2015/08/20(木) - 10:58
7月の第28回全日本マウンテンバイク選手権大会のXCO種目では男女合わせて9つのカテゴリーで全日本チャンピオンが決まった。エリートからユース、マスターズまで、各世代のチャンピオンバイクを紹介する。
山本幸平(トレックファクトリーレーシング) トレック Procaliber SL
山本幸平(トレックファクトリーレーシング)が駆るトレック Procaliber SL
ドマーネにも搭載されるIsoSpeedシステムが振動を吸収し、路面追従性を高めるという
チームイシューモデルにはトップチューブ裏側に#full gas(全開)の文字が入る
男子エリートで優勝した山本幸平選手。使用するトレック Procaliber(プロキャリバー) SLは振動吸収機構「IsoSpeed」を搭載したトレックの最新29erXCモデル。「タイヤやセッティングはレースによって変えますが、基本的には市販モデルと一緒です」と言うものの、随所にプロ仕様が盛り込まれているファクトリーレーシングのプロライダー供給モデルだ。トップチューブ裏側には#full gas(全開)の文字が入る。
フルサスモデル「Top Fuel」も用意するが、日本のレースではほとんどリアリジッドのProcaliberを使用するという。「ワールドカップクラスのギャップの激しいコースで、ラダーやドロップオフ、ロックセクションなどが多用される場合はフルサスをチョイスしますが、日本のレースはまだそこまでの設定はないので、ほぼリジッドで行きます。IsoSpeedが搭載されたことでシートチューブがしなってくれます。リアサスほどではないですが、振動吸収性とコーナーでの粘りを生じてくれるので確実に速く走れます。オールマイティーに使えるので気に入ってます」。
ハンドルはごくノーマルのローライズカーボンバーを使用。グリップはESIのRacers Edge Grip
シングル仕様のフロントギアにはチェーン落下防止のガードを取り付ける
ファクトリーレーシングのスペシャルカラーにネームロゴが踊る
ステージスパワーを使用してパワーデータを計測する
フロントサスペンションはFOXの電子制御サス。XTRのDi2も搭載し、モードを切り替えながら使用。完全電子化している。チェーンリングにはフロントシングルを採用するが、フロントギアにはチェーン脱落防止のためのチェーンガードを取り付ける。これは激しいライディングでチェーンが落ちることを予防するため、シマノの了承を取り付けて装着している「保険」だと言う。
グリップはロンドンオリンピックのライダーで装着率40%を誇ったESIのRacer's Edge Gripを使用。シリコン製で掌にフィットし、ショックを和らげてくれるという。全日本、そしてアジアチャンピオンとして、9月の世界選手権、さらにはワールドカップと、このバイクでの活躍を期待したい。
沢田 時(ブリヂストンアンカー) アンカーXR9
沢田 時(ブリヂストンアンカー)が駆るアンカーXR9 photo:Satoru.Kato
男子U23を3連覇した沢田時が駆るのはアンカーXR9。今季のアンカーはレーシングモデルすべてに650Bサイズを採用している。日本人に合っているからという理由だ。「プロトタイプなどで29インチに乗ったことはありますが、自分は650Bの方が合ってます」と話す。
FサスはSRサンツアーがアンカーの選手に供給するAXON。カーボンコラムだが海外遠征の際に選手自らメンテしてトラブルの少ないアルミコラムを用意してもらっている。ステムやハンドルはPRO。タイヤは選手の好みに応じて自由に使いたいため、チームはスポンサードをあえて受けていない。沢田はこの日はシュワルベROCKET RONを選んでいた。
650Bのホイール。この日のレースではサスペンションを粘り重視の設定にした
Di2ディスプレイを備えたハンドル周り
「5月のCupe du Japon富士見大会の後、ポジションを見直したら、すごく感覚が良くなりました。また、コンポをDi2にしてからチェーン落ちが無くなったんです。それまでは毎年1回はレース中にチェーン落ちして悔しい結果になっていたので、これは頼もしいです」と、Di2化には大満足の様子だった。
末政実緒(SRAM/LITEC) LITEC HASSO T-29
末政実緒(SRAM/LITEC)が駆るLITEC HASSO T-29 photo:Satoru.Kato
フロントギアは登り重視の28T ペダルはMAVICだ
SRAMのRISE29インチホイールにIRCのチューブレスタイヤMIBROの組み合わせ
ダウンヒルとクロスカントリーの2冠を達成した末政選手が使うのはLITECのHASSO T-29。カーボン全盛の時代にあえてチタンフレームという選択だ。しかもスラロームバイクのようなポジションが目を引く。
「どちらかと言うとフリーライド系のフレームです。重量は軽くないんですけど、ダウンヒルが得意な自分の走りに合ったフレームです」。サスはロックショックス、ホイールはスラムと、サポートを受けるダートフリークのサプライ品を使用する。タイヤはIRC MIBROペダルはMAVICだ。
ポイントは可変シートポストとフロントシングルギア。「下りでシートポストを下げることで得意な下りでのアドバンテージを伸ばすのが狙いです。フロントシングルにしたのはギアシフトがひとつで済むから。歯数は28Tで、リアのロー側を42Tにしていますので、これで全てカバーできます」。ダウンヒル女王ならではの選択だ。
竹谷賢二(スペシャライズド・ジャパン) スペシャライズド S-Works Epic Carbon 29 2016モデル
竹谷賢二(スペシャライズド・ジャパン) が駆るスペシャライズド S-Works Epic Carbon 29 2016モデル photo:Satoru.Kato
フロントと共にストロークを5mm伸ばしたリアサスペンション
フロントギアがシングルだけだったワールドカップに対し、ダブルが選べる。ペダルはエッグビーターだ
男子マスターズで優勝した竹谷賢二は、言わずとしれた4度の全日本チャンピオンを経験したXC界のレジェンド。今はマスターズとしてレースを真剣に楽しむ、スペシャライズド契約ライダー&アドバイザーだ。
その竹谷選手が使ったのは、まだ発売されていない2016年モデル(!)「クロスカントリー向け前後サスモデルでは Epic WorldCup がトップモデルなんですけど、これはそれに次ぐモデルになります」とのこと。
フロントギアはダブルを選び、サスペンションストロークとホイールベースを若干長めにして安定志向にしているそうだが、「ワールドカップから乗り替えても違和感がないくらいレーシーに仕上がっています。これなら使えるな、と感じて昨日セッティングして今日のレースに使いました。ペダルとステム以外は実際に販売される仕様のままです」と話す。発売前モデルというだけでも驚くが、それを受け取って即レースに使ってしまうのはさすがの機材適応力だ。
平林安里(WESTBERG/ProRide J) スペシャライズド・スタンプジャンパー HT Carbon
平林安里(WESTBERG/ProRide J)が駆るスペシャライズド スタンプジャンパーHTカーボン photo:Satoru.Kato
フロント34T、リアのローギアは42Tを使用。「富士見にはこの組み合わせが一番合っていました」
可変シートポストには塩ビパイプ(グレーの部分)を貼り付けて下がりすぎないよう工夫する
ジュニアで連覇した平林選手が使うのはスペシャライズドのスタンプジャンパー HTカーボン。フロントはシングル。ペダルにはクランクブラザーズのキャンディを使用。多くは市販のS-WORKS仕様だが、ポイントは可変シートポストだという。
「技術的にまだ未熟な部分があるので、乗り降りが少しでも素早く出来るようにするためと、下りでサドルを下げて安定させるためです」と話す。塩ビパイプを貼り付けて、必要以上に下がらないような工夫をしています。「目標は世界一になること」と話す平林選手の今後に期待しよう。
北林 力(WESTBERG/ProRide J) モンドレイカー Podium Pro SL
北林力(WESTBERG/ProRide J)の駆るモンドレイカー Podium Pro SL photo:Satoru.Kato
シマノのSAINTのブレーキキャリパーに、SRAMの16インチローターの組み合わせ
フロントギアはシングルの32Tを使用する
男子ユースで優勝した北林力が使用するのは、モンドレイカー(MONDRAKER)のPodium Pro SL。国内ではマムアンドポップスが取り扱いを始めた新進気鋭のスペインブランドだ。奇抜な形状のフレームが目を引くが、ライダーの重心を最適化するジオメトリーで設計された結果であり、乗ってみると体重移動の必要が減り、理にかなっていることを体感できる設計だという。
北林のこだわりはFOXのサスペンションフォークと、シマノのダウンヒル用コンポ「SAINT」のブレーキキャリパーだ。「今日はロックセクションで少し手こずったけれど、この組み合わせのおかげで走れました。特にFOXのサスペンションフォークは小さなギャップもいなしてくれるのでとても気に入ってます」と話す。「来年はジュニアになりますが、これまでと同様に勝てるようになりたい」と抱負を語ってくれた。
佐藤寿美(TEAM BG8 A) ジャイアントXTC
佐藤寿美(TEAM BG8 A)が駆るジャイアントXTC photo:Satoru.Kato
小柄な佐藤選手だが、ハンドル幅は安定感のある広めの物を使用する
「よく進んでくれる」29インチホイールを使用
女子ジュニアで優勝した佐藤寿美は、ユースで優勝した山田選手と同じ北海道からの参戦。愛車はジャイアントXTCの29インチモデルだ。現在ジャイアントはすべてのMTBを650B化したので、旧モデルということ。
「フレームはU23の選手に譲ってもらって、パーツはチームの監督やコーチに相談して揃えました」とのこと。アルペンスキーもやっているそうで、「スキーとMTBはコーナーリングの重心のかけ方など似ている部分があるので、両方に役立つ」と話す。小柄な体格に合わせてポジションを出すために短いステムを使っている一方、ハンドル幅はコーナリングで安定させるために広めの物を使うのがこだわり。「スキーのターンと似た感覚になるので、この方が合ってます」。
山田夕貴(TEAM BG8 A) キャノンデール F-SI CARBON TEAM
山田夕貴(TEAM BG8 A)が駆るキャノンデール F-SI CARBON TEAM photo:Satoru.Kato
キャノンデール独自のサスペンション「レフティー」はお気に入りポイント
フロントギアは登り重視で32Tから30Tへ交換した
女子ユースで優勝した山田夕貴は北海道から参戦。「最初は小林あか里選手との差があまり離れなくてあせったんですけど、徐々に開いたのでその後は慎重に走りました」とレースを振り返ってくれた。山田選手が使うのはキャノンデールのF-SI CARBON TEAM。「フロントギアを30Tに変えてますが、それ以外は購入したままです」とのこと。「中学2年の時からキャノンデールのレフティーを使っていて、これ以外は乗れないってくらい気に入ってます」と話す。
photo&text:Satoru.Kato
山本幸平(トレックファクトリーレーシング) トレック Procaliber SL
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男子エリートで優勝した山本幸平選手。使用するトレック Procaliber(プロキャリバー) SLは振動吸収機構「IsoSpeed」を搭載したトレックの最新29erXCモデル。「タイヤやセッティングはレースによって変えますが、基本的には市販モデルと一緒です」と言うものの、随所にプロ仕様が盛り込まれているファクトリーレーシングのプロライダー供給モデルだ。トップチューブ裏側には#full gas(全開)の文字が入る。
フルサスモデル「Top Fuel」も用意するが、日本のレースではほとんどリアリジッドのProcaliberを使用するという。「ワールドカップクラスのギャップの激しいコースで、ラダーやドロップオフ、ロックセクションなどが多用される場合はフルサスをチョイスしますが、日本のレースはまだそこまでの設定はないので、ほぼリジッドで行きます。IsoSpeedが搭載されたことでシートチューブがしなってくれます。リアサスほどではないですが、振動吸収性とコーナーでの粘りを生じてくれるので確実に速く走れます。オールマイティーに使えるので気に入ってます」。
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フロントサスペンションはFOXの電子制御サス。XTRのDi2も搭載し、モードを切り替えながら使用。完全電子化している。チェーンリングにはフロントシングルを採用するが、フロントギアにはチェーン脱落防止のためのチェーンガードを取り付ける。これは激しいライディングでチェーンが落ちることを予防するため、シマノの了承を取り付けて装着している「保険」だと言う。
グリップはロンドンオリンピックのライダーで装着率40%を誇ったESIのRacer's Edge Gripを使用。シリコン製で掌にフィットし、ショックを和らげてくれるという。全日本、そしてアジアチャンピオンとして、9月の世界選手権、さらにはワールドカップと、このバイクでの活躍を期待したい。
沢田 時(ブリヂストンアンカー) アンカーXR9
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男子U23を3連覇した沢田時が駆るのはアンカーXR9。今季のアンカーはレーシングモデルすべてに650Bサイズを採用している。日本人に合っているからという理由だ。「プロトタイプなどで29インチに乗ったことはありますが、自分は650Bの方が合ってます」と話す。
FサスはSRサンツアーがアンカーの選手に供給するAXON。カーボンコラムだが海外遠征の際に選手自らメンテしてトラブルの少ないアルミコラムを用意してもらっている。ステムやハンドルはPRO。タイヤは選手の好みに応じて自由に使いたいため、チームはスポンサードをあえて受けていない。沢田はこの日はシュワルベROCKET RONを選んでいた。
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「5月のCupe du Japon富士見大会の後、ポジションを見直したら、すごく感覚が良くなりました。また、コンポをDi2にしてからチェーン落ちが無くなったんです。それまでは毎年1回はレース中にチェーン落ちして悔しい結果になっていたので、これは頼もしいです」と、Di2化には大満足の様子だった。
末政実緒(SRAM/LITEC) LITEC HASSO T-29
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ダウンヒルとクロスカントリーの2冠を達成した末政選手が使うのはLITECのHASSO T-29。カーボン全盛の時代にあえてチタンフレームという選択だ。しかもスラロームバイクのようなポジションが目を引く。
「どちらかと言うとフリーライド系のフレームです。重量は軽くないんですけど、ダウンヒルが得意な自分の走りに合ったフレームです」。サスはロックショックス、ホイールはスラムと、サポートを受けるダートフリークのサプライ品を使用する。タイヤはIRC MIBROペダルはMAVICだ。
ポイントは可変シートポストとフロントシングルギア。「下りでシートポストを下げることで得意な下りでのアドバンテージを伸ばすのが狙いです。フロントシングルにしたのはギアシフトがひとつで済むから。歯数は28Tで、リアのロー側を42Tにしていますので、これで全てカバーできます」。ダウンヒル女王ならではの選択だ。
竹谷賢二(スペシャライズド・ジャパン) スペシャライズド S-Works Epic Carbon 29 2016モデル
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男子マスターズで優勝した竹谷賢二は、言わずとしれた4度の全日本チャンピオンを経験したXC界のレジェンド。今はマスターズとしてレースを真剣に楽しむ、スペシャライズド契約ライダー&アドバイザーだ。
その竹谷選手が使ったのは、まだ発売されていない2016年モデル(!)「クロスカントリー向け前後サスモデルでは Epic WorldCup がトップモデルなんですけど、これはそれに次ぐモデルになります」とのこと。
フロントギアはダブルを選び、サスペンションストロークとホイールベースを若干長めにして安定志向にしているそうだが、「ワールドカップから乗り替えても違和感がないくらいレーシーに仕上がっています。これなら使えるな、と感じて昨日セッティングして今日のレースに使いました。ペダルとステム以外は実際に販売される仕様のままです」と話す。発売前モデルというだけでも驚くが、それを受け取って即レースに使ってしまうのはさすがの機材適応力だ。
平林安里(WESTBERG/ProRide J) スペシャライズド・スタンプジャンパー HT Carbon
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ジュニアで連覇した平林選手が使うのはスペシャライズドのスタンプジャンパー HTカーボン。フロントはシングル。ペダルにはクランクブラザーズのキャンディを使用。多くは市販のS-WORKS仕様だが、ポイントは可変シートポストだという。
「技術的にまだ未熟な部分があるので、乗り降りが少しでも素早く出来るようにするためと、下りでサドルを下げて安定させるためです」と話す。塩ビパイプを貼り付けて、必要以上に下がらないような工夫をしています。「目標は世界一になること」と話す平林選手の今後に期待しよう。
北林 力(WESTBERG/ProRide J) モンドレイカー Podium Pro SL
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男子ユースで優勝した北林力が使用するのは、モンドレイカー(MONDRAKER)のPodium Pro SL。国内ではマムアンドポップスが取り扱いを始めた新進気鋭のスペインブランドだ。奇抜な形状のフレームが目を引くが、ライダーの重心を最適化するジオメトリーで設計された結果であり、乗ってみると体重移動の必要が減り、理にかなっていることを体感できる設計だという。
北林のこだわりはFOXのサスペンションフォークと、シマノのダウンヒル用コンポ「SAINT」のブレーキキャリパーだ。「今日はロックセクションで少し手こずったけれど、この組み合わせのおかげで走れました。特にFOXのサスペンションフォークは小さなギャップもいなしてくれるのでとても気に入ってます」と話す。「来年はジュニアになりますが、これまでと同様に勝てるようになりたい」と抱負を語ってくれた。
佐藤寿美(TEAM BG8 A) ジャイアントXTC
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女子ジュニアで優勝した佐藤寿美は、ユースで優勝した山田選手と同じ北海道からの参戦。愛車はジャイアントXTCの29インチモデルだ。現在ジャイアントはすべてのMTBを650B化したので、旧モデルということ。
「フレームはU23の選手に譲ってもらって、パーツはチームの監督やコーチに相談して揃えました」とのこと。アルペンスキーもやっているそうで、「スキーとMTBはコーナーリングの重心のかけ方など似ている部分があるので、両方に役立つ」と話す。小柄な体格に合わせてポジションを出すために短いステムを使っている一方、ハンドル幅はコーナリングで安定させるために広めの物を使うのがこだわり。「スキーのターンと似た感覚になるので、この方が合ってます」。
山田夕貴(TEAM BG8 A) キャノンデール F-SI CARBON TEAM
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女子ユースで優勝した山田夕貴は北海道から参戦。「最初は小林あか里選手との差があまり離れなくてあせったんですけど、徐々に開いたのでその後は慎重に走りました」とレースを振り返ってくれた。山田選手が使うのはキャノンデールのF-SI CARBON TEAM。「フロントギアを30Tに変えてますが、それ以外は購入したままです」とのこと。「中学2年の時からキャノンデールのレフティーを使っていて、これ以外は乗れないってくらい気に入ってます」と話す。
photo&text:Satoru.Kato
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