、ジャイアント・アルペシン)
4位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)            +06”
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)             +37”
6位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)
7位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)             +2’29”
8位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)
9位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール)            +2’50”
10位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)    +3’00”
11位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
12位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
14位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)           +3’52”
21位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)  +6’12”
152位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)           +43’47”

マリアローザ 個人総合成績
1位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)       60h12’43”
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)             +41”
3位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)       +1’32”
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)            +3’06”
5位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)            +3’15”
6位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)               +3’29”
7位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)             +3’53”
8位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール)            +5’01”
9位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、ディメンションデータ)    +5’38”
10位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)

マリアロッサ ポイント賞
1位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)       138pts
2位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)           112pts
3位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)           84pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)     134pts
2位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)         72pts
3位 ダルウィン・アタプマ(コロンビア、BMCレーシング)           69pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) 60h18’53”
2位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール)           +11’02”
3位 セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ)       +27’06”

チーム総合成績
1位 アスタナ                             180h53’26”
2位 モビスター                              +4’51”
3位 キャノンデール                            +16’54”

text&photo:Kei Tsuji in Corvara, Italy

最新ニュース(全ジャンル)