チプレッサとポッジオの攻防を切り抜けた26名の集団が雨上がりのローマ通りに到着。ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)が先行するディフェンディングチャンピオンを抜き去った。26歳のジャーマンスプリンターが、再びフィニッシュで涙を浮かべた。



雨の平坦路でプロトンが縦に伸びる雨の平坦路でプロトンが縦に伸びる photo:Tim de Waele


ミラノ〜サンレモ2015ミラノ〜サンレモ2015 image:RCS SPORTまるでミラノ〜サンレモが悪天候と切っては切れない関係にあると思わせるような、「ラ・プリマヴェーラ(春)」のイメージとは程遠い雨。第106回大会に挑んだ選手たちは、スタート地ミラノからリグーリア海岸まで、293kmレースの大半を雨に濡れて走った。

逃げるマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)ら11名逃げるマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)ら11名 photo:Tim de Waeleレース時間が7時間近くに達する世界最長のワンデークラシック。そのうち最初の6時間はマーティン・チャリンギ(オランダ、ロットNLユンボ)やセルジュ・パウエルス(ベルギー、MTNキュベカ)、マッテーオ・ボノ(イタリア、ランプレ・メリダ)ら11名が先行する展開に。大所帯の逃げグループのリードは10分を超えたが、メイン集団には問題なかった。

チプレッサで飛び出したグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)チプレッサで飛び出したグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waele広大なロンバルディア平原を抜け、大会最高地点であるトゥルキーノ峠からダイナミックにリグーリア海岸まで下る頃にはタイム差が5分前後に落ち着く。しかし早めに逃げを吸収してしまう意図はなく、集団先頭のカチューシャとトレックファクトリーレーシング、ティンコフ・サクソが淡々とタイム差を削り続けた。

雨に濡れたコーナーが落車を誘発する雨に濡れたコーナーが落車を誘発する photo:Tim de Waele雨が上がり、選手たちが忙しくニーウォーマーやシューズカバーを外し始める頃、エティックス・クイックステップが集団のペースアップを開始する。残り40kmを切ってタイム差が2分を割り込むと逃げグループは分裂した。

チプレッサ手前に位置する短いカーポベルタの登りで今度はチームスカイが人数を揃えてペースを上げたものの、下り区間で4番手を走っていたサルヴァトーレ・プッチオ(イタリア、チームスカイ)が落車してしまう。プッチオの落車は後方を走る選手を巻き込んだため、前を走るルーク・ロウ(イギリス)、ゲラント・トーマス(イギリス)、ベン・スウィフト(イギリス)の3人が先行する形となった。

残り30kmを切って先頭ではボノが独走でチプレッサ(距離5.65km/平均4.1%/最大9%)に突入。ロウ、トーマス、スウィフトのチームスカイトリオがすぐ後方に迫ったものの、同様にメイン集団も追い上げる。

新たに逃げの展開を作りたいBMCレーシングがアタックの口火を切り、シルヴァン・ディリエル(スイス)とグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー)が登りでアタックを仕掛けるとゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)が反応。フレッシュなこれらのアタックによって、チームスカイの3人も、先頭ボノもチプレッサで吸収された。ここからさらにレースは加速していく。



雨のリグーリア海沿いを走る雨のリグーリア海沿いを走る photo:Tim de Waele
先行するダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)とゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)先行するダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)とゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleパオリーニに引かれてポッジオを登るアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)パオリーニに引かれてポッジオを登るアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Tim de Waele

ポッジオでアタックするフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)ポッジオでアタックするフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waele


平坦区間でアタックを仕掛けるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)平坦区間でアタックを仕掛けるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleチームスカイやトレックファクトリーレーシングの積極的なプッシュによってアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)やナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)が集団後方で苦しむ姿も見られたが、完全に千切れる事なくチプレッサをクリアした。

スプリントを繰り広げるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)らスプリントを繰り広げるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)ら photo:Tim de Waeleチプレッサとポッジオを繋ぐ平坦区間で今度はダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)がアタックするとトーマスが反応。30秒先行した強力な2人を、カチューシャとトレックファクトリーレーシングが牽引する60名ほどの集団が追いかける。

フィニッシュラインで両手をあげるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)フィニッシュラインで両手をあげるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waele西陽が差し込み、バイクとライダーの長い影が乾き始めたアスファルトに伸びる。残り10kmを切り、オスとトーマスは15秒リードでポッジオ(距離3.7km/平均3.7%/最大8%)へ。一方、集団ではクリストフのためにルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)がペースメイク。アタックを許さず、かつクリストフが遅れない絶妙なペースでエーススプリンターを頂上まで導いた。

遅れてフィニッシュするミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)ら遅れてフィニッシュするミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)ら photo:Tim de Waele当然パンチャーやクライマーはポッジオで黙っているわけではなく、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)、スティバル、ファンアフェルマート、オスカル・ガット(イタリア、アンドローニジョカトリ)らが痺れを切らしてアタック。

続いて優勝候補のペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)やファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)らが飛び出したものの、決定的なリードは奪えないままポッジオ頂上に到達した。

独走に持ち込んだトーマスから数秒遅れでファンアフェルマートを先頭にメイン集団はテクニカルなダウンヒルに差し掛かる。まだ湿りを残す路面でスティバルやジルベール、ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)、ゲラルド・チオレック(ドイツ、MTNキュベカ)が落車し、怒りと失望の表情を浮かべながらサバイバルレースから脱落する。

安全にポッジオを下りきり、サンレモの街に差し掛かったのは26名の小集団だった。

残り1kmからパオリーニのリードアウトが始まり、厳しいマークを受けるクリストフが先頭でスプリントを開始する。300km近く走ってなお伸びるクリストフのスプリント。しかしいつもより長めのスプリントは徐々に勢いを失う。後方から、デゲンコルブが飛んできた。

「早めに仕掛けたアレックス(クリストフ)には、残り50mの時点で届かないと思ったものの、自分を信じて踏み続けた。その時点ではスピードとパワーで負けていた。でもフィニッシュライン直前で彼が失速し、自分が先着した」。ローマ通りのど真ん中でフィニッシュラインを切ったデゲンコルブはスプリントをそう振り返った。

ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ通算5勝、ジロ・デ・イタリアでステージ1勝、そしてヘント〜ウェヴェルヘムやパリ〜トゥール、ヴァッテンフォール・サイクラシックスで優勝している26歳が初の「モニュメント(5大クラシック)」制覇。「信じられない気持ちで、心の底から感情が溢れ出してきた。昨年、キャリア最大の失望(39位・1分54秒遅れ)を味わって涙を流したレースで、再び泣いてしまった」。クリストフとマシューズを脇に、表彰台の真ん中に立ったデゲンコルブは大粒の涙を流した。

ドイツ人選手の優勝はルディ・アルティヒ(1968年)、エリック・ツァベル(1997、1998、2000、2001年)、ゲラルド・チオレック(2013年)に続く史上4人目。シマノ・メモリーコープの伝統を引き継ぐジャイアント・アルペシンにとっては初の「モニュメント」制覇だ。

選手コメントを後ほどまとめてアップします。



ミラノ〜サンレモ2015表彰台ミラノ〜サンレモ2015表彰台 photo:Tim de Waele


ミラノ〜サンレモ2015結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)       6h46’16”
2位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
3位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
5位 ニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、ランプレ・メリダ)
6位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
7位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)
8位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)
9位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)
10位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)
11位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)
12位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、ティンコフ・サクソ)
13位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
14位 セバスティアン・ラングフェルド(オランダ、キャノンデール・ガーミン)
15位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)
16位 グレガ・ボーレ(スロベニア、CCCスプランディポルコウィチェ)
17位 ポール・マルテンス(ドイツ、ロットNLユンボ)
18位 ソニー・コルブレッリ(イタリア、バルディアーニCSF)
19位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
20位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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