2013/01/18(金) - 18:38
2013年モデルは新たに3機種を投入して、今まで以上に隙の無いラインナップを完成させたリドレー。その中において衝撃をもたらしたのがこの「フェニックス」だ。フレームセットで14万4900円という驚きの価格は、これまでのオリオンに代わる最も手ごろなカーボンモデルとなるが、その内容は圧倒的なプライスパフォーマンスを誇るもの。
昨年のパリ〜ルーベでロット・ベリソルのエーススプリンター、アンドレ・グライペルが駆り、その性能に好印象を得たことで、今シーズンは同チームの多くの選手がこのレースでフェニックスに乗る予定というのも見逃せないポイント。
そんなトッププロのお墨付きのフェニックスは、素材に24トンのハイモジュラスカーボンを用いて完全な新設計により誕生した。これまでプロレースで数々の実績を収めてきたダモクレス、そしてエクスカリバーのコンセプトが反映されているのだ。
フロントセクションにはダモクレスで生まれた「エッジチュービング」コンセプトを展開し、ヘッドチューブは下側に1-1/2インチ径のベアリングを搭載したテーパースタイルを採用。トップチューブは横方向に、ダウンチューブは縦方向への変形を大きくしつつヘッドチューブに接合され、ボリュームアップが図られている。大ボリュームクラウンを持つフロントフォークとの組み合わせにより十分なフロント部の剛性を実現し、ダンシングでの高い反応性、正確なコーナリングといった性能を追求した。
ペダリングフィールを左右するハンガー部はプレスフィット30対応のハンガーシェルを軸に構成される。ダウンチューブのBB側は横幅の大きなハンガーシェルに合わせるように横方向への変形を強め、一体感のあるチェーンステーを組み合わせることで、プロ選手のパワフルなペダリングにも耐える十分な剛性を持つパワーラインとしている。
また、パリ〜ルーベにも投入されることからも想像できる通り、高い振動吸収性を備えるのもフェニックスの特徴だ。この性能についてはエクスカリバーに採用されたシートステーの作りが効果を発揮する。モノステーはシートチューブの接合部から横方向への変形を大きくし、そのままリヤエンドへと結ばれ、これが板バネのような効果を発揮して路面からの突き上げを和らげる。同時に横方扁平のトップチューブも乗り心地に貢献している。
バイクの挙動の安定と乗り心地にはフロントフォークによる振動減衰効果が欠かせないが、フェニックスはその点も入念に配慮されている。ポイントとなるのはフォークブレード先端の形状で、この部分を細身に成型し、路面からの入力に対して積極的に動かして振動を和らげるのだ。
さらにフォークブレードはクラウンに対してオフセットした形で接合され、これが振動を直接ライダーに伝えることを緩和。こうした巧みな設計を行なうことで、フェニックスはエントリーグレードながらプロ選手のパワーを受け止める“強さ”と、パリ〜ルーベを走破できる“しなやかさ”を高いレベルで調和させるに至った。
また、細かな仕様でも使い勝手への配慮が見られる。シート部はホビーレベルのライダーにも使いやすいオーソドックスな方式とし、電動変速にも対応したバッテリー台座と内蔵式ワイヤシステムを装備するなど、幅広いユーザー層が想定されている。年々エントリーグレードのカーボンモデルは各社充実を見せているが、フェニックスのパッケージは数ある2013年モデルの中でも、ひときわ際立つ存在と言えるだろう。
「トータルバランスに優れ、どんな楽しみ方にも応えてくれる」
トータルバランスに優れた性能が好印象のフレームです。レース機材と考えても走行性能はバランスよくまとめられており、プロ選手に供給しても文句は出ないレベルにあると思います。ビジュアルは鋭く、走りもそうしたものを想像させますが、実際に乗ってみるとマイルドさや繊細さもあり、ロードレーサーらしいモデルです。
路面からの突き上げ感はしっかりと吸収して、多少路面が悪くてもフレームがそれを補ってくれるので安定感に優れています。その要因となっているのはフロントフォークを中心とするフロントまわり、そして後ろからの突き上げ感は扁平形状のシートステーがしっかり働いているからでしょう。
ハンドリングも良くて扱いやすく、下りにおける走りも十分な安定感が得られます。やはり上下異径サイズのステアリングコラムを採用した効果が十分に発揮されています。フロントまわりの剛性はしっかりしているので、ダンシングでも非常に扱いやすいです。そして複雑なフレーム形状は、見た目だけでなく各部がしっかりと役割を果たしている印象があり、フレーム全体の剛性レベルも上手くまとめられているので前後でちぐはぐな硬さがなく、スムーズに走れます。
BBまわりの剛性も不足を覚えることはありません。加速性能はシャープさというよりは、伸びを重視した特性と言えるでしょう。今回はFFWDのF6RとF4Rの両方のホイールで試乗してみましたが、ソリッドな加速感を重視するならF4Rとの組み合わせの方が適していると感じました。
ヒルクライム性能はヘリウムのようなレベルにはありませんが、価格を考えれば十分過ぎるほどの走りと言えるでしょう。全体的なパフォーマンスは非常にコストパフォーマンスの高いレベルにあります。
バイクを選ぶには見た目も重要ですが、フェニックスはフレーム設計も最新の規格がすべて取り入れられていて、とても15万円程度とは思えない良さがあり、そこに大きな魅力があります。一昔前では考えられない充実した内容です。メカニックの立場からすると、Di2にも対応しているので購入後のアップグレードにも対応できますし、ワイヤ穴なども作業のしやすい位置に設計されるなど、各部が本当に良く煮詰められています。
フェニックスは乗り心地がいいのでロングライドなどを目指しているユーザーにも最適ですが、トータルバランスに優れた性能を持っているので、まだレースやイベント参加を考えていないようなビギナーの方が購入した場合でも、ロードレースをはじめその後のいろいろなイベント参加などにしっかり対応してくれます。
フレームは24Tクラスのカーボン素材を使用するため、ある程度のチューブ肉厚を持つことから、しっかりとしたライディングフィールで十分な安心感を得られる。軽量フレームのような走りの軽さこそ無いものの、ヘッドチューブからチェーンステーに至るまでのパワーラインは不足のない剛性で、ペダルを踏めばしっかりと前に出る。剛性が高すぎることも無く、一般のライダーでも脚が負けてあがってしまうこともない。
したがって、ある程度高いパワーを持続しながら巡航する走りでも、平坦・上りともに自分の脚力を使い切ることができるだろう。全般的に剛性レベルは多くのライダーに扱いやすいレベルと言える。
初めてのカーボンフレーム、ロードバイクの入門車としてフェニックスを選ぶことも多いと考えられるが、そうしたユーザーでも安心して乗ることができる。それは、過度な軽量化を求めないがゆえの十分な堅牢性や耐久性はもちろんだが、安定性の高い走行性能もそうだ。フェニックスだけでなくリドレーのバイクに全般に共通するのは、乗車時の重心位置がとても優れていること。腰高な微塵も感覚はなく、下りやコーナリングをはじめあらゆる場面でバイクの重心を得やすく、最適な乗車位置を自然に確保できてしまう。こうしたバイクは荒れた路面や高速の下りでなどの場面で大きな安心感を持って走ることができる。
しかもフェニックスは振動減衰特性も優れるので、安定感に優れる素性はさらに強調される。こうした味付けは、パヴェの路面でテストされるリドレーならではだ。
当然ながら乗り心地にも優れており、安全な走りに必要な路面情報を残しつつ不快な振動は十分に吸収するし、大きなギャップを通過するときの挙動の乱れも少ない。これらの安定感と乗り心地の良さは、体力と精神の消耗を抑えてくれ、とくにエントリーレベルのライダーにとっては心強い存在となる。
フェニックスは求めやすい価格ながら、カーボンフレームの魅力はしっかりと凝縮されている。ジオメトリーはレーシング設計なので安楽なロングライドバイクではないが、トータルバランスに優れた性能は、とくに初中級レベルならロードレースからグランフォンドまでオールラウンドに楽しめるだろう。
性能もさることながら、カラーリングや造けいに価格以上のものがあり、上級コンポを搭載しても見劣りしないのもいいところだ。あらゆる面でプライスパフォーマンスに優れた存在だ。
昨年のパリ〜ルーベでロット・ベリソルのエーススプリンター、アンドレ・グライペルが駆り、その性能に好印象を得たことで、今シーズンは同チームの多くの選手がこのレースでフェニックスに乗る予定というのも見逃せないポイント。
そんなトッププロのお墨付きのフェニックスは、素材に24トンのハイモジュラスカーボンを用いて完全な新設計により誕生した。これまでプロレースで数々の実績を収めてきたダモクレス、そしてエクスカリバーのコンセプトが反映されているのだ。
フロントセクションにはダモクレスで生まれた「エッジチュービング」コンセプトを展開し、ヘッドチューブは下側に1-1/2インチ径のベアリングを搭載したテーパースタイルを採用。トップチューブは横方向に、ダウンチューブは縦方向への変形を大きくしつつヘッドチューブに接合され、ボリュームアップが図られている。大ボリュームクラウンを持つフロントフォークとの組み合わせにより十分なフロント部の剛性を実現し、ダンシングでの高い反応性、正確なコーナリングといった性能を追求した。
ペダリングフィールを左右するハンガー部はプレスフィット30対応のハンガーシェルを軸に構成される。ダウンチューブのBB側は横幅の大きなハンガーシェルに合わせるように横方向への変形を強め、一体感のあるチェーンステーを組み合わせることで、プロ選手のパワフルなペダリングにも耐える十分な剛性を持つパワーラインとしている。
また、パリ〜ルーベにも投入されることからも想像できる通り、高い振動吸収性を備えるのもフェニックスの特徴だ。この性能についてはエクスカリバーに採用されたシートステーの作りが効果を発揮する。モノステーはシートチューブの接合部から横方向への変形を大きくし、そのままリヤエンドへと結ばれ、これが板バネのような効果を発揮して路面からの突き上げを和らげる。同時に横方扁平のトップチューブも乗り心地に貢献している。
バイクの挙動の安定と乗り心地にはフロントフォークによる振動減衰効果が欠かせないが、フェニックスはその点も入念に配慮されている。ポイントとなるのはフォークブレード先端の形状で、この部分を細身に成型し、路面からの入力に対して積極的に動かして振動を和らげるのだ。
さらにフォークブレードはクラウンに対してオフセットした形で接合され、これが振動を直接ライダーに伝えることを緩和。こうした巧みな設計を行なうことで、フェニックスはエントリーグレードながらプロ選手のパワーを受け止める“強さ”と、パリ〜ルーベを走破できる“しなやかさ”を高いレベルで調和させるに至った。
また、細かな仕様でも使い勝手への配慮が見られる。シート部はホビーレベルのライダーにも使いやすいオーソドックスな方式とし、電動変速にも対応したバッテリー台座と内蔵式ワイヤシステムを装備するなど、幅広いユーザー層が想定されている。年々エントリーグレードのカーボンモデルは各社充実を見せているが、フェニックスのパッケージは数ある2013年モデルの中でも、ひときわ際立つ存在と言えるだろう。
リドレー FENIX
サイズ | XXS、XS、S、M |
カラー | 1303B-RED、1303B-BLUE、1303D、1303E |
フレーム素材 | 24Tハイモジュラスカーボン |
重量 | フレーム単体=1250g、フロントフォーク=400g |
フレームセット価格 | 14万4900円 |
インプレッション
「トータルバランスに優れ、どんな楽しみ方にも応えてくれる」
(なるしまフレンド 浅見和洋)
トータルバランスに優れた性能が好印象のフレームです。レース機材と考えても走行性能はバランスよくまとめられており、プロ選手に供給しても文句は出ないレベルにあると思います。ビジュアルは鋭く、走りもそうしたものを想像させますが、実際に乗ってみるとマイルドさや繊細さもあり、ロードレーサーらしいモデルです。路面からの突き上げ感はしっかりと吸収して、多少路面が悪くてもフレームがそれを補ってくれるので安定感に優れています。その要因となっているのはフロントフォークを中心とするフロントまわり、そして後ろからの突き上げ感は扁平形状のシートステーがしっかり働いているからでしょう。
ハンドリングも良くて扱いやすく、下りにおける走りも十分な安定感が得られます。やはり上下異径サイズのステアリングコラムを採用した効果が十分に発揮されています。フロントまわりの剛性はしっかりしているので、ダンシングでも非常に扱いやすいです。そして複雑なフレーム形状は、見た目だけでなく各部がしっかりと役割を果たしている印象があり、フレーム全体の剛性レベルも上手くまとめられているので前後でちぐはぐな硬さがなく、スムーズに走れます。
BBまわりの剛性も不足を覚えることはありません。加速性能はシャープさというよりは、伸びを重視した特性と言えるでしょう。今回はFFWDのF6RとF4Rの両方のホイールで試乗してみましたが、ソリッドな加速感を重視するならF4Rとの組み合わせの方が適していると感じました。
ヒルクライム性能はヘリウムのようなレベルにはありませんが、価格を考えれば十分過ぎるほどの走りと言えるでしょう。全体的なパフォーマンスは非常にコストパフォーマンスの高いレベルにあります。
バイクを選ぶには見た目も重要ですが、フェニックスはフレーム設計も最新の規格がすべて取り入れられていて、とても15万円程度とは思えない良さがあり、そこに大きな魅力があります。一昔前では考えられない充実した内容です。メカニックの立場からすると、Di2にも対応しているので購入後のアップグレードにも対応できますし、ワイヤ穴なども作業のしやすい位置に設計されるなど、各部が本当に良く煮詰められています。
フェニックスは乗り心地がいいのでロングライドなどを目指しているユーザーにも最適ですが、トータルバランスに優れた性能を持っているので、まだレースやイベント参加を考えていないようなビギナーの方が購入した場合でも、ロードレースをはじめその後のいろいろなイベント参加などにしっかり対応してくれます。
「安定感と性能バランスに優れ、活躍できるフィールドは広い」(吉本 司)
フェニックスはパリ〜ルーベで使用されたことからコンフォートな走りを強調していると想像していたけれど、トータルバランスを追求したモデルだ。そのジオメトリーは、多くのロングライドモデルにあるような、ヘッドチューブを長くして前傾姿勢を和らげ、チェーンステーを伸ばして乗り心地を高めるというアプローチではない。リドレーの他モデルと同じくレーシングジオメトリーを採用する。あくまで本格的なスポーツライドでも使えることを前提として開発されているのは、自転車競技を国技とするベルギー発のブランドならではだ。フレームは24Tクラスのカーボン素材を使用するため、ある程度のチューブ肉厚を持つことから、しっかりとしたライディングフィールで十分な安心感を得られる。軽量フレームのような走りの軽さこそ無いものの、ヘッドチューブからチェーンステーに至るまでのパワーラインは不足のない剛性で、ペダルを踏めばしっかりと前に出る。剛性が高すぎることも無く、一般のライダーでも脚が負けてあがってしまうこともない。
したがって、ある程度高いパワーを持続しながら巡航する走りでも、平坦・上りともに自分の脚力を使い切ることができるだろう。全般的に剛性レベルは多くのライダーに扱いやすいレベルと言える。
初めてのカーボンフレーム、ロードバイクの入門車としてフェニックスを選ぶことも多いと考えられるが、そうしたユーザーでも安心して乗ることができる。それは、過度な軽量化を求めないがゆえの十分な堅牢性や耐久性はもちろんだが、安定性の高い走行性能もそうだ。フェニックスだけでなくリドレーのバイクに全般に共通するのは、乗車時の重心位置がとても優れていること。腰高な微塵も感覚はなく、下りやコーナリングをはじめあらゆる場面でバイクの重心を得やすく、最適な乗車位置を自然に確保できてしまう。こうしたバイクは荒れた路面や高速の下りでなどの場面で大きな安心感を持って走ることができる。
しかもフェニックスは振動減衰特性も優れるので、安定感に優れる素性はさらに強調される。こうした味付けは、パヴェの路面でテストされるリドレーならではだ。
当然ながら乗り心地にも優れており、安全な走りに必要な路面情報を残しつつ不快な振動は十分に吸収するし、大きなギャップを通過するときの挙動の乱れも少ない。これらの安定感と乗り心地の良さは、体力と精神の消耗を抑えてくれ、とくにエントリーレベルのライダーにとっては心強い存在となる。
フェニックスは求めやすい価格ながら、カーボンフレームの魅力はしっかりと凝縮されている。ジオメトリーはレーシング設計なので安楽なロングライドバイクではないが、トータルバランスに優れた性能は、とくに初中級レベルならロードレースからグランフォンドまでオールラウンドに楽しめるだろう。
性能もさることながら、カラーリングや造けいに価格以上のものがあり、上級コンポを搭載しても見劣りしないのもいいところだ。あらゆる面でプライスパフォーマンスに優れた存在だ。
編集:シクロワイアード 提供:ジェイピースポーツグループ