2012/07/02(月) - 11:19
自転車大国・ベルギーに根ざすリドレーの新たなるチャレンジが、エアロプロジェクト"FAST"。多くのテストを重ねて生み出されたハイエンドエアロマシンがNOAH FAST(ノア・ファスト)だ。
ノア・ファストは、それまでのハイエンドロードモデルであるノアをエアロダイナミクスにおいて更に進化させたモデルだ。2011年のツール・ド・フランスでヴァカンソレイユチームが使用しデビューを飾ると、その特徴あるブレーキシステムを始めとして一躍話題の中心となった。
流体力学に焦点を当てて設計し、いかに乗り心地を犠牲にしないかという面に重点をおき、その理想を実現させたのが、Future Aero Speed TechnologyことFASTだ。ノア・ファストには流体力学に則った3つの"F"テクノロジーが搭載される。
まず1つめが、フロントフォークとシートステイに設けたスリット「F-スプリットフォーク」。走行中のバイクの中で、最も大きな空気抵抗を生み出すのがタイヤとホイールだ。ホイールは回転しているため、横から見た時に上半分は進行方向からの風に対して逆方向へと進んでいることになる。リドレーは大きな抵抗となるこの部分に着目し、スリットを設けることで乱流の発生を抑えることに成功した。
空気の剥離も大きな空気抵抗を生じさせる原因だ。2つめのテクノロジー「F-サーフェス」は、風洞実験を繰り返すことで気流がフレームから剥離しているポイントに把握し、意図的に粒子状の「サーファス」テープをヘッドチューブやシートチューブに貼ることで、整流効果を高めている。
以上2つのテクノロジーはノアにも搭載されるものだが、ノア・ファストの最もエポックメイキングな部分が次に紹介する「F-ブレーキ」だ。フレームとブレーキを完全に一体化させたフォルムは見た目にも高いエアロ効果を思わせるデザインとなる。ブレーキアーチに相当する部分をワイヤーで引き、カーボンをしならせることで制動させるという他には無いシステムだが、ツール・ド・フランスなどビッグレースでプロが使用していることからも信頼性を伺うことができる。
もちろんワイヤー類は全てDi2対応のフレーム内蔵化とされ、シートチューブとリアホイール間の空気の巻き込みを防ぐためにえぐられたシートチューブなど、細部にわたっても手抜かりは見当たらない。
フレームのデザインは基本的にノアから受け継ぐものだが、それはそもそもの高い運動性能と空力性能にがあってからこそできること。これまで説明したテクノロジーと組み合わせることで、同社の丸パイプのオールラウンドフレーム、ヘリウムと比較して40km/h走行時で20ワットものパワーをセーブすることができるという。
フレームは50、40、30トンのはいモジュラスカーボンを適材適所に配置する。湾曲したトップチューブと組み合わせることで単純に硬いのみではなく、走りの軽さと振動吸収性を両立させ、グランツアーなどの過酷な状況下においても身体への負担が多く掛からないよう工夫がされる。これは石畳の厳しいレースが多く開催される地、ベルギーのブランドならではと言えるところだ。
プレスフィットのBB30のボトムブラケット、ヘッドチューブは上側1-1/8、下側1.5インチの上下異径のテーパードヘッドとされ、高いハンドリングとパワー伝達効率を高める工夫が取られた。
これだけのテクノロジーが凝縮されたノア・ファストにはフレームセットで493,500円というプライスタグが付けられるが、1カラーのみのブラック基調のペイントや、視覚的にも訴える幾多のテクノロジーは、エアロ系バイクを好む方には非常に魅力的と言えるだろう。
リドレーが究極の最高速バイクを目指して生まれたノア・ファスト。2名のテストライダーはどのように評価するのだろうか興味は尽きない。早速インプレッションをお届けしよう。
―インプレッション
「とにかく長く速く走り続けたい人にピッタリの一台」 金子友也(YOU CAN)
第一印象は、平坦で早く走る為に生れたような自転車だと感じました。シートにどっしりと座って高い出力で踏んでいる時に、しっかりとパフォーマンスが発揮される自転車だと思います。見た目からも判るように、一番のセールスポイントと思われるエアロダイナミクスに優れているの明らかでしょう。
ある程度の速度を維持しながら廻している時の優位性は相当のレベルに仕上がってます。しっかりとスピードを乗せてあげれば、そのまま高い速度域を維持するのは苦労しないし、クセもなく綺麗に進んでいってくれます。長距離を淡々と走るような場面でのパフォーマンスは相当高いものだと思います。
反面、横剛性という観点からみるとマイルドな部類に属するフレームですから、ダンシングで出力を上げた際などは、反応が一歩遅れると感じる場面もありました。ペダリングに於いて、どこか1点で思い切りガツッといった踏み方をしてしまったり、無秩序にガシガシと踏み倒した場合には反応の遅れが気になる可能性があるかも知れません。
レースシーンのスプリントなど、踏んだ瞬間の0.1秒単位の反応を要求される場面は苦手だろうと予想します。それを差し引いても、綺麗なペダリングには素晴らしく応えてくれるポテンシャルには素晴らしいものがあると思います。ロングライドイベントなどでもこの特徴は十分感じ取れるものですが、このバイクの本領が発揮されるのは、もう少し高い速度域でしょう。ファン系のイベントよりも、もう少しレーシーなフィールドの方を得意とすると思います。
「レースの早い段階から逃げを打ち、そのまま逃げ切りたい。」「とにかく長く速く走り続けたい。」こんなイメージを持っている人にはピッタリでしょう。
ハンドリングに関しては、見た目から受ける印象よりはクイックでした。このクイックさも怖さを感じるクイックさではなく、車体の直進性がしっかりしたいるため、ある程度深く切り込んでも怖さ自体は感じないクイックさと云った感じでしょうか。
ブレーキのタッチはかなり柔らかい感触が特徴です。レースユースに於けるイレギュラーな場面でシビアな急制動を強いられる時などに、好き嫌いが分かれる気がします。ただし、これはあくまでもレースレベルの速度域に於けるシビアなコントロールに関してであって、日常ユースのストッピングパワーには全く不安はないレベルです。
今回のテストバイクはFFWDのカーボンディープリムが装着されていましたが、これが最も適した選択だと思います。レースの早い場面で逃げを打ち、そのまま高い速度を維持しながら逃げ続ける場面でも、このフレームの特徴にぴったりくるのは巡航性能に優れるカーボンディープでしょう。
より瞬発力を求めるのであれば、カッチリした反応の良いホイールを入れてあげれば、かなりクイックな動きはしてくれると思いますが、スプリントにもしっかり対応できるレベルを求めると厳しいところがあるかもしれません。
ぱっと見でTTバイクのようなルックスや、こだわりが感じられるブレーキ形状などからも、高速巡航性能に特化させているのは間違いないと思います。ある程度のペダリングスキルを持つライダーにとっては、長距離を高い速度域を維持して走るにはもってこいのバイクであると言えるでしょう。
ターゲットユーザーとしては、レースであれば”とにかく逃げて勝ちたい人”には最高でしょう。耐久イベントなどで、長時間の高速巡航で辛くなってきたときなども、このバイクのポテンシャルが強い味方になってくれるはずです。”高い速度域を維持しながら長距離を逃げ続ける”こんな場面にはもってこいのバイクだと思います。
「高い巡航性能と刺激的に美しいビジュアルを兼ね備えたバイク」 村上純平(YOU CAN)
このリドレー・ファストはカーボンバイクの中でも滑らかな走り味のバイクに分類されると思います。さすがにベルギー産の自転車だけあって高速巡航時の衝撃吸収性などは十分なものだと感じました。そのダイナミックな見た目に反して、滑らかな乗り味を持ったかなり乗りやすいバイクだと言えるでしょう。
レース専用フレームの中でも、特に反応に優れるフレームに比べると、この滑らかな分だけ反応が遅れてくるところがありました。入力と反応の間に多少の誤差がある感じです。このタイムラグが合わないライダーも居るかもしれません。本当にパキパキのレースバイクを好むライダー層の中では好みが分かれると思います。
ブレーキのタッチはソフトです。私はシマノ製ブレーキを愛用していることもありシッカリ系のタッチを好むのですが、シマノを常用しているライダーにはこのソフトなタッチが頼りなく感じるかもしれません。シマノとカンパでざっくり分けてしまえば、カンパ寄りのブレーキフィールだと感じました。
ただし、あくまでも握り味が柔らかめと云うことであって、ブレーキの効きに関しては全く問題はありません。実際、テストコースの下り坂でもブレーキ性能に不安を覚えることもありませんでしたから。ブレーキレバーを握り込んだら握り込んだ分だけしっかりと効いてくれる感じです。
ハンドリングに関しては、フロント周りは軽めでシャキシャキ感を持っていてとても気持ち良いものでした。唯一、高速域の下り区間での安定感に対しては少し不満を感じる場面がありました。速度を上げると、自分のイメージするラインよりも外側にずれていく感覚がありました。フレームやフォークの強度が不足している感じがないだけに、このズレの原因は私には判りませんでした。単に慣れの問題なのかもしれません。
このフレームの外観から判る”高速巡航性”に関しては申し分ありません。ベルギー産らしい直進性の高さもあり、安心して気持ち良く巡航できます。ここは自分の好みにピッタリでした。ベルギーの特徴を感じ取れる振動吸収性の高さや直進性の高さ、走りの滑らかさからもレースに限らずツーリングユースでも十分使って行けるフレームだと思います。
重量的にもかなり軽いので、一定のペースで登っていくようなヒルクライムでは十分武器になると思います。富士スバルラインのような速度が高めのヒルクライムがピッタリくるイメージでしょうか。
セットされているFFWDのカーボンディープホイールももちろん良いのですが、フレームのマイルド感にホイールのマイルドな特性が重なっているので、個人的にはアルミリムの堅めのホイールを合わせてみたいとも感じます。カッチリ系のホイールを入れる事で、十分マイルドな乗り味の中にキビキビ感が生まれて、より走りが生きてくる気がします。
セールスポイントはズバリ”カッコイイ”だと思います。いくらビジュアルが美しくても、自転車本来の性能面がなおざりでは論外ですが、このバイクの基本性能には全く問題はありません。巡航性能や滑らかな乗り味など魅力のポイントも多数ありますが、やはりこのスタイルはとても刺激的に美しいと思います。テストライダーとしては失格コメントかも知れませんが、このカッコ良さも私には大きな魅力です。
リドレー NOAH FAST
サイズ:XS、S、M
ヘッドセット:上1-1/8、下1.5インチ
ボトムブラケット:BB30
フレーム素材:50、40、30tハイモジュラスカーボンファイバー
重 量:1220g(フレーム単体)
カラー:FB(1カラーのみ)
価 格:493,500円(税込・フレームセット)
インプレライダーのプロフィール
金子友也(YOU CAN)
1987年11月27日生まれ。高校から競技を始め、チームユーキャン、ブリヂストンエスポワール、チームブリヂストンアンカーに所属し、国内、アジアツアー、ヨーロッパレースに参戦。全日本選手権U23で6位、フランス第2カテゴリー優勝。西日本実業団選手権BR-1優勝、実業団in石川JPT 9位などの実績を持ち、ヒルクライムレースや暑い天候のサバイバルレースが得意。2012年4月からバイシクルショップユーキャンに勤務。
村上純平(YOU CAN)
鹿屋体育大学時代に全日本選手権U23で優勝。翌年からシマノレーシングに4シーズン在籍し、うち2シーズンはオランダを拠点に活動。主な戦歴はツールド北海道2010総合5位、ツールドフィリピン第2ステージ2位、ツールド台湾2011第1ステージ4位、ツールドおきなわ2011山岳賞など多数。引退後自転車に携る仕事・選手時代に得たものを生かせる環境を求めユーキャンに入社。自転車の「楽しみ」を提供するとともに、ジュニア育成にも取り組む。
YOU CAN(ユーキャン)
text:So.Isobe Kenji.Degawa
photo:Makoto.AYANO
ノア・ファストは、それまでのハイエンドロードモデルであるノアをエアロダイナミクスにおいて更に進化させたモデルだ。2011年のツール・ド・フランスでヴァカンソレイユチームが使用しデビューを飾ると、その特徴あるブレーキシステムを始めとして一躍話題の中心となった。
流体力学に焦点を当てて設計し、いかに乗り心地を犠牲にしないかという面に重点をおき、その理想を実現させたのが、Future Aero Speed TechnologyことFASTだ。ノア・ファストには流体力学に則った3つの"F"テクノロジーが搭載される。
まず1つめが、フロントフォークとシートステイに設けたスリット「F-スプリットフォーク」。走行中のバイクの中で、最も大きな空気抵抗を生み出すのがタイヤとホイールだ。ホイールは回転しているため、横から見た時に上半分は進行方向からの風に対して逆方向へと進んでいることになる。リドレーは大きな抵抗となるこの部分に着目し、スリットを設けることで乱流の発生を抑えることに成功した。
空気の剥離も大きな空気抵抗を生じさせる原因だ。2つめのテクノロジー「F-サーフェス」は、風洞実験を繰り返すことで気流がフレームから剥離しているポイントに把握し、意図的に粒子状の「サーファス」テープをヘッドチューブやシートチューブに貼ることで、整流効果を高めている。
以上2つのテクノロジーはノアにも搭載されるものだが、ノア・ファストの最もエポックメイキングな部分が次に紹介する「F-ブレーキ」だ。フレームとブレーキを完全に一体化させたフォルムは見た目にも高いエアロ効果を思わせるデザインとなる。ブレーキアーチに相当する部分をワイヤーで引き、カーボンをしならせることで制動させるという他には無いシステムだが、ツール・ド・フランスなどビッグレースでプロが使用していることからも信頼性を伺うことができる。
もちろんワイヤー類は全てDi2対応のフレーム内蔵化とされ、シートチューブとリアホイール間の空気の巻き込みを防ぐためにえぐられたシートチューブなど、細部にわたっても手抜かりは見当たらない。
フレームのデザインは基本的にノアから受け継ぐものだが、それはそもそもの高い運動性能と空力性能にがあってからこそできること。これまで説明したテクノロジーと組み合わせることで、同社の丸パイプのオールラウンドフレーム、ヘリウムと比較して40km/h走行時で20ワットものパワーをセーブすることができるという。
フレームは50、40、30トンのはいモジュラスカーボンを適材適所に配置する。湾曲したトップチューブと組み合わせることで単純に硬いのみではなく、走りの軽さと振動吸収性を両立させ、グランツアーなどの過酷な状況下においても身体への負担が多く掛からないよう工夫がされる。これは石畳の厳しいレースが多く開催される地、ベルギーのブランドならではと言えるところだ。
プレスフィットのBB30のボトムブラケット、ヘッドチューブは上側1-1/8、下側1.5インチの上下異径のテーパードヘッドとされ、高いハンドリングとパワー伝達効率を高める工夫が取られた。
これだけのテクノロジーが凝縮されたノア・ファストにはフレームセットで493,500円というプライスタグが付けられるが、1カラーのみのブラック基調のペイントや、視覚的にも訴える幾多のテクノロジーは、エアロ系バイクを好む方には非常に魅力的と言えるだろう。
リドレーが究極の最高速バイクを目指して生まれたノア・ファスト。2名のテストライダーはどのように評価するのだろうか興味は尽きない。早速インプレッションをお届けしよう。
―インプレッション
「とにかく長く速く走り続けたい人にピッタリの一台」 金子友也(YOU CAN)
第一印象は、平坦で早く走る為に生れたような自転車だと感じました。シートにどっしりと座って高い出力で踏んでいる時に、しっかりとパフォーマンスが発揮される自転車だと思います。見た目からも判るように、一番のセールスポイントと思われるエアロダイナミクスに優れているの明らかでしょう。
ある程度の速度を維持しながら廻している時の優位性は相当のレベルに仕上がってます。しっかりとスピードを乗せてあげれば、そのまま高い速度域を維持するのは苦労しないし、クセもなく綺麗に進んでいってくれます。長距離を淡々と走るような場面でのパフォーマンスは相当高いものだと思います。
反面、横剛性という観点からみるとマイルドな部類に属するフレームですから、ダンシングで出力を上げた際などは、反応が一歩遅れると感じる場面もありました。ペダリングに於いて、どこか1点で思い切りガツッといった踏み方をしてしまったり、無秩序にガシガシと踏み倒した場合には反応の遅れが気になる可能性があるかも知れません。
レースシーンのスプリントなど、踏んだ瞬間の0.1秒単位の反応を要求される場面は苦手だろうと予想します。それを差し引いても、綺麗なペダリングには素晴らしく応えてくれるポテンシャルには素晴らしいものがあると思います。ロングライドイベントなどでもこの特徴は十分感じ取れるものですが、このバイクの本領が発揮されるのは、もう少し高い速度域でしょう。ファン系のイベントよりも、もう少しレーシーなフィールドの方を得意とすると思います。
「レースの早い段階から逃げを打ち、そのまま逃げ切りたい。」「とにかく長く速く走り続けたい。」こんなイメージを持っている人にはピッタリでしょう。
ハンドリングに関しては、見た目から受ける印象よりはクイックでした。このクイックさも怖さを感じるクイックさではなく、車体の直進性がしっかりしたいるため、ある程度深く切り込んでも怖さ自体は感じないクイックさと云った感じでしょうか。
ブレーキのタッチはかなり柔らかい感触が特徴です。レースユースに於けるイレギュラーな場面でシビアな急制動を強いられる時などに、好き嫌いが分かれる気がします。ただし、これはあくまでもレースレベルの速度域に於けるシビアなコントロールに関してであって、日常ユースのストッピングパワーには全く不安はないレベルです。
今回のテストバイクはFFWDのカーボンディープリムが装着されていましたが、これが最も適した選択だと思います。レースの早い場面で逃げを打ち、そのまま高い速度を維持しながら逃げ続ける場面でも、このフレームの特徴にぴったりくるのは巡航性能に優れるカーボンディープでしょう。
より瞬発力を求めるのであれば、カッチリした反応の良いホイールを入れてあげれば、かなりクイックな動きはしてくれると思いますが、スプリントにもしっかり対応できるレベルを求めると厳しいところがあるかもしれません。
ぱっと見でTTバイクのようなルックスや、こだわりが感じられるブレーキ形状などからも、高速巡航性能に特化させているのは間違いないと思います。ある程度のペダリングスキルを持つライダーにとっては、長距離を高い速度域を維持して走るにはもってこいのバイクであると言えるでしょう。
ターゲットユーザーとしては、レースであれば”とにかく逃げて勝ちたい人”には最高でしょう。耐久イベントなどで、長時間の高速巡航で辛くなってきたときなども、このバイクのポテンシャルが強い味方になってくれるはずです。”高い速度域を維持しながら長距離を逃げ続ける”こんな場面にはもってこいのバイクだと思います。
「高い巡航性能と刺激的に美しいビジュアルを兼ね備えたバイク」 村上純平(YOU CAN)
このリドレー・ファストはカーボンバイクの中でも滑らかな走り味のバイクに分類されると思います。さすがにベルギー産の自転車だけあって高速巡航時の衝撃吸収性などは十分なものだと感じました。そのダイナミックな見た目に反して、滑らかな乗り味を持ったかなり乗りやすいバイクだと言えるでしょう。
レース専用フレームの中でも、特に反応に優れるフレームに比べると、この滑らかな分だけ反応が遅れてくるところがありました。入力と反応の間に多少の誤差がある感じです。このタイムラグが合わないライダーも居るかもしれません。本当にパキパキのレースバイクを好むライダー層の中では好みが分かれると思います。
ブレーキのタッチはソフトです。私はシマノ製ブレーキを愛用していることもありシッカリ系のタッチを好むのですが、シマノを常用しているライダーにはこのソフトなタッチが頼りなく感じるかもしれません。シマノとカンパでざっくり分けてしまえば、カンパ寄りのブレーキフィールだと感じました。
ただし、あくまでも握り味が柔らかめと云うことであって、ブレーキの効きに関しては全く問題はありません。実際、テストコースの下り坂でもブレーキ性能に不安を覚えることもありませんでしたから。ブレーキレバーを握り込んだら握り込んだ分だけしっかりと効いてくれる感じです。
ハンドリングに関しては、フロント周りは軽めでシャキシャキ感を持っていてとても気持ち良いものでした。唯一、高速域の下り区間での安定感に対しては少し不満を感じる場面がありました。速度を上げると、自分のイメージするラインよりも外側にずれていく感覚がありました。フレームやフォークの強度が不足している感じがないだけに、このズレの原因は私には判りませんでした。単に慣れの問題なのかもしれません。
このフレームの外観から判る”高速巡航性”に関しては申し分ありません。ベルギー産らしい直進性の高さもあり、安心して気持ち良く巡航できます。ここは自分の好みにピッタリでした。ベルギーの特徴を感じ取れる振動吸収性の高さや直進性の高さ、走りの滑らかさからもレースに限らずツーリングユースでも十分使って行けるフレームだと思います。
重量的にもかなり軽いので、一定のペースで登っていくようなヒルクライムでは十分武器になると思います。富士スバルラインのような速度が高めのヒルクライムがピッタリくるイメージでしょうか。
セットされているFFWDのカーボンディープホイールももちろん良いのですが、フレームのマイルド感にホイールのマイルドな特性が重なっているので、個人的にはアルミリムの堅めのホイールを合わせてみたいとも感じます。カッチリ系のホイールを入れる事で、十分マイルドな乗り味の中にキビキビ感が生まれて、より走りが生きてくる気がします。
セールスポイントはズバリ”カッコイイ”だと思います。いくらビジュアルが美しくても、自転車本来の性能面がなおざりでは論外ですが、このバイクの基本性能には全く問題はありません。巡航性能や滑らかな乗り味など魅力のポイントも多数ありますが、やはりこのスタイルはとても刺激的に美しいと思います。テストライダーとしては失格コメントかも知れませんが、このカッコ良さも私には大きな魅力です。
リドレー NOAH FAST
サイズ:XS、S、M
ヘッドセット:上1-1/8、下1.5インチ
ボトムブラケット:BB30
フレーム素材:50、40、30tハイモジュラスカーボンファイバー
重 量:1220g(フレーム単体)
カラー:FB(1カラーのみ)
価 格:493,500円(税込・フレームセット)
インプレライダーのプロフィール
金子友也(YOU CAN)
1987年11月27日生まれ。高校から競技を始め、チームユーキャン、ブリヂストンエスポワール、チームブリヂストンアンカーに所属し、国内、アジアツアー、ヨーロッパレースに参戦。全日本選手権U23で6位、フランス第2カテゴリー優勝。西日本実業団選手権BR-1優勝、実業団in石川JPT 9位などの実績を持ち、ヒルクライムレースや暑い天候のサバイバルレースが得意。2012年4月からバイシクルショップユーキャンに勤務。
村上純平(YOU CAN)
鹿屋体育大学時代に全日本選手権U23で優勝。翌年からシマノレーシングに4シーズン在籍し、うち2シーズンはオランダを拠点に活動。主な戦歴はツールド北海道2010総合5位、ツールドフィリピン第2ステージ2位、ツールド台湾2011第1ステージ4位、ツールドおきなわ2011山岳賞など多数。引退後自転車に携る仕事・選手時代に得たものを生かせる環境を求めユーキャンに入社。自転車の「楽しみ」を提供するとともに、ジュニア育成にも取り組む。
YOU CAN(ユーキャン)
text:So.Isobe Kenji.Degawa
photo:Makoto.AYANO
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