2014/11/08(土) - 12:15
10月31日から11月2日にかけて香港の新ベロドロームを舞台として国際トラックレースが開催され、安田京介(京都産業大)と新村穣(法政大)が参加した。随行した京都産業大学自転車競技部・秋田謙監督によるレポートをお送りします。
香港の新設ベロドロームで開催された3日間の国際レース
10月31日に香港国際トラッククラシック、11月1・2日の2日間で第2回ケーブルテレビ香港国際トラックカップが行われ,参加してきました。
2013年香港についぞ250mの板張りバンクが出来上がり、その最初の大きなイベントが2014年1月に行われた香港トラッククラシックであり第1回トラックカップ。今回の大会はその第2回にあたるものです。
早い段階で大会の開催は決定し、選手の募集も行っていたのですが、翌週からメキシコでトラックワールドカップ第1戦が始まってしまうので各国2軍選手の派遣を見合わせてしまいました。1クラス開催のためには最低でも5か国の選手を集めなくてはなりません。さらに参加人数も予定を大きく下回ってしまったため追加募集が発表され、枠があるなら出てみたい、海外のトラックレースを見てみたいという好奇心も手伝ってエントリーに踏み切りました。
今年の1月、ジャパントラックカップというレースが日本でも密かに開催されていました。僕はそれを京都から当時まだ高校生だった安田京介と2人で観戦に行っていました。
250mバンクを優雅に駆け抜ける香港のスピードスター、チェン・キンロー選手にレン・チュンウィン選手。僕は彼らのその走りに魅入ってしまいました。レン・チュンウィン選手はジュニアのポイントレース世界チャンピオン。香港はここ数年で世界選手権で4勝しています。この数字は驚異的で、アジアの中では香港が群を抜いているのではないでしょうか?
僕が自転車レースで香港を訪れるのはこれが2回目で、前回は今は無き大会『ツアーオブ香港ー上海』というレースでした。アジアのツールドフランスを目指すと勢いよく開催された同大会は3回程でなくなったのではないでしょうか?その第1回大会を当時愛三工業のメンバーとして走らせてもらい、団体総合を手にし日本に帰ったのを思い出します。
融通の利かなそうな香港の道路事情下でのレースはクリテリウムが2回行われただけでしたが、今思うとクリテリウムとトラックレースという、比較的場所を取らずなおかつ観客が生で見て楽しめるレースというのは、エンターテイメント的な視点から、今後日本のレース界の進まなければならない方向性の一つを示してくれているような気もします。
今回の参加国はオーストラリア・中国・台湾・日本・マレーシア・タイ・スペイン・スイスに地元香港。一見多そうに見えるのですが男女に分かれさらにジュニアとエリートに分かれるとなると、本当に少ない人数での戦いになります。
今回現地にいる日本人は国際審判の菊池氏、法政大学の新村穣選手とサポートとして白崎氏、そして京都産業大学から安田京介選手と私の5名。滞在先はヴェロドロームから歩いて15分のホリデイイン。ホテルの地下には繁華街へとつながる地下鉄が出入りし、1階2階フロアは高級ブランドショップも軒を連ねるショッピングセンターになっており、何一つ不自由しない素晴らしい環境でした。
香港は季節がら10月11月が過ごしやすいらしく、日中は少しばかり日差しが照り付けるものの、朝晩は涼やかな風が吹きとても心地よかったです。
ベロドロームは40階建てのマンション20棟程に囲まれた街中の運動公園にあり、地下鉄の駅から徒歩10分の好立地。駅からベロドロームまでにはサイクリングロードが設けられており、サイクリングロード同士の交差点があるほど整備が進んでいる様でした。
ドーム内には自転車屋さんがあり、海外から来た我々に補充したいパーツが出てきた際には便利すぎるといってもいいくらいの施設でした。フィールド以外にもチーム毎に控室が用意されていたのですが、各控室にシャワー・トイレ・ロッカーがあり、施錠を前提としているので荷物をすべて置いておけるのでとても助かりました。ベロドローム内は太陽光を取り入れない構造になっており、照明が眩しすぎるくらいで伊豆よりも明るかったです。走路幅が7.0mと伊豆より50cm狭いらしく、かけおろしに注意が必要だと新村選手が注意を払っていたのが印象的でした。
新村穣がスクラッチレースで2位に
新村選手と安田選手のエントリーは3日間でスクラッチ2回とポイントレース1回、それにオムニアムという過剰なものでした。雰囲気的には参加人数が少ないので、場を盛り上げるために出場レースを増やす方向でライセンスコントロール時に調整が入りました。国外のトラックレースに初めての出場なので他は知らないのですが、このようなアットーム的な空気はとてもやりやすかったです。
香港チームのレン・チュンウィン選手、チェン・キンロー選手とチェン・キンウェイ選手らが圧倒的な力で支配しましたが、それでも西オーストラリアチームや新村選手はひるむことなく一矢報いていました。特に新村選手はスクラッチでレン・チュンウィン選手に先着する2位という好成績を収め、レース後には香港の女の子に大人気でした。京都産業大の安田選手は1km1分8秒、4km4分45秒がパーソナルレコードでしたが、今回は全く力を発揮できず課題だけが残る参加となってしまいました。
メインイベントと言っていいオムニアムは、先に行われたヨーロッパ選手権で5位に入っているスイスのゲール・シューター選手が最終のポイントレースまで首位をキープし、地元の応援団をハラハラさせましたが、チェン・キンロー選手がレン・チュンウィン選手との連携とそのフィジカルの高さで逆転に成功し、応援団から惜しみない拍手をもらっていました。レース後観客席の母親と抱き合い勝利を喜ぶ姿は、見ているこちらまで目頭が熱くなりました。
今回ジュニアのレースが好印象で、競技レベルは決して高くないのですが、日本の高校生とはまた違った伸びやかな走りに思えました。インターハイまでに急造しなければならない日本の国内事情が、伸び盛りの高校生の走りを多少窮屈なものにしているのかもしれないと感じます。
ただでさえ忙しく責任が重い高校の顧問の先生にコレをいうのは酷だとは思いますが、ジュニアの選手にこそ外の世界を見てもらいたく思います。またインカレ至上主義には賛成ですが、他大学の強力な選手を抱える監督方にもこのような大会にぜひチャレンジしてみて欲しいとも思いました。
今回このレースに参加させていただけて自分にも少し余裕が出てきたので、次回このような場がいただけるならば参加者を募り多くの選手に国外での国際レースを体験してもらい、ぜひ後の競技生活の糧として欲しく思います。
最後になりましたが今大会に参加するにあたり尽力頂いた全ての方々に感謝申し上げます。
京都産業大学体育会自転車競技部
監督 秋田 謙
photo:Koki Shirasaki/JCF
香港の新設ベロドロームで開催された3日間の国際レース
10月31日に香港国際トラッククラシック、11月1・2日の2日間で第2回ケーブルテレビ香港国際トラックカップが行われ,参加してきました。
2013年香港についぞ250mの板張りバンクが出来上がり、その最初の大きなイベントが2014年1月に行われた香港トラッククラシックであり第1回トラックカップ。今回の大会はその第2回にあたるものです。
早い段階で大会の開催は決定し、選手の募集も行っていたのですが、翌週からメキシコでトラックワールドカップ第1戦が始まってしまうので各国2軍選手の派遣を見合わせてしまいました。1クラス開催のためには最低でも5か国の選手を集めなくてはなりません。さらに参加人数も予定を大きく下回ってしまったため追加募集が発表され、枠があるなら出てみたい、海外のトラックレースを見てみたいという好奇心も手伝ってエントリーに踏み切りました。
今年の1月、ジャパントラックカップというレースが日本でも密かに開催されていました。僕はそれを京都から当時まだ高校生だった安田京介と2人で観戦に行っていました。
250mバンクを優雅に駆け抜ける香港のスピードスター、チェン・キンロー選手にレン・チュンウィン選手。僕は彼らのその走りに魅入ってしまいました。レン・チュンウィン選手はジュニアのポイントレース世界チャンピオン。香港はここ数年で世界選手権で4勝しています。この数字は驚異的で、アジアの中では香港が群を抜いているのではないでしょうか?
僕が自転車レースで香港を訪れるのはこれが2回目で、前回は今は無き大会『ツアーオブ香港ー上海』というレースでした。アジアのツールドフランスを目指すと勢いよく開催された同大会は3回程でなくなったのではないでしょうか?その第1回大会を当時愛三工業のメンバーとして走らせてもらい、団体総合を手にし日本に帰ったのを思い出します。
融通の利かなそうな香港の道路事情下でのレースはクリテリウムが2回行われただけでしたが、今思うとクリテリウムとトラックレースという、比較的場所を取らずなおかつ観客が生で見て楽しめるレースというのは、エンターテイメント的な視点から、今後日本のレース界の進まなければならない方向性の一つを示してくれているような気もします。
今回の参加国はオーストラリア・中国・台湾・日本・マレーシア・タイ・スペイン・スイスに地元香港。一見多そうに見えるのですが男女に分かれさらにジュニアとエリートに分かれるとなると、本当に少ない人数での戦いになります。
今回現地にいる日本人は国際審判の菊池氏、法政大学の新村穣選手とサポートとして白崎氏、そして京都産業大学から安田京介選手と私の5名。滞在先はヴェロドロームから歩いて15分のホリデイイン。ホテルの地下には繁華街へとつながる地下鉄が出入りし、1階2階フロアは高級ブランドショップも軒を連ねるショッピングセンターになっており、何一つ不自由しない素晴らしい環境でした。
香港は季節がら10月11月が過ごしやすいらしく、日中は少しばかり日差しが照り付けるものの、朝晩は涼やかな風が吹きとても心地よかったです。
ベロドロームは40階建てのマンション20棟程に囲まれた街中の運動公園にあり、地下鉄の駅から徒歩10分の好立地。駅からベロドロームまでにはサイクリングロードが設けられており、サイクリングロード同士の交差点があるほど整備が進んでいる様でした。
ドーム内には自転車屋さんがあり、海外から来た我々に補充したいパーツが出てきた際には便利すぎるといってもいいくらいの施設でした。フィールド以外にもチーム毎に控室が用意されていたのですが、各控室にシャワー・トイレ・ロッカーがあり、施錠を前提としているので荷物をすべて置いておけるのでとても助かりました。ベロドローム内は太陽光を取り入れない構造になっており、照明が眩しすぎるくらいで伊豆よりも明るかったです。走路幅が7.0mと伊豆より50cm狭いらしく、かけおろしに注意が必要だと新村選手が注意を払っていたのが印象的でした。
新村穣がスクラッチレースで2位に
新村選手と安田選手のエントリーは3日間でスクラッチ2回とポイントレース1回、それにオムニアムという過剰なものでした。雰囲気的には参加人数が少ないので、場を盛り上げるために出場レースを増やす方向でライセンスコントロール時に調整が入りました。国外のトラックレースに初めての出場なので他は知らないのですが、このようなアットーム的な空気はとてもやりやすかったです。
香港チームのレン・チュンウィン選手、チェン・キンロー選手とチェン・キンウェイ選手らが圧倒的な力で支配しましたが、それでも西オーストラリアチームや新村選手はひるむことなく一矢報いていました。特に新村選手はスクラッチでレン・チュンウィン選手に先着する2位という好成績を収め、レース後には香港の女の子に大人気でした。京都産業大の安田選手は1km1分8秒、4km4分45秒がパーソナルレコードでしたが、今回は全く力を発揮できず課題だけが残る参加となってしまいました。
メインイベントと言っていいオムニアムは、先に行われたヨーロッパ選手権で5位に入っているスイスのゲール・シューター選手が最終のポイントレースまで首位をキープし、地元の応援団をハラハラさせましたが、チェン・キンロー選手がレン・チュンウィン選手との連携とそのフィジカルの高さで逆転に成功し、応援団から惜しみない拍手をもらっていました。レース後観客席の母親と抱き合い勝利を喜ぶ姿は、見ているこちらまで目頭が熱くなりました。
今回ジュニアのレースが好印象で、競技レベルは決して高くないのですが、日本の高校生とはまた違った伸びやかな走りに思えました。インターハイまでに急造しなければならない日本の国内事情が、伸び盛りの高校生の走りを多少窮屈なものにしているのかもしれないと感じます。
ただでさえ忙しく責任が重い高校の顧問の先生にコレをいうのは酷だとは思いますが、ジュニアの選手にこそ外の世界を見てもらいたく思います。またインカレ至上主義には賛成ですが、他大学の強力な選手を抱える監督方にもこのような大会にぜひチャレンジしてみて欲しいとも思いました。
今回このレースに参加させていただけて自分にも少し余裕が出てきたので、次回このような場がいただけるならば参加者を募り多くの選手に国外での国際レースを体験してもらい、ぜひ後の競技生活の糧として欲しく思います。
最後になりましたが今大会に参加するにあたり尽力頂いた全ての方々に感謝申し上げます。
京都産業大学体育会自転車競技部
監督 秋田 謙
photo:Koki Shirasaki/JCF
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