2018/03/27(火) - 10:23
2018年3月11日(日)、南アフリカのケープタウンで世界最大のロングライドイベント「ケープタウンサイクルツアー」が開催された。アフリカ大陸の南部、南アフリカ共和国。その南西端に位置する観光都市であるケープタウンに世界約40カ国から3万5000人のサイクリストが集結。タイム計測をするイベントとして世界最大規模のサイクルイベントへ、自転車ジャーナリストのハシケンが3年連続で参加。
今年のケープタウンサイクルツアーが掲げるテーマは「#40Take2(ハッシュタグ40テイク2)」。つまり、40回記念大会の2回目の実施という意味だ。この大会に参加したことがなくても、ちょうど一年前、時速100kmを超える強風に煽られなすすべがないサイクリストたちの姿を伝えたニュースを覚えている人も多いはず。その衝撃は、世界を駆け巡り、日本のヤフーニュースでも取り上げられたほどだ。大会は史上初めて中止になった。
「記念すべき40回大会を実現したい」。今大会は、参加者はじめ主催者や、ケープタウンサイクルツアーに関わる全ての人の願いを込めて、1年越しの40回記念大会を迎えることになった。
個人的には3年連続の参加だ。2016年に初めてこの大会の実走取材をして無事に完走。ちなみに、コースはケープ半島の沿岸部を巡る全長109km。その景色は世界でもっとも美しいシーサイドラインだと断言できる。そして、完全にケープタウンサイクルツアーの虜になった。2年目となった2017年は、現地まで行ってまさかの中止に呆然。そして、迎えた今年は、昨年の分も楽しむ気持ちで1年ぶりにケープタウンへたどり着いたのだった。
大会のある3月のケープタウンはカラッとした爽やかな気候が続く。20〜30°ほどの気温で、薄手のシャツで過ごせるほど快適だ。日本からのアクセス方法はいくつかあるが、今回は、香港経由でヨハネスブルグへ入り、国内線を乗り継ぎケープタウンへ入った。日本を出発してから移動に1日弱かかる長旅も、南アフリカとケープタウンサイクルツアーの魅力を知ってしまうと、全く苦にならない。
ヨハネスブルグ国際空港では、南アフリカ航空のケープタウンサイクルツアー特別カウンターでスムーズにチェックイン。さらに、ケープタウン空港では、大会参加者のバイクケースを受け取る専用スペースが設置されているので、今年も安心してバイクを受け取れた。空港を出て、ケープタウンの中心地に向かえばサイクリストで溢れている。実際、メインイベントは109kmのロングライドなのだが、ケープタウンサイクルツアーは9日間に渡り、MTBレースやサイクルエキスポなどが開催される。
日本を木曜日の夜に発ち、金曜の正午ごろにケープタウンへ。日本との時差は7時間だ。ちょっと長い金曜日は、到着後にサイクルエキスポ会場へ向かい大会ゼッケンなどを受け取った。会場では、メーカーやショップが出展しており、ものすごい熱気に包まれていた。展示会がメインというわけではないのに、日本のサイクルモード規模の賑わいといえよう。
大会前日の土曜は、ラグジュアリーなケープタウン市街のホテルを拠点にケープ半島の自然を満喫。そしていよいよイベント当日を迎えた。今年は、風の影響を考慮して昨年とはスタート地点を変更。ネルソン・マンデラ氏が歴史的演説を行った歴史深いシティ・ホール前がスタート会場となった。シティ・ホールが、テーブルマウンテンからの吹き降ろす風からサイクリストたちを守るかのようなレイアウトとなり、これで強風直撃というようなことは起きないはず。大会は、無事に新たなスタートを切ったのだった。
そして、今年は青空が広がり、無風状態に近いベストコンディション。これでもう「風や嵐を呼ぶ男」とは言わせない(笑)。僕を含め、大会を走れる3万5000人のサイクリストは幸せだ。なぜなら、これで世界一美しい絶景のロングライドを楽しむことが約束されたようなものだからだ。
それにしても、3万5000人をさばく運営能力も世界一で、40年の歴史が作りあげてきた賜物だろう。早朝6時15分の第1グループのスタートから最終は10時まで、700人ほどのグループごとにスムーズにスタートが切られていった。ちなみに僕がスタートしたのはちょうど真ん中あたりの8時34分。
コースはケープ半島を時計回りに1周する全長109km。街を抜けるとすぐに高速道路へと入っていく。道端には100マイル制限の標識。当然、高速道路はサイクリストのために完全封鎖。街中、高速道路問わず、コース全域にわたり完全にサイクリストのための解放される贅沢ぶりだ。そして、沿道から送られる声援はいつまでも途切れることが無い。声だけでなく、アフリカ打楽器やライブ演奏、世界各国の民族衣装での応援。ビール片手に激しく力強い激励が飛んでくる。
参加者と沿道の人とボランティアが作り上げる興奮の渦。まさに盛り上がりも世界一だ。また、参加者のスタイルは様々で、仮装しながらファンライドする人もいれば、レーシングウエアでビシッと決めてトレインを組む女性ライダーもいる。
このコースが世界一美しいと言われる所以は、ケープ半島の大自然にある。20km地点のホウトベイは、オットセイの群れが直近で見られるスポットだ。大会前日にこの目に焼き付けたオットセイの大群を思い出しながら、美しい湾を颯爽と駆け抜ける。
続いて、可愛らしいケープペンギンに出会えるボルターズビーチ。大自然が広がるインド洋沿岸部を南下して、ほぼ中間地点に位置する喜望峰(Cape of Good Hope)のナショナルパークをかすめながら、西海岸へと向かう。ダチョウとのスプリントレースは叶わずとも、コース脇にはたくさんいる。南アフリカなら普通の景色も、日本人からしたら刺激たっぷりの体験だ。
さて、このあたりで、半島を東から西へひと山越える前半の山場。各エイドステーションでは、マッサージサービスもあり、最近あまり走れておらず、すでに疲労気味の脚にはありがたい癒しだ。
前半はインド洋、後半は大西洋を望むシーサイドライン。ゴールまで25km地点にあるコース最高地点のチャップマンズ・ピークに向けたドライブウェイは息を飲む景観が続くハイライトシーン。7kmほどの登坂が続くので踏ん張りどころでもある。ただ、コース全体の難易度としては、体力に自信がなくても完走できるレベル。この大会は世界一の絶景コースを堪能しながらライドをするくらいのスタイルがちょうどいい。
ちなみに、3万5000人の参加者のうち、数パーセントだけはガチガチのレースをして、先頭集団はワールドツアークラスの選手も参戦している。その他大多数は、老若男女がマイペースで楽しむロングライドイベントだ。
僕がゴール地点に戻ってきたのは、スタートしてからちょうど5時間後だ。あまりの美しい景色に、何度もペダルを漕ぐ足を止めて写真を取り続けていた。南アフリカの青空の下で風を切り、野生動物たちが生きるケープ半島を舞台に走るロングライドは、至福のひと時。無事に2年ごしに感動のフィニッシュゲートを潜り、40周年特別バージョンの完走メダルをゲット。このメダルは昨年完走者へ渡される予定だったものだ。#40Take2無事完走!
3万5000人のサイクリストが走り出す大迫力のスタート風景、沿道を埋め尽くす大声援、そしてあまりに美しく壮大なコース。次回は2019年3月10日(日)に開催されることが決定した。来年こそ、一人でも多くの日本人参加者と一緒に参加したいと思う。レース後、40周年記念の完走メダルとゼッケンを大事にスーツケースへとしまい、次なる目的地である南アフリカの港町ポートエリザベスへと飛び立ったのだった。
「ケープタウンサイクルツアー」の続編では、サイクルツアーと合わせて、南アフリカの大自然の象徴とも言えるサファリの世界を初体験。その魅力を余すことなくレポートします。
text&photo:Kenji.Hashimoto
今年のケープタウンサイクルツアーが掲げるテーマは「#40Take2(ハッシュタグ40テイク2)」。つまり、40回記念大会の2回目の実施という意味だ。この大会に参加したことがなくても、ちょうど一年前、時速100kmを超える強風に煽られなすすべがないサイクリストたちの姿を伝えたニュースを覚えている人も多いはず。その衝撃は、世界を駆け巡り、日本のヤフーニュースでも取り上げられたほどだ。大会は史上初めて中止になった。
「記念すべき40回大会を実現したい」。今大会は、参加者はじめ主催者や、ケープタウンサイクルツアーに関わる全ての人の願いを込めて、1年越しの40回記念大会を迎えることになった。
個人的には3年連続の参加だ。2016年に初めてこの大会の実走取材をして無事に完走。ちなみに、コースはケープ半島の沿岸部を巡る全長109km。その景色は世界でもっとも美しいシーサイドラインだと断言できる。そして、完全にケープタウンサイクルツアーの虜になった。2年目となった2017年は、現地まで行ってまさかの中止に呆然。そして、迎えた今年は、昨年の分も楽しむ気持ちで1年ぶりにケープタウンへたどり着いたのだった。
大会のある3月のケープタウンはカラッとした爽やかな気候が続く。20〜30°ほどの気温で、薄手のシャツで過ごせるほど快適だ。日本からのアクセス方法はいくつかあるが、今回は、香港経由でヨハネスブルグへ入り、国内線を乗り継ぎケープタウンへ入った。日本を出発してから移動に1日弱かかる長旅も、南アフリカとケープタウンサイクルツアーの魅力を知ってしまうと、全く苦にならない。
ヨハネスブルグ国際空港では、南アフリカ航空のケープタウンサイクルツアー特別カウンターでスムーズにチェックイン。さらに、ケープタウン空港では、大会参加者のバイクケースを受け取る専用スペースが設置されているので、今年も安心してバイクを受け取れた。空港を出て、ケープタウンの中心地に向かえばサイクリストで溢れている。実際、メインイベントは109kmのロングライドなのだが、ケープタウンサイクルツアーは9日間に渡り、MTBレースやサイクルエキスポなどが開催される。
日本を木曜日の夜に発ち、金曜の正午ごろにケープタウンへ。日本との時差は7時間だ。ちょっと長い金曜日は、到着後にサイクルエキスポ会場へ向かい大会ゼッケンなどを受け取った。会場では、メーカーやショップが出展しており、ものすごい熱気に包まれていた。展示会がメインというわけではないのに、日本のサイクルモード規模の賑わいといえよう。
大会前日の土曜は、ラグジュアリーなケープタウン市街のホテルを拠点にケープ半島の自然を満喫。そしていよいよイベント当日を迎えた。今年は、風の影響を考慮して昨年とはスタート地点を変更。ネルソン・マンデラ氏が歴史的演説を行った歴史深いシティ・ホール前がスタート会場となった。シティ・ホールが、テーブルマウンテンからの吹き降ろす風からサイクリストたちを守るかのようなレイアウトとなり、これで強風直撃というようなことは起きないはず。大会は、無事に新たなスタートを切ったのだった。
そして、今年は青空が広がり、無風状態に近いベストコンディション。これでもう「風や嵐を呼ぶ男」とは言わせない(笑)。僕を含め、大会を走れる3万5000人のサイクリストは幸せだ。なぜなら、これで世界一美しい絶景のロングライドを楽しむことが約束されたようなものだからだ。
それにしても、3万5000人をさばく運営能力も世界一で、40年の歴史が作りあげてきた賜物だろう。早朝6時15分の第1グループのスタートから最終は10時まで、700人ほどのグループごとにスムーズにスタートが切られていった。ちなみに僕がスタートしたのはちょうど真ん中あたりの8時34分。
コースはケープ半島を時計回りに1周する全長109km。街を抜けるとすぐに高速道路へと入っていく。道端には100マイル制限の標識。当然、高速道路はサイクリストのために完全封鎖。街中、高速道路問わず、コース全域にわたり完全にサイクリストのための解放される贅沢ぶりだ。そして、沿道から送られる声援はいつまでも途切れることが無い。声だけでなく、アフリカ打楽器やライブ演奏、世界各国の民族衣装での応援。ビール片手に激しく力強い激励が飛んでくる。
参加者と沿道の人とボランティアが作り上げる興奮の渦。まさに盛り上がりも世界一だ。また、参加者のスタイルは様々で、仮装しながらファンライドする人もいれば、レーシングウエアでビシッと決めてトレインを組む女性ライダーもいる。
このコースが世界一美しいと言われる所以は、ケープ半島の大自然にある。20km地点のホウトベイは、オットセイの群れが直近で見られるスポットだ。大会前日にこの目に焼き付けたオットセイの大群を思い出しながら、美しい湾を颯爽と駆け抜ける。
続いて、可愛らしいケープペンギンに出会えるボルターズビーチ。大自然が広がるインド洋沿岸部を南下して、ほぼ中間地点に位置する喜望峰(Cape of Good Hope)のナショナルパークをかすめながら、西海岸へと向かう。ダチョウとのスプリントレースは叶わずとも、コース脇にはたくさんいる。南アフリカなら普通の景色も、日本人からしたら刺激たっぷりの体験だ。
さて、このあたりで、半島を東から西へひと山越える前半の山場。各エイドステーションでは、マッサージサービスもあり、最近あまり走れておらず、すでに疲労気味の脚にはありがたい癒しだ。
前半はインド洋、後半は大西洋を望むシーサイドライン。ゴールまで25km地点にあるコース最高地点のチャップマンズ・ピークに向けたドライブウェイは息を飲む景観が続くハイライトシーン。7kmほどの登坂が続くので踏ん張りどころでもある。ただ、コース全体の難易度としては、体力に自信がなくても完走できるレベル。この大会は世界一の絶景コースを堪能しながらライドをするくらいのスタイルがちょうどいい。
ちなみに、3万5000人の参加者のうち、数パーセントだけはガチガチのレースをして、先頭集団はワールドツアークラスの選手も参戦している。その他大多数は、老若男女がマイペースで楽しむロングライドイベントだ。
僕がゴール地点に戻ってきたのは、スタートしてからちょうど5時間後だ。あまりの美しい景色に、何度もペダルを漕ぐ足を止めて写真を取り続けていた。南アフリカの青空の下で風を切り、野生動物たちが生きるケープ半島を舞台に走るロングライドは、至福のひと時。無事に2年ごしに感動のフィニッシュゲートを潜り、40周年特別バージョンの完走メダルをゲット。このメダルは昨年完走者へ渡される予定だったものだ。#40Take2無事完走!
3万5000人のサイクリストが走り出す大迫力のスタート風景、沿道を埋め尽くす大声援、そしてあまりに美しく壮大なコース。次回は2019年3月10日(日)に開催されることが決定した。来年こそ、一人でも多くの日本人参加者と一緒に参加したいと思う。レース後、40周年記念の完走メダルとゼッケンを大事にスーツケースへとしまい、次なる目的地である南アフリカの港町ポートエリザベスへと飛び立ったのだった。
「ケープタウンサイクルツアー」の続編では、サイクルツアーと合わせて、南アフリカの大自然の象徴とも言えるサファリの世界を初体験。その魅力を余すことなくレポートします。
text&photo:Kenji.Hashimoto
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