2021/01/15(金) - 12:13
フィジークの2021年モデルを深堀りする特集も今回の第4弾で最終回。ラストを飾るのは世界的に盛り上がるグラベル遊びに適したTERRA X4 POWERSTRAPと、オールマウンテン系シューズTERRA X2 ERGOLACEという2種類だ。普段からグラベル、シクロクロス、MTBなどオフロード遊びを楽しむCW編集部の綾野真(X2)と磯部聡(X4)のインプレッションを行った。
未舗装路だけではなくロードツーリングでも活躍してくれる X4 TERRA POWERSTRAP(手前)、X2 TERRA ERGOLACE(奥) photo:Makoto AYANO
グラベルというジャンルにカテゴライズされる自転車遊びが世界中で火がついている。グラベル隆盛する以前、フィジークはオフロード用シューズをマウンテンバイク用としてモデル名の頭に"M"という文字を冠し、ロードのRとの区別を行っていた。近年は"M"というカテゴライズを辞め、オフロードモデルはTERRAシリーズとしてラインアップされるようになった。モデル名は"X"+ナンバリング。クロスとも読めるこの文字はそれぞれのシューズに特色はあるものの、自転車遊びのカテゴライズの枠に収まらず横断的に使えるシューズとして捉えられるだろう。
そんなTERRAシリーズより今回の特集でピックアップするのは、X2 TERRA ERGOLACEとX4 TERRA POWERSTRAPという2種類。それぞれ特徴のあるシューズをインプレッションとともに深堀りしていこう。
フィジーク X4 TERRA POWERSTRAP
マイクロテックスのアッパーにPOWERSTRAPを組み合わせる構成。ロードシューズのTEMPO POWERSTRAP R5と瓜二つのグラベルシューズがX4 TERRA POWERSTRAPだ。まるでロードシューズのようなシンプルな外見とされているがグラベルという位置づけにされる理由はトレッドが装備され、2つ穴クリートに対応しているところから。
いわゆるオフロードシューズ用のアウトソールなのだが、MTB用のようにヘビーな印象を与えないのもトレッドデザインに依るものだろう。元来トレッドは土の路面を捉える働きをするようにデザインされており、それがゴツゴツとした如何にもオフロード向けという雰囲気を演出してきた。
しかしX4のトレッドは幾つものブロックに分かれておらず、クリートの左右と踵にワンピースのトレッドがあしらわれるのみという潔い作り。MTB向けのXシリーズのシューズに設けられている爪先部分のトレッドもX4では採用されていない。これがロードシューズ然としたシンプルな印象を演出している。
控えめなトレッドがグラベル用として丁度よい
トレッドには三角形の格子状ディティールと深めのサイプが施されている
カーブしたトレッドによって歩行性を向上させている
X4のラバーソールは歩くために作られたものであり、グリップ力はもちろん備えられた。トレッド表面には格子状のパターンと深めのサイプが施されており、グラベルやコンクリート面でもスリップしにくくなっているはずだ。
また、クリート部分のトレッドは地面に対して平行ではなくカーブした設計であることも大きな特徴。曲線を描くデザインは、歩行時に前足部が地面に着地し、蹴り出しやすくなるという。ソール剛性指数が6/10と程よく柔らかく、程よく硬い設定のナイロンアウトソールとされているため、ペダリングと歩行時どちらのシチュエーションに置いても過不足を感じにくくなっているはずだ。
近年のフィジークを代表するテクノロジーであるPOWERSTRAP
爪先部分には補強が施されている
マイクロテックスのアッパーはリップストップのような格子状のディティールを確認することができる
クロージャーシステムのPOWERSTRAPは今のフィジークを代表するテクノロジー。簡単に行ってしまえばベルクロなのだが、前足部のベルトはダイヤル式のワイヤーのように折り返しており、前足部を1本のベルトでフィットさせようとしている。モビスターの選手たちも愛用していることからも、そのフィット感の高さは証明されている。
X4はグラベル用と位置づけられているものの、そのロードシューズ然とした見た目からもカフェライドなどロードツーリングでも活躍してくれるはずだ。使用するユーザーによって様々な使い方ができそうなX4のインプレッションに移ろう。
スタイリッシュかつ、歩きやすさを重視したフィジークらしいデザイン photo:Makoto AYANO
何がいいって、カタチが良い。スタイリッシュで、オフロード用なのに都会感すら感じるX4 TERRA POWERSTRAP(以下X4)のデザインは、アメリカンブランドとも、日本ブランドとも違うフィジークらしさが何とも良い。
それはきっと、POWERSTRAPによるダイヤルレスと、ゴツゴツしすぎていないソールパターン、それと、ストラップに沿うようデザインされたベンチレーションによるもの。グラベルでは良い意味で目立つし、寄り道の多いシティライドにはスッと馴染んでくれる。フィジークシューズと言えばスタイリッシュなデザイン、という方には、グッとくるものがある。
ホールド感は少し余裕のある心地よさ。POWERSTRAPの効果も感じる photo:Makoto AYANO
足馴染みも良い。マイクロテックス製のアッパーは、厚みがあるのに柔らかめで、新品であるにも関わらず心地よい締め付け具合。筆者は幅狭甲高、かつ内反小趾(小指の付け根が外に張り出している)という脚の持ち主だが、およそ半日のライドで履き通しても痛みを伴うことはなかったし、何日か履いてるうちに足馴染みも出てきた。そして、それにはもちろん、ダイヤルを使わず、大きな面で足を包み込むPOWERSTRAPも効いている。ラチェットで締め込むのではなく、少し余裕のある心地よいホールドは、フィジークならではと言っていい。
そしてもちろん、このシューズ最大のメリットは「歩きやすい」こと。もちろん従来のクロスカントリーシューズも当然ロードシューズと比べれば歩きやすいけれど、グラベルシューズなら岩場に突き刺したり、あるいは泥の中をランニングするMTB/シクロクロスレースような条件は考えなくていい。だからゴツゴツしたソールも、スタッズ(スパイクピン)も要らないし、カフェで休憩するときに、カツカツ言わず普通に歩けるものがあれば理想だ。
X4のソール自体はナイロン製ではあるものの、その中では比較的硬めだ。もちろんカーボンソールと比べればペダリング中のたわみを感じる(疲れにくく、ガッツリ踏んでも応えてくれるいい塩梅)ものの、ラバーソール自体のアールで踵の着地からつま先の蹴り出しまでをサポートしてくれる仕組み。フィジークらしくスタックハイトが高めなので、ジロやラファのグラベルシューズと比べて少し歩くのにコツが要るものの、床とクリートの音鳴りもなく、慣れれば自然に歩ける。岩場で不意にバランスを失ったとき、ぶつけて痛い思いをしないためのトゥーガードの存在も、オフロードに連れ出すための大きな安心感だ。
ナイロンソールは疲れにくく、しっかり踏んでも応えてくれるいい塩梅 photo:Makoto AYANO
X4は、何もかもちょうどいいシューズだ。歩きやすさはもちろん、心地良い履き心地と、攻めてる時も抜いて走る時にも絶妙なソールの硬さ。そして何よりスタイリッシュなそのフォルム。オフロードからシティユースまで対応してくれるX4は、従来アメリカンブランドが主導してきた"グラベル"に、イタリアらしい、フィジークらしい解釈を加えた心揺さぶられるシューズだ。
フィジーク TERRA X4 POWERSTRAP (c)カワシマサイクルサプライ
フィジーク X2 TERRA ERGOLACE
続いて取り上げるX2 TERRA ERGOLACEは、欧米で人気の高いMTBエンデューロなどで活躍してくれるヘビーデューティーなオフロードシューズ。トレッキングシューズのような見た目からもわかるように、歩きやすさも考慮して開発された一足だ。
シューズの歩行性を司るアウトソールは剛性指数3/10という柔軟な作り。ビブラム製ラバーを使用したトレッド、クッションの役割を果たすEVAミッドソールを基本構成とし、クリート部分にナイロンシャンクを挟み込むことで、中足部はスニーカーのような柔軟性を備えながらも、ペダリングパワーを伝えるためのクリート部分は硬さを確保。
矢印のようなトレッドが特徴のアウトソール
アウトソールのラバーはビブラム製だ
深めのトレッドとされているため、マッドコンディションでもグリップしてくれそうだ
歩く時はビブラム製ラバーソールが路面を捉え、未舗装路でのグリップ力を発揮。さらに中足部の柔軟性が足の動きに追従してくれるため、ソール剛性の高い競技シューズのようにつま先立ちで歩くようなスタイルではなく、一般的なシューズを履いているかのように歩くことができるという。
アッパーにはウーブンリップストップという引き裂きに強いニット生地をメイン素材として使用している。つま先や、シューズのサイド部分にはPUラミネートが施され、シューズが強化された。テクニカルなダウンヒルや藪が生い茂るようなトレイルでダメージを受けがちな部分が保護されているため、アグレッシブにトレイルを楽しめるはずだ。
シューズの小指側にオフセットした靴紐式とされている
アッパーのメイン素材はリップストップのニット生地で、爪先部分は補強が施されている
クッション性を担うEVA素材のミッドソール(グレー部分)が挟み込まれている
モデル名にあるERGOLACE(エルゴレース)というのはクロージングシステムのことであり、簡単に説明すると靴紐のこと。フィジークの靴紐の特徴は取り付け位置がシューズ外側(小指側)にオフセットされており、靴紐がクランクやチェーンリングに巻き込まれにくくなっていることが特徴だ。
X2 TERRA ERGOLACEはエンデューロのようなグラビティ系MTBライドにマッチするシューズだが、里山トレイルライドや押し歩き区間も含まれるようなグラベルライド、キャンプツーリングなど様々なシチュエーションで活躍してくれそうだ。オフロードをメインに遊ぶサイクリストにぴったりなシューズのインプレッションに移ろう。
タウン、グラベル、トレイルどこでもフィットするルックスのX2 TERRA ERGOLACE photo:So Isobe
ビブラムソールとトレッキングシューズに似たルックス通り、X2 TERRA ERGOLACEはグラベルからMTBライドまでをカバーできそうなシューズだ。MTBクロスカントリーやシクロクロスレースなどレースでカーボンソールのシューズを使用している筆者だが、普段のグラベルライドではそのリジッドさがオーバースペックで、とくにソールが硬くて曲がらず、歩きにくいことが大きなストレスとなる。だから歩きやすさに振ったソールのシューズも常備したい。
X2 TERRA ERGOLACEをグラベル&トレイルライドで履き込んでみた photo:So Isobe
X2 TERRA ERGOLACEはラバーソールが柔らかく、しかしソールにナイロンシャンクが仕込まれているためペダリングをしっかり受け止める安定感も備えている。フィット感が非常に良いのは靴紐の取り付け位置がシューズ外側(小指側)にオフセットしていることが効いている。強く締めても甲に圧迫がなく、面で包み込むようなフィット感がある。かつタンが斜めにずれたりしない。ベルクロやBOA等の機構に頼ること無く紐だけでこのフィット感が出せるのはERGOLACE(エルゴレース)の美点だ。そして幅に余裕のあるラストのおかげで通常ワイドを履く筆者でも問題がなかった。足型への対応幅が広いのもERGOLACEと紐締めタイプの美点だろう。
土や砂のオフロードであるきやすく、頼もしいグリップを発揮するラバーソールだ photo:So Isobe
ソールのグリップ感は非常に高くて、濡れた木の根っこや岩場も不安なく歩ける。ソールの柔軟性が高いのでバイクを押したり担いだりして歩くシーンが多いマウンテンバイキングにはぴったりだ。かつ、グラベルライドでも高低差のある地形やトレイルに分け入っていくのに向くシューズだ。柔軟なだけでなく、つま先やサイド部の補強もしっかりしているため、ガレ場などでも安心感が高い。
ペダリングの力をかけるとソールのクッション感がやや気になるため、サポート力がある硬めのインソールに差し替えればパワーロスは少なくできるだろう。アッパーはカジュアルなルックスだが、前述のとおり甲のフィット感が高いため思いのほかレーシングシューズなみのタイトフィットにできる。
ビンディングペダルとの相性は良いが、ケージ付きペダルのほうが面で踏めるだろう photo:So Isobe
MTBトレイルライドで使用頻度が高いケージ付きのビンディングペダルとの相性はとても良く、テクニカルなセクションで足を半分外しながらのライドや、すぐに足を着くことに備えた乗り方、あるいは散策を楽しむようなトレイルライドに非常に使いやすいシューズだ。筆者はグラベルバイクに乗っての里山ライドが好きで、グラベルバイク以上・MTB未満の難易度のトレイルを散歩するようにライドしている。そんなとき歩きを積極的に入れられるシューズとして重宝している。トレッキングシューズ的なバイクシューズは他にもあるが、得てしてアッパーのホールドが大げさすぎるものが多いが、このX2 TERRA ERGOLACEはペダリングとウォーキングをほどよいバランスで両立できる稀なシューズだ。 ウォーキングを多用するグラベルライドにも、里山MTBライドにも向いている。
フィジーク TERRA ERGOLACE X2 (c)カワシマサイクルサプライ
世界的に盛り上がるグラベルシーンとフィジーク
![未舗装路だけではなくロードツーリングでも活躍してくれる X4 TERRA POWERSTRAP(手前)、X2 TERRA ERGOLACE(奥)](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/12/fizikshoes-96.jpg)
グラベルというジャンルにカテゴライズされる自転車遊びが世界中で火がついている。グラベル隆盛する以前、フィジークはオフロード用シューズをマウンテンバイク用としてモデル名の頭に"M"という文字を冠し、ロードのRとの区別を行っていた。近年は"M"というカテゴライズを辞め、オフロードモデルはTERRAシリーズとしてラインアップされるようになった。モデル名は"X"+ナンバリング。クロスとも読めるこの文字はそれぞれのシューズに特色はあるものの、自転車遊びのカテゴライズの枠に収まらず横断的に使えるシューズとして捉えられるだろう。
そんなTERRAシリーズより今回の特集でピックアップするのは、X2 TERRA ERGOLACEとX4 TERRA POWERSTRAPという2種類。それぞれ特徴のあるシューズをインプレッションとともに深堀りしていこう。
フィジーク X4 TERRA POWERSTRAP
ロードシューズ寄りのオフロードモデル
![フィジーク X4 TERRA POWERSTRAP](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/29/fizikshoes-101.jpg)
マイクロテックスのアッパーにPOWERSTRAPを組み合わせる構成。ロードシューズのTEMPO POWERSTRAP R5と瓜二つのグラベルシューズがX4 TERRA POWERSTRAPだ。まるでロードシューズのようなシンプルな外見とされているがグラベルという位置づけにされる理由はトレッドが装備され、2つ穴クリートに対応しているところから。
いわゆるオフロードシューズ用のアウトソールなのだが、MTB用のようにヘビーな印象を与えないのもトレッドデザインに依るものだろう。元来トレッドは土の路面を捉える働きをするようにデザインされており、それがゴツゴツとした如何にもオフロード向けという雰囲気を演出してきた。
しかしX4のトレッドは幾つものブロックに分かれておらず、クリートの左右と踵にワンピースのトレッドがあしらわれるのみという潔い作り。MTB向けのXシリーズのシューズに設けられている爪先部分のトレッドもX4では採用されていない。これがロードシューズ然としたシンプルな印象を演出している。
![控えめなトレッドがグラベル用として丁度よい](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/29/fizikshoes-109.jpg)
![トレッドには三角形の格子状ディティールと深めのサイプが施されている](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/29/fizikshoes-112.jpg)
![カーブしたトレッドによって歩行性を向上させている](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/29/fizikshoes-115.jpg)
X4のラバーソールは歩くために作られたものであり、グリップ力はもちろん備えられた。トレッド表面には格子状のパターンと深めのサイプが施されており、グラベルやコンクリート面でもスリップしにくくなっているはずだ。
また、クリート部分のトレッドは地面に対して平行ではなくカーブした設計であることも大きな特徴。曲線を描くデザインは、歩行時に前足部が地面に着地し、蹴り出しやすくなるという。ソール剛性指数が6/10と程よく柔らかく、程よく硬い設定のナイロンアウトソールとされているため、ペダリングと歩行時どちらのシチュエーションに置いても過不足を感じにくくなっているはずだ。
![近年のフィジークを代表するテクノロジーであるPOWERSTRAP](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/29/fizikshoes-104.jpg)
![爪先部分には補強が施されている](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/29/fizikshoes-107.jpg)
![マイクロテックスのアッパーはリップストップのような格子状のディティールを確認することができる](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/29/fizikshoes-106.jpg)
クロージャーシステムのPOWERSTRAPは今のフィジークを代表するテクノロジー。簡単に行ってしまえばベルクロなのだが、前足部のベルトはダイヤル式のワイヤーのように折り返しており、前足部を1本のベルトでフィットさせようとしている。モビスターの選手たちも愛用していることからも、そのフィット感の高さは証明されている。
X4はグラベル用と位置づけられているものの、そのロードシューズ然とした見た目からもカフェライドなどロードツーリングでも活躍してくれるはずだ。使用するユーザーによって様々な使い方ができそうなX4のインプレッションに移ろう。
インプレッション by 磯部聡(CW編集部)
![スタイリッシュかつ、歩きやすさを重視したフィジークらしいデザイン](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/06/img8541.jpg)
何がいいって、カタチが良い。スタイリッシュで、オフロード用なのに都会感すら感じるX4 TERRA POWERSTRAP(以下X4)のデザインは、アメリカンブランドとも、日本ブランドとも違うフィジークらしさが何とも良い。
それはきっと、POWERSTRAPによるダイヤルレスと、ゴツゴツしすぎていないソールパターン、それと、ストラップに沿うようデザインされたベンチレーションによるもの。グラベルでは良い意味で目立つし、寄り道の多いシティライドにはスッと馴染んでくれる。フィジークシューズと言えばスタイリッシュなデザイン、という方には、グッとくるものがある。
![ホールド感は少し余裕のある心地よさ。POWERSTRAPの効果も感じる](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/06/img8477.jpg)
足馴染みも良い。マイクロテックス製のアッパーは、厚みがあるのに柔らかめで、新品であるにも関わらず心地よい締め付け具合。筆者は幅狭甲高、かつ内反小趾(小指の付け根が外に張り出している)という脚の持ち主だが、およそ半日のライドで履き通しても痛みを伴うことはなかったし、何日か履いてるうちに足馴染みも出てきた。そして、それにはもちろん、ダイヤルを使わず、大きな面で足を包み込むPOWERSTRAPも効いている。ラチェットで締め込むのではなく、少し余裕のある心地よいホールドは、フィジークならではと言っていい。
そしてもちろん、このシューズ最大のメリットは「歩きやすい」こと。もちろん従来のクロスカントリーシューズも当然ロードシューズと比べれば歩きやすいけれど、グラベルシューズなら岩場に突き刺したり、あるいは泥の中をランニングするMTB/シクロクロスレースような条件は考えなくていい。だからゴツゴツしたソールも、スタッズ(スパイクピン)も要らないし、カフェで休憩するときに、カツカツ言わず普通に歩けるものがあれば理想だ。
X4のソール自体はナイロン製ではあるものの、その中では比較的硬めだ。もちろんカーボンソールと比べればペダリング中のたわみを感じる(疲れにくく、ガッツリ踏んでも応えてくれるいい塩梅)ものの、ラバーソール自体のアールで踵の着地からつま先の蹴り出しまでをサポートしてくれる仕組み。フィジークらしくスタックハイトが高めなので、ジロやラファのグラベルシューズと比べて少し歩くのにコツが要るものの、床とクリートの音鳴りもなく、慣れれば自然に歩ける。岩場で不意にバランスを失ったとき、ぶつけて痛い思いをしないためのトゥーガードの存在も、オフロードに連れ出すための大きな安心感だ。
![ナイロンソールは疲れにくく、しっかり踏んでも応えてくれるいい塩梅](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/06/monoralgravelride-35.jpg)
X4は、何もかもちょうどいいシューズだ。歩きやすさはもちろん、心地良い履き心地と、攻めてる時も抜いて走る時にも絶妙なソールの硬さ。そして何よりスタイリッシュなそのフォルム。オフロードからシティユースまで対応してくれるX4は、従来アメリカンブランドが主導してきた"グラベル"に、イタリアらしい、フィジークらしい解釈を加えた心揺さぶられるシューズだ。
フィジーク TERRA X4 POWERSTRAP
![フィジーク TERRA X4 POWERSTRAP](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/10/28/terra-powerstrap-x4-greysidefloating-ret.jpg)
ソール | X4ナイロンアウトソール(剛性指数6/10) |
クロージングシステム | POWERSTRAP |
カラー | アンスラサイト/グレープ、ブラック/ブラック、マッド/キャメル、グレー/ブラック |
サイズ | 36、37~44(ハーフあり)、45 |
重量 | 292g(片足) |
税抜価格 | 17,800円 |
製品情報 | https://www.riogrande.co.jp/product/node/68431 |
フィジーク X2 TERRA ERGOLACE
様々なオフロードライドにフィットするオールマウンテンシューズ
![フィジーク X2 TERRA ERGOLACE](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/29/fizikshoes-120.jpg)
続いて取り上げるX2 TERRA ERGOLACEは、欧米で人気の高いMTBエンデューロなどで活躍してくれるヘビーデューティーなオフロードシューズ。トレッキングシューズのような見た目からもわかるように、歩きやすさも考慮して開発された一足だ。
シューズの歩行性を司るアウトソールは剛性指数3/10という柔軟な作り。ビブラム製ラバーを使用したトレッド、クッションの役割を果たすEVAミッドソールを基本構成とし、クリート部分にナイロンシャンクを挟み込むことで、中足部はスニーカーのような柔軟性を備えながらも、ペダリングパワーを伝えるためのクリート部分は硬さを確保。
![矢印のようなトレッドが特徴のアウトソール](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/29/fizikshoes-139.jpg)
![アウトソールのラバーはビブラム製だ](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/29/fizikshoes-136.jpg)
![深めのトレッドとされているため、マッドコンディションでもグリップしてくれそうだ](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/29/fizikshoes-141.jpg)
歩く時はビブラム製ラバーソールが路面を捉え、未舗装路でのグリップ力を発揮。さらに中足部の柔軟性が足の動きに追従してくれるため、ソール剛性の高い競技シューズのようにつま先立ちで歩くようなスタイルではなく、一般的なシューズを履いているかのように歩くことができるという。
アッパーにはウーブンリップストップという引き裂きに強いニット生地をメイン素材として使用している。つま先や、シューズのサイド部分にはPUラミネートが施され、シューズが強化された。テクニカルなダウンヒルや藪が生い茂るようなトレイルでダメージを受けがちな部分が保護されているため、アグレッシブにトレイルを楽しめるはずだ。
![シューズの小指側にオフセットした靴紐式とされている](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/29/fizikshoes-128.jpg)
![アッパーのメイン素材はリップストップのニット生地で、爪先部分は補強が施されている](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/29/fizikshoes-130.jpg)
![クッション性を担うEVA素材のミッドソール(グレー部分)が挟み込まれている](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2020/12/29/fizikshoes-131.jpg)
モデル名にあるERGOLACE(エルゴレース)というのはクロージングシステムのことであり、簡単に説明すると靴紐のこと。フィジークの靴紐の特徴は取り付け位置がシューズ外側(小指側)にオフセットされており、靴紐がクランクやチェーンリングに巻き込まれにくくなっていることが特徴だ。
X2 TERRA ERGOLACEはエンデューロのようなグラビティ系MTBライドにマッチするシューズだが、里山トレイルライドや押し歩き区間も含まれるようなグラベルライド、キャンプツーリングなど様々なシチュエーションで活躍してくれそうだ。オフロードをメインに遊ぶサイクリストにぴったりなシューズのインプレッションに移ろう。
インプレッション by 綾野真(CW編集部)
![タウン、グラベル、トレイルどこでもフィットするルックスのX2 TERRA ERGOLACE](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/03/3t-gravel-927.jpg)
ビブラムソールとトレッキングシューズに似たルックス通り、X2 TERRA ERGOLACEはグラベルからMTBライドまでをカバーできそうなシューズだ。MTBクロスカントリーやシクロクロスレースなどレースでカーボンソールのシューズを使用している筆者だが、普段のグラベルライドではそのリジッドさがオーバースペックで、とくにソールが硬くて曲がらず、歩きにくいことが大きなストレスとなる。だから歩きやすさに振ったソールのシューズも常備したい。
![X2 TERRA ERGOLACEをグラベル&トレイルライドで履き込んでみた](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/03/3t-gravel-1303.jpg)
X2 TERRA ERGOLACEはラバーソールが柔らかく、しかしソールにナイロンシャンクが仕込まれているためペダリングをしっかり受け止める安定感も備えている。フィット感が非常に良いのは靴紐の取り付け位置がシューズ外側(小指側)にオフセットしていることが効いている。強く締めても甲に圧迫がなく、面で包み込むようなフィット感がある。かつタンが斜めにずれたりしない。ベルクロやBOA等の機構に頼ること無く紐だけでこのフィット感が出せるのはERGOLACE(エルゴレース)の美点だ。そして幅に余裕のあるラストのおかげで通常ワイドを履く筆者でも問題がなかった。足型への対応幅が広いのもERGOLACEと紐締めタイプの美点だろう。
![土や砂のオフロードであるきやすく、頼もしいグリップを発揮するラバーソールだ](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/03/3t-gravel-932.jpg)
ソールのグリップ感は非常に高くて、濡れた木の根っこや岩場も不安なく歩ける。ソールの柔軟性が高いのでバイクを押したり担いだりして歩くシーンが多いマウンテンバイキングにはぴったりだ。かつ、グラベルライドでも高低差のある地形やトレイルに分け入っていくのに向くシューズだ。柔軟なだけでなく、つま先やサイド部の補強もしっかりしているため、ガレ場などでも安心感が高い。
ペダリングの力をかけるとソールのクッション感がやや気になるため、サポート力がある硬めのインソールに差し替えればパワーロスは少なくできるだろう。アッパーはカジュアルなルックスだが、前述のとおり甲のフィット感が高いため思いのほかレーシングシューズなみのタイトフィットにできる。
![ビンディングペダルとの相性は良いが、ケージ付きペダルのほうが面で踏めるだろう](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2021/01/03/3t-gravel-939.jpg)
MTBトレイルライドで使用頻度が高いケージ付きのビンディングペダルとの相性はとても良く、テクニカルなセクションで足を半分外しながらのライドや、すぐに足を着くことに備えた乗り方、あるいは散策を楽しむようなトレイルライドに非常に使いやすいシューズだ。筆者はグラベルバイクに乗っての里山ライドが好きで、グラベルバイク以上・MTB未満の難易度のトレイルを散歩するようにライドしている。そんなとき歩きを積極的に入れられるシューズとして重宝している。トレッキングシューズ的なバイクシューズは他にもあるが、得てしてアッパーのホールドが大げさすぎるものが多いが、このX2 TERRA ERGOLACEはペダリングとウォーキングをほどよいバランスで両立できる稀なシューズだ。 ウォーキングを多用するグラベルライドにも、里山MTBライドにも向いている。
フィジーク TERRA X2 ERGOLACE
![フィジーク TERRA ERGOLACE X2](http://axwkc.cyclowired.jp/sites/default/files/images/2019/10/19/terra-ergolace-x2-teal-blue-blackside.jpg)
アッパー | ウーブン リップストップ |
ソール | X2アウトソール-ナイロンシャンク、EVAミッドソール、ビブラムトレッド(ソール剛性 3/10) |
クロージングシステム | テトロン/PET レース |
カラー | ブラック/ブラック、アンスラサイト/グレープ、ティールブルー/ブラック、オリーブ/キャメル、デザート/ブラック |
サイズ | 36~45 |
重量 | 329g(片足) |
税抜価格 | 15,800円 |
製品情報 | https://www.riogrande.co.jp/product/node/68506 |
提供:カワシマサイクルサプライ 制作:シクロワイアード編集部