フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の山岳地帯を走るジロ第13ステージでミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)が独走勝利。連続する急峻な山岳で遅れたマリアローザに代わってアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)が総合首位に立った。



フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州のワイン畑を走るフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州のワイン畑を走る photo:Kei Tsuji
パルマノーヴァをスタートしていくパルマノーヴァをスタートしていく photo:Kei Tsujiマリアローザを着て集団前方で走るボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)マリアローザを着て集団前方で走るボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji


5月20日(金)第13ステージ ☆☆☆☆ パルマノーヴァ〜チヴィダーレ・デル・フリウリ 170km5月20日(金)第13ステージ ☆☆☆☆ パルマノーヴァ〜チヴィダーレ・デル・フリウリ 170km image:Giro d'Italiaフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の星型城塞都市パルマノーヴァをスタートし、スロベニアとの国境を分かつ山岳地帯を走る第13ステージ。登場する4つのカテゴリー山岳は標高こそ1000mに満たないが、いずれも急勾配だ。

独走で1級山岳モンテマッジョーレを登るステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)独走で1級山岳モンテマッジョーレを登るステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング) photo:Kei Tsuji抜けるような青空に燦々と太陽が照ったこの日、前日のステージ1位アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)とステージ2位カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)らを欠いた177名がスタートを切る。

1級山岳モンテマッジョーレでアタックするティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)1級山岳モンテマッジョーレでアタックするティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsujiアタックに次ぐアタックは決まらず、集団は一つのまま41.8km地点のスプリントポイントに到着。チャンスを逃さずアルノー・デマール(フランス、FDJ)が先頭通過すると、多くのスプリンターやマリアアッズーラのダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)、そして総合10位ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)を含む32名が飛び出した状態となる。

メイン集団から1分のリードを稼ぎ出した大きな逃げグループは、1級山岳モンテマッジョーレ(8.3km/平均9.3%/最大15%)の登りが始まるとすぐに細分化。急勾配かつ細い登りで独走を開始したステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)がそのまま先頭をクリアする。

1分15秒遅れでクネゴやジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)を先頭にした追走グループ、そして2分遅れでエティックス・クイックステップ率いるメイン集団が頂上をクリア。この日だけで29ポイントを加算したクネゴはヴィスコンティに18ポイント差に迫られながらも山岳賞トップを快走中だ。

続く2級山岳クライ(8.8km/平均6.4%/最大16%)でも独走を保ったデニフルだったが、ランプレ・メリダが人数を揃えてリードする追走グループがジョインする。ウリッシやクネゴ、ヴィスコンティを含む25名の先頭グループがメイン集団から2分30秒リードする展開でレースは後半へ。一旦フィニッシュラインを通過し、次なる連続山岳へと向かった。



エティックス・クイックステップを先頭に1級山岳モンテマッジョーレを走るプロトンエティックス・クイックステップを先頭に1級山岳モンテマッジョーレを走るプロトン photo:Kei Tsuji
1級山岳モンテマッジョーレの頂上に近づくメイン集団1級山岳モンテマッジョーレの頂上に近づくメイン集団 photo:Kei Tsuji


独走に持ち込んだミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)独走に持ち込んだミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ) photo:Kei Tsuji1級山岳チーマポルズス(8.8km/平均8.2%/最大16%)で先頭グループから飛び出したのはモレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデール)。しかしモゼールのアタックは決まらずにニエベとジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、キャノンデール)が先頭を奪う。やがてドンブロウスキーが失速し、フィニッシュまで34kmを残してニエベの独走が始まった。

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)を先頭に走るメイン集団ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)を先頭に走るメイン集団 photo:Kei Tsujiヴィスコンティとドンブロウスキー、マッテオ・モンタグーティ(イタリア、AG2Rラモンディアール)の3名が追走を試みたがニエベとのタイム差は広がる。2分30秒後方のメイン集団ではアスタナがペースアップを試み、集団の人数を絞り込んでいく。

2級山岳ヴァッレでアタックするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)2級山岳ヴァッレでアタックするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji短いダウンヒルを経て続く2級山岳ヴァッレ(6.2km/平均7.8%/最大13%)の登坂が始まるとニエベのリードはさらに拡大。追走グループの中でヴィスコンティだけが生き残る。独走を貫いたニエベはテクニカルなダウンヒルも難なくこなし、平坦路でもリードを守り、ヴィスコンティを43秒差で振り切って勝利した。

アスタナ勢のペースアップによって遅れるマリアローザのボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)アスタナ勢のペースアップによって遅れるマリアローザのボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji2級山岳ヴァッレで熱を帯びたのはマリアローザ争い。モビスターのペースアップからアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がアタックし、続いてヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)も動く。するとマリアローザのボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)が一人脱落した。

この日最後の2級山岳ヴァッレを登る山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)この日最後の2級山岳ヴァッレを登る山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsujiマリアローザの脱落を知ったアスタナはヤコブ・フグルサング(デンマーク)とミケーレ・スカルポーニ(イタリア)が先頭を固めてペースアップ。ユンヘルスを42秒引き離した状態で2級山岳ヴァッレをクリアすると、ドンブロウスキーやモンタグーティを飲み込んで先頭から1分17秒遅れでフィニッシュした。

「ランダのリタイアはとても残念で、チームの士気が少し下がってしまったのは事実。だからなんとしてもステージ優勝を勝ち取りたかった。ランダが残っていたらこのチャンスは巡ってこなかった」と自身2度目のステージ優勝を飾ったニエベは語る。「5年ぶりのステージ優勝。逃げに乗ってからも調子の良さを感じていたし、最後は全開で踏み続けた。チームに勝利をもたらすことができて本当に良かったよ」。

ユンヘルスがニエベから2分07秒遅れ、つまりメイン集団から50秒遅れでフィニッシュしたため、総合2位アマドールが総合首位にジャンプアップ。モビスターのサブエース担うアマドールがコスタリカ出身選手として初めてマリアローザに袖を通した。

「この経験を最大限楽しみたい。でもアレハンドロ・バルベルデがモビスターのエースであることに変わりはないし、これからも彼のために走る。それにしてもマリアローザを着て明日のクイーンステージに挑むことは最高の気分だ」とアマドール。第13ステージを終えて総合トップ5(アマドール、ユンヘルス、ニーバリ、バルベルデ、クルイスウィク)が43秒差にひしめく接戦が続いている。



独走でフィニッシュしたミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)独走でフィニッシュしたミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
1分17秒遅れの集団スプリントでヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が3位に入る1分17秒遅れの集団スプリントでヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が3位に入る photo:Kei Tsujiニーバリらから50秒遅れたボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)ニーバリらから50秒遅れたボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
マリアローザを獲得したアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)マリアローザを獲得したアンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター) photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2016第13ステージ結果
1位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)               4h31’49”
2位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)           +43”
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)            +1’17”
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
5位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)
6位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)
7位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
8位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール)
9位 マッテオ・モンタグーティ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
10位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
11位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
13位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
14位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)
15位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)
17位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)  +2’07”
23位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)+2’17”
28位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)           +4’14”
129位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)           +32’43”

マリアローザ 個人総合成績
1位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)          54h05’50”
2位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)    +26”
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)             +41”
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)             +43”
5位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
6位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)               +1’37”
7位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)             +2’01”
8位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)       +2’19”
9位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール)            +2’48”
10位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)             +3’15”

マリアロッサ ポイント賞
1位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)       138pts
2位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)                 119pts
3位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)           104pts

マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)      85pts
2位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)          67pts
3位 ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)         54pts

マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) 54h06’16”
2位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール)           +5’49”
3位 セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ)       +13’31”

チーム総合成績
1位 モビスター                            162h20’45”
2位 アスタナ                               +7’16”
3位 キャノンデール                            +11’16”

text&photo:Kei Tsuji in Cividale del Friuli, Italy

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