2013/01/18(金) - 18:37
これまでロット・ベリソルにおいてエアロロードのノアとともに主要機として活躍してきたもう一つのフラッグシップが「ヘリウム」だ。リドレーの2013年ラインナップでは超軽量モデルの「ヘリウムSL」が加わり、ヘリウムはマイナーチェンジを受けて価格も抑えられ、新たにミドルレンジの役割を担うことになった。
リドレー HELIUM
マイナーチェンジと言ってもフレームの金型は同様なので、従来モデルが持つ高い走行性能は確実に息づいている。変更部分はカーボン素材で、従来モデルでは50T/40Tクラスを用いて軽量化を追求したが、新型では30/24Tグレードに見直した。そして、フレーム単体重量は1100gという実用的なレベルに仕上げつつも、快適性や堅牢性を大幅に向上させ、より幅広いレベルのライダーにフィットする性能へ変貌を遂げている。
緩やかなベンドシェイプを与えられたフォークブレード。振動吸収性能向上に貢献する
ヘリウムのフレーム形状は、エッジを強調したフェニックスとは違い、とくにフロントセクションは丸断面をメインとするチューブで構成され、軽量性に配慮しながらパワフルなペダリングを受け止めるだけの剛性を確保する設計が随所に見られる。ヘッドチューブは下側のベアリングを1-1/2インチとしたテーパードタイプによりダウンチューブとフォーククラウンの大径化を可能にし、強固なヘッドまわりの剛性を追求した。
ヘッド側で大きな断面積を持つダウンチューブは、そのレベルを維持しながらハンガーシェルへと結ばれる。ハンガーシェル規格はトラブルの少ないオーソドックスなスレッドタイプだが、接合される各チューブはシェル幅いっぱいに広げた断面を持ち、ハンガーまわりのボリュームは十分だ。さらにハンガーシェルとチェーンステー、フルカーボン製のリヤエンドは一体成型によって軽量化と高剛性を両立し、パワーロスの少ないペダリングの追求に大きな貢献を見せた
ダブルタイプのシートステーは横方向にしっかり扁平加工され、優れた振動吸収性を発揮する
大きな断面積を持つ丸断面のダウンチューブ。パワーロスのないペダリング性能をもたらす
フルカーボンのリヤエンドはチェーンステーと一体成型することで高い剛性を確保する
十分なボリュームを確保したチェーンステー。ベンド加工により剛性と快適性をバランスする
シートまわりは一体型のISP構造によって軽量化するとともに、この部分の剛性アップによってペダリングのパワーロス低減が狙われている。また、アルミ製のクランプ部は、通常の20㎜ハイトのほかに36㎜タイプも用意されており、サドル高のセッティングをより幅広い範囲で行なうことが可能だ。調整幅の狭さがウイークポイントとされるISPタイプだが、種類の異なるクランプを用意しているのは、とくにポジション変化の大きい発展途上のホビーライダーには使い勝手のいい仕様と言えるだろう。
そして、ヘリウムはバックステーの作りも大きな特徴となる。「フレキシブルシートステー」と呼ばれる設計は、2本式のシートステーに大きな横方向への扁平加工を施し、垂直方向の荷重に対して柔軟に反応することで振動吸収性を高めつつ、横方向にも十分な剛性を得ることに成功している。
オールラウンドな性能を狙うだけに振動吸収性も忘れない。リアバックは乗り心地の向上に注力されている
シート部はインテグラルタイプを採用。チューブは翼断面に成型されエアロ効果を意識する
BBはオーソドックスなスレッドタイプだが、ハンガー部の剛性は十二分なレベルにある
さらにチェーンステーのベンド加工もプラスして、優れた乗り心地と高い駆動伝達を両立するバックセクションの実現に至っている。一方、フロント側の快適性についてはベンドを与えたブレードのフロントフォークがしなることで乗り心地を高めた。
プロレースで多くの実績を残してきた優れた基本設計をそのまま受け継ぎながら、快適性を高め価格も大幅に抑えることに成功した新型ヘリウム。その存在はホビーライダーにとって等身大の高性能であり、これまで以上に魅力的なモデルに生まれ変わった。
だれもが体感できる加速の良さが魅力 なんといっても加速性能がいいバイクです。ペダルを踏み始めたらすぐに、どんな人にも分かる優れた加速を持っています。それは平地、上り問わずどんなコースでも高いレベルを体感できると思います。
エアロロードのような高速域ではなく、比較的速度域の低いところでの加速の良さが演出されているので、その特性を生かすには、やはりヒルクライムレースなどが向いているでしょう。ヒルクライムではいかに鋭い反応をさせて、それを推進力に結びつけるかが大切なので、ヘリウムの特性は有効です。また、反応性の良さは反面、つい踏まされてしまうので後半ばててしまう可能性もあるので、気を付けないといけませんね。
フレーム剛性はリドレーのラインナップで固いか柔らかいかでいえば、固い部類に入ると思います。これまでのヘリウムはもっと乾いたライディングフィールで、それゆえに気を使う場面も部分もあったけれども、現行モデルはそれが解消されているので、今までよりもいろいろなライディングシーンに応えてくれると思います。また、カーボン素材が変更されてチューブが今までよりも肉厚になったことで快適性も向上しているのではないでしょうか。
丸断面の大型チューブは空力性能で考えると不利な面もあるかもしれません。しかし、シンプルな丸型の断面をメインに構成されたヘリウムのフレームは、力をかけても変なたわみ方をしないのでいいですね。素直なしなり特性を持つので、クセのあるペダリングも受け入れやすく、どんな人でも乗りやすく仕上げられています。
ハンドリングは軽いのですが、下りが怖いという感覚はなく、非常に安定しています。そしてハードなブレーキングでも、フロントまわりはかなりボリュームのあるデザインなので不安となるたわみもなく、しっかりと制動が発揮されて安心できます。
狙う速度域が高いレベルではないので、エアロを意識したフレームワークではありませんが、外出しされたワイヤ方式などオーソドックスな作りは使い勝手がいいです。内蔵式は取り回しが悪いとレバーの引きが重く、とくに変速ではレバーを引いてもリニアにディレーラーが反応しないといったケースも見られます。
試乗車に装備されたFFWDのF6Rとの相性はとても良い印象です。加速性に優れるオールラウンドな性能を持ったヘリウムですが、その特性を最も生かすことができるのはヒルクライムで、ロードレースなら加速の多いコースや、クリテリウムなどが最適だと思います。ロングライドなども許容しますが、リドレーにはフェニックスのラインナップがあるので、そちらの方が適していますね。
軽快感に優れた走りはクラスを超えたレベルにある 従来モデルからカーボン素材を変更して価格を抑えた新型のヘリウムだが、そう聞くと「コストダウンされた廉価版」という、少々ネガティブなイメージを持つ人もいるだろう。しかし、実際に走らせてみると価格以上の走行性能を備えた優れたレーシングバイクであることがわかる。マイナーチェンジされたことを知らされず「昨年ロット・ベリソルが乗ったバイクです」と言われて試乗すれば、「なるほど納得」とコメントしてしまうことだろう。
さて、このヘリウムの何が優れているかというと、まず挙げられるのは走りの軽さだ。いわゆる60Tクラスの超高弾性カーボンで肉薄に仕上げた超軽量のようなパリっとした感覚でなく、どちらかと言えば肉厚感のあるしっかりとしたペダルの踏みごたえだ。フレーム重量1100gというのも納得できる。
しかしながら軽量フレームに負けない抜群の踏み出しの軽さを持っていて、しかもガツンと踏んでもやわな感覚はなく、力強くバイクが前に出る。極めてレーシーな走りで、そのフィーリングだけでもトッププロチームで愛用されていた高性能のDNAを受け継いでいることがわかる。全体的に軽い走行感は、ダンシングでのバイクの振りもキビキビとして軽快なので、ヒルクライムも勾配の変化に伴いダンシングを交えながら気持ちよく上れる。
上りだけでなく平地も優秀だ。重いギヤを踏み続けたとき感じる脚へのストレスもなく、しっかりと力を加えたペダリングも継続しやすいので高速巡航しやすい。そして巡航走行からのアタックでも、踏み出しの軽さを生かしてレスポンスのいい走りを体感できるので、スピード変化のあるロードレースなどでもストレスなく対応できそうだ。
リドレー HELIUM ハンドリングについては、少し軽めな印象だ。リムハイトの高いエアロホイールでは気象と路面状況にもよるが、少し気を使うこともあるだろう。とはいえそれも慣れのレベル。全体的に腰高な乗車感覚はないので、むしろ軽いハンドリングはレーンチェンジやスプリントなどにおける横の動き、コーナリングにおける機敏さなど、トータルで考えるとレースライクなライダーにとってはメリットのほうが大きい。
乗り心地については全体の剛性感からすれば非常に良好なレベルと言える。路面情報をしっかりと把握できるだけの振動を残しつつ、レーシングレベルで不快となる突き上げ感は十分に緩和するので、長距離や多少荒れた路面のレースでも不満を覚えることはないだろう。
全体的に軽く、キビキビとした走りはロードレースやヒルクライムに絶好の1台であり、その価格を見ても心置きなく使い倒せる。また、レースには参加せずとも高い運動性能を持つ速いバイクを望むライダーにも最適だ。価格を抑えても従来のヘリウムの美点は色濃く残っているので、これまで以上に魅力的な存在となり、とてもお買い得感の高いモデルといえる。
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マイナーチェンジと言ってもフレームの金型は同様なので、従来モデルが持つ高い走行性能は確実に息づいている。変更部分はカーボン素材で、従来モデルでは50T/40Tクラスを用いて軽量化を追求したが、新型では30/24Tグレードに見直した。そして、フレーム単体重量は1100gという実用的なレベルに仕上げつつも、快適性や堅牢性を大幅に向上させ、より幅広いレベルのライダーにフィットする性能へ変貌を遂げている。
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ヘリウムのフレーム形状は、エッジを強調したフェニックスとは違い、とくにフロントセクションは丸断面をメインとするチューブで構成され、軽量性に配慮しながらパワフルなペダリングを受け止めるだけの剛性を確保する設計が随所に見られる。ヘッドチューブは下側のベアリングを1-1/2インチとしたテーパードタイプによりダウンチューブとフォーククラウンの大径化を可能にし、強固なヘッドまわりの剛性を追求した。
ヘッド側で大きな断面積を持つダウンチューブは、そのレベルを維持しながらハンガーシェルへと結ばれる。ハンガーシェル規格はトラブルの少ないオーソドックスなスレッドタイプだが、接合される各チューブはシェル幅いっぱいに広げた断面を持ち、ハンガーまわりのボリュームは十分だ。さらにハンガーシェルとチェーンステー、フルカーボン製のリヤエンドは一体成型によって軽量化と高剛性を両立し、パワーロスの少ないペダリングの追求に大きな貢献を見せた
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シートまわりは一体型のISP構造によって軽量化するとともに、この部分の剛性アップによってペダリングのパワーロス低減が狙われている。また、アルミ製のクランプ部は、通常の20㎜ハイトのほかに36㎜タイプも用意されており、サドル高のセッティングをより幅広い範囲で行なうことが可能だ。調整幅の狭さがウイークポイントとされるISPタイプだが、種類の異なるクランプを用意しているのは、とくにポジション変化の大きい発展途上のホビーライダーには使い勝手のいい仕様と言えるだろう。
そして、ヘリウムはバックステーの作りも大きな特徴となる。「フレキシブルシートステー」と呼ばれる設計は、2本式のシートステーに大きな横方向への扁平加工を施し、垂直方向の荷重に対して柔軟に反応することで振動吸収性を高めつつ、横方向にも十分な剛性を得ることに成功している。
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さらにチェーンステーのベンド加工もプラスして、優れた乗り心地と高い駆動伝達を両立するバックセクションの実現に至っている。一方、フロント側の快適性についてはベンドを与えたブレードのフロントフォークがしなることで乗り心地を高めた。
プロレースで多くの実績を残してきた優れた基本設計をそのまま受け継ぎながら、快適性を高め価格も大幅に抑えることに成功した新型ヘリウム。その存在はホビーライダーにとって等身大の高性能であり、これまで以上に魅力的なモデルに生まれ変わった。
リドレー HELIUM
サイズ | XS、S、M |
カラー | 1306A、ロット・レプリカ、ロット・レプリカ・ホワイト |
フレーム素材 | 30/24Tハイモジュラスカーボン |
重 量 | 1100g(フレーム単体)、フロントフォーク=385g |
フレームセット価格 | 24万9900円(税込) |
インプレッション
「加速性能に優れるオールラウンドバイク」(なるしまフレンド 浅見和洋)
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エアロロードのような高速域ではなく、比較的速度域の低いところでの加速の良さが演出されているので、その特性を生かすには、やはりヒルクライムレースなどが向いているでしょう。ヒルクライムではいかに鋭い反応をさせて、それを推進力に結びつけるかが大切なので、ヘリウムの特性は有効です。また、反応性の良さは反面、つい踏まされてしまうので後半ばててしまう可能性もあるので、気を付けないといけませんね。
フレーム剛性はリドレーのラインナップで固いか柔らかいかでいえば、固い部類に入ると思います。これまでのヘリウムはもっと乾いたライディングフィールで、それゆえに気を使う場面も部分もあったけれども、現行モデルはそれが解消されているので、今までよりもいろいろなライディングシーンに応えてくれると思います。また、カーボン素材が変更されてチューブが今までよりも肉厚になったことで快適性も向上しているのではないでしょうか。
丸断面の大型チューブは空力性能で考えると不利な面もあるかもしれません。しかし、シンプルな丸型の断面をメインに構成されたヘリウムのフレームは、力をかけても変なたわみ方をしないのでいいですね。素直なしなり特性を持つので、クセのあるペダリングも受け入れやすく、どんな人でも乗りやすく仕上げられています。
ハンドリングは軽いのですが、下りが怖いという感覚はなく、非常に安定しています。そしてハードなブレーキングでも、フロントまわりはかなりボリュームのあるデザインなので不安となるたわみもなく、しっかりと制動が発揮されて安心できます。
狙う速度域が高いレベルではないので、エアロを意識したフレームワークではありませんが、外出しされたワイヤ方式などオーソドックスな作りは使い勝手がいいです。内蔵式は取り回しが悪いとレバーの引きが重く、とくに変速ではレバーを引いてもリニアにディレーラーが反応しないといったケースも見られます。
試乗車に装備されたFFWDのF6Rとの相性はとても良い印象です。加速性に優れるオールラウンドな性能を持ったヘリウムですが、その特性を最も生かすことができるのはヒルクライムで、ロードレースなら加速の多いコースや、クリテリウムなどが最適だと思います。ロングライドなども許容しますが、リドレーにはフェニックスのラインナップがあるので、そちらの方が適していますね。
「軽い走り、高い反応性でスピード変化の多い走りに最適」(吉本 司)
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さて、このヘリウムの何が優れているかというと、まず挙げられるのは走りの軽さだ。いわゆる60Tクラスの超高弾性カーボンで肉薄に仕上げた超軽量のようなパリっとした感覚でなく、どちらかと言えば肉厚感のあるしっかりとしたペダルの踏みごたえだ。フレーム重量1100gというのも納得できる。
しかしながら軽量フレームに負けない抜群の踏み出しの軽さを持っていて、しかもガツンと踏んでもやわな感覚はなく、力強くバイクが前に出る。極めてレーシーな走りで、そのフィーリングだけでもトッププロチームで愛用されていた高性能のDNAを受け継いでいることがわかる。全体的に軽い走行感は、ダンシングでのバイクの振りもキビキビとして軽快なので、ヒルクライムも勾配の変化に伴いダンシングを交えながら気持ちよく上れる。
上りだけでなく平地も優秀だ。重いギヤを踏み続けたとき感じる脚へのストレスもなく、しっかりと力を加えたペダリングも継続しやすいので高速巡航しやすい。そして巡航走行からのアタックでも、踏み出しの軽さを生かしてレスポンスのいい走りを体感できるので、スピード変化のあるロードレースなどでもストレスなく対応できそうだ。
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乗り心地については全体の剛性感からすれば非常に良好なレベルと言える。路面情報をしっかりと把握できるだけの振動を残しつつ、レーシングレベルで不快となる突き上げ感は十分に緩和するので、長距離や多少荒れた路面のレースでも不満を覚えることはないだろう。
全体的に軽く、キビキビとした走りはロードレースやヒルクライムに絶好の1台であり、その価格を見ても心置きなく使い倒せる。また、レースには参加せずとも高い運動性能を持つ速いバイクを望むライダーにも最適だ。価格を抑えても従来のヘリウムの美点は色濃く残っているので、これまで以上に魅力的な存在となり、とてもお買い得感の高いモデルといえる。
編集:シクロワイアード 提供:ジェイピースポーツグループ