2011/09/27(火) - 12:30
トレックのカーボンロードバイク「マドン」シリーズで、好調なセールスを記録しているのが今回紹介する5/4/3シリーズだ。
2012年モデルからこれらのシリーズもトレックが誇るカーボンフレーム製造の最先端テクノロジー、OCLVを採用。空隙率1%未満という優れた品質のカーボンフレームがより身近なものとなった。その実力を、インプレッションを交え紹介しよう。
感想は「驚いた」の一言に尽きる。試乗しても6シリーズとの違いがほとんど感じられないほどにあらゆる面においてレベルが高いのだ。
トレック・ジャパンの野口忍さんが、「グラフィックや構成パーツが全く同じなら、6シリーズと5シリーズの違いはほとんど感じられないかもしれませんね」と冗談めかして話していたのだが、それほどまでに6シリーズと5シリーズは実力が拮抗している。
バイクを持ったときの重量差も、単にアッセンブルされているパーツの違いでしかないように思えてくる。
では、6シリーズと5シリーズとの違いはどこにあるのか。ユーザーの立場で見た場合、プロジェクトワンが選べないことが一番大きな違いだろう。
したがって、フレームジオメトリーもヘッドチューブ長が標準的な「H2」のみの展開となる。ハンドルの低いレーシーなポジションを好む向きには、ハンドル高のセッティングに制限が出てくる可能性はある。
フレーム素材はOCLV500だ。また、フロントフォークのコラムがE2オーバル型ステアリングコラムではなく、E2ステアリングコラムになっている。そのような違いはあるが、その違いを差として感じられる人も少ないはずだ。
OCLVについては、6シリーズまでが北米で生産され、5シリーズ以下のモデルはアジア生産となる。"産地"にこだわる人にとっては大きな違いかもしれない。しかし、他社のハイエンドモデルの多くがアジア生産であることを考えれば、そのこと自体はネガティブな要素にはならない。
言い換えれば、それら以外は6シリーズと変わらないということである。BB周りの剛性を高めるBB90も、快適な乗り心地に貢献するライドチューンドシートマストも、スピード/ケイデンスセンサーをチェーンステーに内蔵可能なデュオトラップセンサーも、すべて受け継がれているのだ。もちろんケーブル内蔵方式を採用し、シマノの電動変速システムDi2にも対応する。
実際に試乗した印象も、挙動がややマイルドになった印象を受けるものの、レーシーさに欠けるかと言えばそんなこともない。上りも軽快に走るし、加速時の応答性もフルブレーキング時の安定性も申し分のないレベルにある。6シリーズの時に感じた、シートマストに由来する乗り心地の良さも受け継いでいた。
野口さんは、自信たっぷりにこう話していた。
「乗っていただければはっきりわかります。5シリーズは、他社のハイエンドマシン並みの実力を有しています」
確かに5シリーズは、そんな言葉を大げさに感じさせないほどの名機に仕上がっていた。
OCLVカーボンフレーム採用以外にも、モデルチェンジによってさらに戦闘力が高められている。BB規格はトレック独自のBB90となり、上下異径のフォークコラムを持つE2フォークとなり、フレームの下半分がさらにたくましく、剛性が高まった。
上位機種との大きな違いは、ライドチューンドシートマストではなく、ノーマルタイプのシートポストが採用されていること。このため、4シリーズ以下のモデルは、よく見れば外観でもそれと識別することができる。
走行性能は、他社の同価格帯のカーボンロードと比べると軽快そのもの。硬すぎて踏み負ける感じもないし、ヤワな印象もない。BB90とE2フォークのもたらす剛性感と、OCLV400カーボンの素材の持ち味がマッチしているのだろう。
レースもそこそこ真剣に走りつつ、仲間とロングライドも楽しみたい――という典型的なホビーサイクリストには、まさにぴったりの1台といえるだろう。
乗り心地に関しては、シートマストではないこともあってか、意外にもシッティング時にはやや骨っぽい印象を受けた。しかし、よく考えてみれば、これが乗り慣れたフィーリングであり、シートマストの快適性が高い証拠とも言える。他社ではハイエンドモデルですらノーマルタイプのシートポストを採用することもあるのだから、不満を言うのがぜいたくというものだろう。
このスペックのロードバイクが、105仕様の4.5だと22万9000円で買えてしまうのだから驚きだ。やはり新マドンでも4シリーズはベストセラーとなりそうだ。
OCLVカーボンといえば、少し前までトレックのハイエンドバイクの代名詞であった。そんな高品質なカーボンフレームを採用するロードバイクが完成車で10万円台で購入できるのだ。これはとんでもないニュースだ。
2012年モデルの3シリーズでは、新たに上下異径のヘッドコラムを持つE2フォークが採用されている。これは5シリーズにも採用されているテクノロジーである。
ただし、シートマストやBB90といった上位モデルで採用されているマドン独自のテクノロジーは、このモデルには採用されていない。
もう一つ上位モデルと違う点がある。それは泥よけやキャリアを取り付けるためのマウントが用意されていることだ。ロードレーサーでありながら、タウンユースも視野に入れて開発されていることがうかがい知れる。
それらのことが上位モデルとどういう違いをもたらすのか、興味を持ちながら試乗した。BB周りの剛性レベルはBB90仕様の4シリーズに譲るものの、必要十分な剛性は保たれている。むしろ脚には穏やかで、ロングライドでも使用することを考えれば、アドバンテージであるとも考えられる。それほどレース志向が強くない人なら、これぐらいの硬さを好む人も多いのではないだろうか。
では、レーシーさに欠けるのか、というとそうでもない。3シリーズにも上位モデルと同じジオメトリーが採用されている以上、ツールを制したレーシングバイクの"血"が通っているのだ。そしてその血は、ふとした瞬間に目覚める。たとえば信号ダッシュで一気にスピードに乗せるとき、たとえば時速40kmオーバーで巡航するとき、羊の皮をかぶったマドン3シリーズは、レーシングバイクという狼になる。
マドン3はOCLVカーボンを採用することによって、この価格帯のカーボンフレームのロードバイクの中では一歩抜き出た感がある。さらに塗装の仕上げなど、見た目にもクラス以上の上質感がある。間違いなく価格以上の満足感が得られるはずだ。
2012年モデルからこれらのシリーズもトレックが誇るカーボンフレーム製造の最先端テクノロジー、OCLVを採用。空隙率1%未満という優れた品質のカーボンフレームがより身近なものとなった。その実力を、インプレッションを交え紹介しよう。
上位機種に迫る名機に進化した マドン5シリーズ
感想は「驚いた」の一言に尽きる。試乗しても6シリーズとの違いがほとんど感じられないほどにあらゆる面においてレベルが高いのだ。
トレック・ジャパンの野口忍さんが、「グラフィックや構成パーツが全く同じなら、6シリーズと5シリーズの違いはほとんど感じられないかもしれませんね」と冗談めかして話していたのだが、それほどまでに6シリーズと5シリーズは実力が拮抗している。
バイクを持ったときの重量差も、単にアッセンブルされているパーツの違いでしかないように思えてくる。
では、6シリーズと5シリーズとの違いはどこにあるのか。ユーザーの立場で見た場合、プロジェクトワンが選べないことが一番大きな違いだろう。
したがって、フレームジオメトリーもヘッドチューブ長が標準的な「H2」のみの展開となる。ハンドルの低いレーシーなポジションを好む向きには、ハンドル高のセッティングに制限が出てくる可能性はある。
フレーム素材はOCLV500だ。また、フロントフォークのコラムがE2オーバル型ステアリングコラムではなく、E2ステアリングコラムになっている。そのような違いはあるが、その違いを差として感じられる人も少ないはずだ。
OCLVについては、6シリーズまでが北米で生産され、5シリーズ以下のモデルはアジア生産となる。"産地"にこだわる人にとっては大きな違いかもしれない。しかし、他社のハイエンドモデルの多くがアジア生産であることを考えれば、そのこと自体はネガティブな要素にはならない。
言い換えれば、それら以外は6シリーズと変わらないということである。BB周りの剛性を高めるBB90も、快適な乗り心地に貢献するライドチューンドシートマストも、スピード/ケイデンスセンサーをチェーンステーに内蔵可能なデュオトラップセンサーも、すべて受け継がれているのだ。もちろんケーブル内蔵方式を採用し、シマノの電動変速システムDi2にも対応する。
実際に試乗した印象も、挙動がややマイルドになった印象を受けるものの、レーシーさに欠けるかと言えばそんなこともない。上りも軽快に走るし、加速時の応答性もフルブレーキング時の安定性も申し分のないレベルにある。6シリーズの時に感じた、シートマストに由来する乗り心地の良さも受け継いでいた。
野口さんは、自信たっぷりにこう話していた。
「乗っていただければはっきりわかります。5シリーズは、他社のハイエンドマシン並みの実力を有しています」
確かに5シリーズは、そんな言葉を大げさに感じさせないほどの名機に仕上がっていた。
フルモデルチェンジを果たしたベストセラー マドン4シリーズ
トレックジャパンによると、マドンシリーズのベストセラーモデルは4シリーズだという。アルテグラ搭載モデルと105搭載モデルをラインナップし、価格も20万円台という値ごろ感もあるのが人気の秘密だろう。その4シリーズも、2012年モデルではOCLVカーボンフレームを採用する大々的なモデルチェンジが行われた。OCLVカーボンフレーム採用以外にも、モデルチェンジによってさらに戦闘力が高められている。BB規格はトレック独自のBB90となり、上下異径のフォークコラムを持つE2フォークとなり、フレームの下半分がさらにたくましく、剛性が高まった。
上位機種との大きな違いは、ライドチューンドシートマストではなく、ノーマルタイプのシートポストが採用されていること。このため、4シリーズ以下のモデルは、よく見れば外観でもそれと識別することができる。
走行性能は、他社の同価格帯のカーボンロードと比べると軽快そのもの。硬すぎて踏み負ける感じもないし、ヤワな印象もない。BB90とE2フォークのもたらす剛性感と、OCLV400カーボンの素材の持ち味がマッチしているのだろう。
レースもそこそこ真剣に走りつつ、仲間とロングライドも楽しみたい――という典型的なホビーサイクリストには、まさにぴったりの1台といえるだろう。
乗り心地に関しては、シートマストではないこともあってか、意外にもシッティング時にはやや骨っぽい印象を受けた。しかし、よく考えてみれば、これが乗り慣れたフィーリングであり、シートマストの快適性が高い証拠とも言える。他社ではハイエンドモデルですらノーマルタイプのシートポストを採用することもあるのだから、不満を言うのがぜいたくというものだろう。
このスペックのロードバイクが、105仕様の4.5だと22万9000円で買えてしまうのだから驚きだ。やはり新マドンでも4シリーズはベストセラーとなりそうだ。
ツールを戦う名機の流れをくむ"末弟" マドン3シリーズ
マドンシリーズで最も求めやすい価格を実現しているのがマドン3シリーズ。同シリーズも2012年モデルからOCLVカーボンを採用する。OCLVカーボンといえば、少し前までトレックのハイエンドバイクの代名詞であった。そんな高品質なカーボンフレームを採用するロードバイクが完成車で10万円台で購入できるのだ。これはとんでもないニュースだ。
2012年モデルの3シリーズでは、新たに上下異径のヘッドコラムを持つE2フォークが採用されている。これは5シリーズにも採用されているテクノロジーである。
ただし、シートマストやBB90といった上位モデルで採用されているマドン独自のテクノロジーは、このモデルには採用されていない。
もう一つ上位モデルと違う点がある。それは泥よけやキャリアを取り付けるためのマウントが用意されていることだ。ロードレーサーでありながら、タウンユースも視野に入れて開発されていることがうかがい知れる。
それらのことが上位モデルとどういう違いをもたらすのか、興味を持ちながら試乗した。BB周りの剛性レベルはBB90仕様の4シリーズに譲るものの、必要十分な剛性は保たれている。むしろ脚には穏やかで、ロングライドでも使用することを考えれば、アドバンテージであるとも考えられる。それほどレース志向が強くない人なら、これぐらいの硬さを好む人も多いのではないだろうか。
では、レーシーさに欠けるのか、というとそうでもない。3シリーズにも上位モデルと同じジオメトリーが採用されている以上、ツールを制したレーシングバイクの"血"が通っているのだ。そしてその血は、ふとした瞬間に目覚める。たとえば信号ダッシュで一気にスピードに乗せるとき、たとえば時速40kmオーバーで巡航するとき、羊の皮をかぶったマドン3シリーズは、レーシングバイクという狼になる。
マドン3はOCLVカーボンを採用することによって、この価格帯のカーボンフレームのロードバイクの中では一歩抜き出た感がある。さらに塗装の仕上げなど、見た目にもクラス以上の上質感がある。間違いなく価格以上の満足感が得られるはずだ。
提供:トレック・ジャパン レポート:浅野真則、シクロワイアード編集部