2014/09/03(水) - 09:41
36.7kmのテクニカルコースを最速で駆け抜けたのはアルカンシェルを着るトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)だった。マイヨロホは骨折から復帰したばかりのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)に渡っている。
第69回大会に設定された個人タイムトライアルは2つ。1つ目がこの36.7kmの長距離TTで、2つ目が最終日の9.7km短距離TT。山岳ステージでタイムを失ったオールラウンダーたちがここで巻き返しを図る。
36.7kmコースは登りが1/3、下りが1/3、そして平坦が1/3。11km地点で高低差155mの3級山岳モンカヨ峠を越えると、細くてテクニカルなダウンヒルが待っている。
路面の大半はブエルタのために舗装されたアスファルトだが、決してスムーズとは言えない凸凹面。試走した選手が「リズムを掴みにくい」と口を揃え、中には軽量なノーマルバイクでスタートして3級山岳モンカヨ峠の頂上でTTバイクに乗り換える選手も。
同じ地域で行なわれた1年前の個人タイムトライアルで優勝したファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)が、チームメイトのジェシー・サージェント(ニュージーランド)を暫定トップタイムを塗り替える形でホットシートに。しかし世界TTチャンピオンがカンチェラーラを18秒も更新した。
36.7kmを平均46.8km/hで駆け抜けたマルティンが、総合上位陣を寄せ付けない47分02秒のタイムでステージ優勝。「今シーズン一番ハードなタイムトライアルだった。アップダウンがあって、コーナーが多くてテクニカルで、路面もバンピーで、集中力を切らすことが出来なかった。100%の走りとは言えず、ステージ優勝を確信出来なかった」と、苦しみながらの走りだったことを打ち明けるマルティン。今シーズン10勝目で、そのうち7勝が個人タイムトライアルによるものだ。
「世界選手権に向けて調子が上向きだと確認出来て良かったよ。自分にとってもウランにとっても良い一日になった」とマルティンは語る。チームメイトのリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)は序盤からマルティンに肉薄するタイムを連発し、後半の平坦区間で少しタイムを失いながらも15秒差のステージ2位に。オメガファーマ・クイックステップがワンツー勝利。ウランは総合9位から総合3位まで大幅に順位をアップさせた。
ウランと同様に総合上位陣の中で序盤から飛ばしたのはアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)やサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)だ。コンタドールは骨折からの復帰戦とは思えない走りでライバルを引き離す。
一方で厳しい闘いを強いられたのはクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)だった。マイヨロホを着る最終走者キンタナはまずまずのタイムで3級山岳モンカヨ峠をクリアしたが、その後の下りコーナーでオーバーラン。ガードレールに衝突し、前転する形で地面に投げ出された。
キンタナは駆けつけたチームスタッフに助けられて立ち上がり、1分以上かけて身体をチェックした後スペアバイクに跨がる。破れたマイヨロホを纏って再び走り出したが、破れたマイヨロホと苦しい表情が総合争いからの脱落を意味していた。
序盤からのハイペースを落とすことなく走り切ったコンタドールが、マルティンと39秒のステージ4位でフィニッシュ。4分07秒遅れのステージ82位に沈んだキンタナに代わって、コンタドールが総合首位に躍り出た。
「数週間前に『マイヨロホを狙う』なんて言っても笑われていたと思う。最初の1週間で自信をつけてこの個人TTに挑んだ。フルームと同じぐらいのタイムを予想していたので、結果は予想を遥かに上回っていた」とコンタドールは喜ぶ。7月のツール・ド・フランスで右脛骨を骨折した男がブエルタ・ア・エスパーニャの総合首位を走っている。
コンタドールと27秒差の総合2位につけるのは、キンタナに代わって再びモビスターの看板を背負うことになったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)。第10ステージを終えてコンタドール、バルベルデ、ウランの3人が総合タイム差1分以内だ。
クライマーながらステージ15位に入ったビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)が総合4位。そして「序盤に飛ばしすぎて登りで失速。そのまま最後までペースを取り戻すことが出来なかった」というフルームはコンタドールから53秒を失ったものの、総合5位のポジションはキープしている。
キンタナは3分25秒差の総合11位までダウン。失意のキンタナは「落車はロードレースに付き物。これからはアレハンドロ(バルベルデ)をサポートし、彼の総合優勝を狙うよ」とコメントしている。
選手コメントはレース公式リリースより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第10ステージ結果
マイヨロホ(個人総合成績)
マイヨプントス(ポイント賞)
マイヨモンターニャ(山岳賞)
マイヨコンビナーダ(複合賞)
チーム総合成績
ステージ敢闘賞
トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
第69回大会に設定された個人タイムトライアルは2つ。1つ目がこの36.7kmの長距離TTで、2つ目が最終日の9.7km短距離TT。山岳ステージでタイムを失ったオールラウンダーたちがここで巻き返しを図る。
36.7kmコースは登りが1/3、下りが1/3、そして平坦が1/3。11km地点で高低差155mの3級山岳モンカヨ峠を越えると、細くてテクニカルなダウンヒルが待っている。
路面の大半はブエルタのために舗装されたアスファルトだが、決してスムーズとは言えない凸凹面。試走した選手が「リズムを掴みにくい」と口を揃え、中には軽量なノーマルバイクでスタートして3級山岳モンカヨ峠の頂上でTTバイクに乗り換える選手も。
同じ地域で行なわれた1年前の個人タイムトライアルで優勝したファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)が、チームメイトのジェシー・サージェント(ニュージーランド)を暫定トップタイムを塗り替える形でホットシートに。しかし世界TTチャンピオンがカンチェラーラを18秒も更新した。
36.7kmを平均46.8km/hで駆け抜けたマルティンが、総合上位陣を寄せ付けない47分02秒のタイムでステージ優勝。「今シーズン一番ハードなタイムトライアルだった。アップダウンがあって、コーナーが多くてテクニカルで、路面もバンピーで、集中力を切らすことが出来なかった。100%の走りとは言えず、ステージ優勝を確信出来なかった」と、苦しみながらの走りだったことを打ち明けるマルティン。今シーズン10勝目で、そのうち7勝が個人タイムトライアルによるものだ。
「世界選手権に向けて調子が上向きだと確認出来て良かったよ。自分にとってもウランにとっても良い一日になった」とマルティンは語る。チームメイトのリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)は序盤からマルティンに肉薄するタイムを連発し、後半の平坦区間で少しタイムを失いながらも15秒差のステージ2位に。オメガファーマ・クイックステップがワンツー勝利。ウランは総合9位から総合3位まで大幅に順位をアップさせた。
ウランと同様に総合上位陣の中で序盤から飛ばしたのはアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)やサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)だ。コンタドールは骨折からの復帰戦とは思えない走りでライバルを引き離す。
一方で厳しい闘いを強いられたのはクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)だった。マイヨロホを着る最終走者キンタナはまずまずのタイムで3級山岳モンカヨ峠をクリアしたが、その後の下りコーナーでオーバーラン。ガードレールに衝突し、前転する形で地面に投げ出された。
キンタナは駆けつけたチームスタッフに助けられて立ち上がり、1分以上かけて身体をチェックした後スペアバイクに跨がる。破れたマイヨロホを纏って再び走り出したが、破れたマイヨロホと苦しい表情が総合争いからの脱落を意味していた。
序盤からのハイペースを落とすことなく走り切ったコンタドールが、マルティンと39秒のステージ4位でフィニッシュ。4分07秒遅れのステージ82位に沈んだキンタナに代わって、コンタドールが総合首位に躍り出た。
「数週間前に『マイヨロホを狙う』なんて言っても笑われていたと思う。最初の1週間で自信をつけてこの個人TTに挑んだ。フルームと同じぐらいのタイムを予想していたので、結果は予想を遥かに上回っていた」とコンタドールは喜ぶ。7月のツール・ド・フランスで右脛骨を骨折した男がブエルタ・ア・エスパーニャの総合首位を走っている。
コンタドールと27秒差の総合2位につけるのは、キンタナに代わって再びモビスターの看板を背負うことになったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)。第10ステージを終えてコンタドール、バルベルデ、ウランの3人が総合タイム差1分以内だ。
クライマーながらステージ15位に入ったビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)が総合4位。そして「序盤に飛ばしすぎて登りで失速。そのまま最後までペースを取り戻すことが出来なかった」というフルームはコンタドールから53秒を失ったものの、総合5位のポジションはキープしている。
キンタナは3分25秒差の総合11位までダウン。失意のキンタナは「落車はロードレースに付き物。これからはアレハンドロ(バルベルデ)をサポートし、彼の総合優勝を狙うよ」とコメントしている。
選手コメントはレース公式リリースより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第10ステージ結果
1位 トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
2位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
5位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
6位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
7位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
9位 ジェシー・サージェント(ニュージーランド、トレックファクトリーレーシング)
10位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
15位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
17位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
18位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)
21位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
22位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
31位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)
32位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
40位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
45位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)
46位 マキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ベリソル)
56位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)
67位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、MTNキュベカ)
82位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
156位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
2位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
5位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
6位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
7位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
9位 ジェシー・サージェント(ニュージーランド、トレックファクトリーレーシング)
10位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
15位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
17位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
18位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)
21位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
22位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
31位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)
32位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
40位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
45位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)
46位 マキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ベリソル)
56位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)
67位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、MTNキュベカ)
82位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
156位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
47'02"
+15"
+18"
+39"
+48"
+49"
+58"
+1'01"
+1'13"
+1'32"
+1'45"
+1'49"
+2'01"
+2'03"
+2'05"
+2'19"
+2'22"
+2'48"
+2'59"
+3'05"
+3'27"
+3'46"
+4'07"
+5'45"
+15"
+18"
+39"
+48"
+49"
+58"
+1'01"
+1'13"
+1'32"
+1'45"
+1'49"
+2'01"
+2'03"
+2'05"
+2'19"
+2'22"
+2'48"
+2'59"
+3'05"
+3'27"
+3'46"
+4'07"
+5'45"
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
5位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
7位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
8位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
9位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)
10位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
11位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
5位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
7位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
8位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
9位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)
10位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
11位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
36h45'49"
+27"
+59"
+1'12"
+1'18"
+1'37"
+1'41"
+2'27"
+2'38"
+2'59"
+3'25"
+27"
+59"
+1'12"
+1'18"
+1'37"
+1'41"
+2'27"
+2'38"
+2'59"
+3'25"
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
3位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
2位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
3位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
87pts
74pts
71pts
74pts
71pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)
2位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
3位 ジェローム・クザン(フランス、ユーロップカー)
2位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
3位 ジェローム・クザン(フランス、ユーロップカー)
20pts
18pts
13pts
18pts
13pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
12pts
16pts
18pts
16pts
18pts
チーム総合成績
1位 モビスター
2位 オメガファーマ・クイックステップ
3位 BMCレーシング
2位 オメガファーマ・クイックステップ
3位 BMCレーシング
109h55'19"
+2'41"
+4'29"
+2'41"
+4'29"
ステージ敢闘賞
トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)
text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele
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