2011/10/05(水) - 18:34
OCLVカーボンで武装した史上最軽量ダウンヒルバイク SESSION セッション
トレックは2012モデルのMTBラインナップに注目のモデルを追加してきた。新たにOCLVマウンテンカーボンフレームを採用したDHバイク SESSION(セッション)9.9だ。2011モデルはアルミフレームだったので、同じ名前でも中身は全くの別物といってよい。開発陣が「おそらく史上最軽量のDHバイク」と太鼓判を押すこのモデルは、最先端のカーボンフレーム製造技術とトレックが誇るマウンテンバイクに関する様々なテクノロジーで武装した注目のモデルだ。ワールドカップを制した高い戦闘力の秘密に迫りつつ、トレックの優れたテクノロジーを改めて確かめよう。
セッション9.9を史上最軽量DHバイクたらしめている最大のポイントは、OCLVマウンテンカーボンフレームだ。トレックの誇る最高級のカーボンフレーム製造技術であるOCLVに加え、オフロードでの厳しさを想定した開発がなされている。トレック独自の21項目に及ぶ耐久テスト(業界標準はこのうちわずか6つ)、打撃テストなどを経て合格したものだけが製品化されるのだ。
さらに一言でOCLVマウンテンといっても、カテゴリー別にカーボン積層を計算して製造している。セッションは、ダウンヒルでの大きな衝撃に耐えるため、同社のクロスカントリーフレームの2倍の強度と耐久性を実現している。詳細については後日アップ予定のOCLVカーボンの項で紹介する。
また、強度と剛性を確保しつつ、軽量なフレームに仕上げるため、"インテンション"という新素材を採用。超低密度、超高剛性のこの素材は、BB周りなどの特に強度が必要とされる部分にカーボンレイヤリングの一部として組み込むことで、カーボンのみの構造体に比べて4倍のねじれ強度と8倍の剛性を実現する。もちろん、同じ強度をカーボンのみの構造体で出そうとすると、当然重量増につながるため、軽くて強靱なフレームを作るにはインテンションが不可欠なのだ。
さらに、強度確保のためのテクノロジーとして、飛び石からフレームを保護するカーボンアーマーをダウンチューブやシートステイなどに搭載。これらのテクノロジーによって、オフロードでも安心して使えるカーボンフレームが実現した。なお、このテクノロジーは、トレックのすべてのOCLVマウンテンカーボンフレームに採用される。
カーボン成形技術の高さは、メインフレームとスイングアームをつなぐロッカーリンクにも現れている。カーボンEVOリンクと称されるこのロッカーリンクは、その名の通りカーボンによるワンピース構造を採用。軽さと強度を両立し、優れたコントロール性能をもたらす。
また、セッション独自の機構として、マイクロトラス・ルーティングがある。これは、アウターケーブルを留めるためのタイラップを通すルートをあらかじめカーボンフレーム成型時に構造体の一部として組み込んだもの。交換可能なタイプよりも高い強度を示すという。
こうした独創的なテクノロジーが集結し、トレックが誇るOCLVマウンテンカーボンフレームは、MTB用カーボンフレームのトップランナーとしての地位を保っているのだ。
サスペンションを効果的に機能させ、路面追従性を高めるテクノロジーの数々
トレックでは単に軽さや剛性だけにとらわれるのではなく、オフロードでの扱いやすさや快適性も重視したMTBづくりを続けている。これらの要素を左右するポイントとして「コントロール性能・路面追従性の高さ」が挙げられる。このキーワードに注目してトレックMTBのテクノロジーを見ていくと、リア周りだけでもいくつかのテクノロジーが存在することが分かる。そのひとつがABPだ。「アクティブ・ブレーキング・ピボット」の頭文字をとったこのテクノロジーは、リアホイールのシャフトをピボットとして機能させることで、ブレーキング時にリアサスペンションが動作しないという問題を解消する。これにより、ブレーキング時のコントロール性能を格段に高め、リアエンド周りの剛性を30%以上アップさせている。このテクノロジーは、トレックのすべてのフルサスペンションバイクに採用されている。
フルフローターもそうだ。一般的なフルサスペンションバイクと違い、リアユニットを上下とも可動式のリンクポイントにつなぐことで、さらに路面追従性を高めることに成功している。
フロント周りの路面追従性やコントロール性能を高めるテクノロジーもある。その一つがハイブリッドエアテクノロジーのサスペンションシステム。スプリングを交換しなくてもサスペンションの幅広いセッティングを可能とし、パフォーマンス向上にも一役買っている。
そしてロードバイクでも採用されていた、上下異径の形状をもつE2テーパードヘッドチューブにより、フロント周りの剛性を高めていることも、コントロール性能に大きく貢献している。
以上のように、OCLVマウンテンカーボンフレームによる軽さと強さ、トレック独自の路面追従性を高める数々のテクノロジーによって、セッションはワールドカップを制したと言えるだろう。
MTB・29erの生みの親とOCLVのコラボ 元祖29er ゲイリーフィッシャーシリーズ
一方、近年国内外のレースで徐々に勢力を拡大している29erは、今年もゲイリーフィッシャーコレクションとして多くのモデルを展開する。MTBと29erという言葉の生みの親、ゲイリー・フィッシャーの名を冠するこのシリーズでも、上位モデルにOCLVマウンテンカーボンフレームを採用。これはいわば世界最高峰のカーボンテクノロジーと、MTB・29erの元祖とのコラボレーションだ。29erのメリットはいくつかある。以下が主なものだ。
■MTBにおける29インチのメリット
・ホイールが大きいことによる慣性力の高さを生かした巡航性能の高さ
・路面の凹凸を寄りスムーズにクリアできる走破性の高さ
・より大きな接地面を有する29インチタイヤによる、トラクション性能の高さ
・フロントアクスルに対する重心が相対的に低くできることによる、優れた安定性
こういった一般的な特徴だけでなく、トレック・ゲイリーフィッシャーコレクションではさらに29erの良さを引き出す独自の理論が採用されている。G2ジオメトリーとFCCハブだ。・ホイールが大きいことによる慣性力の高さを生かした巡航性能の高さ
・路面の凹凸を寄りスムーズにクリアできる走破性の高さ
・より大きな接地面を有する29インチタイヤによる、トラクション性能の高さ
・フロントアクスルに対する重心が相対的に低くできることによる、優れた安定性
30種類の試作フォークによって決められた 元祖29erの走行性能の「キモ」G2ジオメトリー
G2ジオメトリーは、29erが苦手とする機敏なハンドリングと29erの持ち味である高速安定性を両立するために誕生した。ハンドリングと安定性の理想的なバランスを実現するため、ゲイリー・フィッシャーはフォークメーカーに30種類もの金型を作らせてオフセット量の異なるフロントフォークを試作し、最適なオフセット量を決めたという。ヘッドアングルを立てることで同様の効果をねらう他メーカーの方式では、高速域でハンドリングがクイックになりすぎたり、小さなサイズのフレームでは前輪が足に干渉したりするなどのデメリットがあるという。
G2ジオメトリーは、手間もコストもかかるゲイリーフィッシャー方式だからこそできた、29erの理想のジオメトリーなのだ。
29erのデメリットのひとつは、ホイールの横剛性が26インチホイールに比べて弱くなりがちなことだ。それを解消するために生まれたのがFCCハブだ。
FCCハブは、通常のハブに比べ、フランジが大径化されており、かつ幅広い。ハブボディーのサイズも大径化されている。さらに25mmのエンドキャップを設け、ハブとフォークとをしっかり固定させることができるのが特徴だ。
これらの特徴によって、フロントエンドの剛性を高め、テクニカルなコースでもコントロール性能が損なわれないのだ。
もちろん、ゲイリーフィッシャーシリーズでもトレックMTBの優れたテクノロジーを継承。中でもレーシングモデルであるスーパーフライシリーズでは、ヘッド周りの剛性を高めるE2ヘッドチューブ、さらにフルサスモデルではブレーキング時にもリアユニットの動作を妨げないABPを採用。トレックとゲイリーフィッシャーの英知を結集し、ほかにはないオンリーワンのバイクとなっている。
29er誕生から12年。ゲイリー・フィッシャーによれば、アメリカではハイエンドクラスのMTBの実に90%、レースシーンでは29erがほぼ100%占めるほどに市民権を得たという。最近では自転車に対して保守的な人が多いとされるヨーロッパでの台頭も顕著だという。国内でもこの動きが加速することは間違いないだろう。
アーロン・グウィン(TREK World Racing)の軌跡
ABPとは
DRCVとは
OCLVカーボンマウンテンとは
提供:トレック・ジャパン レポート:浅野真則、シクロワイアード編集部