2011/09/13(火) - 21:55
トレックワールドが日本にやってきた。世界規模で展開されるトレックの新製品発表会が、今年は日本で初開催された。世界最高のカーボン技術やゲイリーフィッシャーコレクション、 ボントレガー製品など、気になる2012プロダクツの一大エキスポを紹介しよう。
MTBの生みの親ゲイリー・フィッシャー氏と
OCLVカーボンの生みの親ジム・コールグローブ氏も来日
おりしも世界最大の自転車ショー、ユーロバイク2012開催中の8月末、トレック・ジャパンが大規模な新製品発表会「トレックワールド・ジャパン」を開催した。今回は初の試みとして、アメリカのトレック本社が毎年行っている新製品発表会「トレックワールド」と同形式で行われ、全国各地からトレック正規代理店のプロショップ、ジャーナリストらが集まった。
会場には、スペシャルゲストとしてトレック本社の技術開発部シニアマネージャーでOCLVカーボンの生みの親であるジム・コールグローブ氏と、MTBや29erの生みの親として有名なゲイリー・フィッシャー氏が来場。コールグローブ氏はOCLVカーボンに関するプレゼンテーションを行い、フィッシャー氏は29er開発秘話をトークショーで披露した。
これに先立って行われた新製品のプレゼンテーションでは、2012年モデルの概要について発表。すべてのモデルでOCLVカーボンが採用されたマドンシリーズのほか、「史上最軽量のDHバイク」とトレック関係者が自信を持ってプッシュするSESSIONシリーズがお披露目された。
トレックといえば、ツール・ド・フランスをはじめとする世界最高峰のレースシーンで活躍したレオパード・トレックのメインスポンサーだ。今年のツールで総合2・3位、兄弟で総合の表彰台に立つというツール史上初の快挙を成し遂げたシュレク兄弟や、クラシック戦線やTTなどで活躍したカンチェラーラなど、日本でも人気の高い選手の走りを支えたことは紛れもない事実だ。
シクロワイアードでは、これから6回にわたってトレックワールド・ジャパンで発表された2012年モデルをインプレッションを交えながら紹介していく。
それぞれについては詳細にレポートしてゆくが、まずはトレックワールド・ジャパンのダイジェストとしてレポートをお送りする。
シュレク兄弟のツールでの力走を支えたマドン6シリーズ
ツール・ド・フランス2011 で個人総合の2位、3位に輝き、第18ステージではワン・ツーフィニッシュでガリビエを制したシュレク兄弟。そして世界最高峰のレースシーンで活躍する日本人選手のひとり、レディオシャックの別府史之。彼らの力走を支えたのがマドン6シリーズだ。他社が続々とニューマシーンをお披露目する中、トレックは同シリーズをマイナーチェンジするにとどめ、2012シーズンもその完成度の高さで勝負する。全モデルOCLV化で実力アップ マドン5/4/3シリーズ
トレックのロードバイクでは最もポピュラーなマドン5/4/3シリーズ。これまではハイエンドモデルの象徴だったOCLVカーボンフレームをすべてのモデルで採用し、ぐっとコストパフォーマンスが高まった。BB周りの剛性を高めるBB90、フロント剛性を高めるE2フォーク、快適な乗り味を実現するシートマストといった上位モデルのテクノロジーも適宜取り入れつつ、素材の違いでそれぞれのレベルのサイクリストに求められる乗り味を実現している点に注目だ。史上最軽量DHバイク SESSION 進化した元祖29erなど充実のMTBラインナップ
トレック2012モデルのMTBラインナップの目玉は、開発陣が「おそらく史上最軽量のDHバイク」と太鼓判を押すカーボンフレーム採用のDHバイク、SESSION(セッション)シリーズだ。最先端のカーボンテクノロジーで過酷なダウンヒルシーンに挑み、ワールドカップを制した話題騒然のモデルだ。MTBと29erという言葉の生みの親、ゲイリー・フィッシャーの名を冠するトレックのゲイリーフィッシャーコレクションの上位モデルは、OCLVカーボンを採用。世界最高峰のカーボンテクノロジーと、MTBの元祖とのコラボレーションにも注目したい。オリジナルカラー・スペックで付加価値を高める「プロジェクトワン」という選択肢
人とは違うオリジナルのバイクを持ちたい――。そんな声に応えるのが、トレックが長年取り組んでいるプロジェクトワンだ。塗装の難しいカーボンフレームのカラーオーダーだけでなく、一部モデルのヘッドチューブ長の変更、完成車のコンポーネントやパーツの選択など、好みのチョイスで自分だけのオリジナルバイクが作れる。もちろんフレームのみのオーダーも可能だ。シュレク兄弟とカンチェラーラモデルなど、人気のレオパード・トレックのスター選手たちのキャラクターを表現したスペシャルペイントなど、今年のプロジェクトワンは魅力に溢れている。展示されたサンプルモデルの美しさにこのシステムの素晴らしさを再認識させられた。レポートでは愛車に付加価値を与える人気システムの魅力に迫る。
トレック技術開発の重鎮、ジム・コールグローブ氏が語る
自転車カーボン技術のトップランナー・OCLV
1992年、5000シリーズで初めて採用されたOCLVカーボンフレーム。空隙をわずか1%未満に抑え、他社の倍以上の項目からなる厳しいテストをクリアしたフレームだけがOCLVの名を冠することを許されるなど、その品質の高さは折り紙付き。軽さとともにMTBのハードなライディングに耐える強度を実現する新テクノロジー・インテンションや、独自の接合技術「ステップジョイント」を採用するなど、その製法は航空宇宙産業からも注目されているという。ハイエンドモデルでは、航空宇宙産業の使用基準を満たす最上級のプリプレグ(カーボンシートに樹脂をしみこませたシート)を採用し、一切の妥協を許さない。そんなOCLVカーボンフレームについて、本社技術開発部チーフエンジニアのジム・コールグローブ氏が語った。
注目の新製品が続々登場のボントレガー
サイクルオプス・パワータップもリニューアル
わずか195gという軽さを実現したレースXXXライトロードシューズをフラッグシップに、魅力的なシューズラインナップを揃えてきたボントレガー。軽さとフィット感、きめ細かなラインナップでブレイクの予感だ。レオパード・トレックの選手たちも愛用するヘルメット、Oracle(オラクル)もカラーラインナップを揃えて登場する。
そしてレオパード・トレックとチームレディオシャックの実戦R&Dを経て大きくモデルチェンジを果たしたボントレガーのホイールにも注目だ。
35mmという低めのリム高で他社の45mmハイト相当のホイールと同等の空力性能を手に入れたアイオロスD3ホイールなど、実践的なラインナップになる。プロチームとの共同開発が製品づくりに反映されているのは、チューブラーホイールが充実したことが証明している。2012年シーズンのボントレガー製品はラインナップの充実とともに、製品そのものの戦闘力を大幅に高めた。
また、同じくトレック・ジャパン取り扱いブランドのサイクルオプスにも注目。最近注目を集めているパワートレーニングに欠かせないパワーメーター「パワータップ」がG3へとモデルチェンジ。ヘッドユニットの「ジュール」にはGPS搭載モデルも登場した。センサー内蔵のリアハブも小型化され、重量面のデメリットを解消。ハードウェア的にも大きなリファインを果たしている。使い勝手の良いパワーメーターとして人気が上がりそうだ。
ゲイリー・フィッシャーが語る29erの誕生と今
今やMTBトップレースは完全に29er(29インチ)が主流になったことは今年の大きなトピックだ。各ブランドもこぞって29erをリリースし、世界のMTBシーンは完全に29erの流れになってきている。しかし、数年前まで29erは異端児扱いされていたことを忘れてはならない。その29erの生みの親は紛れもなくゲイリー・フィッシャー氏だ。今回来日したフィッシャー氏はトークショーにおいて29erを考案した経緯と、設計を煮詰めていく過程を詳しく話した。語られたその内容は、アイデアや設計のオリジナリティの大切さを改めて教えてくれた。模倣に走る他ブランドと、徹底的なテストによって生み出されるゲイリー・フィッシャーコレクションのバイクの違いを考えさせられた素晴らしいトークショーだった。 その内容は動画でお楽しみください。
トレックワールドへようこそ
提供:トレック・ジャパン レポート:浅野真則、シクロワイアード編集部