ゴール14km手前に搭乗する最大勾配25%の2級山岳モンブルイイでトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)がアタック。強力なアタックで抜け出したスラグテルにゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が追いつき、2人で集団を振り切った。



2級山岳モンブルイイを登るリーダージャージのジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)ら2級山岳モンブルイイを登るリーダージャージのジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)ら photo:Tim de Waele
パリ〜ニース2014第4ステージパリ〜ニース2014第4ステージ image:A.S.O.2級山岳モンブルイイ(登坂距離3km/平均勾配8.4%/最大勾配25%)2級山岳モンブルイイ(登坂距離3km/平均勾配8.4%/最大勾配25%) image:A.S.O.


ボジョレーのワイン畑を縫うようにしてプロトンが進むボジョレーのワイン畑を縫うようにしてプロトンが進む photo:Tim de Waele地中海を目指して南下を続けるパリ〜ニース。第4ステージは後半に4つのカテゴリー山岳が登場する中級山岳ステージで、これまでの平坦な3ステージとは様相が異なる。勝負の鍵を握るのは高低差316m/登坂距離3km/平均勾配8.4%/最大勾配25%の2級山岳モンブルイイだ。

レース序盤から逃げたヘスス・エラーダ(スペイン、モビスター)らレース序盤から逃げたヘスス・エラーダ(スペイン、モビスター)ら photo:Tim de Waele「ボジョレーの葡萄畑の丘。道が狭くて勾配がきついので集団はばらけると思います」と、ゴール地点の近くに住む別府史之(トレックファクトリーレーシング)は予想する。その言葉通り、レースはこの2級山岳で大きく動くことになる。

2級山岳モンブルイイでメイン集団のペースを上げるAG2Rラモンディアール2級山岳モンブルイイでメイン集団のペースを上げるAG2Rラモンディアール photo:Tim de Waeleレース序盤に形成されたのは、ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、アスタナ)、ヘスス・エラーダ(スペイン、モビスター)、ローラン・ディディエ(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)、ペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)という4名のUCIプロチームライダーによる逃げ。

後続を突き放すゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)とトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)後続を突き放すゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)とトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ) photo:Tim de Waele最大で6分20秒のリードを得ながら、アニョーリが3つの3級山岳を先頭通過して暫定山岳賞トップに立つ。山岳賞ジャージ擁するブルターニュ・セシェは、カテゴリー山岳が連続するこの肝心の第4ステージで逃げに選手を送り込めなかった。

トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)とともに先行するゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)とともに先行するゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele勝負どころに向けて総力を挙げてメイン集団を率いたのはチームスカイで、その後ろにアスタナが控えるポジショニングで残り20km。タイム差は着実に縮まり、残り17kmから始まる2級山岳モンブルイイの登り口で逃げは吸収される。葡萄畑に覆われた丘を縫うように登る急勾配の登りを進むうちに、メイン集団は瞬く間に人数を減らした。

この日の優勝候補の一角サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)やシルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)らが早々に脱落する中、AG2Rラモンディアールが積極的に集団の人数を絞って行く。カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)のアタックは失敗。続いて頂上まで1kmを残してスラグテルが飛び出した。

今年ベルキンからガーミン・シャープに移籍した24歳が、軽快なペダリングで急坂を駆け上がる。遅れて集団を抜け出たトーマスが合流し、2人で後続を5秒ほど引き離して2級山岳モンブルイイをクリアした。

昨年ツアー・ダウンアンダーで総合優勝を果たした身長167cmの小柄なクライマーと、トラックレース団体追い抜きで3回世界王者に輝いている身長183cmのオールラウンダーによる先行。頂上からフィニッシュラインまでは14km。登りで出遅れた選手たちがスラグテルとトーマスを捉えることはなかった。

総合成績を見据えて長時間先頭を牽いたトーマスをかわし、残り150mで仕掛けたスラグテルが先着。残り数キロで飛び出したウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)が3位に入り、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)を含む追走集団は5秒遅れでマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)を先頭にフィニッシュした。

「トーマスはスピードのある選手なので、最後までスプリント開始のタイミングを待った。さもなくば負けていたと思う。自分の仕事を完遂することが出来たよ」と、今シーズン初勝利を飾ったスラグテル。

アメリカチームのエースとして翌日からはマイヨジョーヌを懸けた闘いが始まる。「今シーズンはまだチャレンジマヨルカの1日を走っただけだったので、実質的にこれがシーズン初戦。登りは自分向きだったものの、自分の調子に確証をもてていなかったので、この勝利は予想していなかった」。



トーマスを振り切って勝利したトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)トーマスを振り切って勝利したトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ) photo:Tim de Waele


マイヨジョーヌに袖を通したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)マイヨジョーヌに袖を通したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleまた、クリス・フルーム(イギリス)の代役としてティレーノ〜アドリアティコに出場したリッチー・ポート(オーストラリア)の代役として、急遽パリ〜ニースでチームスカイのエースを担うことになったトーマスが総合首位に浮上。マイヨジョーヌに袖を通したトーマスは「自分がエースとしてチームを率いることが決まったのは先週の金曜日。これまでアシストとして走っていたので、エースになるのは不思議な感じ。グランツールに次ぐ規模のパリ〜ニースで総合リーダーになるなんて、本当に誇らしい」と、少しはにかみながら話す。

「脚の調子は良いし、登りの感触も良かった。スタグテルが先頭交代をしなくなったけど、総合リードを守るために前を引き続けたんだ。ステージ優勝は逃したけど、リーダージャージを獲得出来て本当によかったよ」。

マイヨジョーヌを着るジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)は苦しみながらも第2集団で2級山岳モンブルイイをクリア。懸命に先頭を追ったものの届かず、18秒遅れでフィニッシュしている。総合首位キープには僅かに3秒届かなかった。「(登りを越えてから)他のチームの協力を得ることが出来なかった。良いパフォーマンスを発揮出来たけど、数秒で総合首位を明け渡すなんて」と悔しい心境を述べながらも、表彰式では笑顔でマイヨヴェールとマイヨブランを受け取った。

選手コメントはレース公式サイトならびにジャイアント・シマノ公式サイトより。



パリ〜ニース2014第4ステージ結果
1位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)
2位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
3位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
4位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
5位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 アルテュール・ヴィショ(フランス、FDJ.fr)
7位 ペーター・ベリトス(スロバキア、BMCレーシング)
8位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
9位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)
10位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、AG2Rラモンディアール)
5h00'09"

+05"








個人総合成績
1位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
2位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
3位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)
4位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
5位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、AG2Rラモンディアール)
6位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
7位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)
8位 ゼネク・スティバル(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)
9位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)
10位 アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ.fr)
18h14'25"
+03"
+04"
+08"
+12"
+15"
+17"
+19"



ポイント賞
ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)

山岳賞
ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、アスタナ)

ヤングライダー賞
ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)

チーム総合成績
AG2Rラモンディアール

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

最新ニュース(全ジャンル)