2015/12/22(火) - 16:29
国内シクロクロスブームの火付け役である、Rapha スーパークロス野辺山のオーガナイザーを務める矢野大介氏へのインタビュー。野辺山CXや、日本のシクロクロスシーンに必要なこと、そしてこれからについて聞きました。
今年「Rapha スーパークロス野辺山」と名称を変え、6回目の開催を成功裡に終えた野辺山シクロクロス。八ヶ岳を望む雄大なロケーションと走り応えのあるコース、そして国内外のトップ選手たちがこぞって参加することで、国内シクロクロスレースの頂点であり、ホビーレーサーにとっての桧舞台として、すっかり定着した大会だ。
「今年の大会に点数を付けるとしたら? うーん、85点、B+くらいでしょうか。感触はとても良かったですね」
と言うのは、Rapha Japan代表として、そしてRapha スーパークロス野辺山のオーガナイザーとして大会をまとめ上げた矢野大介氏。野辺山シクロクロスを成功に導き、国内のCXブームに火を付けた矢野氏に、野辺山シクロクロスについて、そして加速を続ける国内CX事情の現在と今後について聞いてみた。
「今年の大会は好天に恵まれ、とても助かりました。2日間とも本当にたくさんの笑顔を見ることができたし、オーガナイザーとして、そしていちシクロクロスファンとしても満足していますよ」と、矢野氏は撤収準備にせわしない会場を眺めながら振り返る。
プロ選手によるスクール、野辺山シクロクロスの国際化
矢野氏:「やっぱり野辺山の魅力は、他のどこにも無い大自然。今年は雪を冠った八ヶ岳、済んだ空気と絶好のロケーションを来八してくれた全員が楽しめたと思うんです。その中で走れることは誰にとっても最高ですよね」
「今年はティム(ジョンソン)の講習会を、大会公式のサブイベントとして開催したことも大きな意味があったと考えています。去年ティムが初めて参加してくれて、彼も僕も、ものすごく印象が良かった。スクールの内容も良かったと聞いているし、参加した方たちの反響もとても良かったと聞いています」
「基礎を学ぶことはとても大事だし、彼自身は教えることも上手だし、盛り上げ方も上手いし、プロ選手としてホビーライダーとのコミニュケーションも完璧。今後また機会があれば、丸一日を使ったプレミアム講習会を行いたいですね。来年2月のシクロクロス東京にはJ-POW(ジェレミー・パワーズ)が来日予定ですから、こうしたプライスレスな機会を再び設けることができれば、と考えています」
野辺山シクロクロスの今後の課題として、矢野氏は「アジアはもちろん、欧米からの参加者を増やすこと」が挙げられる、と言う。
「シクロクロスという濃密な時間を共に過ごせば、例え言葉が違っても通じ合える。各国のシクロクロスシーンが入り混じれば参加者同士でも国際交流の幅が広がるし、これってとてもエキサイティングなことだと思うんです。また海外からの参加者を増やせば、野辺山という観光資源のアピールにも繋がり、結果的に地元を活性化できると考えています」
これから国内シクロクロスシーンに必要なこと
これから国内シクロクロスシーンに必要なこと。それはUCIレースと質の高いレース、そして女性とキッズの人数を増やすに限る、と矢野氏は言い切る。
国内にUCIレースを増やすことはつまり、海外に遠征せずともUCIポイントを獲得できるということだ。アメリカではUCI1クラスのレースが複数開催されているため、例えば全米王者のジェレミー・パワーズなど力のある選手であれば、自国で獲得したポイントによって国際レースでのスタート位置を最前列まで引き上げることができる。スタート位置が結果を大きく左右するシクロクロスにおいて(それもハイレベルであればあるほど)、UCIポイントの有無は言葉以上に重要だ。
2015-16年シーズンにおいて、国内のUCIレースは野辺山を含めて4レース。本業の傍らでレース活動を行う選手が多く、欧米遠征に負担の掛かる日本国内において、UCIレースを増やすことの意味合いはより大きくなる。その第一歩としてJCXシリーズが認知されてきたことは大切だ、と矢野氏は言う。
矢野氏:「JCXは全国の選りすぐりのレースを指定して獲得ポイントを争うシステムですが、今では『JCXだから参戦しよう』とか、『JCXだからトップ選手が集まるし、観戦に行こう』という声をよく聞くようになりました。この動きを大きくして価値を高めれば、スポンサーが付き、賞金もでき、いずれUCIレース化にも繋がる。シクロクロスはオリンピックスポーツではありませんが、こうすることで『あの舞台で活躍したい!』という選手が増え、結果的に輪が広がると信じています」
「でも国内シクロクロスは、たった数年前と比較してもかなり盛り上がってきた。週末になれば各地でレースが開催されているし、その中で皆が目標とするレースも現れてきました。CXカルチャーが熟成しているアメリカと比較しても、状況はほとんど変わらないと思います」
「そして私個人として、一番大切にしているのがキッズカテゴリーです。レース時間は短いけれど、大人のレースよりもずっとドラマが凝縮されていて、誰が見ても楽しいし、感動できるし、心が温まる。事実今回の野辺山ではUCIレースの次に観客が多かったように思いますし、楽しかった思い出は、それぞれが大きくなった後も心に生き続ける。その中でトップレーサーも生まれるはずなんです」
「野辺山のオーガナイザーを務める私自身、海外はもちろん国内レースに学ぶ部分はたくさんあります。関東で言えば茨城や宇都宮CXなど、ローカルだけれど成功しているレースはたくさんあるし、AJOCCではないグラスルーツ(草の根)レースがもっと出てくれば素敵だと思いますね」
「キッズレーサーを増やすことは、私個人では不可能なこと。でも、レースに彩りを加えてくれる海外選手を呼ぶことはできる。今回はティムを呼び、2日目に勝利したザックは自ら志願して自費で来日してくれたんです。シクロクロスが盛んなシアトルの選手が、わざわざ自費で来日してくれたのは嬉しかったですね」
「野辺山での勝利だったり、上位入賞って、本当に難しいことなんです。人数も多いし、コースも難しいし、天候も厳しいし、選手目線で非常にステータスが高い。この路線のまま、継続していきたいですね」
-そんな野辺山のUCIレースを、矢野さん自身も走りました。いかがでしたか?
「ハハハ...(笑)。個人的に今年はかなり練習を積んできたし、調子も良かったんです。毎日とても忙しかったのですが、オーガナイザーとして適当に走るのも失礼ですし、全力で走りました。コースのほぼ全てで観客の皆さんから大声援を送って頂けたので、いちレーサーとしてとても楽しかったですね。私が仕事を抜けた分をカバーしてくれた仲間に感謝したいと思います」
「今年の大会に点数を付けるとしたら?うーん、85点、B+くらいでしょうか。そろそろ来年あたりは雪が降ってくれたら面白くなるんですが。昨年から開催時期を遅くしたのは、それが理由だったりします(笑)。野辺山スノークロスなんて、絶対にワクワクすると思いませんか?」
text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji
今年「Rapha スーパークロス野辺山」と名称を変え、6回目の開催を成功裡に終えた野辺山シクロクロス。八ヶ岳を望む雄大なロケーションと走り応えのあるコース、そして国内外のトップ選手たちがこぞって参加することで、国内シクロクロスレースの頂点であり、ホビーレーサーにとっての桧舞台として、すっかり定着した大会だ。
「今年の大会に点数を付けるとしたら? うーん、85点、B+くらいでしょうか。感触はとても良かったですね」
と言うのは、Rapha Japan代表として、そしてRapha スーパークロス野辺山のオーガナイザーとして大会をまとめ上げた矢野大介氏。野辺山シクロクロスを成功に導き、国内のCXブームに火を付けた矢野氏に、野辺山シクロクロスについて、そして加速を続ける国内CX事情の現在と今後について聞いてみた。
「今年の大会は好天に恵まれ、とても助かりました。2日間とも本当にたくさんの笑顔を見ることができたし、オーガナイザーとして、そしていちシクロクロスファンとしても満足していますよ」と、矢野氏は撤収準備にせわしない会場を眺めながら振り返る。
プロ選手によるスクール、野辺山シクロクロスの国際化
矢野氏:「やっぱり野辺山の魅力は、他のどこにも無い大自然。今年は雪を冠った八ヶ岳、済んだ空気と絶好のロケーションを来八してくれた全員が楽しめたと思うんです。その中で走れることは誰にとっても最高ですよね」
「今年はティム(ジョンソン)の講習会を、大会公式のサブイベントとして開催したことも大きな意味があったと考えています。去年ティムが初めて参加してくれて、彼も僕も、ものすごく印象が良かった。スクールの内容も良かったと聞いているし、参加した方たちの反響もとても良かったと聞いています」
「基礎を学ぶことはとても大事だし、彼自身は教えることも上手だし、盛り上げ方も上手いし、プロ選手としてホビーライダーとのコミニュケーションも完璧。今後また機会があれば、丸一日を使ったプレミアム講習会を行いたいですね。来年2月のシクロクロス東京にはJ-POW(ジェレミー・パワーズ)が来日予定ですから、こうしたプライスレスな機会を再び設けることができれば、と考えています」
野辺山シクロクロスの今後の課題として、矢野氏は「アジアはもちろん、欧米からの参加者を増やすこと」が挙げられる、と言う。
「シクロクロスという濃密な時間を共に過ごせば、例え言葉が違っても通じ合える。各国のシクロクロスシーンが入り混じれば参加者同士でも国際交流の幅が広がるし、これってとてもエキサイティングなことだと思うんです。また海外からの参加者を増やせば、野辺山という観光資源のアピールにも繋がり、結果的に地元を活性化できると考えています」
これから国内シクロクロスシーンに必要なこと
これから国内シクロクロスシーンに必要なこと。それはUCIレースと質の高いレース、そして女性とキッズの人数を増やすに限る、と矢野氏は言い切る。
国内にUCIレースを増やすことはつまり、海外に遠征せずともUCIポイントを獲得できるということだ。アメリカではUCI1クラスのレースが複数開催されているため、例えば全米王者のジェレミー・パワーズなど力のある選手であれば、自国で獲得したポイントによって国際レースでのスタート位置を最前列まで引き上げることができる。スタート位置が結果を大きく左右するシクロクロスにおいて(それもハイレベルであればあるほど)、UCIポイントの有無は言葉以上に重要だ。
2015-16年シーズンにおいて、国内のUCIレースは野辺山を含めて4レース。本業の傍らでレース活動を行う選手が多く、欧米遠征に負担の掛かる日本国内において、UCIレースを増やすことの意味合いはより大きくなる。その第一歩としてJCXシリーズが認知されてきたことは大切だ、と矢野氏は言う。
矢野氏:「JCXは全国の選りすぐりのレースを指定して獲得ポイントを争うシステムですが、今では『JCXだから参戦しよう』とか、『JCXだからトップ選手が集まるし、観戦に行こう』という声をよく聞くようになりました。この動きを大きくして価値を高めれば、スポンサーが付き、賞金もでき、いずれUCIレース化にも繋がる。シクロクロスはオリンピックスポーツではありませんが、こうすることで『あの舞台で活躍したい!』という選手が増え、結果的に輪が広がると信じています」
「でも国内シクロクロスは、たった数年前と比較してもかなり盛り上がってきた。週末になれば各地でレースが開催されているし、その中で皆が目標とするレースも現れてきました。CXカルチャーが熟成しているアメリカと比較しても、状況はほとんど変わらないと思います」
「そして私個人として、一番大切にしているのがキッズカテゴリーです。レース時間は短いけれど、大人のレースよりもずっとドラマが凝縮されていて、誰が見ても楽しいし、感動できるし、心が温まる。事実今回の野辺山ではUCIレースの次に観客が多かったように思いますし、楽しかった思い出は、それぞれが大きくなった後も心に生き続ける。その中でトップレーサーも生まれるはずなんです」
「野辺山のオーガナイザーを務める私自身、海外はもちろん国内レースに学ぶ部分はたくさんあります。関東で言えば茨城や宇都宮CXなど、ローカルだけれど成功しているレースはたくさんあるし、AJOCCではないグラスルーツ(草の根)レースがもっと出てくれば素敵だと思いますね」
「キッズレーサーを増やすことは、私個人では不可能なこと。でも、レースに彩りを加えてくれる海外選手を呼ぶことはできる。今回はティムを呼び、2日目に勝利したザックは自ら志願して自費で来日してくれたんです。シクロクロスが盛んなシアトルの選手が、わざわざ自費で来日してくれたのは嬉しかったですね」
「野辺山での勝利だったり、上位入賞って、本当に難しいことなんです。人数も多いし、コースも難しいし、天候も厳しいし、選手目線で非常にステータスが高い。この路線のまま、継続していきたいですね」
-そんな野辺山のUCIレースを、矢野さん自身も走りました。いかがでしたか?
「ハハハ...(笑)。個人的に今年はかなり練習を積んできたし、調子も良かったんです。毎日とても忙しかったのですが、オーガナイザーとして適当に走るのも失礼ですし、全力で走りました。コースのほぼ全てで観客の皆さんから大声援を送って頂けたので、いちレーサーとしてとても楽しかったですね。私が仕事を抜けた分をカバーしてくれた仲間に感謝したいと思います」
「今年の大会に点数を付けるとしたら?うーん、85点、B+くらいでしょうか。そろそろ来年あたりは雪が降ってくれたら面白くなるんですが。昨年から開催時期を遅くしたのは、それが理由だったりします(笑)。野辺山スノークロスなんて、絶対にワクワクすると思いませんか?」
text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji
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