2022/01/24(月) - 10:23
フィジークのロードレーシングシューズのフラッグシップモデル VENTO INFINITO KNIT CARBON 2に、満を持して追加されたワイドモデルを長期使用してのインプレッション。幅広甲高が多い日本人足型にもフィットするであろうニットアッパーのハイエンドシューズの履き心地をレポートする。
フィジークのロードレーシングシューズのトップモデル "VENTO INFINITO CARBON2"。フィジークが持つ技術と、サポートする選手たちからのフィードバックを結集したモデルであり、数多くのプロ選手を足元から支えてきた一足だ。
VENTO INFINITO CARBON 2の開発はR2アウトソールから開始された。より効率的なパワー伝達のために剛性を向上させつつ、軽量化も同時に実現するカーボンレイアップを開発。剛性指数はフィジークの最高数値10を示している。また、大きな開口部が設けられており、シューズ内の通気性も向上させている。
ダイナミックアーチサポート機能を持つアッパーが大きな特徴。アッパーとは別パーツとなったクロージャーベルトを足首側のダイヤル/ワイヤーで引き上げることで、土踏まず部分から包み込むようなフィット感を実現した。クロージャーのBOAダイヤルにはLi2が採用されている。
VENTO INFINITO CARBON2にはアッパー素材が異なる2つのモデルが用意される。1つがマイクロテックスを採用した"VENTO INFINITO CARBON 2"、もう1つがここで紹介する、通気性と柔軟性に優れた編み込みファブリックを用いたニットアッパーの"VENTO INFINITO KNIT CARBON 2"だ。
そんな2つのハイエンドモデルにワイドフィットタイプが登場した。多くの足型にフィットするようになったEVO3 Lastをベースに、前足部の幅や高さを再構築し、ハイボリュームでワイドなフォルムを持った「EVO3 WIDE Last」を作成。新しいワイドな木型を採用することで大胆にシューズの形状を変化させ、ワイドモデルを求めるサイクリストでもフィットしやすいシューズを実現。フィジークらしいスマートで美しいスタイルは維持したまま、日本人に多い幅広タイプの足型をカバーした同社初のハイエンドロードシューズとなる。
今回長期テストするのはモデル名に「KNIT」の名称がつくニットアッパーモデル。ニットには熱溶着TPUを配すことで、強度や剛性も確保。ニットによる柔軟なフィット性や通気性とともに、高いサポート力とペダリング効率を実現している。
トップモデルらしくサイズは36、37~44.5、45(37~44.5はハーフあり)と豊富に揃えられる。長期テストは他ブランドの多くのワイドモデルを履いてきたCW編集部・綾野が担当した。
フィジークは以前から幅が狭いため履くことができず、諦めていたブランド。近年アッパーがワイドになってきている傾向があっても、ノーマルモデルのSTABILITAとINFINITOを試してみて、どちらもやや狭く感じていた。
フィジークは昨年、まずミドルグレードのR4(TEMPO OVERCURVE R4 WIDE)をワイド化。これは履けるという印象。しかし他社のハイエンドモデルばかり履いてきた足は、やはりトップモデルの軽さやフィット感、高剛性なソールを欲するので、期待しながらハイエンドが登場するのを待っていた。
発売されてすぐに注文したシューズが昨秋に届き、週末ごとにロングライドを乗り込んですっかり足に馴染んできた。今はシマノもシディも併用しながら、このフィジークをもっともヘビロテで履いている。
何より今まで履けなかったフィジークが履けるようになったのは嬉しい。レーシングシューズでありながらカジュアルさを感じるデザインがカッコいいし、スマートさ満点ながら幅広になっても野暮ったい感じにならないのがいい。一言で言って「今風」だ。
BOAのLi2ダイヤルは薄く、締める・緩める両方が微調整できる。無限=「∞」状に通されたケーブルを締め込むのが「インフィニティ」の名前の由来とか。足全体を包み込むように均等に締め上げていけて、偏りも生じない。ダイヤルの位置も良く、甲に当たったり、その存在を気にしたりすることが無い。局所的な圧迫がまったく無い。それでいて遊びがないほどまでキツく締め上げることも可能なのはさすがハイエンドシューズ。
最近はDMT、ジロ、FLRなど、ニットアッパーを採用したシューズが多くなってきた。ソフトでよく伸びるアッパーが特徴のものが多いが、フィジークのKNITはユルく伸びるものではなく、言葉から受ける編みもの的な柔らかさ・伸び感ではない。伸びが少ないため、履き始めは慣れるまで圧迫を感じたほど。これが使い込むと馴染んでくる。むしろ薄くて強く、軽量であることのメリットが勝っているようだ。
私の足は小指の外側の骨が出っ張っており、甲も高く張っている。これが原因でフィットしないシューズだと局所的に赤く腫れるが、その症状が数日間は出てしまった。しかし日が経つにつれて足に合わせた伸びが出て馴染んだのか、問題なくフィットするようになる。
どちらかというと皮革のようなマイクロテックス素材のモデルのほうが足の突起部等には許容力があるのかもしれないが、その点は比較テストしないと分からない。どちらにせよフィジークのKNITは大きく自由に伸び縮みするようなファブリックではないということ。フィット感が高くて快適、軽量かつパワーを逃さない設計はさすがハイエンドモデルだ。
薄くて剛性感あるニットアッパーは強めのスプリントでもダンシングでもしっかり足を包んでホールドしてくれる。気になる縫い目も無いためソックスも薄いもので問題なく、局所的な痛みも出なかった。BOAのLi2ダイヤルを締め込んでもアッパーが左右均等に足を包み、たるみもでない。BOAダイヤル自体も薄いためシューズカバーの装着もスムーズで冬場も気持ちよく履ける。デザインに違わぬスマートさだ。
ソールのベンチレーション穴も大きく、ニットの優れた通気性で蒸れにくい。雨に降られたときもアッパーが水を吸わないためか伸びず、重くならず、履き心地に大きな変化はなかった(皮革タイプだと濡れると重くなり、伸びやすい)。
インソールの形状はフラットで好感が持てる。なぜなら土踏まず部がせり上がっていたりするとフィット感は上がる気がしてもインソールを入れた際に干渉するため、できるだけフラットな形状が扱いやすい。とくに硬いSOLESTARのカーボン製インソールやRETUL性のカスタムインソールを使用しているので、どちらも問題なく差し替えられたのは自分にとって良い点。それらが使えないとロングライドに困るぐらい依存しているから。
踵部は滑り止めのアンチスリップ加工は目立たないが、圧迫感がないのに自然で十分なホールド感がある。フィット感にはかなり満足している。大事なイベント時や超ロングライドは必ずチョイスして履くようになった。
一点、クリートの取り付け位置は最近の流行で後ろ目の設定だ。これについては前述したとおり、私は足の指が短いためペダル軸を拇指球と一致させることができず、やや後ろのセッティングになる。これは現代的な「ミッドフットクリートポジション」といってプロ選手からのフィードバックを受けて多くのメーカーが変えつつある流行の設計なので、そのペダリングに慣れてみようと思っている。すでにそのタイプのシューズで慣れている人にとっては問題ない。ロングライドも数回こなしたけれど、サドルの前後位置やハンドル高ポジションを変更しながら試行錯誤中だ。
なおノーマルフィット版のINFINITO CARBON2については、なるしまフレンドの藤野智一さんがインプレッションして掘り下げた特集ページVol.3を参照してほしい。
フィジークのフラッグシップシューズ初のワイドフィットモデルが登場
フィジークのロードレーシングシューズのトップモデル "VENTO INFINITO CARBON2"。フィジークが持つ技術と、サポートする選手たちからのフィードバックを結集したモデルであり、数多くのプロ選手を足元から支えてきた一足だ。
VENTO INFINITO CARBON 2の開発はR2アウトソールから開始された。より効率的なパワー伝達のために剛性を向上させつつ、軽量化も同時に実現するカーボンレイアップを開発。剛性指数はフィジークの最高数値10を示している。また、大きな開口部が設けられており、シューズ内の通気性も向上させている。
ダイナミックアーチサポート機能を持つアッパーが大きな特徴。アッパーとは別パーツとなったクロージャーベルトを足首側のダイヤル/ワイヤーで引き上げることで、土踏まず部分から包み込むようなフィット感を実現した。クロージャーのBOAダイヤルにはLi2が採用されている。
VENTO INFINITO CARBON2にはアッパー素材が異なる2つのモデルが用意される。1つがマイクロテックスを採用した"VENTO INFINITO CARBON 2"、もう1つがここで紹介する、通気性と柔軟性に優れた編み込みファブリックを用いたニットアッパーの"VENTO INFINITO KNIT CARBON 2"だ。
そんな2つのハイエンドモデルにワイドフィットタイプが登場した。多くの足型にフィットするようになったEVO3 Lastをベースに、前足部の幅や高さを再構築し、ハイボリュームでワイドなフォルムを持った「EVO3 WIDE Last」を作成。新しいワイドな木型を採用することで大胆にシューズの形状を変化させ、ワイドモデルを求めるサイクリストでもフィットしやすいシューズを実現。フィジークらしいスマートで美しいスタイルは維持したまま、日本人に多い幅広タイプの足型をカバーした同社初のハイエンドロードシューズとなる。
今回長期テストするのはモデル名に「KNIT」の名称がつくニットアッパーモデル。ニットには熱溶着TPUを配すことで、強度や剛性も確保。ニットによる柔軟なフィット性や通気性とともに、高いサポート力とペダリング効率を実現している。
トップモデルらしくサイズは36、37~44.5、45(37~44.5はハーフあり)と豊富に揃えられる。長期テストは他ブランドの多くのワイドモデルを履いてきたCW編集部・綾野が担当した。
インプレッション
私の足は単純な幅広・甲高というだけではなく、足指が短いためクリートも前に設定しなくてはならず、シューズ選びはけっこう深刻。典型的な日本人の足型とはいえ、なかなかフィットするモデルが無いのが悩み。主にシディのMEGAシリーズかシマノのワイドモデルがフィットするため、近年はシディERGO5 MEGA、シマノSPHYER RC9、LAKE CX331を履いてきた。それらはしっかり履けるワイドシューズ。フィジークは以前から幅が狭いため履くことができず、諦めていたブランド。近年アッパーがワイドになってきている傾向があっても、ノーマルモデルのSTABILITAとINFINITOを試してみて、どちらもやや狭く感じていた。
フィジークは昨年、まずミドルグレードのR4(TEMPO OVERCURVE R4 WIDE)をワイド化。これは履けるという印象。しかし他社のハイエンドモデルばかり履いてきた足は、やはりトップモデルの軽さやフィット感、高剛性なソールを欲するので、期待しながらハイエンドが登場するのを待っていた。
発売されてすぐに注文したシューズが昨秋に届き、週末ごとにロングライドを乗り込んですっかり足に馴染んできた。今はシマノもシディも併用しながら、このフィジークをもっともヘビロテで履いている。
何より今まで履けなかったフィジークが履けるようになったのは嬉しい。レーシングシューズでありながらカジュアルさを感じるデザインがカッコいいし、スマートさ満点ながら幅広になっても野暮ったい感じにならないのがいい。一言で言って「今風」だ。
BOAのLi2ダイヤルは薄く、締める・緩める両方が微調整できる。無限=「∞」状に通されたケーブルを締め込むのが「インフィニティ」の名前の由来とか。足全体を包み込むように均等に締め上げていけて、偏りも生じない。ダイヤルの位置も良く、甲に当たったり、その存在を気にしたりすることが無い。局所的な圧迫がまったく無い。それでいて遊びがないほどまでキツく締め上げることも可能なのはさすがハイエンドシューズ。
最近はDMT、ジロ、FLRなど、ニットアッパーを採用したシューズが多くなってきた。ソフトでよく伸びるアッパーが特徴のものが多いが、フィジークのKNITはユルく伸びるものではなく、言葉から受ける編みもの的な柔らかさ・伸び感ではない。伸びが少ないため、履き始めは慣れるまで圧迫を感じたほど。これが使い込むと馴染んでくる。むしろ薄くて強く、軽量であることのメリットが勝っているようだ。
私の足は小指の外側の骨が出っ張っており、甲も高く張っている。これが原因でフィットしないシューズだと局所的に赤く腫れるが、その症状が数日間は出てしまった。しかし日が経つにつれて足に合わせた伸びが出て馴染んだのか、問題なくフィットするようになる。
どちらかというと皮革のようなマイクロテックス素材のモデルのほうが足の突起部等には許容力があるのかもしれないが、その点は比較テストしないと分からない。どちらにせよフィジークのKNITは大きく自由に伸び縮みするようなファブリックではないということ。フィット感が高くて快適、軽量かつパワーを逃さない設計はさすがハイエンドモデルだ。
薄くて剛性感あるニットアッパーは強めのスプリントでもダンシングでもしっかり足を包んでホールドしてくれる。気になる縫い目も無いためソックスも薄いもので問題なく、局所的な痛みも出なかった。BOAのLi2ダイヤルを締め込んでもアッパーが左右均等に足を包み、たるみもでない。BOAダイヤル自体も薄いためシューズカバーの装着もスムーズで冬場も気持ちよく履ける。デザインに違わぬスマートさだ。
ソールのベンチレーション穴も大きく、ニットの優れた通気性で蒸れにくい。雨に降られたときもアッパーが水を吸わないためか伸びず、重くならず、履き心地に大きな変化はなかった(皮革タイプだと濡れると重くなり、伸びやすい)。
インソールの形状はフラットで好感が持てる。なぜなら土踏まず部がせり上がっていたりするとフィット感は上がる気がしてもインソールを入れた際に干渉するため、できるだけフラットな形状が扱いやすい。とくに硬いSOLESTARのカーボン製インソールやRETUL性のカスタムインソールを使用しているので、どちらも問題なく差し替えられたのは自分にとって良い点。それらが使えないとロングライドに困るぐらい依存しているから。
踵部は滑り止めのアンチスリップ加工は目立たないが、圧迫感がないのに自然で十分なホールド感がある。フィット感にはかなり満足している。大事なイベント時や超ロングライドは必ずチョイスして履くようになった。
一点、クリートの取り付け位置は最近の流行で後ろ目の設定だ。これについては前述したとおり、私は足の指が短いためペダル軸を拇指球と一致させることができず、やや後ろのセッティングになる。これは現代的な「ミッドフットクリートポジション」といってプロ選手からのフィードバックを受けて多くのメーカーが変えつつある流行の設計なので、そのペダリングに慣れてみようと思っている。すでにそのタイプのシューズで慣れている人にとっては問題ない。ロングライドも数回こなしたけれど、サドルの前後位置やハンドル高ポジションを変更しながら試行錯誤中だ。
なおノーマルフィット版のINFINITO CARBON2については、なるしまフレンドの藤野智一さんがインプレッションして掘り下げた特集ページVol.3を参照してほしい。
VENTO INFINITO KNIT CARBON 2 WIDE(ヴェント インフィニート ニット カーボン 2)
提供:カワシマサイクルサプライ text&photo:Makoto AYANO