2016/05/15(日) - 14:36
アレッツォの街を見下ろす標高900m級の山に向かって白い道が続いていた。生活道路として日常的に使用されている未舗装の峠をジロが走る。ジロらしいコースで今大会最初のイタリア人マリアローザ着用者が生まれた。
未舗装の登りなんてRCSスポルト主催レース以外のレースではそうそう見るものじゃない。ましてやグランツールの中ではジロ・デ・イタリアだけだ。
2004年にアンジェロ・ゾメニャン氏が大会ディレクターに就任してからというもの、ジロのコース設定は奇抜さが増した。2005年には未舗装のフィネストレ峠を取り入れ、その後も次々に新たな仕掛けを投入。「奇抜で厳しいジロ」の印象を倍増させた。
中でも奇抜さが際立ったのが新城幸也(当時ブイグテレコム)が初出場した2010年大会で、オランダで開幕後にイタリアに移動すると、モンタルチーノにフィニッシュする第7ステージは雨によって未舗装路が完全に泥々の状態となった。いわゆるストラーデビアンケ(白い道)を通るコースだったが、雨によって全く白さはなくなり、選手の判別が難しいほどの泥レースに。その後も激坂モンテ・ゾンコランや未舗装区間を含むプラン・デ・コロネスでの個人タイムトライアルが登場するなど、とにかくコース設定が過激だった。
2011年にミケーレ・アックアローネ氏がディレクターに就任後はちょっぴりコース設定の奇抜さが影を潜めたものの、2013年に横領の疑いでアックアローネ氏が解雇されてマウロ・ヴェーニ氏がディレクターに就任すると再び「ジロらしく」なった感がある。
第8ステージの開催場所は、RCSスポルトが主催するストラーデビアンケと同じトスカーナ州。ジロがトスカーナ州を訪れる際に未舗装路を取り入れることが通過儀礼になりつつある。なお、今回登場した未舗装の2級山岳アルペ・ディ・ポーティはストラーデビアンケの開催場所から100kmほど東に位置している。
未舗装とは言っても踏み固められている路面であり、轍に沿って走ればしっかりグリップするし路面抵抗も少ない。ロードバイクでも全く問題のないレベルであり、逆にマウンテンバイクだと物足りなく感じる路面だ。最大勾配14%の区間ではさすがに乱暴にダンシングするとトラクションを失うが、それ以外ではよほどハンドリングに難がない限り舗装路とそれほど変わらずスムーズに走行できる。
フィネストレ峠など際立って長い未舗装の登りでは、トラブルが発生した車両がコースを塞ぐ可能性があるため通過車両の台数が厳しく制限される。しかしこの2級山岳アルペ・ディ・ポーティは関係車両がすべて進入可能。そのことからも路面の良さを感じることができる。
後輪にグリップを感じながらシッティングでグイグイと踏んでいく必要があるため、どのチームも太めのタイヤに軽めのギア比をチョイスし、さらにパンク対策としてアスタナやティンコフ、チームスカイといった総合系チームは登りの途中にホイールをもったスタッフを何人も配置した。どのチームもジロのコースには慣れっこだ。
地元アレッツォ出身のダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、ティンコフ)の怒りのこもったツイートによると、レース通過前に何者かによって釘が撒かれるという事件が発生したが、レース到着までに主催者と観客によってすべて取り除かれている。パンクが続出することはなかった。
山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)を含むグルペットが2級山岳を約20分遅れで通過した後も、レース最後尾の「フィネ・ガーラ・チクリスティカ」のバンがなかなかやってこない。コースの撤収作業にかかれないスタッフが苛立ったが、グルペットの後ろにはまだ3名が残されていた。
この日、序盤の集団分裂で遅れたエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)、ボーイ・ファンポッペル(オランダ、トレック・セガフレード)、イウリィ・フィロージ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)は55分26秒遅れでフィニッシュした。タイムリミットはステージ優勝者のタイム+11%、つまり27分56秒遅れ。最後まで走りきったヴィヴィアーニだったが、FTM(フオーリ・テンポ・マッシモ)つまりタイムアウト扱いとなっている。
しっかりと18分遅れでフィニッシュしたマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)は、長いシーズンを見据えてこの第8ステージをもってリタイアすることを明らかにしている。大会1週目にして徐々にスプリンターの数が減っている。
マリアローザはジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)に移り、オランダ人とドイツ人によって着回されていたマリアローザをようやくイタリア人が手にした。とは言ってもトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が絶望的な遅れを被ったわけではない。「股擦れに悩まされている」とは言いながらも、苦しみながら千切れたのではなく、第9ステージの個人タイムトライアルで挽回することを念頭に置いて追い込みすぎないマイペース走行に徹したように感じるのは自分だけではないはず。ドゥムランが本来の力を発揮すればライバルたちから1分以上のタイムを取り戻すことは可能だ。
個人タイムトライアルは生憎の雨の中での開催になる見通し。ただでさえテクニカルなコースが雨に濡れる。天気予報によると曇り時々雷雨。出走時間がタイムに影響することも考えられる。
text&photo:Kei Tsuji in Arezzo, Italy
未舗装の登りなんてRCSスポルト主催レース以外のレースではそうそう見るものじゃない。ましてやグランツールの中ではジロ・デ・イタリアだけだ。
2004年にアンジェロ・ゾメニャン氏が大会ディレクターに就任してからというもの、ジロのコース設定は奇抜さが増した。2005年には未舗装のフィネストレ峠を取り入れ、その後も次々に新たな仕掛けを投入。「奇抜で厳しいジロ」の印象を倍増させた。
中でも奇抜さが際立ったのが新城幸也(当時ブイグテレコム)が初出場した2010年大会で、オランダで開幕後にイタリアに移動すると、モンタルチーノにフィニッシュする第7ステージは雨によって未舗装路が完全に泥々の状態となった。いわゆるストラーデビアンケ(白い道)を通るコースだったが、雨によって全く白さはなくなり、選手の判別が難しいほどの泥レースに。その後も激坂モンテ・ゾンコランや未舗装区間を含むプラン・デ・コロネスでの個人タイムトライアルが登場するなど、とにかくコース設定が過激だった。
2011年にミケーレ・アックアローネ氏がディレクターに就任後はちょっぴりコース設定の奇抜さが影を潜めたものの、2013年に横領の疑いでアックアローネ氏が解雇されてマウロ・ヴェーニ氏がディレクターに就任すると再び「ジロらしく」なった感がある。
第8ステージの開催場所は、RCSスポルトが主催するストラーデビアンケと同じトスカーナ州。ジロがトスカーナ州を訪れる際に未舗装路を取り入れることが通過儀礼になりつつある。なお、今回登場した未舗装の2級山岳アルペ・ディ・ポーティはストラーデビアンケの開催場所から100kmほど東に位置している。
未舗装とは言っても踏み固められている路面であり、轍に沿って走ればしっかりグリップするし路面抵抗も少ない。ロードバイクでも全く問題のないレベルであり、逆にマウンテンバイクだと物足りなく感じる路面だ。最大勾配14%の区間ではさすがに乱暴にダンシングするとトラクションを失うが、それ以外ではよほどハンドリングに難がない限り舗装路とそれほど変わらずスムーズに走行できる。
フィネストレ峠など際立って長い未舗装の登りでは、トラブルが発生した車両がコースを塞ぐ可能性があるため通過車両の台数が厳しく制限される。しかしこの2級山岳アルペ・ディ・ポーティは関係車両がすべて進入可能。そのことからも路面の良さを感じることができる。
後輪にグリップを感じながらシッティングでグイグイと踏んでいく必要があるため、どのチームも太めのタイヤに軽めのギア比をチョイスし、さらにパンク対策としてアスタナやティンコフ、チームスカイといった総合系チームは登りの途中にホイールをもったスタッフを何人も配置した。どのチームもジロのコースには慣れっこだ。
地元アレッツォ出身のダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、ティンコフ)の怒りのこもったツイートによると、レース通過前に何者かによって釘が撒かれるという事件が発生したが、レース到着までに主催者と観客によってすべて取り除かれている。パンクが続出することはなかった。
山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)を含むグルペットが2級山岳を約20分遅れで通過した後も、レース最後尾の「フィネ・ガーラ・チクリスティカ」のバンがなかなかやってこない。コースの撤収作業にかかれないスタッフが苛立ったが、グルペットの後ろにはまだ3名が残されていた。
この日、序盤の集団分裂で遅れたエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)、ボーイ・ファンポッペル(オランダ、トレック・セガフレード)、イウリィ・フィロージ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)は55分26秒遅れでフィニッシュした。タイムリミットはステージ優勝者のタイム+11%、つまり27分56秒遅れ。最後まで走りきったヴィヴィアーニだったが、FTM(フオーリ・テンポ・マッシモ)つまりタイムアウト扱いとなっている。
しっかりと18分遅れでフィニッシュしたマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)は、長いシーズンを見据えてこの第8ステージをもってリタイアすることを明らかにしている。大会1週目にして徐々にスプリンターの数が減っている。
マリアローザはジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)に移り、オランダ人とドイツ人によって着回されていたマリアローザをようやくイタリア人が手にした。とは言ってもトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が絶望的な遅れを被ったわけではない。「股擦れに悩まされている」とは言いながらも、苦しみながら千切れたのではなく、第9ステージの個人タイムトライアルで挽回することを念頭に置いて追い込みすぎないマイペース走行に徹したように感じるのは自分だけではないはず。ドゥムランが本来の力を発揮すればライバルたちから1分以上のタイムを取り戻すことは可能だ。
個人タイムトライアルは生憎の雨の中での開催になる見通し。ただでさえテクニカルなコースが雨に濡れる。天気予報によると曇り時々雷雨。出走時間がタイムに影響することも考えられる。
text&photo:Kei Tsuji in Arezzo, Italy
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