2021/04/28(水) - 10:20
フィジークの2021シューズラインアップにもう一足、これからのグリーンシーズンに向けて新しいモデルが追加された。それがダウンヒルやエンデューロ向けのオフロードシューズ"GRAVITA"シリーズだ。その名の通り、グラヴィティ系ライドに対応する耐久性を持ちつつ、軽量性にも配慮したフィジークらしい一足を、ENSで活躍する輪工房の田口信博さんがインプレッション。
フィジーク初のグラヴィティ系シューズGRAVITAシリーズ 左がVERSOR、右がTENSORだ photo:Makoto AYANO
この特集ページで紹介してきたように、オンロード・オフロードを問わず充実したシューズラインアップを揃えるフィジークだが、これまでカバーしてこなかったカテゴリーがある。それが、ダウンヒルやフリーライド、エンデューロといった下り系のMTBライド向けのシューズだ。
既存のTERRA ERGOLACE X2も同じくMTBライド向けのシューズだが、更にペダルとのグリップ力やプロテクション性能に主眼を置いた設計が、GRAVITAシリーズの特徴。そのコアとなるのが、新設計のアウトソールだ。
国内展開としてはフィジーク初となるフラットソール 部位によって高さを変える手の込んだ造りだ
国内ではビンディング仕様のみの展開となるX2と異なり、ビンディングとフラットソールの2つが用意されているというのもGRAVITAの特徴。コーナーリング時にとっさに足を出しやすいフラットペダル用の専用シューズは下り系ライダーにとって欠かせない選択肢だ。
優れたグリップ力を発揮するビブラムのMegaGripラバー(ビンディングモデルはXS EVOラバー)を採用したアウトソールは、凹凸が少なめのトレッドパターンが成型されている。ペダリングと歩行時のバランスを取った設計のトレッキングシューズライクなトレッドを持ったX2に対し、よりペダルピンの食いつきに特化したアウトソールデザインとなっている。
ビブラムのMegaGripラバーを採用し、優れたグリップを実現するフラットソールモデル
XS EVOラバーを採用しつつ、幅広い調整幅を持ったビンディングソール
基本的なパターンはビンディングもフラットソールも共通 ビンディングモデルにはナイロンシャンクが入り、より高い剛性を与えられている
ビンディングモデルとフラットソールモデルではソール剛性が大きく異なっている。ビンディングモデルではナイロンシャンクを内蔵し、ペダリング効率の向上を狙っている。一方、フラットソールモデルはつま先部と中央部、かかと部の3つのエリアにアウトソールを分割し、それぞれの部位に必要なトレッドパターンを施すことで、ペダルの感覚を掴みやすい柔軟性とグリップ力、トレイルでの歩きやすさを実現した。
フィジーク GRAVITA TENSOR
オフセットしたシューレースに加え、パワーストラップを採用するクロージャーシステム
つま先にはTPUアーマーと名付けられた強固なバンパーが配置されている
くるぶしをカバーするアッパーデザイン カカトから中足部にはTPUコーティングが施されている
グラビティ系ライダーのために開発されたアウトソールの上に、用途に応じて最適化された2種類のアッパーを組み合わせ、GRAVITAシリーズはTensorとVersorという2つのレンジをラインアップする。
より高いスピード、厳しいコースコンディションを全力で駆け抜けるトップDHライダーのために生み出されたのが、ハイエンドモデルとなるTensor X6。厚めのインナーフォームにくるぶしを覆う内側のみハイカットデザイン、つま先部の堅牢なラバーバンパーによるプロテクション性能を与えられたシューズで、過酷な環境に晒されるレーシングユースでも気兼ねなく使うことのできるヘビーデューティーな仕様となっている。
確かな保護性能を有しつつも、小指側にオフセットしたシューレースシステムに加え、フィジークの得意とする幅広ベルクロの「パワーストラップ」を採用し、前後左右様々な方向へと負荷がかかるシーンでも足がずれることのないフィット感をも実現した。
フィジーク GRAVITA VERSOR
一方のVersorは、もう少しライトな状況を想定して設計された一足。耐久性の高いリップストップ生地のアッパー素材はTensorと同様ながら、足首の自由度を高めるローカット仕様となるほか、つま先部のプロテクションはTPUラミネートとされるなど軽量性とのバランスを取ったデザインとなっている。
もちろんVersorにもダウンヒルやエンデューロレースに使用するのに過不足ない性能が与えられているが、その軽量性と歩きやすさを活かしてアップダウンが多く押し歩きの多いトレイルライドなどでも活躍するだろう。
つま先はTPUコーティングが施されている
シューレースのみのシンプルなクロージャーシステム 小指側にオフセットされ、フィット感の向上を図る
カカトにもTPUコーティングが施され、擦れに強い耐久性を実現した
TENSORとくらべると高さは低いが、クランクなどに当たらないようくるぶし側は高くされている
今回は、国内のエンデューロシーンを牽引するENS(エンデューロナショナルシリーズ)において、Aクラスで活躍する輪工房の田口信博代表にGRAVITA Tensor X6のフラットソールモデルを使い込んでもらい、実際にレースで使用した感触を含めて、インプレッションしてもらった。
輪工房の田口信博代表
田口信博
千葉県野田市のプロショップ「輪工房」の代表。野田市サイクリング協会理事を務めつつ様々なサイクリングイベントをプロデュースしてきた。日本マウンテンバイク協会の公認B級インストラクターでもあり、オンロードからオフロードまで自転車の楽しみ方に精通している。
クロスカントリーを中心としていた時期はビンディングユーザーだったが、エンデューロに参戦するようになってからは、より足を出しやすいフラットペダル&シューズに移行したという。現在はスペシャライズド 2FOを愛用中。
輪工房
ENSはもちろん、普段のトレイルライドでもじっくり履きこみテストを行った photo:Naoki Yasuoka
イタリアンブランドのこういったフラットソールシューズというものが結構珍しいですから、新しい選択肢が増えるということ自体が嬉しいですね。これまでのフラットシューズはアッパーも硬めのものが多く、一日履き続けるのは辛いことがありました。ピッタリ靴紐を締めるとキツくなってくるので、緩めに履くなんて工夫もしていましたね。
その点このGRAVITA TENSORは、軽くて、しなやかで柔らかい履き心地で、一日中履いていられますね。パワーストラップで締め具合もすぐに調整できますし、もともとのフィット感も良いですから、丸一日トレイルで遊ぶようなシーンでもストレスフリーで楽しめます。
「軽くて、しなやかで柔らかい履き心地で、一日中履いていられます」田口信博(輪工房)
容易な調整を可能とするパワーストラップ
この履き心地の良さは、アッパーの薄さに起因するものでしょう。アッパーが薄いというと、何かに当たった時に痛いんじゃないの?と思う方もいるかもしれないですが、その点もしっかり考えられていますね。
実際、今日のレースでも木の根に足をヒットしてしまったんですが、全然痛くなかったんです。つま先に配置されているバンパーの強度がかなり高くて、相当な速度でぶつけても足を守ってくれると思います。乗車時にヒットする可能性が高い部位はしっかりとカバーされているので、安心感がありますね。
しっかりと足首を守り、異物の進入も防ぐカフ部分
パワーストラップの調整しやすさに加え、足入れ部の伸縮性が高いので、脱ぎ履きする時もいちいち靴紐を締めなおさなくて済むのも好印象です。くるぶし部も高く、しっかりと足首にフィットするので靴の中に小石などが入りづらいというのも地味ですが嬉しいポイントです。
やっぱりオフロードで乗っていると、石とか葉っぱとかが靴の中に入っちゃう時があって、そうなると気になりますよね。いちいち脱いで、入った石を出して、また履く、というのも面倒だし集中が切れるじゃないですか。そういうことが、このシューズなら起こりづらい。
ジャンプしてもペダルをしっかりと捉え続けてくれるGRAVITA TENSOR
ここまでアッパーについて話してきましたが、ソールの出来も良いですね。ビブラム製のソールは柔軟性に富んでいて、ペダルにもしっとりと食いつくようなグリップ感があります。今回はクランクブラザーズのSTAMPとの組み合わせでしたが、ペダル上で足をずらしづらいくらいでした。
また、オフバイク時で歩きやすく滑らないのでどんな時でも安心感があります。ビブラムソールといえば、登山靴でも一つの決め手になるような高いグリップ性能が身上です。高温多湿な日本のトレイルはウェットなシーンも多いのですが、そんなところを押し上げても滑らない。ソール自体の柔軟性も高く、しっかりと路面を掴めるので安心できます。
ビブラムソールはやはり素晴らしい、と田口店長
思わずバイクを押し歩くようなシーンでも安心できるグリップを備えた信頼感のある一足だ
クランクブラザーズのSTAMPとの組み合わせでテスト 相性はばっちりとのこと
「柔らかなビブラムラバーとしなやかなソールが日本のウェットなトレイルでもしっかりとグリップしてくれる」田口信博(輪工房)
MTBに乗っていて一番嫌なのが、坂を登り切れなくなって思わず足をついたときにズルッと滑る瞬間です。そのままこけるか、妙なところで踏ん張って動けなくなるか、とにかく最悪の事態に陥っちゃいます(笑)。このシューズならそんな心配はかなり少なくなりますね。
一般的にはソールが柔らかすぎるのは良くない、というイメージがあると思います。このシューズはしっかりとソールに厚みを出すことで、スニーカーで踏んだ時のような嫌なペダルの感触なども感じさせず、安定感のあるライドを楽しめるように設計されていると感じました。
しっかりと漕ぎを入れるようなシーンでも応えてくれる。年々僅差での争いとなるレースシーンに対応するべく開発されたシューズらしい性能だ
トレッドのパターンも考えられていますよね。ペダルとのコンタクトポイントは丸めの形状とする一方で、外側に行くにつれてエッジの立った四角めの形になっています。つま先と中足部の間に設けられているスリットも、歩きやすさに大きく貢献していると思いますね。
ペダルの上でも、自転車から降りても安心感のある高いグリップ力、1日中履いていられる快適性の高さ、普通のシューズに匹敵する歩きやすさを兼ね備えたシューズなので、ダウンヒルやエンデューロといったレースユースはもちろん、普段のトレイルライドにもぴったりの一足です。
フィジーク初のグラヴィティ系シューズ "GRAVITA"登場

この特集ページで紹介してきたように、オンロード・オフロードを問わず充実したシューズラインアップを揃えるフィジークだが、これまでカバーしてこなかったカテゴリーがある。それが、ダウンヒルやフリーライド、エンデューロといった下り系のMTBライド向けのシューズだ。
既存のTERRA ERGOLACE X2も同じくMTBライド向けのシューズだが、更にペダルとのグリップ力やプロテクション性能に主眼を置いた設計が、GRAVITAシリーズの特徴。そのコアとなるのが、新設計のアウトソールだ。

国内ではビンディング仕様のみの展開となるX2と異なり、ビンディングとフラットソールの2つが用意されているというのもGRAVITAの特徴。コーナーリング時にとっさに足を出しやすいフラットペダル用の専用シューズは下り系ライダーにとって欠かせない選択肢だ。
優れたグリップ力を発揮するビブラムのMegaGripラバー(ビンディングモデルはXS EVOラバー)を採用したアウトソールは、凹凸が少なめのトレッドパターンが成型されている。ペダリングと歩行時のバランスを取った設計のトレッキングシューズライクなトレッドを持ったX2に対し、よりペダルピンの食いつきに特化したアウトソールデザインとなっている。



ビンディングモデルとフラットソールモデルではソール剛性が大きく異なっている。ビンディングモデルではナイロンシャンクを内蔵し、ペダリング効率の向上を狙っている。一方、フラットソールモデルはつま先部と中央部、かかと部の3つのエリアにアウトソールを分割し、それぞれの部位に必要なトレッドパターンを施すことで、ペダルの感覚を掴みやすい柔軟性とグリップ力、トレイルでの歩きやすさを実現した。
Tensor & Versor 用途に応じて最適化されたアッパーを持つ2モデルを用意




グラビティ系ライダーのために開発されたアウトソールの上に、用途に応じて最適化された2種類のアッパーを組み合わせ、GRAVITAシリーズはTensorとVersorという2つのレンジをラインアップする。
より高いスピード、厳しいコースコンディションを全力で駆け抜けるトップDHライダーのために生み出されたのが、ハイエンドモデルとなるTensor X6。厚めのインナーフォームにくるぶしを覆う内側のみハイカットデザイン、つま先部の堅牢なラバーバンパーによるプロテクション性能を与えられたシューズで、過酷な環境に晒されるレーシングユースでも気兼ねなく使うことのできるヘビーデューティーな仕様となっている。
確かな保護性能を有しつつも、小指側にオフセットしたシューレースシステムに加え、フィジークの得意とする幅広ベルクロの「パワーストラップ」を採用し、前後左右様々な方向へと負荷がかかるシーンでも足がずれることのないフィット感をも実現した。

一方のVersorは、もう少しライトな状況を想定して設計された一足。耐久性の高いリップストップ生地のアッパー素材はTensorと同様ながら、足首の自由度を高めるローカット仕様となるほか、つま先部のプロテクションはTPUラミネートとされるなど軽量性とのバランスを取ったデザインとなっている。
もちろんVersorにもダウンヒルやエンデューロレースに使用するのに過不足ない性能が与えられているが、その軽量性と歩きやすさを活かしてアップダウンが多く押し歩きの多いトレイルライドなどでも活躍するだろう。




今回は、国内のエンデューロシーンを牽引するENS(エンデューロナショナルシリーズ)において、Aクラスで活躍する輪工房の田口信博代表にGRAVITA Tensor X6のフラットソールモデルを使い込んでもらい、実際にレースで使用した感触を含めて、インプレッションしてもらった。
フィジーク GRAVITA Tensor X6インプレッション
インプレライダープロフィール

田口信博
千葉県野田市のプロショップ「輪工房」の代表。野田市サイクリング協会理事を務めつつ様々なサイクリングイベントをプロデュースしてきた。日本マウンテンバイク協会の公認B級インストラクターでもあり、オンロードからオフロードまで自転車の楽しみ方に精通している。
クロスカントリーを中心としていた時期はビンディングユーザーだったが、エンデューロに参戦するようになってからは、より足を出しやすいフラットペダル&シューズに移行したという。現在はスペシャライズド 2FOを愛用中。
輪工房

イタリアンブランドのこういったフラットソールシューズというものが結構珍しいですから、新しい選択肢が増えるということ自体が嬉しいですね。これまでのフラットシューズはアッパーも硬めのものが多く、一日履き続けるのは辛いことがありました。ピッタリ靴紐を締めるとキツくなってくるので、緩めに履くなんて工夫もしていましたね。
その点このGRAVITA TENSORは、軽くて、しなやかで柔らかい履き心地で、一日中履いていられますね。パワーストラップで締め具合もすぐに調整できますし、もともとのフィット感も良いですから、丸一日トレイルで遊ぶようなシーンでもストレスフリーで楽しめます。


この履き心地の良さは、アッパーの薄さに起因するものでしょう。アッパーが薄いというと、何かに当たった時に痛いんじゃないの?と思う方もいるかもしれないですが、その点もしっかり考えられていますね。
実際、今日のレースでも木の根に足をヒットしてしまったんですが、全然痛くなかったんです。つま先に配置されているバンパーの強度がかなり高くて、相当な速度でぶつけても足を守ってくれると思います。乗車時にヒットする可能性が高い部位はしっかりとカバーされているので、安心感がありますね。

パワーストラップの調整しやすさに加え、足入れ部の伸縮性が高いので、脱ぎ履きする時もいちいち靴紐を締めなおさなくて済むのも好印象です。くるぶし部も高く、しっかりと足首にフィットするので靴の中に小石などが入りづらいというのも地味ですが嬉しいポイントです。
やっぱりオフロードで乗っていると、石とか葉っぱとかが靴の中に入っちゃう時があって、そうなると気になりますよね。いちいち脱いで、入った石を出して、また履く、というのも面倒だし集中が切れるじゃないですか。そういうことが、このシューズなら起こりづらい。

ここまでアッパーについて話してきましたが、ソールの出来も良いですね。ビブラム製のソールは柔軟性に富んでいて、ペダルにもしっとりと食いつくようなグリップ感があります。今回はクランクブラザーズのSTAMPとの組み合わせでしたが、ペダル上で足をずらしづらいくらいでした。
また、オフバイク時で歩きやすく滑らないのでどんな時でも安心感があります。ビブラムソールといえば、登山靴でも一つの決め手になるような高いグリップ性能が身上です。高温多湿な日本のトレイルはウェットなシーンも多いのですが、そんなところを押し上げても滑らない。ソール自体の柔軟性も高く、しっかりと路面を掴めるので安心できます。




MTBに乗っていて一番嫌なのが、坂を登り切れなくなって思わず足をついたときにズルッと滑る瞬間です。そのままこけるか、妙なところで踏ん張って動けなくなるか、とにかく最悪の事態に陥っちゃいます(笑)。このシューズならそんな心配はかなり少なくなりますね。
一般的にはソールが柔らかすぎるのは良くない、というイメージがあると思います。このシューズはしっかりとソールに厚みを出すことで、スニーカーで踏んだ時のような嫌なペダルの感触なども感じさせず、安定感のあるライドを楽しめるように設計されていると感じました。

トレッドのパターンも考えられていますよね。ペダルとのコンタクトポイントは丸めの形状とする一方で、外側に行くにつれてエッジの立った四角めの形になっています。つま先と中足部の間に設けられているスリットも、歩きやすさに大きく貢献していると思いますね。
ペダルの上でも、自転車から降りても安心感のある高いグリップ力、1日中履いていられる快適性の高さ、普通のシューズに匹敵する歩きやすさを兼ね備えたシューズなので、ダウンヒルやエンデューロといったレースユースはもちろん、普段のトレイルライドにもぴったりの一足です。
フィジーク Gravita Tensor X6
フィジーク Gravita Versor X6
提供:カワシマサイクルサプライ 制作:シクロワイアード編集部