2018/09/09(日) - 12:07
2018年、もっとも注目集まるカテゴリーともいえるE-BIKE。シマノバイカーズフェスティバルで行われたE-BIKEツーリングと、激坂ゲレンデヒルクライムのエキシビションマッチにE-BIKEで参加。E-BIKEの持つポテンシャルを体感できる1日のレポートをお届けしよう。
7月末に長野県富士見パノラマリゾートにて開催されたシマノバイカーズフェスティバル。2日間を通して、様々なレースやツーリング種目が用意され、あらゆるカテゴリ/レベルのサイクリストが楽しめるお祭りイベント。
そんなシマノバイカーズフェスティバルの中で、だんだんと存在感を増してきたカテゴリがある。そう、E-BIKEだ。昨年、シマノがSTEPSを、そしてボッシュがACTIVE LINE PLUSの日本への導入を発表し、にわかに活気づいてきたE-BIKEを使ったツーリング種目が昨年初開催された。
アップダウンに富んだ、というよりもほとんど登りと下りしかないため、相当走り応えがある富士見パノラマ周辺エリア。短い距離でも、初心者にとっては結構厳しいコースレイアウトになる。まず、富士見パノラマへのアプローチが相当な斜度の登りであり、一旦下ったが最後帰路は必ず登りなのだ。
だが、周辺には八ヶ岳を望む絶景スポットや様々な史跡が点在し、自転車で巡るにはうってつけのロケーションでもある。そんなジレンマを解消してくれるのが、E-BIKEだ。とはいえ、E-BIKEを所有している人はまだまだ少数派。ということで、バイカーズフェスティバルでは各参加者にE-BIKEをレンタルし、その実力を体験しつつ富士見のおいしいところを巡るショートトリップを企画することに。
昨年初開催だったこのカテゴリーだが、大好評だったようで今年は大幅に規模を拡大。2日間を通して5回開催されるスケジュールへとボリュームアップした。さらに、昨年はSTEPSなどのスポーツバイク用ユニットを搭載した車種の用意が間に合わなかったが、今年は全車両が所謂E-BIKEとなり、スポーツ専用パワーユニットの乗り味をしっかりと体感できる機会となった。
今年のコースは途中に短めのシングルトラックを含む10km弱。走り慣れている人にとっては、「それだけ?」と思われるかもしれないほどの短い距離で、実を言えば私ももうちょっと走りたいなー、と感じていたのはここだけのヒミツ。でも、ツーリングの楽しさは距離だけでは測れない。それに、メインのターゲットはシクロワイアード編集部員のような限界自転車オタクではないのだ。自転車に初めて触れる人は10kmも走る!となれば十分お腹いっぱいになるはずだ。
出発時間の少し前に、参加者の皆さんがレンタルバイクが用意されたテントに集合。ほぼ半数が女性で、カップルでの参加が多く見受けられたのもこの種目ならではだろう。レンタルバイクとなるのはミヤタのリッジランナーやベスビーのTRS-1などシマノのSTEPS搭載車をはじめとした本格的なE-BIKEたち。
シート高の調整など、レンタルバイクを借りる際に必要な一連の作業を終えたのち、STEPSのヘッドユニットの使用方法のレクチャーへ。ほとんどの方が初めて触れる機会とあって、どこかワクワクした様子。
「じゃあ、少し漕いでみましょうか」ということで、慣熟も兼ねて広場を1周。もうこの瞬間から、すごい!楽しい!という黄色い歓声が。興奮さめやらぬままツーリングにあたっての注意事項を説明されたのち、いざ出発だ。
富士見パノラマから300mほどシングルトラックを走り、舗装路へ。台風一過の快晴!とまでは残念ながら行かず、曇りがちではあるけれど、空気は涼やかで絶好のツーリング日和であることは間違いない。
雲に隠れた八ヶ岳を正面に爽快なダウンヒルを下り、国道20号線に沿って流れる宮川脇のグラベルへ。このあたりが今回の最低標高地点であり、この後は富士見パノラマまで登りとなる。
20号を渡り、目指すは御射山神戸一里塚(みさやまごうどいちりづか)。甲州街道に一里(4km)ごとに設けられた塚が現代にまで残る貴重な場所だ。塚が作られた慶長年間に植えられたヒノキは樹齢380年を越えた今も勢いよく天に枝を伸ばし、貴重な日陰を作り出している。ちなみに、この一里塚は日本橋から数えて四十八里目となり、つまりは192km地点となる。昔は徒歩や馬でここを往来していたのか、と考えると気が遠くなりそう。
そんなパワースポットは7%ほどはありそうな勾配の坂を上ったさきに現れる。それなりに走れる人がロードバイクに乗っていたならば、そこまで厳しくもない坂だが、スポーツバイク初心者の女性がセミファットのMTBで登るとなると、かなり厳しいセクションだ。
しかし、この写真を見てほしい。満面の笑みを浮かべながら汗一つ掻かずにスイスイと登っていく女性ライダーと、後方でE-BIKEの試乗車が足りず、ノーマルのMTBで必死のダンシングでついていくサポートライダーの対比がE-BIKEの持つポテンシャルを的確に表している。
一里塚で集合写真を撮影し、富士見パノラマへ向かってまたどんどん登っていく。ノーマルバイクであれば、息が上がること間違いなしというペースで走っていても、おしゃべりを楽しむ余裕があるくらい。普段は長く感じるヒルクライムもあっという間にこなせてしまう。
林間区間を抜けると現れるのは眼下には富士見の大パノラマが広がる最後の登り。きっといつもならフロントハブの回転に心奪われるか、前走者のバイクのロゴを頭で分解したり組み立てたりしている頃、景色を見る余裕すら与えてくれるのがE-BIKEだ。
「すごくきれいですねー!」なんて話しながらシッティングでスイスイ登っていく。あまりにもスムーズに登るものだから、絶景見渡す撮影スポットを撮り逃すハメに。普段ならとても言い出せないお願いをしてみることに。「すみません!写真を撮りたいのでもう一回登ってきてもらえます?」
「えぇー!」と皆さん言いつつも表情は朗らかなもの。なんなら、もう一回登ってもいいの?と言わんばかりにさっさと下り始める方も。E-BIKE恐るべし、である。ちなみにノーマルMTBの伴走ライダーは私と一緒に頂上待機でした。
その後は出発時に通ったシングルトラックを登り、集合したテントまで帰還。今回のレンタルバイクは大部分がセミファットタイヤを装備したモデルだったため、初のトレイルという方でも安心して走ることができたようだ。
このように大満足の内に終わったE-BIKEツーリング。印象的だったのは、参加された皆さんの表情が終始笑顔だったこと。どんなロングライドでも、厳しい登りセクションでは下を向いている人がいるのだけれど、今回撮影した写真を見返してもそんな人はおらず。一人残らず満面の笑顔をレンズに向けてくれたのは、新鮮な経験だった。
参加者の方々にとっても、E=BIKEは新鮮な体験となったよう。こちらの浅野夫妻は、普段はロードでバリバリ走られている旦那さんと、ほとんどスポーツバイクの経験はないという奥さん。
「こんな笑顔で坂を上ることができるなんて、嘘みたいです(笑)いつも練習している身としては少し複雑な気分ですけど、二人で走るにはとってもいいですね」とは旦那さん。
奥さんも「すっごく楽しかったです!たまに二人でサイクリングに行ってもついていけなかったんですけど、これなら一緒に走れそう。E-BIKEはかなり欲しくなりました!」とその魅力の虜になっていた様子。
富山からこのツーリングのために来られたという神下夫妻は、お二人ともロードバイクに乗られている経験者。試乗車も含めて一通りE-BIKEを試されたとのことでしたが、気になる感想は「これを味わうと普通の自転車には戻りたくなくなりますね!」とポジティブなもの。
「すこし電池の減りが早いような気もしましたが、登りの楽さを味わっちゃうと戻れないですね。かといって、スポーツバイクらしさが無くなっているわけでもなく、現実的に購入を視野に入れてみようと思いました」という旦那さん。奥さんも「普段のロードよりも楽に長く走れそう。夫と同じペースで走れそうなのも魅力的です。あとグルメサンドも美味しくって、参加して良かったです!」とパーフェクトに満足されていた様子。
大満足のツーリングの後は激坂でプロに挑戦することに!?
さて、皆さんを大満足に導いたE-BIKEツーリングだが、実はこの後、筆者はもう一つの企画に誘われているのだった。それが、例年バイカーズのラストを締めくくる種目「激坂ゲレンデヒルクライム」のエキシビションマッチへの参加。シマノがサポートする国内トップ選手達にE-BIKEで挑むことになったのだ。うっそでしょ……。
10km/hを越えるとアシスト比率が下がっていく特性を考えると、速度域が下がる激坂はE-BIKE有利のフィールド。しかし、250wの上限があることを考えると、そもそもの乗り手の能力差がその範囲に収まっていなければ勝てない、ということでもある。
大体プロが全力出したら、いかに激坂でも10km/hは余裕で越えるのではないだろうか、という不安をよそに、この無謀なキャスティングをされたシマノのイベント課の射手矢さんと久保さんは「勝ってきてくださいね!E-BIKEの未来がかかってるんですから!」とあまりにも大きなプレッシャーをかけてくるのだった。
そんな訳で、痛む胃を抱えつつスタートラインへ。全日本王者の山本幸平はじめ、そうそうたる面子と同じスタートラインにつく。いくらエキシビションとはいえ、ろくに練習してもない男がこの並びに立っていいのだろうか。もはや冒涜的な行為なのでは?と思いつつ、スタート前に向けられたマイクには「E-BIKEの未来のために勝ちますよ」的なニュアンスのことを話したような気もするが、もはや覚えていない。
結果から言えば、プロはすごかった。号砲が鳴った瞬間、3車身ほどの差をつけられていたのだ。圧倒的な反応速度と瞬発力に感動すら覚える。パワーもそうだが、テクニックも含めたプロのプロたる所以を実感することに。
しかし、E-BIKEもすごかった。最初についた差はそのままにフィニッシュへと連れていってくれたのだから。必死にもがいていたので、実際どれくらいの速度が出ていたのかはわからないのだが、ちらりと視界の端に移ったヘッドユニットには17km/hほどの数字が見えていたと思う。250wというアシストは、素人がプロに食らいつくことができるほどの下駄をはかせてくれるということでもある。最初についた差を詰めることまではできなかったが、それは高望みというものだろう。
初心者とベテランライダー、アマチュアとプロ。そこには歴然とした差があるけれど、E-BIKEはその壁を埋めてくれるのだと、趣向の異なる二つの企画で体感できた。これからどんどん自転車の楽しみ方が広がっていくのだろう、そんな予感を与えてくれる1日となった。
text&photo:Naoki.Yasuoka
7月末に長野県富士見パノラマリゾートにて開催されたシマノバイカーズフェスティバル。2日間を通して、様々なレースやツーリング種目が用意され、あらゆるカテゴリ/レベルのサイクリストが楽しめるお祭りイベント。
そんなシマノバイカーズフェスティバルの中で、だんだんと存在感を増してきたカテゴリがある。そう、E-BIKEだ。昨年、シマノがSTEPSを、そしてボッシュがACTIVE LINE PLUSの日本への導入を発表し、にわかに活気づいてきたE-BIKEを使ったツーリング種目が昨年初開催された。
アップダウンに富んだ、というよりもほとんど登りと下りしかないため、相当走り応えがある富士見パノラマ周辺エリア。短い距離でも、初心者にとっては結構厳しいコースレイアウトになる。まず、富士見パノラマへのアプローチが相当な斜度の登りであり、一旦下ったが最後帰路は必ず登りなのだ。
だが、周辺には八ヶ岳を望む絶景スポットや様々な史跡が点在し、自転車で巡るにはうってつけのロケーションでもある。そんなジレンマを解消してくれるのが、E-BIKEだ。とはいえ、E-BIKEを所有している人はまだまだ少数派。ということで、バイカーズフェスティバルでは各参加者にE-BIKEをレンタルし、その実力を体験しつつ富士見のおいしいところを巡るショートトリップを企画することに。
昨年初開催だったこのカテゴリーだが、大好評だったようで今年は大幅に規模を拡大。2日間を通して5回開催されるスケジュールへとボリュームアップした。さらに、昨年はSTEPSなどのスポーツバイク用ユニットを搭載した車種の用意が間に合わなかったが、今年は全車両が所謂E-BIKEとなり、スポーツ専用パワーユニットの乗り味をしっかりと体感できる機会となった。
今年のコースは途中に短めのシングルトラックを含む10km弱。走り慣れている人にとっては、「それだけ?」と思われるかもしれないほどの短い距離で、実を言えば私ももうちょっと走りたいなー、と感じていたのはここだけのヒミツ。でも、ツーリングの楽しさは距離だけでは測れない。それに、メインのターゲットはシクロワイアード編集部員のような限界自転車オタクではないのだ。自転車に初めて触れる人は10kmも走る!となれば十分お腹いっぱいになるはずだ。
出発時間の少し前に、参加者の皆さんがレンタルバイクが用意されたテントに集合。ほぼ半数が女性で、カップルでの参加が多く見受けられたのもこの種目ならではだろう。レンタルバイクとなるのはミヤタのリッジランナーやベスビーのTRS-1などシマノのSTEPS搭載車をはじめとした本格的なE-BIKEたち。
シート高の調整など、レンタルバイクを借りる際に必要な一連の作業を終えたのち、STEPSのヘッドユニットの使用方法のレクチャーへ。ほとんどの方が初めて触れる機会とあって、どこかワクワクした様子。
「じゃあ、少し漕いでみましょうか」ということで、慣熟も兼ねて広場を1周。もうこの瞬間から、すごい!楽しい!という黄色い歓声が。興奮さめやらぬままツーリングにあたっての注意事項を説明されたのち、いざ出発だ。
富士見パノラマから300mほどシングルトラックを走り、舗装路へ。台風一過の快晴!とまでは残念ながら行かず、曇りがちではあるけれど、空気は涼やかで絶好のツーリング日和であることは間違いない。
雲に隠れた八ヶ岳を正面に爽快なダウンヒルを下り、国道20号線に沿って流れる宮川脇のグラベルへ。このあたりが今回の最低標高地点であり、この後は富士見パノラマまで登りとなる。
20号を渡り、目指すは御射山神戸一里塚(みさやまごうどいちりづか)。甲州街道に一里(4km)ごとに設けられた塚が現代にまで残る貴重な場所だ。塚が作られた慶長年間に植えられたヒノキは樹齢380年を越えた今も勢いよく天に枝を伸ばし、貴重な日陰を作り出している。ちなみに、この一里塚は日本橋から数えて四十八里目となり、つまりは192km地点となる。昔は徒歩や馬でここを往来していたのか、と考えると気が遠くなりそう。
そんなパワースポットは7%ほどはありそうな勾配の坂を上ったさきに現れる。それなりに走れる人がロードバイクに乗っていたならば、そこまで厳しくもない坂だが、スポーツバイク初心者の女性がセミファットのMTBで登るとなると、かなり厳しいセクションだ。
しかし、この写真を見てほしい。満面の笑みを浮かべながら汗一つ掻かずにスイスイと登っていく女性ライダーと、後方でE-BIKEの試乗車が足りず、ノーマルのMTBで必死のダンシングでついていくサポートライダーの対比がE-BIKEの持つポテンシャルを的確に表している。
一里塚で集合写真を撮影し、富士見パノラマへ向かってまたどんどん登っていく。ノーマルバイクであれば、息が上がること間違いなしというペースで走っていても、おしゃべりを楽しむ余裕があるくらい。普段は長く感じるヒルクライムもあっという間にこなせてしまう。
林間区間を抜けると現れるのは眼下には富士見の大パノラマが広がる最後の登り。きっといつもならフロントハブの回転に心奪われるか、前走者のバイクのロゴを頭で分解したり組み立てたりしている頃、景色を見る余裕すら与えてくれるのがE-BIKEだ。
「すごくきれいですねー!」なんて話しながらシッティングでスイスイ登っていく。あまりにもスムーズに登るものだから、絶景見渡す撮影スポットを撮り逃すハメに。普段ならとても言い出せないお願いをしてみることに。「すみません!写真を撮りたいのでもう一回登ってきてもらえます?」
「えぇー!」と皆さん言いつつも表情は朗らかなもの。なんなら、もう一回登ってもいいの?と言わんばかりにさっさと下り始める方も。E-BIKE恐るべし、である。ちなみにノーマルMTBの伴走ライダーは私と一緒に頂上待機でした。
その後は出発時に通ったシングルトラックを登り、集合したテントまで帰還。今回のレンタルバイクは大部分がセミファットタイヤを装備したモデルだったため、初のトレイルという方でも安心して走ることができたようだ。
このように大満足の内に終わったE-BIKEツーリング。印象的だったのは、参加された皆さんの表情が終始笑顔だったこと。どんなロングライドでも、厳しい登りセクションでは下を向いている人がいるのだけれど、今回撮影した写真を見返してもそんな人はおらず。一人残らず満面の笑顔をレンズに向けてくれたのは、新鮮な経験だった。
参加者の方々にとっても、E=BIKEは新鮮な体験となったよう。こちらの浅野夫妻は、普段はロードでバリバリ走られている旦那さんと、ほとんどスポーツバイクの経験はないという奥さん。
「こんな笑顔で坂を上ることができるなんて、嘘みたいです(笑)いつも練習している身としては少し複雑な気分ですけど、二人で走るにはとってもいいですね」とは旦那さん。
奥さんも「すっごく楽しかったです!たまに二人でサイクリングに行ってもついていけなかったんですけど、これなら一緒に走れそう。E-BIKEはかなり欲しくなりました!」とその魅力の虜になっていた様子。
富山からこのツーリングのために来られたという神下夫妻は、お二人ともロードバイクに乗られている経験者。試乗車も含めて一通りE-BIKEを試されたとのことでしたが、気になる感想は「これを味わうと普通の自転車には戻りたくなくなりますね!」とポジティブなもの。
「すこし電池の減りが早いような気もしましたが、登りの楽さを味わっちゃうと戻れないですね。かといって、スポーツバイクらしさが無くなっているわけでもなく、現実的に購入を視野に入れてみようと思いました」という旦那さん。奥さんも「普段のロードよりも楽に長く走れそう。夫と同じペースで走れそうなのも魅力的です。あとグルメサンドも美味しくって、参加して良かったです!」とパーフェクトに満足されていた様子。
大満足のツーリングの後は激坂でプロに挑戦することに!?
さて、皆さんを大満足に導いたE-BIKEツーリングだが、実はこの後、筆者はもう一つの企画に誘われているのだった。それが、例年バイカーズのラストを締めくくる種目「激坂ゲレンデヒルクライム」のエキシビションマッチへの参加。シマノがサポートする国内トップ選手達にE-BIKEで挑むことになったのだ。うっそでしょ……。
10km/hを越えるとアシスト比率が下がっていく特性を考えると、速度域が下がる激坂はE-BIKE有利のフィールド。しかし、250wの上限があることを考えると、そもそもの乗り手の能力差がその範囲に収まっていなければ勝てない、ということでもある。
大体プロが全力出したら、いかに激坂でも10km/hは余裕で越えるのではないだろうか、という不安をよそに、この無謀なキャスティングをされたシマノのイベント課の射手矢さんと久保さんは「勝ってきてくださいね!E-BIKEの未来がかかってるんですから!」とあまりにも大きなプレッシャーをかけてくるのだった。
そんな訳で、痛む胃を抱えつつスタートラインへ。全日本王者の山本幸平はじめ、そうそうたる面子と同じスタートラインにつく。いくらエキシビションとはいえ、ろくに練習してもない男がこの並びに立っていいのだろうか。もはや冒涜的な行為なのでは?と思いつつ、スタート前に向けられたマイクには「E-BIKEの未来のために勝ちますよ」的なニュアンスのことを話したような気もするが、もはや覚えていない。
結果から言えば、プロはすごかった。号砲が鳴った瞬間、3車身ほどの差をつけられていたのだ。圧倒的な反応速度と瞬発力に感動すら覚える。パワーもそうだが、テクニックも含めたプロのプロたる所以を実感することに。
しかし、E-BIKEもすごかった。最初についた差はそのままにフィニッシュへと連れていってくれたのだから。必死にもがいていたので、実際どれくらいの速度が出ていたのかはわからないのだが、ちらりと視界の端に移ったヘッドユニットには17km/hほどの数字が見えていたと思う。250wというアシストは、素人がプロに食らいつくことができるほどの下駄をはかせてくれるということでもある。最初についた差を詰めることまではできなかったが、それは高望みというものだろう。
初心者とベテランライダー、アマチュアとプロ。そこには歴然とした差があるけれど、E-BIKEはその壁を埋めてくれるのだと、趣向の異なる二つの企画で体感できた。これからどんどん自転車の楽しみ方が広がっていくのだろう、そんな予感を与えてくれる1日となった。
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