2013/09/15(日) - 21:49
7分差のあったメイン集団から登坂区間で抜け出したのはブリヂストンアンカーの2人、トマ・ルバとダミアン・モニエ。驚異的な速さで山岳を駆け上がりワン・ツーフィニッシュ。昨日の借りをチーム力で返した。
ツール・ド・北海道第2ステージが9月15日(土)、倶知安町から神恵内村の往復コース129.2kmで行われた。当日は朝から雨が降り続き、気温は20度少しと前日と変わって肌寒いほどに。コースは前日と同じ倶知安町ヒラフスキー場前の通称ゴンドラ坂がスタート/フィニッシュ。すぐに標高差250mほどを上り、その後は神恵内村までおよそ平坦の道を往復、終盤はKOMを越えてから標高差350mを上り12kmでゴール。
前日の第1ステージの結果は、上位陣が20秒以内程度におり、一つの動き次第でその順位が入れ替わるほどの差。リーダーのチームNIPPO・デローザと、組織力を見せ付けたブリヂストンアンカー勢の動きが焦点に。そしてこの日は終日の雨。平坦と山岳が組み合わさったコースは、アクシデントも加わり下馬評どおり難しく厳しいものに。
序盤に6人の逃げ
スタート後アタックの掛け合いとなり、5km地点ではジョシュア・プリート(チームバジェット・フォークリフト)が先行、これを郡司昌紀(宇都宮ブリッツェン)と山本元喜(鹿屋体育大)が追う。やがて2人は吸収され、プリートが単独で逃げる。プリートは結局ゴールまで先頭集団で走り続けることに。
山岳から下って共和町の平坦区間に入ると各チームがNIPPOに対して激しい攻撃を仕掛ける。NIPPOがことごとくこれらを吸収したタイミングで5人が抜け出す。ロー・ジウェン(OCBCシンガポール)のアタックに反応したアーロン・クレマー(コルバ-スペラーノハム)が抜け出し、これに阿部嵩之(チーム右京)、中村誠(宇都宮ブリッツェン)そして竹之内悠(コルバ-スペラーノハム)が合流した5人だ。
67km地点で落車、リーダーのピニツォットも巻き込まれる
そして先行していたプリートに追走の5人が合流して、先頭の逃げは6人に。メイン集団はNIPPOがコントロールしてタイム差は3分に。レースはこのまま進むかと思われたが、折り返したあとの67km地点の茂岩トンネル出口付近で20人ほどの落車が発生。トンネルの先に中央分離帯があるため1車線キープの場面だった。
これにリーダーのレオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)や清水都貴(ブリヂストンアンカー)らが巻き込まれた。清水は腰を強打し、その後にリタイア。優勝候補の一人が残念ながらレースを去った。落車は集団後方だったが運悪くピニツォットはチームカーと連絡を取るため後方に下がり、そしてトンネルのためチームカーも前へ上がれない状況だった。
ピニツォットは腕を負傷し集団復帰に時間を要した。メイン集団はリーダーを待つためペースダウン。このことで逃げ集団との差は一気に7分にまで広がる。残り50kmで7分差となったメイン集団は、それまでのNIPPOに加え、総合2位のマトリックスパワータグも牽引に加わる。
しかし先頭の6人もローテーションを回して逃げ続け、差は劇的には縮まらない。ブリヂストンアンカーは牽引に加わらずその後方で待機する。登坂区間が近づいても差は5分ほどあり、メイン集団の中では届かない焦りも出てくる。
ブリヂストンアンカーの2人が猛追
いっぽうの先頭集団では、KOMを阿部が先頭通過で個人総合山岳賞をほぼ手中にし、中村は下がっていく。そしてラスト20kmの登坂区間でプリートがペースを上げこれを阿部が追う。いっぽうのメイン集団からは、ブリヂストンアンカーのトマ・ルバとダミアン・モニエが抜け出して先頭を猛追。麓で4分ほどあった差を詰めて、竹之内とクレマーに追いつく。
先頭のプリートと阿部はピークを越えるがここでルバ、モニエ、クレマーの3人が合流しそのままゴール勝負へ。ゴールまでの上り400m勝負となり、これをルバが制し優勝。モニエとワン・ツーを決め、同時に個人総合リーダーに。メイン集団は1分04秒差で西村大輝(シマノレーシング)を先頭にゴール、リーダーだったピニツォットは西村の次にゴール。総合では52秒差の3位に。
落車が明暗を分けた第2ステージ
67km地点の落車が展開を大きく変えた。それまではNIPPOのペースで、6人の逃げを吸収すべく進んでいた。リーダーを含む落車でリーダー自身が負傷、そして7分もの大差がついた。これの追走でNIPPOは脚を使い、いっぽうでブリヂストンアンカーは牽引に加わることは無かった。ルバとモニエの登坂力が群を抜いていたが、落車がなければ1分もの差はつかなかっただろう。
このことをブリヂストンアンカーの水谷壮宏監督は「昨日はラスト20kmで攻撃したが、それは後続とのタイム差を広げることが第一でチーム全員で回した(しかしゴールでは他チームに先着された)。昨日は協力してくれるチームは無かった。だから今日はタイム差が7分も開いて焦りも正直あったが、牽引に協力しなかった」と説明する。
NIPPOのピニツォットは個人総合で52秒差の3位に。翌最終第3ステージは116kmと短い。小さいながらも峠が3箇所ありゴール前4kmまではテクニカルな下り区間。短いからこそひとつの動きやミスが結果に大きな影響を与えることもある。通常では52秒は覆しにくい差だ。しかしどのチームも個人総合、ステージ優勝、UCIポイント獲得などそれぞれの目標のため攻撃を仕掛けるだろう。
結果
第2ステージ 129.2km
1位 トマ・ルバ(ブリヂストンアンカー)3時間18分12秒
2位 ダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)+06秒
3位 アーロン・クレマー(コルバ-スペラーノハム)+15秒
4位 ジョシュア・プリート(チームバジェット・フォークリフト)+23秒
5位 阿部嵩之(チーム右京)+35秒
6位 西村大輝(シマノレーシング)+1分04秒
7位 レオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)+1分05秒
8位 ビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)+1分07秒
9位 トーマス・ラボウ(OCBCシンガポール)+1分09秒
10位 アルベルト・チェッキン(チームNIPPO・デローザ)
個人総合成績 第2ステージ終了時点
1位 トマ・ルバ(ブリヂストンアンカー)7時間54分42秒
2位 ダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)+14秒
3位 レオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)+52秒
4位 ビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)+58秒
5位 ホセ・ビセンテ(チーム右京)+1分04秒
6位 ジョン・アンダーソン(チームバジェット・フォークリフト)+1分13秒
7位 中根英登(チームNIPPO・デローザ)+1分17秒
8位 ジョシュア・プリート(チームバジェット・フォークリフト)+1分25秒
9位 初山翔(ブリヂストンアンカー)+1分34秒
10位 伊丹健治(ブリヂストンアンカー)+1分35秒
個人総合ポイント賞 第2ステージ終了時点
1位 トマ・ルバ(ブリヂストンアンカー)34点
2位 レオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)34点
3位 ダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)28点
個人総合山岳賞 第2ステージ終了時点
1位 阿部嵩之(チーム右京)20点
2位 カール・エバンス(チームバジェット・フォークリフト)8点
3位 池部壮太(マトリックスパワータグ)6点
チーム総合順位 第2ステージ終了時点
1位 ブリヂストンアンカー 23時間45分49秒
2位 チームNIPPO・デローザ +2分50秒
3位 チームバジェット・フォークリフト +3分24秒
photo&text:高木秀彰
ツール・ド・北海道第2ステージが9月15日(土)、倶知安町から神恵内村の往復コース129.2kmで行われた。当日は朝から雨が降り続き、気温は20度少しと前日と変わって肌寒いほどに。コースは前日と同じ倶知安町ヒラフスキー場前の通称ゴンドラ坂がスタート/フィニッシュ。すぐに標高差250mほどを上り、その後は神恵内村までおよそ平坦の道を往復、終盤はKOMを越えてから標高差350mを上り12kmでゴール。
前日の第1ステージの結果は、上位陣が20秒以内程度におり、一つの動き次第でその順位が入れ替わるほどの差。リーダーのチームNIPPO・デローザと、組織力を見せ付けたブリヂストンアンカー勢の動きが焦点に。そしてこの日は終日の雨。平坦と山岳が組み合わさったコースは、アクシデントも加わり下馬評どおり難しく厳しいものに。
序盤に6人の逃げ
スタート後アタックの掛け合いとなり、5km地点ではジョシュア・プリート(チームバジェット・フォークリフト)が先行、これを郡司昌紀(宇都宮ブリッツェン)と山本元喜(鹿屋体育大)が追う。やがて2人は吸収され、プリートが単独で逃げる。プリートは結局ゴールまで先頭集団で走り続けることに。
山岳から下って共和町の平坦区間に入ると各チームがNIPPOに対して激しい攻撃を仕掛ける。NIPPOがことごとくこれらを吸収したタイミングで5人が抜け出す。ロー・ジウェン(OCBCシンガポール)のアタックに反応したアーロン・クレマー(コルバ-スペラーノハム)が抜け出し、これに阿部嵩之(チーム右京)、中村誠(宇都宮ブリッツェン)そして竹之内悠(コルバ-スペラーノハム)が合流した5人だ。
67km地点で落車、リーダーのピニツォットも巻き込まれる
そして先行していたプリートに追走の5人が合流して、先頭の逃げは6人に。メイン集団はNIPPOがコントロールしてタイム差は3分に。レースはこのまま進むかと思われたが、折り返したあとの67km地点の茂岩トンネル出口付近で20人ほどの落車が発生。トンネルの先に中央分離帯があるため1車線キープの場面だった。
これにリーダーのレオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)や清水都貴(ブリヂストンアンカー)らが巻き込まれた。清水は腰を強打し、その後にリタイア。優勝候補の一人が残念ながらレースを去った。落車は集団後方だったが運悪くピニツォットはチームカーと連絡を取るため後方に下がり、そしてトンネルのためチームカーも前へ上がれない状況だった。
ピニツォットは腕を負傷し集団復帰に時間を要した。メイン集団はリーダーを待つためペースダウン。このことで逃げ集団との差は一気に7分にまで広がる。残り50kmで7分差となったメイン集団は、それまでのNIPPOに加え、総合2位のマトリックスパワータグも牽引に加わる。
しかし先頭の6人もローテーションを回して逃げ続け、差は劇的には縮まらない。ブリヂストンアンカーは牽引に加わらずその後方で待機する。登坂区間が近づいても差は5分ほどあり、メイン集団の中では届かない焦りも出てくる。
ブリヂストンアンカーの2人が猛追
いっぽうの先頭集団では、KOMを阿部が先頭通過で個人総合山岳賞をほぼ手中にし、中村は下がっていく。そしてラスト20kmの登坂区間でプリートがペースを上げこれを阿部が追う。いっぽうのメイン集団からは、ブリヂストンアンカーのトマ・ルバとダミアン・モニエが抜け出して先頭を猛追。麓で4分ほどあった差を詰めて、竹之内とクレマーに追いつく。
先頭のプリートと阿部はピークを越えるがここでルバ、モニエ、クレマーの3人が合流しそのままゴール勝負へ。ゴールまでの上り400m勝負となり、これをルバが制し優勝。モニエとワン・ツーを決め、同時に個人総合リーダーに。メイン集団は1分04秒差で西村大輝(シマノレーシング)を先頭にゴール、リーダーだったピニツォットは西村の次にゴール。総合では52秒差の3位に。
落車が明暗を分けた第2ステージ
67km地点の落車が展開を大きく変えた。それまではNIPPOのペースで、6人の逃げを吸収すべく進んでいた。リーダーを含む落車でリーダー自身が負傷、そして7分もの大差がついた。これの追走でNIPPOは脚を使い、いっぽうでブリヂストンアンカーは牽引に加わることは無かった。ルバとモニエの登坂力が群を抜いていたが、落車がなければ1分もの差はつかなかっただろう。
このことをブリヂストンアンカーの水谷壮宏監督は「昨日はラスト20kmで攻撃したが、それは後続とのタイム差を広げることが第一でチーム全員で回した(しかしゴールでは他チームに先着された)。昨日は協力してくれるチームは無かった。だから今日はタイム差が7分も開いて焦りも正直あったが、牽引に協力しなかった」と説明する。
NIPPOのピニツォットは個人総合で52秒差の3位に。翌最終第3ステージは116kmと短い。小さいながらも峠が3箇所ありゴール前4kmまではテクニカルな下り区間。短いからこそひとつの動きやミスが結果に大きな影響を与えることもある。通常では52秒は覆しにくい差だ。しかしどのチームも個人総合、ステージ優勝、UCIポイント獲得などそれぞれの目標のため攻撃を仕掛けるだろう。
結果
第2ステージ 129.2km
1位 トマ・ルバ(ブリヂストンアンカー)3時間18分12秒
2位 ダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)+06秒
3位 アーロン・クレマー(コルバ-スペラーノハム)+15秒
4位 ジョシュア・プリート(チームバジェット・フォークリフト)+23秒
5位 阿部嵩之(チーム右京)+35秒
6位 西村大輝(シマノレーシング)+1分04秒
7位 レオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)+1分05秒
8位 ビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)+1分07秒
9位 トーマス・ラボウ(OCBCシンガポール)+1分09秒
10位 アルベルト・チェッキン(チームNIPPO・デローザ)
個人総合成績 第2ステージ終了時点
1位 トマ・ルバ(ブリヂストンアンカー)7時間54分42秒
2位 ダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)+14秒
3位 レオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)+52秒
4位 ビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)+58秒
5位 ホセ・ビセンテ(チーム右京)+1分04秒
6位 ジョン・アンダーソン(チームバジェット・フォークリフト)+1分13秒
7位 中根英登(チームNIPPO・デローザ)+1分17秒
8位 ジョシュア・プリート(チームバジェット・フォークリフト)+1分25秒
9位 初山翔(ブリヂストンアンカー)+1分34秒
10位 伊丹健治(ブリヂストンアンカー)+1分35秒
個人総合ポイント賞 第2ステージ終了時点
1位 トマ・ルバ(ブリヂストンアンカー)34点
2位 レオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)34点
3位 ダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)28点
個人総合山岳賞 第2ステージ終了時点
1位 阿部嵩之(チーム右京)20点
2位 カール・エバンス(チームバジェット・フォークリフト)8点
3位 池部壮太(マトリックスパワータグ)6点
チーム総合順位 第2ステージ終了時点
1位 ブリヂストンアンカー 23時間45分49秒
2位 チームNIPPO・デローザ +2分50秒
3位 チームバジェット・フォークリフト +3分24秒
photo&text:高木秀彰
関連ファイル
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