10日間のステージレースがいよいよ開幕。第1ステージは福島晋一(チームNIPPO・デローザ)がファーストアタックを決めて逃げに乗り、それを佐野淳也(ヴィーニファンティーニ)を含むスプリンターチームが追うという展開になった。スプリントを狙う愛三工業レーシングチームはうまく前に出れず、綾部勇成の20位が最高位となった。

10回目の参戦、福島晋一がファーストアタックを決める

第1ステージ中盤、幹線道路を走る選手たち第1ステージ中盤、幹線道路を走る選手たち photo:Sonoko Tanaka暑い暑い熱帯マレーシアでのステージレース。歩いているだけで、たくさんの汗が吹き出してくる。

ファーストアタックを決めて、先頭集団で走る福島晋一(チームNIPPO・デローザ)ファーストアタックを決めて、先頭集団で走る福島晋一(チームNIPPO・デローザ) photo:Sonoko Tanaka選手たちは、この暑さやヨーロッパとは6時間、アメリカ(東海岸)とは12時間という時差に適応して、まずはパフォーマンスを発揮できる状態にするのが課題だが、どのチームも数日前にはランカウイ島に到着していたために、調整は“まぁ悪くはない”といった状態。太陽の位置が高くなり、気温がグングンと上がろうとしている朝10時、今年のツール・ド・ランカウイ、第1ステージのスタートは切られた。

気温は30℃を超えて湿度も高い。補給地点では水を身体にかける選手が多い気温は30℃を超えて湿度も高い。補給地点では水を身体にかける選手が多い photo:Sonoko Tanakaスタートしてすぐに3選手のアタックが決まった。福島晋一とワン・メイイン(中国、ハンシャンサイクリング)、そしてジュンロン・ホー(シンガポール、OCBCシンガポール)というアジア人3人の顔ぶれだった。彼らのファーストアタックを追うチームはなく、瞬く間にタイム差は10分以上にも広がっていった。

今年で10回目の出場となる41歳の福島晋一。2007年にステージ優勝を挙げており、ツール・ド・ランカウイは彼にとって特別な思い入れのあるレース。福島は「初めて出場したのは2002年、まだ自分が無名の頃でした。それから毎年、レースとともに強くなってきました。ここに来れば、たくさんの友だちに会えて、自分の自転車キャリアのすべてがここにあるような感じ。今年も出場できて嬉しく思います」と話す。このレースでの経験があったからこそ、“アジア”という規模でのチーム構想が生まれ、昨年まではマレーシア籍のトレンガヌチームでキャプテンとしてマレーシアや韓国人選手らとともに活躍した。そして、今年の目標を「やっぱり、もう一度ステージ優勝をしたい。チャンスがあったら、それを確実に掴めるように頑張りたい」と話す。

そんな福島らの逃げを追うのは、アンドレア・グアルディーニ(イタリア)のアスタナと、フランチェスコ・キッキ(イタリア)のファンティーニヴィーニ、そしてグアルディーニの連勝を阻止する最有力と言われているテオ・ボス(オランダ)のブランコプロサイクリングなど、ヨーロッパのトップレースで活躍する強豪チーム。それらチームのアシスト選手たちがシステマチックにローテーションを繰り返し、セオリー通りに逃げとのタイム差を詰めていった。

豪華な宮殿の前を通過するプロトン豪華な宮殿の前を通過するプロトン photo:Sonoko Tanaka
初日から逃げに乗った福島晋一(チームNIPPO・デローザ)初日から逃げに乗った福島晋一(チームNIPPO・デローザ) photo:Sonoko Tanakaスタート地点にやってきた新城幸也(ユーロップカー)スタート地点にやってきた新城幸也(ユーロップカー) photo:Sonoko Tanaka


新チームで存在感を示す佐野淳哉

スタート前に雑談する佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)とフォルッナート・バリアーニ(イタリア、チームNIPPO・デローザ)スタート前に雑談する佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)とフォルッナート・バリアーニ(イタリア、チームNIPPO・デローザ) photo:Sonoko Tanakaローテーションのなかでひときわ目立っていたのが佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)だった。かなりの長い時間、集団の先頭には佐野の姿があった。

集団の牽引をし「思ったよりも早く逃げを吸収できた」と話して汗をぬぐう佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)集団の牽引をし「思ったよりも早く逃げを吸収できた」と話して汗をぬぐう佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ) photo:Sonoko Tanaka今季、チームNIPPOから格上のプロコンチネンタルチームへ移籍した佐野にとって、このレースが新しいチームでの初戦。ナショナルチームとして、ツアー・オブ・カタール、オマーンと連戦していたため、チームに合流するのは昨年末のトレーニングキャンプ以来だと言う。

「まずはチームのオーダーをしっかりとこなして、認められることが今回の課題です」と話し、チームの期待に応える走りを見せた。

福島はその後、残り13キロで吸収され、集団から4分ほど遅れてフィニッシュラインを越えた。「踏もうとすると脚が攣ってしまって、まったくダメだった……」と福島は振り返る。

しかし、マレーシアでは絶大な知名度と人気を誇る福島。140キロを超える果敢なエスケープに、レースを終えた福島のもとには多くの関係者が声をかけにやってきた。「明日は明日の脚があるので、また頑張ります」と笑顔で汗を拭った。

長時間メイン集団を引いた佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)長時間メイン集団を引いた佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ) photo:Sonoko Tanaka


愛三工業は明日もチーム力でゴールスプリントを狙う

レーススタートを待つ盛一大(愛三工業レーシング)レーススタートを待つ盛一大(愛三工業レーシング) photo:Sonoko Tanaka今回は西谷泰治と福田真平、2人でゴールスプリントを狙うという愛三工業は、スプリントの展開を狙い、終盤のローテーションに中島康晴を入れて存在感をアピール。しかし、最終コーナーで思うようなラインを取れず、綾部、盛、福田、西谷という発車前の並びのままフィニッシュし、第1ステージでは力を発揮することができなかった。

キャラバン隊も準備OK! グランツールさながら、レースの30分前にコースを走るキャラバン隊も準備OK! グランツールさながら、レースの30分前にコースを走る photo:Sonoko Tanaka西谷は「今日は消化不良ですが、明日は途中に2級の山もあるので、上りの不得意なピュアスプリンターよりも、自分たちにチャンスもあるかもしれない」と話し、次のステージに挑む。

第2ステージは、セルダンからクアラカンサールまでの117キロというショートステージで、途中49.7キロ地点に標高500メートルの2級山岳を越えるレイアウト。

新城幸也(ユーロップカー)は、第1ステージで2位に入ったブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)や総合を狙うピエール・ローラン(フランス、ユーロップカー)のアシストをしながら走るが「チームでは、その上りで仕掛けようか、とも言っていたけど、残り60キロもあるので、そこでタイム差を稼いでもゴールまで逃げ切るのはまず難しいと言っています。だから明日もスプリントですね!」と、ブライアンのステージ優勝を狙う姿勢だ。

レースコースと交差する橋の上で、オートバイを止めてレースを見送るレースコースと交差する橋の上で、オートバイを止めてレースを見送る photo:Sonoko TanakaUCIプロチームがメイン集団の前方を固めるUCIプロチームがメイン集団の前方を固める photo:Sonoko Tanaka


text&photo:Sonoko Tanaka

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