2022/06/30(木) - 18:44
EFエデュケーション・イージーポストのラクラン・モートン&アレックス・ハウズに山本和弘さん(キャノンデール・ジャパン)がインタビュー。ロードレースから飛び出し、オフロードを中心にユニークな活動を続ける2人にその醍醐味を聞いた。
昨年の7月にはツール・ド・フランスの21ステージとその間の移動を自走する全長5,510km/獲得標高差65,500m、23日間のチャリティー・ソロライド「オルタナティブツアー(The Alt Tour)」にチャレンジしたラクラン・モートン。そして2019年の全米ロードレースチャンピオンでありながらオフロードレースをメインとする活動にシフトし、グラベル、MTBレースにもチャレンジするアレックス・ハウズ。アンバウンド・グラベルを2日後に控えた木曜日。エンポリアのキャンプ場のトレーラーハウスに2人を訪ねた。
聞き手は「カズ」こと山本和弘。2人が駆るキャノンデールつながりで交流があり、元MTB、ロード、シクロクロスの選手として活動した自身の興味からこのインタビューをセッティングしてくれた。
カズ:お久しぶり!レースまではキャンパーで暮らしているんですね。コースの下見ライドに行っていたようですが、調子はどうですか? 先週からの調整はどのようにしたんですか?
モートン:200マイルに臨む頭の準備はできているけど、走りは当日の身体の体調次第だね。特にこういうグラベルレースはどんな結末になるかなんて事前には分からないんだ。
先週末はアレックスと一緒にコスタリカのマウンテンバイクレースに出場したんだ。ジャングルの中を3日間、苦しみながら走っていたよ。とても厳しいレースだったけど、今週のアンバウンドに向けたいい準備になったね。
ハウズ:コスタリカの辺境でのレースは時間の流れがのんびりでストレスもなかった。ジャングルのなかペダルを回すことに集中するいい時間だったよ。
モートン:初日は100km、2日目は80kmのステージレースだったね。急勾配の激坂を含む4,000mもの獲得標高差があったんだ。
ハウズ:これまでの人生で最も急な勾配だったよ。こんなんだった!(手で60°ぐらいを示して)
モートン:そう、間違いない。まるで信じれない急傾斜だった。あんなの今までに体験したことがないよ。
カズ:なんだかレースと言うより冒険のようですね。今シーズンはすでにどこかでグラベルレースは走ったんですか?
モートン:ああ。一ヶ月ほど前にジローナ(スペイン)で360kmのレースを走ったよ。
ハウズ:僕はベルジャン・ワッフルライドに出場した。カルフォルニアで開催された260kmのグラベルレースで、アメリカで人気が出ているやつ。とても長いレースだった。あとボルダーベイでもグラベルレースを走ったね。最後は電動変速のバッテリー切れトラブルに見舞われ、小さなギアのまま挑んだ集団スプリントではあと少しで勝つところまで迫ったんだ。
モートン:まさにアメージングな3年間だったよ! 最初こそどうなるか分からなかったものの、僕とアレックスはとてもワクワクしていたんだ。なぜなら僕とアレックスはレースはもちろん、通常のレースから飛び出した新しいことをするのが大好きだからね。
僕個人で言えば、選手としてのキャリアを通して最もエキサイティングな挑戦だったよ。これまでと異なるレースであることはもちろん、普通ならできないような体験ができるんだからね。
もちろん準備の段階からワールドツアーレースとは大分異なっている。僕らの性格や野心の面でも、こういったレースが合っているんだ。チームは僕らを自由に走らせてくれるし、本当に素晴らしい取り組みだよ。
ハウズ:選手としてではなく、自転車界全体から見てもこの取り組みは素晴らしいの一言に尽きる。このプロジェクトが開始した2019年の勢いを2020年以降に繋げていくつもりだったんだけど、パンデミックの影響もあって奇妙な数年間となった。みんなが頭に描いていた計画がすべてひっくり返されたのだからね。
でも、このパンデミックは僕らにとって天の恵みだと思っているんだ。なぜなら、もし2019年に始めた活動をそのまま続けていたら、例えばモートンが行った「オルタナティブツアー(The Alt Tour)」のような素晴らしい体験はできなかっただろうからね。
カズ:ウクライナ難民への支援と関心を高める目的でポーランド/ウクライナ国境を目指して走り続けたチャリティーライドなど、レースの枠にはまらない活動にとてもインスピレーションをもらっています!
ハウズ:もちろん。おそらくアンバウンドは今アメリカで最も大きな自転車レースだ。魅力的なコースと、メディアからの注目度もとても高い。こうしてはるばる日本からメディアが取材に来るほどにね。だからこそモチベーションも高いよ。もちろん規模で言えばツール・ド・フランスには負けるけど、今やアメリカ最大のレースになったと言ってゼッタイ間違いない。
それにすごくコンペティティブなんだ。あらゆるグラベルレーサーに「どのレースで勝ちたい?」と聞けば大半がアンバウンドと答えるだろう。
モートン:アンバウンドがここまで注目されるのは、じつはトラディショナルなレースだからだろうね。距離も長いし、大半が未舗装路かつ周回コースじゃないということも大きいだろうね。もちろん難易度は高いけど、あらゆるライダーに「走ってみたい」と思わせる、挑戦しがいのあるコースなんだと思う。
また景色も他にはない独特さがあるし、レースじゃなければなかなか訪れないような場所だ。具体的に何がこのレースを特別にするのか、1つだけを挙げることは難しい。不思議な魅力のあるレースだね。
そして参加する人が増えれば増えるほど、自己記録に挑む人や、上位陣との争いを求める人など、様々な目的の人たちが集まって、多様性をつくりだしている。まるでモンスターのようなレースだよ。
カズ:これで何度目のアンバウンド出場ですか?
モートン:2度目だよ。僕もアレックスも2019年に1度走って以来の出場なんだ。
ハウズ:アンバウンドの魅力を聞きたいなら、僕たちは適任ではないよ。君たちは人選を誤ったんじゃないか?(笑)
カズ:2人はアンバウンドのベテランだと思っていました(笑)。
ハウズ:もちろん初出場から学んだことは多かったけどね。例えばちゃんと水を持って走るとか、タイヤプラグが必要だとかね!
モートン:その他にも日焼け止めや、何が起こっても動じないポジティブな精神力。
ハウズ:風にも要注意だし。
モートン:CO2ボンベがあってもエアポンプも必須だね。パンクは1回じゃすまないかも。
ハウズ:例え2人で並走したとしても、それぞれがポンプを持っている必要はあるだろうね。
ハウズ:2019年は僕が4位で彼(モートン)が3位。しかしリザルトでは僕が3位、彼が4位になったんだ。まあオフィシャルがあるようでないので、どこに抗議していいかわからないから、そのままなんだけどね(笑)。その原因をしばらく考えていたんだけど…。まぁ細かいことにこだわってもしょうがない(笑)。
カズ:今回アンバウンドで乗るバイクはSuperSix EVO SE/CXなんですか? 2人とも。
ハウズ:そうだよ。クールなバイクだ。
カズ:ラクランのバイクのスプラッシュ柄ペイントは、あなた自身によるデザインですか?
モートン:そう。このグラフィックは音をビジュアル化したかったんだ。だから音楽にまつわるモチーフをあしらった。サウンドの広がりをイメージしているんだ。クールな見た目はもちろん、乗り心地も最高だ。お気に入りのレースバイクだよ。
ハウズ:速いし、幅広のタイヤも装着できる。シートポストも気に入っている。で、ラクランはポストを前後逆向きにしているよね。サドルが一番前だ。僕のサドルはいちばん後ろだ。
モートン:僕は窮屈なポジションが好きだからね。アレックスとは真逆の乗り方だよ。それなのにレースではいつも似たような順位なんだ(笑)。
ハウズ:身体が老化しているのがハンドルバーにどんどん近づいていく理由なんじゃないかな(笑)。
モートン:真反対のポジションで同じ成績を得られるのは、とてもいいケーススタディじゃないかと思っているよ。キャノンデールのこのスパイダークランクはクールだね。見てくれ、まるでスパイダーマンの顔みたいだろう? 軽くてペダリングがダイレクトで気持ちいいんだ。
カズ:アンバウンドにはTT(エアロ)バーが必須ですか?
モートン:そう思う。元々ウルトラディスタンスレースで使っていたんだ。腕に体重を掛けられるからね。その乗り方で脚の負担も和らげられるから。
ハウズ:僕は見た目が好きじゃないけどね。だってカッコ悪いじゃない!(笑)
モートン:彼はクラシックでトラディショナルなルックスが好きだからね。
ハウズ:ああ、そうなんだ。だから使わないよ。でもどうやら最近は皆がTTバーを使うようになってきたね。
カズ:2人ともトップストーンよりもスーパーシックスの方が好きなんですか?
モートン:さっきまで試走に行ってきて、ちょうどその話をしていたところだ。もちろんアンバウンドにはトップストーンも合うと思うけど、今年は例年のコースに比べてアップダウンが少なくてスムーズだからスーパーシックスにしたんだ。どっちを選ぶかはコース設定によるだろうね。
でもトップストーンも大好きだ。家にも1台あるし、特にリアのサスペンションがよく効いてくれる。初めて見たときは懐疑的だったんだけど、実際に乗ってみると素晴らしかった。細かい振動を吸収するだけじゃなく、前へ前へと進んでくれるんだ。
そしてレフティつきのトップストーンもいつか乗ってみたいと思っている。まだ乗ったこと無いけど、とても楽しそうだよね。
ハウズ:アンバウンドのプロレースで速く走るという目的ならばこのバイク、スーパーシックスが最適だろうけど、グラベルライドを楽しむならトップストーンがいいだろうね。
モートン:スーパーシックスは、例えオフロードであってもまるでロードバイクのような感覚で走れるんだ。ロードレースで使うバイクとジオメトリも近くて、アグレッシブな設計になっているんだろう。
ハウズ:そして見てよ、ラクランのステムはこんなに前下がりのセッティングで、制御不能になりそうだね。それが君にとってはヘルシー(適している)なんだろうけどね(笑)。
モートン:2019年のツールでこのステムを間違ってマイナス13度で取り付けたんだけど、その見た目が良かったんだ。でも感覚的には問題なかった。いまはそこまでの低いポジションは無理だろうけど、シクロクロスバイクにはそれを取り付けて使っているよ。
カズ:ハイドレーション・バックパックは使いますか?背負うタイプの。
モートン:用意はしてあるけど、当日使うかどうかはわからない。暑くならなかったら使わないほうが身が軽いからね。
ハウズ:僕は最初から使う予定だよ。涼しくてもね。もし暑くなったら十分な水は必要さ。ロードと違っていつでもドリンクを渡してもらえるわけじゃないから、基本はすべて自分で運ばなくちゃいけないんだ。
ハウズ:僕はアメリカ・ナショナル=国内ロード選手権に出場するんだ。
カズ:アレックスは確か2019年の全米ロードチャンピオンですよね?
ハウズ:ああそのとおり。その後はFirecracker 50と、LifeTime Grand PrixのレースであるCrusher in the Tusharを走る。それはとても厳しいレースだからラクランが勝つだろう。シリーズ戦は全6レースあり、既にカルフォルニアでのMTBレース(Sea Otter Classic)を終えている。そしてアンバウンドが2戦目。ユタでのCrusher in the Tusharが3戦目なんだ。
その後はハードテイルのマウンテンバイクでLeadville100、Chequamegon。最後はBig Sugar Gravelだ。
カズ:LifeTime Grand Prixシリーズは全6戦だけど、すべてオフロードレース?
ハウズ:グラベルが3、MTBが3。オフロード・ミックスなんだ。
カズ:2人ともその6レース全てに出場するんですか?
モートン:そう。それが僕らのシーズン通してのメインレースだね。他に僕の次戦はケニアでのグラベルのステージレース。そしてタンザニアでのエボリューション・グラベルが待っている。その後またアメリカでCrusher in the Tusharに出場する。Firecracker 50にも何とか滑り込みたいんだけど、日程的に厳しいかも。どうなるだろうね。
カズ:聞いているとオフロードばかり乗っているイメージですが、グラベル、MTB、ロードの割合はそれぞれどれぐらいですか?
モートン:今年はこれまでのところ90%がMTBで、5%がグラベル、5%がロードだ。今シーズンはグラベルレースは20日間かな。そしてロードは5日間。
ハウズ:僕はグラベル40%、MTB20%、ロードが20%かな。残りの20%は…のんびりしてるだけだ(笑)。
モートン:でもレーススケジュールは目まぐるしく変わっていくんだ。LifeTime Grand Prixの全6レースに出ることは決まっているものの、その他は随時決まっていくからね。
ハウズ:今後も予定より出場レースは増えていくだろうからね。
モートン:先のコスタリカのレースだって一ヶ月前に決まったし、実際そんな感じなんだ。オルタナティブカレンダーの運営は少人数で構成されている。関わっているのはアレックスと僕、オフロードメカニックのトム、スタッフのマットぐらいだろうか。だからレースを見つけてそこに赴くまでがロードレースに比べて簡単なんだ。いま決まっているのは6、7レースだけど、ここから確実に増えるだろうね。
なんたってクールなイベントが世界各地で次から次へと湧き出てくるんだからね!
カズ:ツール・ド・フランスのルートを一人でキャンプしながらトレースしたり、ウクライナ支援のために国境付近までチャリティーを募りながら走って旅したり。昨年の「オルトツアー」のように、長い旅に出る予定はありますか?
モートン:今年はわからないね。でももしコロラドのコンチネンタル ディバイド(分水嶺) トレイルを走るのであれば、長い旅と呼べるだろう。僅か3、4日だけど、体感的には長い旅だ。あとは12月に兄とオーストラリアを旅する予定がある。それぐらいかな。でも今年も1つぐらいはオルトツアーがしたいと思っている。下半期に何か見つけられるといいよね。
でも現時点では結構スケジュールが詰まっている。あのような長期間エンデュランス的に走るためには準備が必要で、いまのところその準備が取れそうにない。それはリカバリー期間を含めてもね。でも本当に好きだからやりたいし、将来的にはもっとやっていくつもりだよ。
ハウズ:11月に日本でシクロクロスレースがあるだろう?
カズ:野辺山シクロクロスですね。標高1,000m以上の高地でとても寒いですが、アットホームで雰囲気のいいレースです。
ハウズ:ラクランはシクロクロス走ったことある?
モートン:スリーピークス・シクロクロスで勝ったことあるよ。山岳で長い距離を走らなければならないやつ。
ハウズ:それってシクロクロスと言うより、バイクを担いで歩いて山を3つ越えていくアドベンチャーレースだよね?
モートン:そう、かなりエクストリームなやつ!(笑)
ハウズ:日本で最もポピュラーなサイクリングの種類はなんだい?
モートン:きっとケイリンじゃないの?(笑)
カズ:ロードレースやツーリングですかね。山を登るヒルクライムも盛ん。シクロクロスも人口は少ないけどホットです。グラベルはまだこれからという段階で、日本には山がたくさんありますが、ちょっと急勾配ですけどね。カンザスやアメリカとはちょっと違う国土です。でも日本の北海道には有名なニセコもありますよ。2週前に走ったニセコグラベルは最高でした。
モートン:ぜひ僕たちを呼んでよ。日本は本当に美しい国だから、是非とも行きたいんだ。ところで日本のキャンプ事情はどんな感じなの?どこでもキャンプできるって聞いたよ?
カズ:はい、できますよ。治安が良いですからね。
モートン:誰も僕たちのものを盗んだりしないんだって?
カズ:はい。もちろん東京ではわかりませんが、日本のカントリーサイド(田舎)はサイクリングツーリングをするのに安全な場所です。ほとんどどこで寝たって平気です。
ハウズ:じゃあ日本縦断がいいんじゃないか?
モートン:それ、いいね!レッツ・オルトツアー・ジャパン!
ハウズ:オキナワが南だよね?
カズ:そうです。
ハウズ:サッポロは夏は暑いって聞いたけど。
カズ:そうですね。北ですが夏は暑いです。
ハウズ:オキナワに行きたいね。ジャパンカップとかもあるし。
〜インタビューを終えて〜
ボブ・マーリィを思わせるようなレゲエなルックスに、日焼けした肌、信じられないぐらいか細い脚をしたモートン。静かな口調で、ライドに対する情熱的な想いを語ってくれた。ハウズはヒゲ面で、まるでクッキーモンスターみたいに眠そうに、でもユーモラスに笑いながら喋ってくれた。ルックスも雰囲気も元ロードレーサーと思えない風変わりな感じの2人だったけど、共通するのは活動場所に選んだグラベルやオフロードを楽しみながら、ライドを通して素敵なメッセージを発信してくれること。2人の活躍にこれからも注目していきたい。
インタビュー翌々日のアンバウンド・グラベルのプロレースでは、先頭集団で走っていたモートンが落車&クラッシュしてバイクのeジャンクションポートを破損してしまい、修理することができず走り続けたものの完走することができなかった。ハウズも同じ位置で先頭争いをしていたが、パンクもあって9時間58分・プロクラス23位だった。
そしてモートンは翌々週のケニアのグラベルレースMigration Gravel(4日間・650km、獲得標高差8,000m)でステージ優勝するなど大活躍。そしてアレックスは2度めのロードチャンプも目指して頑張って! キャプテン・アメリカみたいなチャンピオンジャージを着て、またジャパンカップに来て欲しい。 (山本和弘)
ライダープロフィール
ラクラン・モートン
オーストラリア、ポート・マッコリー出身の30歳。いまやもっとも有名な「The Alt Tour」のロングライドサイクリストとなったモートン。ウクライナ難民への支援ライドでは25万ドルを集め、ツール・ド・フランスのコースをなぞるソロライドでは第三国へ70万ドルと自転車を贈るなど、ライドとチャリティーを組み合わせた活動にも熱心だ。アドベンチャーレースへの挑戦を綴ったraphaのドキュメンタリーフィルム、Gone Racingなど、映像で冒険活動を伝えるコンテンツも人気だ。ニックネームは「Lachy」
アレックス・ハウズ
アメリカ、コロラド出身の34歳。デビュー当初より長くEFチームに所属する。USプロチャレンジやコロラド・クラシック、全米ナショナル選手権などロードでの戦績が光るが、今年は春先にミラノ〜トリノ、セッティマナ・コッピ・バルタリに参戦、以降オフロードとオンロードがミックスしたレースカレンダーで走る。「水と少しの食料だけでとてつもない距離を走れる自転車のポテンシャル、人間との組み合わせの効率の良さにいつも驚いている」と話す。ニックネームは「Howesy」
オーストラリア、ポート・マッコリー出身の30歳。いまやもっとも有名な「The Alt Tour」のロングライドサイクリストとなったモートン。ウクライナ難民への支援ライドでは25万ドルを集め、ツール・ド・フランスのコースをなぞるソロライドでは第三国へ70万ドルと自転車を贈るなど、ライドとチャリティーを組み合わせた活動にも熱心だ。アドベンチャーレースへの挑戦を綴ったraphaのドキュメンタリーフィルム、Gone Racingなど、映像で冒険活動を伝えるコンテンツも人気だ。ニックネームは「Lachy」
アレックス・ハウズ
アメリカ、コロラド出身の34歳。デビュー当初より長くEFチームに所属する。USプロチャレンジやコロラド・クラシック、全米ナショナル選手権などロードでの戦績が光るが、今年は春先にミラノ〜トリノ、セッティマナ・コッピ・バルタリに参戦、以降オフロードとオンロードがミックスしたレースカレンダーで走る。「水と少しの食料だけでとてつもない距離を走れる自転車のポテンシャル、人間との組み合わせの効率の良さにいつも驚いている」と話す。ニックネームは「Howesy」
昨年の7月にはツール・ド・フランスの21ステージとその間の移動を自走する全長5,510km/獲得標高差65,500m、23日間のチャリティー・ソロライド「オルタナティブツアー(The Alt Tour)」にチャレンジしたラクラン・モートン。そして2019年の全米ロードレースチャンピオンでありながらオフロードレースをメインとする活動にシフトし、グラベル、MTBレースにもチャレンジするアレックス・ハウズ。アンバウンド・グラベルを2日後に控えた木曜日。エンポリアのキャンプ場のトレーラーハウスに2人を訪ねた。
聞き手は「カズ」こと山本和弘。2人が駆るキャノンデールつながりで交流があり、元MTB、ロード、シクロクロスの選手として活動した自身の興味からこのインタビューをセッティングしてくれた。
カズ:お久しぶり!レースまではキャンパーで暮らしているんですね。コースの下見ライドに行っていたようですが、調子はどうですか? 先週からの調整はどのようにしたんですか?
モートン:200マイルに臨む頭の準備はできているけど、走りは当日の身体の体調次第だね。特にこういうグラベルレースはどんな結末になるかなんて事前には分からないんだ。
先週末はアレックスと一緒にコスタリカのマウンテンバイクレースに出場したんだ。ジャングルの中を3日間、苦しみながら走っていたよ。とても厳しいレースだったけど、今週のアンバウンドに向けたいい準備になったね。
ハウズ:コスタリカの辺境でのレースは時間の流れがのんびりでストレスもなかった。ジャングルのなかペダルを回すことに集中するいい時間だったよ。
モートン:初日は100km、2日目は80kmのステージレースだったね。急勾配の激坂を含む4,000mもの獲得標高差があったんだ。
ハウズ:これまでの人生で最も急な勾配だったよ。こんなんだった!(手で60°ぐらいを示して)
モートン:そう、間違いない。まるで信じれない急傾斜だった。あんなの今までに体験したことがないよ。
カズ:なんだかレースと言うより冒険のようですね。今シーズンはすでにどこかでグラベルレースは走ったんですか?
モートン:ああ。一ヶ月ほど前にジローナ(スペイン)で360kmのレースを走ったよ。
ハウズ:僕はベルジャン・ワッフルライドに出場した。カルフォルニアで開催された260kmのグラベルレースで、アメリカで人気が出ているやつ。とても長いレースだった。あとボルダーベイでもグラベルレースを走ったね。最後は電動変速のバッテリー切れトラブルに見舞われ、小さなギアのまま挑んだ集団スプリントではあと少しで勝つところまで迫ったんだ。
グラベル、MTB、エンデュランス...活動を変えた「オルタナティブカレンダー」の3年間を振り返る
カズ:今から3年前、2019年にチームがraphaとのコラボでオルタナティブカレンダー(=まったく新しい代替レースカレンダー)への取り組みを開始したわけですが、この3年間の活動を振り返っていただけますか? 活動の大きな転換だったと思いますが、それは良かったと言えますか?モートン:まさにアメージングな3年間だったよ! 最初こそどうなるか分からなかったものの、僕とアレックスはとてもワクワクしていたんだ。なぜなら僕とアレックスはレースはもちろん、通常のレースから飛び出した新しいことをするのが大好きだからね。
僕個人で言えば、選手としてのキャリアを通して最もエキサイティングな挑戦だったよ。これまでと異なるレースであることはもちろん、普通ならできないような体験ができるんだからね。
もちろん準備の段階からワールドツアーレースとは大分異なっている。僕らの性格や野心の面でも、こういったレースが合っているんだ。チームは僕らを自由に走らせてくれるし、本当に素晴らしい取り組みだよ。
ハウズ:選手としてではなく、自転車界全体から見てもこの取り組みは素晴らしいの一言に尽きる。このプロジェクトが開始した2019年の勢いを2020年以降に繋げていくつもりだったんだけど、パンデミックの影響もあって奇妙な数年間となった。みんなが頭に描いていた計画がすべてひっくり返されたのだからね。
でも、このパンデミックは僕らにとって天の恵みだと思っているんだ。なぜなら、もし2019年に始めた活動をそのまま続けていたら、例えばモートンが行った「オルタナティブツアー(The Alt Tour)」のような素晴らしい体験はできなかっただろうからね。
カズ:ウクライナ難民への支援と関心を高める目的でポーランド/ウクライナ国境を目指して走り続けたチャリティーライドなど、レースの枠にはまらない活動にとてもインスピレーションをもらっています!
アンバウンド・グラベルの魅力とは?
カズ:ところでこのアンバウンド・グラベルは大きな目標のレースですか?ハウズ:もちろん。おそらくアンバウンドは今アメリカで最も大きな自転車レースだ。魅力的なコースと、メディアからの注目度もとても高い。こうしてはるばる日本からメディアが取材に来るほどにね。だからこそモチベーションも高いよ。もちろん規模で言えばツール・ド・フランスには負けるけど、今やアメリカ最大のレースになったと言ってゼッタイ間違いない。
それにすごくコンペティティブなんだ。あらゆるグラベルレーサーに「どのレースで勝ちたい?」と聞けば大半がアンバウンドと答えるだろう。
モートン:アンバウンドがここまで注目されるのは、じつはトラディショナルなレースだからだろうね。距離も長いし、大半が未舗装路かつ周回コースじゃないということも大きいだろうね。もちろん難易度は高いけど、あらゆるライダーに「走ってみたい」と思わせる、挑戦しがいのあるコースなんだと思う。
また景色も他にはない独特さがあるし、レースじゃなければなかなか訪れないような場所だ。具体的に何がこのレースを特別にするのか、1つだけを挙げることは難しい。不思議な魅力のあるレースだね。
そして参加する人が増えれば増えるほど、自己記録に挑む人や、上位陣との争いを求める人など、様々な目的の人たちが集まって、多様性をつくりだしている。まるでモンスターのようなレースだよ。
カズ:これで何度目のアンバウンド出場ですか?
モートン:2度目だよ。僕もアレックスも2019年に1度走って以来の出場なんだ。
ハウズ:アンバウンドの魅力を聞きたいなら、僕たちは適任ではないよ。君たちは人選を誤ったんじゃないか?(笑)
カズ:2人はアンバウンドのベテランだと思っていました(笑)。
ハウズ:もちろん初出場から学んだことは多かったけどね。例えばちゃんと水を持って走るとか、タイヤプラグが必要だとかね!
モートン:その他にも日焼け止めや、何が起こっても動じないポジティブな精神力。
ハウズ:風にも要注意だし。
モートン:CO2ボンベがあってもエアポンプも必須だね。パンクは1回じゃすまないかも。
ハウズ:例え2人で並走したとしても、それぞれがポンプを持っている必要はあるだろうね。
ハウズ:2019年は僕が4位で彼(モートン)が3位。しかしリザルトでは僕が3位、彼が4位になったんだ。まあオフィシャルがあるようでないので、どこに抗議していいかわからないから、そのままなんだけどね(笑)。その原因をしばらく考えていたんだけど…。まぁ細かいことにこだわってもしょうがない(笑)。
モートンとハウズが駆るグラベルレースバイク
カズ:今回アンバウンドで乗るバイクはSuperSix EVO SE/CXなんですか? 2人とも。
ハウズ:そうだよ。クールなバイクだ。
カズ:ラクランのバイクのスプラッシュ柄ペイントは、あなた自身によるデザインですか?
モートン:そう。このグラフィックは音をビジュアル化したかったんだ。だから音楽にまつわるモチーフをあしらった。サウンドの広がりをイメージしているんだ。クールな見た目はもちろん、乗り心地も最高だ。お気に入りのレースバイクだよ。
ハウズ:速いし、幅広のタイヤも装着できる。シートポストも気に入っている。で、ラクランはポストを前後逆向きにしているよね。サドルが一番前だ。僕のサドルはいちばん後ろだ。
モートン:僕は窮屈なポジションが好きだからね。アレックスとは真逆の乗り方だよ。それなのにレースではいつも似たような順位なんだ(笑)。
ハウズ:身体が老化しているのがハンドルバーにどんどん近づいていく理由なんじゃないかな(笑)。
モートン:真反対のポジションで同じ成績を得られるのは、とてもいいケーススタディじゃないかと思っているよ。キャノンデールのこのスパイダークランクはクールだね。見てくれ、まるでスパイダーマンの顔みたいだろう? 軽くてペダリングがダイレクトで気持ちいいんだ。
カズ:アンバウンドにはTT(エアロ)バーが必須ですか?
モートン:そう思う。元々ウルトラディスタンスレースで使っていたんだ。腕に体重を掛けられるからね。その乗り方で脚の負担も和らげられるから。
ハウズ:僕は見た目が好きじゃないけどね。だってカッコ悪いじゃない!(笑)
モートン:彼はクラシックでトラディショナルなルックスが好きだからね。
ハウズ:ああ、そうなんだ。だから使わないよ。でもどうやら最近は皆がTTバーを使うようになってきたね。
カズ:2人ともトップストーンよりもスーパーシックスの方が好きなんですか?
モートン:さっきまで試走に行ってきて、ちょうどその話をしていたところだ。もちろんアンバウンドにはトップストーンも合うと思うけど、今年は例年のコースに比べてアップダウンが少なくてスムーズだからスーパーシックスにしたんだ。どっちを選ぶかはコース設定によるだろうね。
でもトップストーンも大好きだ。家にも1台あるし、特にリアのサスペンションがよく効いてくれる。初めて見たときは懐疑的だったんだけど、実際に乗ってみると素晴らしかった。細かい振動を吸収するだけじゃなく、前へ前へと進んでくれるんだ。
そしてレフティつきのトップストーンもいつか乗ってみたいと思っている。まだ乗ったこと無いけど、とても楽しそうだよね。
ハウズ:アンバウンドのプロレースで速く走るという目的ならばこのバイク、スーパーシックスが最適だろうけど、グラベルライドを楽しむならトップストーンがいいだろうね。
モートン:スーパーシックスは、例えオフロードであってもまるでロードバイクのような感覚で走れるんだ。ロードレースで使うバイクとジオメトリも近くて、アグレッシブな設計になっているんだろう。
ハウズ:そして見てよ、ラクランのステムはこんなに前下がりのセッティングで、制御不能になりそうだね。それが君にとってはヘルシー(適している)なんだろうけどね(笑)。
モートン:2019年のツールでこのステムを間違ってマイナス13度で取り付けたんだけど、その見た目が良かったんだ。でも感覚的には問題なかった。いまはそこまでの低いポジションは無理だろうけど、シクロクロスバイクにはそれを取り付けて使っているよ。
カズ:ハイドレーション・バックパックは使いますか?背負うタイプの。
モートン:用意はしてあるけど、当日使うかどうかはわからない。暑くならなかったら使わないほうが身が軽いからね。
ハウズ:僕は最初から使う予定だよ。涼しくてもね。もし暑くなったら十分な水は必要さ。ロードと違っていつでもドリンクを渡してもらえるわけじゃないから、基本はすべて自分で運ばなくちゃいけないんだ。
グラベル、MTB、ウルトラエンデュランス、テーマのある旅。異色の挑戦は続く
カズ:アンバウンド後のレース予定は?ハウズ:僕はアメリカ・ナショナル=国内ロード選手権に出場するんだ。
カズ:アレックスは確か2019年の全米ロードチャンピオンですよね?
ハウズ:ああそのとおり。その後はFirecracker 50と、LifeTime Grand PrixのレースであるCrusher in the Tusharを走る。それはとても厳しいレースだからラクランが勝つだろう。シリーズ戦は全6レースあり、既にカルフォルニアでのMTBレース(Sea Otter Classic)を終えている。そしてアンバウンドが2戦目。ユタでのCrusher in the Tusharが3戦目なんだ。
その後はハードテイルのマウンテンバイクでLeadville100、Chequamegon。最後はBig Sugar Gravelだ。
カズ:LifeTime Grand Prixシリーズは全6戦だけど、すべてオフロードレース?
ハウズ:グラベルが3、MTBが3。オフロード・ミックスなんだ。
カズ:2人ともその6レース全てに出場するんですか?
モートン:そう。それが僕らのシーズン通してのメインレースだね。他に僕の次戦はケニアでのグラベルのステージレース。そしてタンザニアでのエボリューション・グラベルが待っている。その後またアメリカでCrusher in the Tusharに出場する。Firecracker 50にも何とか滑り込みたいんだけど、日程的に厳しいかも。どうなるだろうね。
カズ:聞いているとオフロードばかり乗っているイメージですが、グラベル、MTB、ロードの割合はそれぞれどれぐらいですか?
モートン:今年はこれまでのところ90%がMTBで、5%がグラベル、5%がロードだ。今シーズンはグラベルレースは20日間かな。そしてロードは5日間。
ハウズ:僕はグラベル40%、MTB20%、ロードが20%かな。残りの20%は…のんびりしてるだけだ(笑)。
モートン:でもレーススケジュールは目まぐるしく変わっていくんだ。LifeTime Grand Prixの全6レースに出ることは決まっているものの、その他は随時決まっていくからね。
ハウズ:今後も予定より出場レースは増えていくだろうからね。
モートン:先のコスタリカのレースだって一ヶ月前に決まったし、実際そんな感じなんだ。オルタナティブカレンダーの運営は少人数で構成されている。関わっているのはアレックスと僕、オフロードメカニックのトム、スタッフのマットぐらいだろうか。だからレースを見つけてそこに赴くまでがロードレースに比べて簡単なんだ。いま決まっているのは6、7レースだけど、ここから確実に増えるだろうね。
なんたってクールなイベントが世界各地で次から次へと湧き出てくるんだからね!
カズ:ツール・ド・フランスのルートを一人でキャンプしながらトレースしたり、ウクライナ支援のために国境付近までチャリティーを募りながら走って旅したり。昨年の「オルトツアー」のように、長い旅に出る予定はありますか?
モートン:今年はわからないね。でももしコロラドのコンチネンタル ディバイド(分水嶺) トレイルを走るのであれば、長い旅と呼べるだろう。僅か3、4日だけど、体感的には長い旅だ。あとは12月に兄とオーストラリアを旅する予定がある。それぐらいかな。でも今年も1つぐらいはオルトツアーがしたいと思っている。下半期に何か見つけられるといいよね。
でも現時点では結構スケジュールが詰まっている。あのような長期間エンデュランス的に走るためには準備が必要で、いまのところその準備が取れそうにない。それはリカバリー期間を含めてもね。でも本当に好きだからやりたいし、将来的にはもっとやっていくつもりだよ。
ハウズ:11月に日本でシクロクロスレースがあるだろう?
カズ:野辺山シクロクロスですね。標高1,000m以上の高地でとても寒いですが、アットホームで雰囲気のいいレースです。
ハウズ:ラクランはシクロクロス走ったことある?
モートン:スリーピークス・シクロクロスで勝ったことあるよ。山岳で長い距離を走らなければならないやつ。
ハウズ:それってシクロクロスと言うより、バイクを担いで歩いて山を3つ越えていくアドベンチャーレースだよね?
モートン:そう、かなりエクストリームなやつ!(笑)
ハウズ:日本で最もポピュラーなサイクリングの種類はなんだい?
モートン:きっとケイリンじゃないの?(笑)
カズ:ロードレースやツーリングですかね。山を登るヒルクライムも盛ん。シクロクロスも人口は少ないけどホットです。グラベルはまだこれからという段階で、日本には山がたくさんありますが、ちょっと急勾配ですけどね。カンザスやアメリカとはちょっと違う国土です。でも日本の北海道には有名なニセコもありますよ。2週前に走ったニセコグラベルは最高でした。
モートン:ぜひ僕たちを呼んでよ。日本は本当に美しい国だから、是非とも行きたいんだ。ところで日本のキャンプ事情はどんな感じなの?どこでもキャンプできるって聞いたよ?
カズ:はい、できますよ。治安が良いですからね。
モートン:誰も僕たちのものを盗んだりしないんだって?
カズ:はい。もちろん東京ではわかりませんが、日本のカントリーサイド(田舎)はサイクリングツーリングをするのに安全な場所です。ほとんどどこで寝たって平気です。
ハウズ:じゃあ日本縦断がいいんじゃないか?
モートン:それ、いいね!レッツ・オルトツアー・ジャパン!
ハウズ:オキナワが南だよね?
カズ:そうです。
ハウズ:サッポロは夏は暑いって聞いたけど。
カズ:そうですね。北ですが夏は暑いです。
ハウズ:オキナワに行きたいね。ジャパンカップとかもあるし。
〜インタビューを終えて〜
ボブ・マーリィを思わせるようなレゲエなルックスに、日焼けした肌、信じられないぐらいか細い脚をしたモートン。静かな口調で、ライドに対する情熱的な想いを語ってくれた。ハウズはヒゲ面で、まるでクッキーモンスターみたいに眠そうに、でもユーモラスに笑いながら喋ってくれた。ルックスも雰囲気も元ロードレーサーと思えない風変わりな感じの2人だったけど、共通するのは活動場所に選んだグラベルやオフロードを楽しみながら、ライドを通して素敵なメッセージを発信してくれること。2人の活躍にこれからも注目していきたい。
インタビュー翌々日のアンバウンド・グラベルのプロレースでは、先頭集団で走っていたモートンが落車&クラッシュしてバイクのeジャンクションポートを破損してしまい、修理することができず走り続けたものの完走することができなかった。ハウズも同じ位置で先頭争いをしていたが、パンクもあって9時間58分・プロクラス23位だった。
そしてモートンは翌々週のケニアのグラベルレースMigration Gravel(4日間・650km、獲得標高差8,000m)でステージ優勝するなど大活躍。そしてアレックスは2度めのロードチャンプも目指して頑張って! キャプテン・アメリカみたいなチャンピオンジャージを着て、またジャパンカップに来て欲しい。 (山本和弘)
リンク
intewview:Kazuhiro.Yamamoto
photo:MakotoAYANO,Snowy Mountain Photography, Life time
presented by Cannondale Japan
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presented by Cannondale Japan