劇的なクライマックスとなったドワルス・ドール・フラーンデレン。フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)が残り150m地点でワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)を捉え、自身初のワンデーレース勝利を飾った。



昨年2位だったワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

ロンド・ファン・フラーンデレンを4日後に控えた4月1日、ベルギー北西部フランドル地方でドワルス・ドール・フラーンデレン(UCIワールドツアー)が行われた。1945年の初開催から今年80回目を迎えたセミクラシックは、合計19箇所の急坂や石畳、あるいはその両方を含む区間が登場。ロンドほどの難易度はないものの、その大一番に向かう有力選手が多数出場した。

2月に膝の手術を受けた前回覇者、ニールソン・パウレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)が欠場したレースには、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)も不出場。一方でヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)が参戦し、他にもワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)やマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)など豪華メンバーが揃った。

レースは序盤からハイペースで進んだ photo:CorVos

レースはスタート直後からハイペースで進み、絶え間ないアタックの末、75km地点でようやく逃げが決まる。18名の先頭グループにはピーダスンが入り、ヴィスマ・リースアバイクはクリストフ・ラポルト(フランス)とエーススプリンターであるマシュー・ブレナン(イギリス)を送り込む強力な布陣を敷いた。しかしこの動きを逃したイネオス・グレナディアーズやアルペシン・プレミアテックがメイン集団を高速牽引したため、残り85km地点で逃げは吸収され、レースは振り出しに戻った。

ここから、レース前半はプロトンで脚を溜めていたファンアールトが積極的に動く。しかし人数が絞られたプロトンに引き戻され、その後もアタックと吸収が続く。登坂距離1.2kmの最難関の登りであるアイケンベルクを前に、ロマン・グレゴワール(フランス、グルパマFDJユナイテッド)ら3名が先頭に立つ。その18秒後方のプロトンからはファンアールトが飛び出す一方、その後方ではフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)がメカトラでバイク交換を強いられた。

先頭2名に追いついたワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

先頭3名から遅れたトマ・ガシニャール(フランス、トタルエネルジー)と入れ替わるように、ファンアールトは先頭集団に合流。その頃、ガンナは2度目のバイク交換によってさらに遅れる。残り22km地点ではグレゴワールが遅れ、レース先頭はファンアールトとニクラス・ラーセン(デンマーク、ユニベット・ローズ・ロケッツ)の2名に絞られた。

この時点で40秒差をつけられたプロトンは、スーダル・クイックステップらの牽引によって第1追走集団を引き戻し、先頭2名との差を徐々に縮めていく。レース最後の登り区間を前にラーセンが遅れ、単独先頭に立ったファンアールトは顔を歪めながら最後の石畳区間を終え、それでも15秒前後のリードを何とか保つ。プロトンからの散発的なアタックはどれも決まらなかったものの、残り3km地点でフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)とフロリアン・フェルミールス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)が仕掛け、集団を抜け出すことに成功した。

単独先頭に立ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

元タイムトライアルの世界選手権覇者と現グラベル世界王者によるコンビは、背後に迫るプロトンを感じながらも、視界にファンアールトを捉える。残り1kmバナーを通過し、ファンアールトは最終ストレートに突入。しかしフェルミールスが遅れ、こちらも単騎となったガンナが迫ると、フィニッシュ手前で力尽きたファンアールトに追いつく。そして間髪入れず前に出たガンナが、そのままガッツポーズでフィニッシュした。

ファンアールトをフィニッシュ手前で抜き、劇的勝利したフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

急坂や石畳を越えながら平均時速48.483kmは過去最速。そして2度のメカトラに見舞われながらも、劇的な展開からワンデーレース初勝利を手にしたガンナ。「チームメイトの素晴らしい走りに勝利で応えたかった。ワウトを捕まえるのは簡単なことではなかったが、自分の脚が踏ん張ってくれた。勝てると思い始めたのは最終コーナー。猛スピードで迫る集団も感じていたが、なんとか勝てた。自転車競技の本場ベルギーで勝てて本当に嬉しいよ」と喜んだ。

一方、2年連続での2位に甘んじたファンアールトは「ラスト30分は本気で勝てると思っていた。しかし残り150mでそれが手からこぼれ落ちてしまった。最後は自分の走りだけに集中し、後ろはほとんど振り向かなかった。だがラスト150mが長すぎた」と敗者の弁。4日後のロンドでこの悔しさの払拭を目指す。

ドワルス・ドールで初優勝を飾ったフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
ドワルス・ドール・フラーンデレン2026結果
1位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) 3:48:27
2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)
3位 ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)
4位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム)
5位 ローレンス・ピシー(ニュージーランド、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
6位 オールイス・アウラール(ベネズエラ、モビスター)
7位 クリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)
8位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)
9位 フィト・ブラーツ(ベルギー、ロット・アンテルマルシェ)
10位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos