ベルギーのフランドル地方を舞台にしたセミクラシックレース、ドワーズ・ドア・フラーンデレン(1.HC)。厚い曇り空の下で行われたこのレースで、必勝体制を敷いたオメガファーマ・クイックステップのニキ・テルプストラが勝利。持ち前のスピードを活かし独走優勝を飾ってみせた。



バイクのステムに貼られた行程表バイクのステムに貼られた行程表 photo:Cor.Vos同一主催者のフランドルクラシックシリーズ(オンループ、ドワーズドア、ヘント、ロンド、シュヘルデ、ブラバンツ)の第2戦にあたるドワーズ・ドア・フラーンデレン。今年で69回目を迎えるこの「フランドル横断レース」を境にクラシックウィークへと突入し、4月6日に開催されるロンド・ファン・フラーンデレンに向けて熱狂を高めていく。

石畳を行くイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)ら石畳を行くイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)ら photo:Cor.Vosそのため大一番に向けての重要な調整レースとしての意味合いが濃く、今年も各チームはクラシック一軍メンバーを揃えてきた。必勝態勢を敷くオメガファーマ・クイックステップのエースナンバーはトム・ボーネン(ベルギー)。ディフェンディングチャンピオンのオスカル・ガット(イタリア)は、今年キャノンデールのエースとしてゼッケン1をつけた。

ターイエンベルグでトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)が動くターイエンベルグでトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)が動く photo:Cor.Vosフランドル地方を縫うように駆け巡る201kmのコース中には「レベルグ」、「ファルケンブルグ」、「オウデ・クワレモント」、「パテルブルグ」、「ノケレベルグ」など計11箇所の急坂に加え、8カ所の石畳セクションが次々と登場する。特にレース後半はこれら勝負所が連続するため、息も付かせぬ激しいレース展開が毎年繰り広げられる。

毎年序盤からめまぐるしくアタックが掛かるドワーズドアだが、今年もスタート後50kmを過ぎても集団は一つのまま。最初1時間の平均スピードは51km/hと超高速でレースは進んでいく。

やがてクリス・ボックマンス(ベルギー、ロット・ベリソル)らのアタックをきっかけに、デーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン・シャープ)やマルケル・イリサール(スペイン、トレックファクトリーレーシング)らが合流し、20名ほどのエスケープグループが形成される。

これを見送った集団はようやく落ち着きを見せるが、タイム差はおよそ2分半止まり。主にオメガファーマ・クイックステップとガーミン・シャープが集団の先頭を固める形で、逃げとのタイム差を削りとっていった。



風車の横を通過するメイン集団。この日は風が強く吹き付けた風車の横を通過するメイン集団。この日は風が強く吹き付けた photo:Cor.Vos
パテルブルグからニキ・テルプストラが独走を開始するパテルブルグからニキ・テルプストラが独走を開始する photo:Cor.Vosテルプストラを追うステイン・デヴォルデル(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)ら4名テルプストラを追うステイン・デヴォルデル(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)ら4名 photo:Cor.Vos



石畳を避けてダートを走るニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)石畳を避けてダートを走るニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor.Vosそんな中、集団からは「自分自身を試してみた。勝負をかけたアタックでは無かったけれど、調子が上がっているのが分かって良かった。」と後に語るボーネンが、残り51km地点の「ターイエンベルグ」でアタック。この動きを機にレースは活発に動いた。

ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)を追うメイン集団ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)を追うメイン集団 photo:Cor.Vosチームスカイやオリカ・グリーンエッジがペースを上げるメイン集団は、石畳+最大勾配20%超の「パテルブルグ」頂上で逃げグループをキャッチ。するとその先のダウンヒル区間で、ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)が切れ味鋭いアタックを繰り出した。

唯一アレクセイ・サラモンティス(ラトビア、IAMサイクリング)が追ったものの、平坦のスピードに優れるテルプストラに合流することは叶わない。後続のローテーションが回らないことも手伝って、テルプストラは徐々にリードを稼ぎ出していく。

メイン集団からはヘルト・ステーグマンス(オメガファーマ・クイックステップ)ステイン・デヴォルデル(トレックファクトリーレーシング)のベルギー勢、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、ニキ・セレンセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)が抜け出して20秒差に迫るものの、結局合流はできず集団に引き戻される。


独走でゴールに飛び込んだニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)独走でゴールに飛び込んだニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor.Vos


集団の頭はタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)が獲る集団の頭はタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)が獲る photo:Cor.Vos表彰台に立つトップスリー表彰台に立つトップスリー photo:Cor.Vosペースを崩さずに先頭をひた走るテルプストラは、残り2kmで26秒のタイム差をマーク。そのままの体制を維持し、2012年大会と同じ勝ちパターンで独走勝利。力強く振り上げたガッツポーズが決まった。17秒差でゴールした集団の頭は低迷していたタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)が獲り、3位にはボルト・ボジッチ(チェコ、アスタナ)が入った。

以下は優勝したテルプストラのコメント。
「このレースにとても集中できていた。このために多くトレーニングを積んできたし、希望を見いだしていた。今はそれらが全て報われて素晴らしい気分だ。レース中には急坂も石畳も風もあって、僕のような選手にまさにフィットしているんだ。

アタックは予定していなかったけれど、あの時はチームメイトが集団の前を固めていたんだ。逃げグループをパスして、加速して、そして一人になった。それからはTTモードに切り替えて全力で踏んだんだ。ずっと向かい風が吹き付けるコンディションだったけれど、最終版になってもまだ脚に力が残っていた。残り600mになっても後続が見えず、とても良い気分だったね。まだまだクラシックレースは続いていくけれど、この勝利でより集中できるはず。チームとしてもより集中できるはずだ。」



ドワーズ・ドア・フラーンデレン2014
1位 ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)     4h31'43"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)              +17"
3位 ボルト・ボジッチ(チェコ、アスタナ)
4位 ジャンピエール・ドラッカー(ルクセンブルク、ワンティ)
5位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)
6位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ベリソル)
7位 トム・ヴァンアスブロック(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)
8位 オスカル・ガット(イタリア、キャノンデール)
9位 イェンス・ケウケレール(ベルギー、オリカ・グリーンエッジ)
10位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、AG2Rラモンディアール)

text:So.Isobe
photo:Cor.Vos

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