2016/03/15(火) - 09:10
総合優勝を見据えたアタッカーたちによる総攻撃。スプリンター有利な平坦コースで精鋭グループの逃げ切りが決まり、新旧世界チャンピオンを下したグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)が総合首位に躍り出た。
降雪予報によってキャンセルされた第5ステージの翌日は、カステルライモンドからチェパガッティまでの210km。中盤にかけてアドリア海に沿って走るコースは平坦基調で、獲得標高差は1,000mしかない。
最後はチェパガッティを起点にした周回コースを2周半。残り5kmからフィニッシュラインまで平均勾配2.5%の登りが続いているものの、一般的にはスプリンターのためにデザインされたステージだと言える。しかし、大会最難関の第5ステージがキャンセルされたことがレースに大きく影響。最終日の10km個人タイムトライアルを除いてこの第6ステージが攻撃を仕掛ける最後のチャンスであるため、終盤にかけてレースは加熱した。
16km地点で形成されたヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、アスタナ)やフェデリコ・ズルロ(イタリア、ランプレ・メリダ)を含む6名の先頭グループはアドリア海に沿う平坦路で最大3分50秒のリードを得る。メイン集団をコントロールしたのはリーダーチームのエティックス・クイックステップと、カレイブ・ユアン(オーストラリア)でスプリントを狙うオリカ・グリーンエッジ。
スプリンターチームが淡々と逃げのリードを削り取る典型的な展開をかき乱したのは世界チャンピオンだった。チェパガッティの周回コースを前に6名の逃げグループが吸収されると、赤いポイント賞ジャージを着るペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)が第2スプリントポイント(残り23km地点)を先頭通過する。スプリントポイント通過後もスピードを弱めないサガンには7名が追いついた。
先頭で新たに形成されたのは、サガン&ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)&オスカル・ガット(イタリア)のティンコフ3名と、リーダージャージを着るゼネク・スティバル(チェコ)&フェルナンド・ガビリア(コロンビア)&マッテオ・トレンティン(イタリア)のエティックス・クイックステップ3名、そしてファンアフェルマートと元世界チャンピオンのミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)という強力なメンバー。
人数を揃えるティンコフとエティックス・クイックステップが協力して先頭グループのスピードを繋いだため、メイン集団とのタイム差は35秒まで拡大する。メイン集団からはヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)らがカウンターアタックを仕掛けたが届かない。
登りでばらけた後続集団から5秒リードで先頭8名は最終周回に突入。ガットやベンナーティ、ガビリア、トレンティンらの奮闘によって再びリードは広がり、モビスターやトレック・セガフレード率いるメイン集団を振り切る。メイン集団では残り5kmで落車が発生し、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)が鎖骨を骨折。総合優勝の最有力候補と見られていた総合4位ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)はパンクで脱落した。
やがて先頭グループからは力尽きたアシスト勢が離れ、残り1kmからサガン、クヴィアトコウスキー、スティバル、ファンアフェルマートによるエースバトルに。残り400mでクヴィアトコウスキーが腰を上げると、リーダージャージのスティバルが脱落。すると残り250mでサガンが一気に仕掛けた。
緩斜面を先頭で突き進んだサガンの後ろにはファンアフェルマートがぴったりとマークする。残り100mでスリップストリームを脱したファンアフェルマートが踏んでいく。残り50mでサガンに並んだファンアフェルマートが、フィニッシュラインまで踏み抜いた。
スティバルが4秒遅れ、メイン集団が7秒遅れでフィニッシュしたため、ボーナスタイム10秒を得たファンアフェルマートが総合首位に浮上。最終日の個人タイムトライアルを残して総合2位スティバルと7秒差、総合3位サガンと8秒差だ。第5ステージのキャンセルに難色を示していたニーバリは34秒差の総合10位。
ファンアフェルマートは「サガンのアタックは予想していなかった。彼はスプリントポイントで飛び出して、そのまま踏んで行ったんだ。エティックス・クイックステップとティンコフが人数を揃えていたので、孤軍の自分は力を温存出来た。タイム差が30秒まで広がった時点で逃げ切りは確実だと思っていたし、今日のような登りスプリントは自分の得意分野。ティレーノ〜アドリアティコのコースはクラシックシーズンの準備に最適なんだ」と語っている。
また、ファンアフェルマートは総合優勝のチャンスについて「おそらく(総合4位・21秒遅れの)ボブ・ユンヘルスが有力だ。でも距離はたった10kmであり、こんな状況で最終TTに挑むのは初めてだし、きっと今後もないだろう。大好きなティレーノで総合優勝する貴重なチャンスだから、何とかものにしたい」とコメント。1年前に同コースで行われた個人TTでファンアフェルマートはステージ11位だった。
「スプリントを仕掛けるのが早すぎた」と悔やむのは今シーズン4回目の2位、そして今大会2回目の2位を経験したサガン。アルカンシェルを獲得したロード世界選手権以降、まだサガンは勝利を手にしていない。「ボーナスタイムのためにアタックして、後続との距離が開いたからそのまま逃げた。エティックス・クイックステップとクヴィアトコウスキーは協力的で、グレッグ(ファンアフェルマート)はスプリントのために脚を残していた。でもあの状況で脚を溜めることが出来るのはスティバルであって、グレッグではないはず。やっぱりティレーノでステージ優勝するのは簡単なことじゃない。1秒のロスも許されない今、明日は全力で走りたい」と総合3位サガンは意気込んでいる。
選手コメントはレース公式リリースより。
ティレーノ〜アドリアティコ2016第6ステージ結果
1位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) 4h34’14”
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) +02”
4位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) +04”
5位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +07”
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
7位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)
8位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)
9位 ソニー・コルブレッリ(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 モレノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)
個人総合成績
1位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) 20h30’43”
2位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) +07”
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) +08”
4位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) +21”
5位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)
6位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +28”
7位 セバスティアン・ライヘンバッハ(スイス、FDJ)
8位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ) +30”
9位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) +31”
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +34”
ポイント賞
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
山岳賞
1位 チェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・アルゴン18)
ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)
チーム総合成績
1位 エティックス・クイックステップ
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
降雪予報によってキャンセルされた第5ステージの翌日は、カステルライモンドからチェパガッティまでの210km。中盤にかけてアドリア海に沿って走るコースは平坦基調で、獲得標高差は1,000mしかない。
最後はチェパガッティを起点にした周回コースを2周半。残り5kmからフィニッシュラインまで平均勾配2.5%の登りが続いているものの、一般的にはスプリンターのためにデザインされたステージだと言える。しかし、大会最難関の第5ステージがキャンセルされたことがレースに大きく影響。最終日の10km個人タイムトライアルを除いてこの第6ステージが攻撃を仕掛ける最後のチャンスであるため、終盤にかけてレースは加熱した。
16km地点で形成されたヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、アスタナ)やフェデリコ・ズルロ(イタリア、ランプレ・メリダ)を含む6名の先頭グループはアドリア海に沿う平坦路で最大3分50秒のリードを得る。メイン集団をコントロールしたのはリーダーチームのエティックス・クイックステップと、カレイブ・ユアン(オーストラリア)でスプリントを狙うオリカ・グリーンエッジ。
スプリンターチームが淡々と逃げのリードを削り取る典型的な展開をかき乱したのは世界チャンピオンだった。チェパガッティの周回コースを前に6名の逃げグループが吸収されると、赤いポイント賞ジャージを着るペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)が第2スプリントポイント(残り23km地点)を先頭通過する。スプリントポイント通過後もスピードを弱めないサガンには7名が追いついた。
先頭で新たに形成されたのは、サガン&ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)&オスカル・ガット(イタリア)のティンコフ3名と、リーダージャージを着るゼネク・スティバル(チェコ)&フェルナンド・ガビリア(コロンビア)&マッテオ・トレンティン(イタリア)のエティックス・クイックステップ3名、そしてファンアフェルマートと元世界チャンピオンのミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)という強力なメンバー。
人数を揃えるティンコフとエティックス・クイックステップが協力して先頭グループのスピードを繋いだため、メイン集団とのタイム差は35秒まで拡大する。メイン集団からはヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)らがカウンターアタックを仕掛けたが届かない。
登りでばらけた後続集団から5秒リードで先頭8名は最終周回に突入。ガットやベンナーティ、ガビリア、トレンティンらの奮闘によって再びリードは広がり、モビスターやトレック・セガフレード率いるメイン集団を振り切る。メイン集団では残り5kmで落車が発生し、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)が鎖骨を骨折。総合優勝の最有力候補と見られていた総合4位ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)はパンクで脱落した。
やがて先頭グループからは力尽きたアシスト勢が離れ、残り1kmからサガン、クヴィアトコウスキー、スティバル、ファンアフェルマートによるエースバトルに。残り400mでクヴィアトコウスキーが腰を上げると、リーダージャージのスティバルが脱落。すると残り250mでサガンが一気に仕掛けた。
緩斜面を先頭で突き進んだサガンの後ろにはファンアフェルマートがぴったりとマークする。残り100mでスリップストリームを脱したファンアフェルマートが踏んでいく。残り50mでサガンに並んだファンアフェルマートが、フィニッシュラインまで踏み抜いた。
スティバルが4秒遅れ、メイン集団が7秒遅れでフィニッシュしたため、ボーナスタイム10秒を得たファンアフェルマートが総合首位に浮上。最終日の個人タイムトライアルを残して総合2位スティバルと7秒差、総合3位サガンと8秒差だ。第5ステージのキャンセルに難色を示していたニーバリは34秒差の総合10位。
ファンアフェルマートは「サガンのアタックは予想していなかった。彼はスプリントポイントで飛び出して、そのまま踏んで行ったんだ。エティックス・クイックステップとティンコフが人数を揃えていたので、孤軍の自分は力を温存出来た。タイム差が30秒まで広がった時点で逃げ切りは確実だと思っていたし、今日のような登りスプリントは自分の得意分野。ティレーノ〜アドリアティコのコースはクラシックシーズンの準備に最適なんだ」と語っている。
また、ファンアフェルマートは総合優勝のチャンスについて「おそらく(総合4位・21秒遅れの)ボブ・ユンヘルスが有力だ。でも距離はたった10kmであり、こんな状況で最終TTに挑むのは初めてだし、きっと今後もないだろう。大好きなティレーノで総合優勝する貴重なチャンスだから、何とかものにしたい」とコメント。1年前に同コースで行われた個人TTでファンアフェルマートはステージ11位だった。
「スプリントを仕掛けるのが早すぎた」と悔やむのは今シーズン4回目の2位、そして今大会2回目の2位を経験したサガン。アルカンシェルを獲得したロード世界選手権以降、まだサガンは勝利を手にしていない。「ボーナスタイムのためにアタックして、後続との距離が開いたからそのまま逃げた。エティックス・クイックステップとクヴィアトコウスキーは協力的で、グレッグ(ファンアフェルマート)はスプリントのために脚を残していた。でもあの状況で脚を溜めることが出来るのはスティバルであって、グレッグではないはず。やっぱりティレーノでステージ優勝するのは簡単なことじゃない。1秒のロスも許されない今、明日は全力で走りたい」と総合3位サガンは意気込んでいる。
選手コメントはレース公式リリースより。
ティレーノ〜アドリアティコ2016第6ステージ結果
1位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) 4h34’14”
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) +02”
4位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) +04”
5位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +07”
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
7位 サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)
8位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)
9位 ソニー・コルブレッリ(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 モレノ・ホフランド(オランダ、ロットNLユンボ)
個人総合成績
1位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) 20h30’43”
2位 ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ) +07”
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) +08”
4位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ) +21”
5位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、エティックス・クイックステップ)
6位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ) +28”
7位 セバスティアン・ライヘンバッハ(スイス、FDJ)
8位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ) +30”
9位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) +31”
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) +34”
ポイント賞
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
山岳賞
1位 チェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ボーラ・アルゴン18)
ヤングライダー賞
1位 ボブ・ユンヘルス(ルクセンブルク、エティックス・クイックステップ)
チーム総合成績
1位 エティックス・クイックステップ
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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