2014/10/03(金) - 19:19
東京で新しいレースシリーズが始まった。「東京ワンダーレース」、その開幕イベントとして開催された「Tokyo BANKS(東京バンクス)」は、立川競輪場をロードバイクで走るトラック競技の入門レースだ。
9月23日、祝日の火曜日に立川競輪場を会場に、ロードレーサー限定のトラックレースとして開催された東京バンクス。競輪場をロードレーサーで走れるメリットを活かし、レース初心者でも参加しやすいタイムトライアル種目中心のレースとして企画された。
東京ワンダーレースの企画・主催者である「BCクリエイト」は、今季誕生した東京多摩地区の地域密着型チーム「東京ヴェントス」の運営会社でもある。レースの発起人である代表の二戸康寛氏は、かつて日本鋪道(現NIPPO)やなるしまフレンドなどで走り、日本トップクラスのロードレーサーとして活躍した人物としておなじみだ。
その二戸氏が「シリアスレーサーからビギナーサイクリストまで、誰もが気軽に参加できるレースをつくりたい」との考えから、東京西部・立川市周辺を中心に様々なレースイベントを企画した。その第一弾が今回の東京バンクスだ。
「バンクのレースがどんなものか体験してほしい」という意図から用意された種目は次の通り。200mロケット、600m速度競争、1000mタイムトライアル、サバイバルレース、チーム種目の4000・2000mのチームタイムトライアル、そして体験型種目としてのトライ・ザ・ローテーション。個人種目は最低3種目にエントリーすることができて、子どもたちのためのキッズクラスも用意された。
トラックをロードレーサーで走るうえで、いくつかのルールが決められた。まず走路を靴底のクリートなどで痛めないようにすること。競輪場の好意で走らせてもらえる走路を傷めないようにするのはマナーであると同時に、傷つけた際の補修費は高額になるためだ。
レース中に必ず守らなくてはいけないこととして、脚を急に止めないこと、急なブレーキを掛けないこと、そしてベルやライト、ボトル、フレームポンプなど不要なものは自転車から取り外すこと、携帯電話等をポケットに入れないこと、カメラ等をヘルメット等に取り付けないことなどが呼びかけられた。これらはもちろん危険を防ぐためのものだ。
そしてピスト車と同様に走るため、走行中のギア変速とブレーキ操作は禁止。これは選手同士でスピード差が生じると接触の危険があるためだ。そして「追い抜くときは必ず右側から」というのがトラックレースでの基本中の基本だ。
この日参加したのは、関東一円から個人参加104名、チーム参加6チーム。ロードレーサーでトラックを走れるイベントの前例はJCRCの「トライ・ザ・バンク」(大宮競輪場で開催)などがあるが、参加者のほとんどがトラック走行初体験という状況だった。参加の動機を訊けば「面白そうだから」という声がほとんど。全員が3レース以上を走れる。勝ち上がれば一日に何度も走る番が回ってくるというプログラムだ。
この日、東京ヴェントスの選手たちや競輪選手たちがお手本としてのエキシビジョン走行を披露し、走行スタッフとしても協力してくれた。
立川競輪場は一周400mのバンクだ。現在のUCI国際基準の250mバンク(伊豆ベロドロームはこの基準)に比べると勾配は緩やかで、走りやすい。最近のロードバイクのハンガー下がりは高くなっていること、ペダルがコンパクトになっていることからペダルを擦っての落車はほとんど起こらないという安心感がある。
朝いちばんのレースは「200mロケット」。スタートして半周のタイムを測る短距離走だ。シュースをペダルにバインディングした状態でホルダー(選手の後方から支える人)がライダーの身体を支え、スタート。全開ダッシュでいかにトップスピードに持っていけるかがカギだ。
全種目ルールで変速・ブレーキ禁止ということで、参加者は52×17T、50×15Tなどにギアを決めて固定。上半身の力もフルに使ってペダルをプッシュするのだ。なれないうちは力みすぎてふらついてしまうが、うまい人ほど自転車も身体も左右にブレずにスピードを上げていく。
1000mタイムトライアルでは1分15秒のタイムが出れば速い。12秒が出せればすごいと言える領域だが、この日の優勝タイムは1分11秒11で、ロードレーサーとしては驚きのタイム。
600m速度競争は、トラックを1周半・600メートルで着順を競うスプリントレース。5名1組で出走し、上位2名が次のラウンドへ進める勝ち抜け戦だ。競り合いがあるためロードレースの経験があることが前提。1位か2位でフィニッシュすれば勝ち上がることができ、4戦勝ち抜きで決勝する。つまり最高4回は走れる(各レースは時間をおいてスタートする)。
「サバイバルレース」は東京バンクスのオリジナル種目だ。全11周・4400m の生き残りでレースで、1組約20名でペーサーについてスタート。偶数周回はハイペース、奇数周回はスローペースを繰り返し、集団から脱落すると除外が宣告される。ペースの上げ下げが繰り返されるなか、回復力&スタミナと集団内を上がっていく脚力とテクニックが問われるレースだ。
2kmと4kmのチームTTは団体追い抜きのルールを取り入れた、チーム4人でのタイムトライアル。3人目のタイムが計測されるので、ひとりは切り捨てていいが3人目は生かさず殺さず、先頭交代しながらいかにハイペースで走るかがカギだ。
この日、集まった参加者に聞いてみると「トラックを走るのは初めて」と言う人がほとんどを占めていた。ほかに「走路が軽いので想像以上のスピードが出た」「コーナーはハンドルを切らなくても曲がるので驚いた」「思ったより怖くなく、スピードを出すことが楽しく感じられるのが新鮮だった」「トラックを走るのは面白い」などという声が聞かれた。
東京バンクスはトラックをロードレーサーで走れることが魅力だが、種目によりTTバイクでも出走が可能だ。独走種目ならDHバーも使うことができた。もちろんこれらの危険を減らすための決まりは、回を重ねて参加者のレベルが上がれば徐々に緩和されていく。トラック競技に目覚めたら、ピスト車を作りたくなるだろう。そして、縁遠かったピスト競技が身近なものになっていく。二戸さん曰く、イベントとしてのゴールもそこにあるとのこと。
好評のうちに終わった東京バンクス。「東京ワンダーレース」の第2回は11月開催で、「旬のレース」を企画中。開催場所交渉中のためまだ公表できない状態だが、場所の確約が取れれば発表があるという。また、年明け3月には立川市内の某公園において「面白いレース」が開催される予定だ。
photo&text:Makoto.AYANO
9月23日、祝日の火曜日に立川競輪場を会場に、ロードレーサー限定のトラックレースとして開催された東京バンクス。競輪場をロードレーサーで走れるメリットを活かし、レース初心者でも参加しやすいタイムトライアル種目中心のレースとして企画された。
東京ワンダーレースの企画・主催者である「BCクリエイト」は、今季誕生した東京多摩地区の地域密着型チーム「東京ヴェントス」の運営会社でもある。レースの発起人である代表の二戸康寛氏は、かつて日本鋪道(現NIPPO)やなるしまフレンドなどで走り、日本トップクラスのロードレーサーとして活躍した人物としておなじみだ。
その二戸氏が「シリアスレーサーからビギナーサイクリストまで、誰もが気軽に参加できるレースをつくりたい」との考えから、東京西部・立川市周辺を中心に様々なレースイベントを企画した。その第一弾が今回の東京バンクスだ。
「バンクのレースがどんなものか体験してほしい」という意図から用意された種目は次の通り。200mロケット、600m速度競争、1000mタイムトライアル、サバイバルレース、チーム種目の4000・2000mのチームタイムトライアル、そして体験型種目としてのトライ・ザ・ローテーション。個人種目は最低3種目にエントリーすることができて、子どもたちのためのキッズクラスも用意された。
トラックをロードレーサーで走るうえで、いくつかのルールが決められた。まず走路を靴底のクリートなどで痛めないようにすること。競輪場の好意で走らせてもらえる走路を傷めないようにするのはマナーであると同時に、傷つけた際の補修費は高額になるためだ。
レース中に必ず守らなくてはいけないこととして、脚を急に止めないこと、急なブレーキを掛けないこと、そしてベルやライト、ボトル、フレームポンプなど不要なものは自転車から取り外すこと、携帯電話等をポケットに入れないこと、カメラ等をヘルメット等に取り付けないことなどが呼びかけられた。これらはもちろん危険を防ぐためのものだ。
そしてピスト車と同様に走るため、走行中のギア変速とブレーキ操作は禁止。これは選手同士でスピード差が生じると接触の危険があるためだ。そして「追い抜くときは必ず右側から」というのがトラックレースでの基本中の基本だ。
この日参加したのは、関東一円から個人参加104名、チーム参加6チーム。ロードレーサーでトラックを走れるイベントの前例はJCRCの「トライ・ザ・バンク」(大宮競輪場で開催)などがあるが、参加者のほとんどがトラック走行初体験という状況だった。参加の動機を訊けば「面白そうだから」という声がほとんど。全員が3レース以上を走れる。勝ち上がれば一日に何度も走る番が回ってくるというプログラムだ。
この日、東京ヴェントスの選手たちや競輪選手たちがお手本としてのエキシビジョン走行を披露し、走行スタッフとしても協力してくれた。
立川競輪場は一周400mのバンクだ。現在のUCI国際基準の250mバンク(伊豆ベロドロームはこの基準)に比べると勾配は緩やかで、走りやすい。最近のロードバイクのハンガー下がりは高くなっていること、ペダルがコンパクトになっていることからペダルを擦っての落車はほとんど起こらないという安心感がある。
朝いちばんのレースは「200mロケット」。スタートして半周のタイムを測る短距離走だ。シュースをペダルにバインディングした状態でホルダー(選手の後方から支える人)がライダーの身体を支え、スタート。全開ダッシュでいかにトップスピードに持っていけるかがカギだ。
全種目ルールで変速・ブレーキ禁止ということで、参加者は52×17T、50×15Tなどにギアを決めて固定。上半身の力もフルに使ってペダルをプッシュするのだ。なれないうちは力みすぎてふらついてしまうが、うまい人ほど自転車も身体も左右にブレずにスピードを上げていく。
1000mタイムトライアルでは1分15秒のタイムが出れば速い。12秒が出せればすごいと言える領域だが、この日の優勝タイムは1分11秒11で、ロードレーサーとしては驚きのタイム。
600m速度競争は、トラックを1周半・600メートルで着順を競うスプリントレース。5名1組で出走し、上位2名が次のラウンドへ進める勝ち抜け戦だ。競り合いがあるためロードレースの経験があることが前提。1位か2位でフィニッシュすれば勝ち上がることができ、4戦勝ち抜きで決勝する。つまり最高4回は走れる(各レースは時間をおいてスタートする)。
「サバイバルレース」は東京バンクスのオリジナル種目だ。全11周・4400m の生き残りでレースで、1組約20名でペーサーについてスタート。偶数周回はハイペース、奇数周回はスローペースを繰り返し、集団から脱落すると除外が宣告される。ペースの上げ下げが繰り返されるなか、回復力&スタミナと集団内を上がっていく脚力とテクニックが問われるレースだ。
2kmと4kmのチームTTは団体追い抜きのルールを取り入れた、チーム4人でのタイムトライアル。3人目のタイムが計測されるので、ひとりは切り捨てていいが3人目は生かさず殺さず、先頭交代しながらいかにハイペースで走るかがカギだ。
この日、集まった参加者に聞いてみると「トラックを走るのは初めて」と言う人がほとんどを占めていた。ほかに「走路が軽いので想像以上のスピードが出た」「コーナーはハンドルを切らなくても曲がるので驚いた」「思ったより怖くなく、スピードを出すことが楽しく感じられるのが新鮮だった」「トラックを走るのは面白い」などという声が聞かれた。
東京バンクスはトラックをロードレーサーで走れることが魅力だが、種目によりTTバイクでも出走が可能だ。独走種目ならDHバーも使うことができた。もちろんこれらの危険を減らすための決まりは、回を重ねて参加者のレベルが上がれば徐々に緩和されていく。トラック競技に目覚めたら、ピスト車を作りたくなるだろう。そして、縁遠かったピスト競技が身近なものになっていく。二戸さん曰く、イベントとしてのゴールもそこにあるとのこと。
好評のうちに終わった東京バンクス。「東京ワンダーレース」の第2回は11月開催で、「旬のレース」を企画中。開催場所交渉中のためまだ公表できない状態だが、場所の確約が取れれば発表があるという。また、年明け3月には立川市内の某公園において「面白いレース」が開催される予定だ。
photo&text:Makoto.AYANO
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