2013/01/18(金) - 18:37
エアロロードというカテゴリーが確立され数年。このジャンルに早い段階で参入したのがリドレーであり、その代表モデルがこのノアである。2009年のフルモデルチェンジでは第2世代となり、細かな仕様変更を経ることで進化を続けている。
そして高い戦闘能力を備えロット・ベリソルチームの主要機として、エーススプリンターのアンドレ・グライペルをはじめ数多くのライダーに勝利をもたらしていることは周知の事実。ノアがロットチームでも多く使われる理由は、優れた空力性能を備えつつも、反応性や安定性、そして快適性などロードレースに求められる要素を高いレベルで融合させているからに他ならない。
エアロダイナミクスの追求は、翼断面チューブを多用して行なうのが常とう手段であり、ノアの各チューブもそれに則ったもの。しかし、このバイクはそれだけに留まらず独自の技術を数多く盛り込むことで、その確固たる地位を築いているのだ。
その中でも目を惹くのがフロントフォークとシートステーに搭載した「Fスピリットフォーク」だ。エアロパーツをブランドとして名高いオーバルコンセプト社と共同開発したこの独自技術は、走行時にスポークが乱す空気を整流する効果を発揮し、同社のテストによると空気抵抗を7.44%削減できるという。
そして、もう一つのエアロダイナミクス技術が「Fサーファス」。フレームのヘッドチューブ、ダウンチューブ、シートチューブには幅5ミリ程の特殊なテープが装備されている。その表面はザラついた加工が施され、この処理がフレーム表面を伝う空気を整流し、4.1%の空気抵抗削減をもたらす。また、ワイヤー類の内臓仕様も空気抵抗削減に貢献し、2012年モデルからは電動式と機械式双方に対応している。
ノアはこれらのエアロテクノロジーを盛り込むことで、時速40kmの走行時におけるパワーを約15ワット低減することを可能にしている。しかしエアロ性能を追求したバイクにありがちなのが、ハンガーやヘッド部のねじれ剛性、さらには十分な乗り心地の確保が難しくなることだ。
これに対しノアはまず、ハイモジュラスカーボン素材のグレードを単一ではなく、フレームにおいて剛性と強度、そして柔軟性が必要とされる部分を見極め、50、40、30トンのグレードを適材適所に配置する。その上でフレーム形状とバランスさせて最適な剛性を作り上げている。
ヘッド部については、下側のベアリングを1-1/2インチ径としたテーパードヘッド採用。さらにハンガーシェルはプレスフィット30規格のオーバーサイズタイプに進化を遂げた。こうしてパワーラインの要所に十分なボリュームを与えることで、プロ選手のパワフルなペダリングを受け止める高いねじれ剛性を確保する。
このパワーラインとのバランスを図り、フレーム全体の剛性を最適化するのがアッパーラインだ。とくにアーチシェイプされたトップチューブは、縦方向に固くなりがちなエアロ形状のフレームに柔軟性を与え、乗り心地を高めるために大きな役割を果たす上、ダンシングでの軽やかなバイクの振りといった効果もたらすことでスムーズな加速を演出する。
ノアが現行形に生まれ変わってからはや5年。しかしフレーム形状をほぼ変えることなくプロレースで多くの実績を残しているのは、エアロダイナミクスの高さに加え、優れた動力性能をバランスする数々の技術を集約した基本設計の高さゆえだ。進化を続けるリドレーのフラッグシップは、今年もロット・ベリソルの選手たちに多くの勝利をもたらすだろう。
なお、FASTテクノロジー搭載の姉妹モデル、NOAH FASTのインプレはページ末尾のリンクより確認してほしい。
意外にもシャキッとしたライディングフィールがり、その走りに驚きました。確かに縦方向の剛性が高い印象はありますが、トップチューブの弓なりの形状が効果を発揮しているためか、路面からの突き上げはあまり感じられないので、ロングライドもストレス無くこなせるでしょう。
エアロ効果についてはシートステーとフォークに入ったスリット、表面がざらざらとしたテープの恩恵を明確に感じることは難しいところ。しかし、実際に乗って高速域になったときのスピードの伸びはとても優れているので、少なからずとも影響はあるのかもしれませんね。メーターを装備して走ったわけではない為厳密には言えませんが、感覚的には時速35kmを過ぎたあたりからのスピードの伸び、これは特筆すべきですね。
ノアがターゲットとする速度域はかなり高いので、正直一般レベルの方がノアの最大性能を引き出すのは難しいとは思いますが、脚力があればスピードが無限大に伸びてゆくようなイメージすらあります。それだけに試乗車に装備されるFFWDのF6Rのようなエアロホイールとの組み合わせは抜群で、なかでもF6Rはベストマッチと言えるでしょう。
コーナリング性能も非常に安定していて、高速のダウンヒルなどでも安心して下ることができます。先にも述べたように横剛性も確保されていることから上り性能に不満を覚えることはなく、シッティングでグイグイと上ってゆくような走り方に向いています。ダンシングでカリカリと踏んで行くような走りにも十分に応えてくれますが、やはりそのあたりはヘリウムシリーズなどヒルクライムに向いているモデルが適しています。
ノアは設計通り、非常に巡航性に優れたフレームですので、トルクを掛けて踏んでいけるパワー系のライダーに適しています。速度変化の少ないレース、コースにこそ向いています。エアロ性能からトライアスロンなどにも良いでしょう。また、快適性もあるため耐久レースでは特に後半持ち味を発揮でき、ブルベなどに使ってもマイナス面は無いと思います。
細かな作りの面では、最新の電動コンポーネントにしっかりと対応していて、ボトル台座の近くに開けられた電子ケーブル内蔵用も大きめに設定されているため、カンパニョーロのEPSも特に加工をせずスマートに装備できるのがいいですね。
軽量車のようなヒラヒラとした感覚と毛色は違うものの、かっちりとしたペダリングフィールで十分な出足の軽さを持っている。
とはいえノアの走りが輝くのはレースにおける速度域だ。平地で時速40km前後を維持するような走りではトルクをしっかりかけるようなペダリングが自然とでき、グイグイと前に進んでゆく。試乗車に装備されたようなリムハイトの高いエアロホイールとのマッチングも素晴らしく、無駄な力を使わず高速を維持しやすい感覚がある。平坦や緩斜面における高速ライドはじつに楽しい。
そして、そこから腰を上げて加速するような走りはノアの真骨頂。
ヘッド、ハンガー部をはじめ一体感のあるフレーム剛性によって速度がスムーズに上がる感覚がある。脚力に限りが無ければギヤをガンガン重くして加速を続けられそうで、レース指向のライダーにはこの力強い走行性能は大きな魅力だ。
スピードが上がれば上がるほどに楽しくなるバイクで、その時に得られるスムーズな走行感は、優れたパワートランスファーのみならず、高いエアロダイナミクスも貢献しているに違いない。
勾配の厳しい上りでもとくに性能に不満を感じることはないだろう。シッティングでトルクをかけてもスムーズに上り、平均点以上の登坂能力で、決して平地だけに特化したバイクではなくオールラウンドな走行性能を持っている。とはいえヒルクライムをするならリドレーにはヘリウムSLといったスペシャルモデルがあるわけで、こだわる選手ならそちらを選ぶべきだろう。
そして、感心させられるのはその乗り心地だ。とかくエアロロードというと縦に固く、路面からの突き上げが強いものも多いが、ノアは違う。アーチ状のトップチューブが効果を発揮するのに加え、エアロダイナミクスのためにフォークブレードとシートステーに設けられたスリット加工は、振動吸収性においても優れた仕事を行なっているようだ。
これらにより高速でギャップを越えた際にバイクの挙動の乱れを最小限に抑え、荒れた路面で連続的に発生する細かな振動についてもその角を和らげてくれる。エアロロードとしてはかなりレベルの高い快適性を備えているので、長距離レースでも不満を覚えることはないだろう。
ノアの魅力である力強い走行性能を生かせるのは、レーサーをはじめ速く走ることに大いなる快感を覚えるライダーだろう。
もちろんその優れた巡航性能と空力性能を、コンパクトドライブや軽量なエアロホイールと組み合わせれば、週末のレクリエーショナルライダーにとっても高速クルーザーとして、ロングライドなどの場面で十分な武器になってくれるはずだ。
そして高い戦闘能力を備えロット・ベリソルチームの主要機として、エーススプリンターのアンドレ・グライペルをはじめ数多くのライダーに勝利をもたらしていることは周知の事実。ノアがロットチームでも多く使われる理由は、優れた空力性能を備えつつも、反応性や安定性、そして快適性などロードレースに求められる要素を高いレベルで融合させているからに他ならない。
エアロダイナミクスの追求は、翼断面チューブを多用して行なうのが常とう手段であり、ノアの各チューブもそれに則ったもの。しかし、このバイクはそれだけに留まらず独自の技術を数多く盛り込むことで、その確固たる地位を築いているのだ。
その中でも目を惹くのがフロントフォークとシートステーに搭載した「Fスピリットフォーク」だ。エアロパーツをブランドとして名高いオーバルコンセプト社と共同開発したこの独自技術は、走行時にスポークが乱す空気を整流する効果を発揮し、同社のテストによると空気抵抗を7.44%削減できるという。
そして、もう一つのエアロダイナミクス技術が「Fサーファス」。フレームのヘッドチューブ、ダウンチューブ、シートチューブには幅5ミリ程の特殊なテープが装備されている。その表面はザラついた加工が施され、この処理がフレーム表面を伝う空気を整流し、4.1%の空気抵抗削減をもたらす。また、ワイヤー類の内臓仕様も空気抵抗削減に貢献し、2012年モデルからは電動式と機械式双方に対応している。
ノアはこれらのエアロテクノロジーを盛り込むことで、時速40kmの走行時におけるパワーを約15ワット低減することを可能にしている。しかしエアロ性能を追求したバイクにありがちなのが、ハンガーやヘッド部のねじれ剛性、さらには十分な乗り心地の確保が難しくなることだ。
これに対しノアはまず、ハイモジュラスカーボン素材のグレードを単一ではなく、フレームにおいて剛性と強度、そして柔軟性が必要とされる部分を見極め、50、40、30トンのグレードを適材適所に配置する。その上でフレーム形状とバランスさせて最適な剛性を作り上げている。
ヘッド部については、下側のベアリングを1-1/2インチ径としたテーパードヘッド採用。さらにハンガーシェルはプレスフィット30規格のオーバーサイズタイプに進化を遂げた。こうしてパワーラインの要所に十分なボリュームを与えることで、プロ選手のパワフルなペダリングを受け止める高いねじれ剛性を確保する。
このパワーラインとのバランスを図り、フレーム全体の剛性を最適化するのがアッパーラインだ。とくにアーチシェイプされたトップチューブは、縦方向に固くなりがちなエアロ形状のフレームに柔軟性を与え、乗り心地を高めるために大きな役割を果たす上、ダンシングでの軽やかなバイクの振りといった効果もたらすことでスムーズな加速を演出する。
ノアが現行形に生まれ変わってからはや5年。しかしフレーム形状をほぼ変えることなくプロレースで多くの実績を残しているのは、エアロダイナミクスの高さに加え、優れた動力性能をバランスする数々の技術を集約した基本設計の高さゆえだ。進化を続けるリドレーのフラッグシップは、今年もロット・ベリソルの選手たちに多くの勝利をもたらすだろう。
なお、FASTテクノロジー搭載の姉妹モデル、NOAH FASTのインプレはページ末尾のリンクより確認してほしい。
リドレー NOAH
サイズ | XS、S、M |
カラー | ロットレプリカ |
フレーム素材 | 50/40/30Tハイモジュラスカーボン |
重量 | フレーム単体=1280g、フロントフォーク=450g |
フレームセット価格 | 36万1200円 |
インプレッション
「時速35kmを過ぎからのスピードの伸びが非常に良い」(浅見和洋 なるしまフレンド)
フレームの形状が表している通り、高速域でのスピードの伸びは非常に高いレベルを実現しています。一般的にエアロ形状のフレームは縦方向には固い傾向があり、横方向の剛性を確保するのが難しい面があります。しかし、このノアについては横方向の剛性も程良くバランスされるので、とても乗りやすかった事が印象的でした。意外にもシャキッとしたライディングフィールがり、その走りに驚きました。確かに縦方向の剛性が高い印象はありますが、トップチューブの弓なりの形状が効果を発揮しているためか、路面からの突き上げはあまり感じられないので、ロングライドもストレス無くこなせるでしょう。
エアロ効果についてはシートステーとフォークに入ったスリット、表面がざらざらとしたテープの恩恵を明確に感じることは難しいところ。しかし、実際に乗って高速域になったときのスピードの伸びはとても優れているので、少なからずとも影響はあるのかもしれませんね。メーターを装備して走ったわけではない為厳密には言えませんが、感覚的には時速35kmを過ぎたあたりからのスピードの伸び、これは特筆すべきですね。
ノアがターゲットとする速度域はかなり高いので、正直一般レベルの方がノアの最大性能を引き出すのは難しいとは思いますが、脚力があればスピードが無限大に伸びてゆくようなイメージすらあります。それだけに試乗車に装備されるFFWDのF6Rのようなエアロホイールとの組み合わせは抜群で、なかでもF6Rはベストマッチと言えるでしょう。
コーナリング性能も非常に安定していて、高速のダウンヒルなどでも安心して下ることができます。先にも述べたように横剛性も確保されていることから上り性能に不満を覚えることはなく、シッティングでグイグイと上ってゆくような走り方に向いています。ダンシングでカリカリと踏んで行くような走りにも十分に応えてくれますが、やはりそのあたりはヘリウムシリーズなどヒルクライムに向いているモデルが適しています。
ノアは設計通り、非常に巡航性に優れたフレームですので、トルクを掛けて踏んでいけるパワー系のライダーに適しています。速度変化の少ないレース、コースにこそ向いています。エアロ性能からトライアスロンなどにも良いでしょう。また、快適性もあるため耐久レースでは特に後半持ち味を発揮でき、ブルベなどに使ってもマイナス面は無いと思います。
細かな作りの面では、最新の電動コンポーネントにしっかりと対応していて、ボトル台座の近くに開けられた電子ケーブル内蔵用も大きめに設定されているため、カンパニョーロのEPSも特に加工をせずスマートに装備できるのがいいですね。
「スピードが増すほどに走りが楽しくなるエアロロード」(吉本 司)
プロユースのモデルらしくフレーム全体の剛性は高めに設計され、力強いハイスピードライドを楽しめる。ノアはエアロロードらしい魅力を凝縮した1台だ。軽量車のようなヒラヒラとした感覚と毛色は違うものの、かっちりとしたペダリングフィールで十分な出足の軽さを持っている。
とはいえノアの走りが輝くのはレースにおける速度域だ。平地で時速40km前後を維持するような走りではトルクをしっかりかけるようなペダリングが自然とでき、グイグイと前に進んでゆく。試乗車に装備されたようなリムハイトの高いエアロホイールとのマッチングも素晴らしく、無駄な力を使わず高速を維持しやすい感覚がある。平坦や緩斜面における高速ライドはじつに楽しい。
そして、そこから腰を上げて加速するような走りはノアの真骨頂。
ヘッド、ハンガー部をはじめ一体感のあるフレーム剛性によって速度がスムーズに上がる感覚がある。脚力に限りが無ければギヤをガンガン重くして加速を続けられそうで、レース指向のライダーにはこの力強い走行性能は大きな魅力だ。
スピードが上がれば上がるほどに楽しくなるバイクで、その時に得られるスムーズな走行感は、優れたパワートランスファーのみならず、高いエアロダイナミクスも貢献しているに違いない。
勾配の厳しい上りでもとくに性能に不満を感じることはないだろう。シッティングでトルクをかけてもスムーズに上り、平均点以上の登坂能力で、決して平地だけに特化したバイクではなくオールラウンドな走行性能を持っている。とはいえヒルクライムをするならリドレーにはヘリウムSLといったスペシャルモデルがあるわけで、こだわる選手ならそちらを選ぶべきだろう。
そして、感心させられるのはその乗り心地だ。とかくエアロロードというと縦に固く、路面からの突き上げが強いものも多いが、ノアは違う。アーチ状のトップチューブが効果を発揮するのに加え、エアロダイナミクスのためにフォークブレードとシートステーに設けられたスリット加工は、振動吸収性においても優れた仕事を行なっているようだ。
これらにより高速でギャップを越えた際にバイクの挙動の乱れを最小限に抑え、荒れた路面で連続的に発生する細かな振動についてもその角を和らげてくれる。エアロロードとしてはかなりレベルの高い快適性を備えているので、長距離レースでも不満を覚えることはないだろう。
ノアの魅力である力強い走行性能を生かせるのは、レーサーをはじめ速く走ることに大いなる快感を覚えるライダーだろう。
もちろんその優れた巡航性能と空力性能を、コンパクトドライブや軽量なエアロホイールと組み合わせれば、週末のレクリエーショナルライダーにとっても高速クルーザーとして、ロングライドなどの場面で十分な武器になってくれるはずだ。
編集:シクロワイアード 提供:ジェイピースポーツグループ