2014/05/03(土) - 10:15
4月28日、今年で第6回目を誇る人気のサイクリングイベント「宇都宮サイクルピクニック」が開催された。宇都宮ブリッツェンや、那須ブラーゼンによる手厚いサポートが魅力のイベントが、涼しい時季へと日程をずらし、より走りやすくフレンドリーになって帰ってきた。
4月28日(日)、朝7時。栃木県宇都宮市にあるろまんちっく村を、多くのサイクリストが目指していく。予想以上に自走での来場者が多く、「サイピク」が地域に根差しているイベントであることが実感できる。ジャパンカップのコースとなる古賀志林道周回からもほど近く、さまざまなブース出店と当日受付をする人でにぎわうメイン会場はレースファンにとっては土地勘のある場所だ。
そして何と言っても、この地域は宇都宮ブリッツェンのお膝元。地域の観光マップにすら、ブリッツェンのホームコースが紹介されているほどの影響力を持つチームはほかにないだろう。この「サイピク」一番の特徴であり、魅力となるのが、ブリッツェンの選手はもちろん、育成チームであるブラウ・ブリッツェン、そしてチーム関係者が全力でサポートしてくれること。
宇都宮市内を巡る「サイピク」のコースは、ビギナーにもお勧めの20kmコースと、平坦基調で難易度の低いながらも宇都宮の魅力を詰め込んだ70kmコース、そして70kmコースにジャパンカップで名高い古賀志林道にチャレンジする40kmの周回路を付け加えた110kmコースの3つ。今年からついにチップ計測を導入した古賀志林道の山岳賞区間を味わうべく、110kmコースを実走取材した。
110kmコースは東北自動車道宇都宮ICほど近い会場をスタートしてから北上し、鬼怒川に沿って折り返してから大きなループを描いて戻ってくる。そして一旦会場の横を通過し(70kmコースはこの時点でゴールとなる)ジャパンカップのKOMポイントである古賀志林道や日光周辺を巡るコースへと入るもの。獲得標高は110kmの行程で800m弱ほどでそこまで難易度も高くはないコースだ。
7時半から開催された開会式には、サポートに当たってくれるライダーやゲストが集合。宇都宮ブリッツェンはフルメンバーを揃え、那須ブラーゼンもほぼフルメンバーでの参加。さらに地元・宇都宮出身の針谷千紗子選手も登場し、数多くのサポートライダーを揃えている。これほどまでに多くのプロ選手をサポートライダーとして揃えるサイクリングイベントは他にあまり無いだろう。プロ選手がサポートしてくれる安心感はとても大きい。
今年も、天候に恵まれたおかげでぽかぽかとした陽気の中、定刻の8時に110kmコースのスタートが切られる。30人ほどのグループごとに、少しのインターバルを設けて次々と参加者たちがスタートしていく。スタート直後の信号待ちでは多少の渋滞が起こるものの、10分も走れば信号の少ない農道へと移っていく。4月ということもあり、水田にはちょうど水が張られ始める中をめぐる農道と、交通量の少ない2車線の道がずっと続く。
春らしい柔らかな陽射しのなか、快適なサイクリングを続けていくとひとつ目のエイドステーションが見えてくる。ブリッツェンスポンサーであるめぐみ産業によるエイドステーションが道端に設置されている。そこではブリッツェンオリジナル補給食である「ブリバー」が配布されている。これからのライドにむけて腹もちのよいブリバーはぴったりだ。
2つめのエイドステーションは、鬼怒川とその支流である大谷川を渡った先にある。西には日光連山を望む道の駅湧水の郷 しおやエイドステーションではみずみずしいトマトやたくさんの惣菜パンなどが配られた。しおやエイドの後は、鬼怒川沿いを下流に向かって走っていく。しばらく走ると左手に迫ってくる岩場がある。高さ64mにも及ぶ巨大な磨岩仏である佐貫観音がサイクリストを見下ろしている。
他のエイドでも、さまざまな食べ物が提供されていた。中でも白沢公園エイドステーションは宇都宮らしく餃子が出され、参加者は舌鼓を打っていた。例年、スイカやきゅうりといった夏らしい食べ物がとってもおいしかったと、昨年の取材班には聞いていたのだが、時季の変更もあって残念ながらスイカは提供されず少し損した気分になっていたところに現れたのが、森永ミルクフルーツエイドステーション。
フルーツと最高に相性の良い、森永コンデンスミルクがかけ放題(!)のエイドステーションでは、定番のイチゴ(とちおとめ)をはじめバナナやオレンジに加え、トーストしたバゲットや練乳コーヒーなどがふるまわれた。学生時代にサイクリング部での長距離ツーリングでコンデンスミルクをチューブから直飲みして、周りの部員に軽く引かれるほどの練乳好きにとってはまさしく天国のよう。
ちなみに宇都宮ブリッツェンでキャプテンを務める鈴木真理選手は、廣瀬GMに「練乳王子です」と言われているほど大の練乳好きとのことで、パンにとイチゴにたっぷり練乳をつけて食べられたとのこと。そんなエイドでは可愛いカチューシャと牛が縁取られたエプロンのメイド風の衣装に身を包んだお姉さんたちが食べ物を手渡してくれた。実はこの衣装もスタッフが行う仮装コンテストのために用意されたもので、他にはショッカーやゴールデンボンバーなどの立哨員が参加者を誘導してくれる場面もあり、疲れたなかでも和みと笑いを提供してくれた。
基本的にコースに選ばれている道は交通量も少なく、とても走りやすいルートであるが、それでも間違えやすい箇所や、交通量の多い交差点もちらほらと存在する。しかしそんな場所には必ず立哨が配置されており、適切に誘導を行ってくれた。ブラウ・ブリッツェンのメンバーも移動しながら参加者の安全確保に努めてくれたようだ。
もちろん参加者を率いてくれるブリッツェンやブラーゼンの選手も参加者からの質問に答えたり、トラブル対応を手伝ってくれたり。時にはトレインを高速で引っ張ってくれたりと大活躍。特に今年は夏に開催された昨年よりも体調不良は少なかったものの、メカトラブルは多かったとのことで参加者の心強い味方になっていたようだ。
日光街道を横切り、一旦スタート/ゴール地点を通過。70kmコースはここでゴールだが、ここから110kmコースのみが走るルートに入り、まずは大谷のエイドステーションへと向かう。大谷は仏像や灯籠などで有名な大谷石の産地だ。6年の歳月をかけて手彫りされたという平和観音のもとに大谷エイドステーションが設けられ、ジャパンカップのコースに入る直前に補給ができる。
ちなみに大谷石は耐火性が高く、加工性に優れる石材で石塀や石倉の建材として利用されている。走りながら周囲の家々を見ていると、かなりの割合で大谷石の塀や石倉が敷地内に建っていることに気づく。そんな地域性に気付かせてくれるのも、地域に根差したコース設定の賜物だろう。
エイドステーションを後にすると、いよいよジャパンカップの勝負どころ、鶴カントリーと古賀志林道の上りが参加者を待ち受ける。古賀志林道には「BLITZEN CUPサイピク山岳賞」としてタイム計測区間が設けられており、ロングライドイベントながらもシリアスサイクリストが本気で踏める区間も用意される、まるでUWCT登録の海外グランフォンドイベントのような仕組み。
サイピク山岳賞が設定されてから4回目となる今年はついにチップ計測が導入され、より正確なタイムを知ることができるようになった。ちなみに今回のトップタイムは3分台のタイムということでかなりハイレベルな戦いが繰り広げられた模様。
とはいえ、古賀志林道も、鶴カントリーも距離は約1kmと初心者サイクリストでもゆっくり登れば登りきれる上、押しても15分程度で登りきれるため、そんなに構えずチャレンジできる。頂上では元気な声援を送ってもらい、最後の一踏みに力をもらって進むこともできる。
頂上を通過すると、テクニカルなダウンヒル。落車しないように慎重に下り終えれば、ゴールまではもうすぐ。と言いたいところだが、最後に鞍掛トンネルへのヒルクライムが待ち受けている。古賀志で頑張りすぎると、斜度は緩やかながらもまっすぐ続く坂道に心が負けてしまうかもしれない。トンネルの中は歩道を走るが、暗い下りであると同時に、ゴミが落ちていることもあるため注意して下りたい。トンネルを抜ければ、ゴール地点はもうすぐそこだ。
ゴール後に完走賞を受け取れば、あとは地元ブースでグルメに舌鼓をうつも、ステージイベントを観覧するもよし。ステージでは山岳賞の表彰や豪華賞品がもらえる大じゃんけん大会などが行われており、たくさんの参加者がステージ周辺に集まっていた。メイン会場となったロマンチック村には温泉もあり、ロングライドの疲れをいやすこともでき、大会後はサイクリストで大盛況。ちなみに私たちもひとっ風呂浴びてから帰宅しました。
開催日の前倒しにより、新しい魅力を得てパワーアップした「サイピク」。110km・800mアップという適度なコースプロフィールに加え、暑すぎず、寒すぎない絶好の気温にも恵まれ、最高のサイクリングができる。宇都宮ブリッツェンによるサポート、豊富なエイドステーションの用意など、初めての100km越えロングライドイベントとして、脱ビギナーを目指すサイクリストにぴったりの大会だ。
text:Naoki.YASUOKA
photo:CW編集部
4月28日(日)、朝7時。栃木県宇都宮市にあるろまんちっく村を、多くのサイクリストが目指していく。予想以上に自走での来場者が多く、「サイピク」が地域に根差しているイベントであることが実感できる。ジャパンカップのコースとなる古賀志林道周回からもほど近く、さまざまなブース出店と当日受付をする人でにぎわうメイン会場はレースファンにとっては土地勘のある場所だ。
そして何と言っても、この地域は宇都宮ブリッツェンのお膝元。地域の観光マップにすら、ブリッツェンのホームコースが紹介されているほどの影響力を持つチームはほかにないだろう。この「サイピク」一番の特徴であり、魅力となるのが、ブリッツェンの選手はもちろん、育成チームであるブラウ・ブリッツェン、そしてチーム関係者が全力でサポートしてくれること。
宇都宮市内を巡る「サイピク」のコースは、ビギナーにもお勧めの20kmコースと、平坦基調で難易度の低いながらも宇都宮の魅力を詰め込んだ70kmコース、そして70kmコースにジャパンカップで名高い古賀志林道にチャレンジする40kmの周回路を付け加えた110kmコースの3つ。今年からついにチップ計測を導入した古賀志林道の山岳賞区間を味わうべく、110kmコースを実走取材した。
110kmコースは東北自動車道宇都宮ICほど近い会場をスタートしてから北上し、鬼怒川に沿って折り返してから大きなループを描いて戻ってくる。そして一旦会場の横を通過し(70kmコースはこの時点でゴールとなる)ジャパンカップのKOMポイントである古賀志林道や日光周辺を巡るコースへと入るもの。獲得標高は110kmの行程で800m弱ほどでそこまで難易度も高くはないコースだ。
7時半から開催された開会式には、サポートに当たってくれるライダーやゲストが集合。宇都宮ブリッツェンはフルメンバーを揃え、那須ブラーゼンもほぼフルメンバーでの参加。さらに地元・宇都宮出身の針谷千紗子選手も登場し、数多くのサポートライダーを揃えている。これほどまでに多くのプロ選手をサポートライダーとして揃えるサイクリングイベントは他にあまり無いだろう。プロ選手がサポートしてくれる安心感はとても大きい。
今年も、天候に恵まれたおかげでぽかぽかとした陽気の中、定刻の8時に110kmコースのスタートが切られる。30人ほどのグループごとに、少しのインターバルを設けて次々と参加者たちがスタートしていく。スタート直後の信号待ちでは多少の渋滞が起こるものの、10分も走れば信号の少ない農道へと移っていく。4月ということもあり、水田にはちょうど水が張られ始める中をめぐる農道と、交通量の少ない2車線の道がずっと続く。
春らしい柔らかな陽射しのなか、快適なサイクリングを続けていくとひとつ目のエイドステーションが見えてくる。ブリッツェンスポンサーであるめぐみ産業によるエイドステーションが道端に設置されている。そこではブリッツェンオリジナル補給食である「ブリバー」が配布されている。これからのライドにむけて腹もちのよいブリバーはぴったりだ。
2つめのエイドステーションは、鬼怒川とその支流である大谷川を渡った先にある。西には日光連山を望む道の駅湧水の郷 しおやエイドステーションではみずみずしいトマトやたくさんの惣菜パンなどが配られた。しおやエイドの後は、鬼怒川沿いを下流に向かって走っていく。しばらく走ると左手に迫ってくる岩場がある。高さ64mにも及ぶ巨大な磨岩仏である佐貫観音がサイクリストを見下ろしている。
他のエイドでも、さまざまな食べ物が提供されていた。中でも白沢公園エイドステーションは宇都宮らしく餃子が出され、参加者は舌鼓を打っていた。例年、スイカやきゅうりといった夏らしい食べ物がとってもおいしかったと、昨年の取材班には聞いていたのだが、時季の変更もあって残念ながらスイカは提供されず少し損した気分になっていたところに現れたのが、森永ミルクフルーツエイドステーション。
フルーツと最高に相性の良い、森永コンデンスミルクがかけ放題(!)のエイドステーションでは、定番のイチゴ(とちおとめ)をはじめバナナやオレンジに加え、トーストしたバゲットや練乳コーヒーなどがふるまわれた。学生時代にサイクリング部での長距離ツーリングでコンデンスミルクをチューブから直飲みして、周りの部員に軽く引かれるほどの練乳好きにとってはまさしく天国のよう。
ちなみに宇都宮ブリッツェンでキャプテンを務める鈴木真理選手は、廣瀬GMに「練乳王子です」と言われているほど大の練乳好きとのことで、パンにとイチゴにたっぷり練乳をつけて食べられたとのこと。そんなエイドでは可愛いカチューシャと牛が縁取られたエプロンのメイド風の衣装に身を包んだお姉さんたちが食べ物を手渡してくれた。実はこの衣装もスタッフが行う仮装コンテストのために用意されたもので、他にはショッカーやゴールデンボンバーなどの立哨員が参加者を誘導してくれる場面もあり、疲れたなかでも和みと笑いを提供してくれた。
基本的にコースに選ばれている道は交通量も少なく、とても走りやすいルートであるが、それでも間違えやすい箇所や、交通量の多い交差点もちらほらと存在する。しかしそんな場所には必ず立哨が配置されており、適切に誘導を行ってくれた。ブラウ・ブリッツェンのメンバーも移動しながら参加者の安全確保に努めてくれたようだ。
もちろん参加者を率いてくれるブリッツェンやブラーゼンの選手も参加者からの質問に答えたり、トラブル対応を手伝ってくれたり。時にはトレインを高速で引っ張ってくれたりと大活躍。特に今年は夏に開催された昨年よりも体調不良は少なかったものの、メカトラブルは多かったとのことで参加者の心強い味方になっていたようだ。
日光街道を横切り、一旦スタート/ゴール地点を通過。70kmコースはここでゴールだが、ここから110kmコースのみが走るルートに入り、まずは大谷のエイドステーションへと向かう。大谷は仏像や灯籠などで有名な大谷石の産地だ。6年の歳月をかけて手彫りされたという平和観音のもとに大谷エイドステーションが設けられ、ジャパンカップのコースに入る直前に補給ができる。
ちなみに大谷石は耐火性が高く、加工性に優れる石材で石塀や石倉の建材として利用されている。走りながら周囲の家々を見ていると、かなりの割合で大谷石の塀や石倉が敷地内に建っていることに気づく。そんな地域性に気付かせてくれるのも、地域に根差したコース設定の賜物だろう。
エイドステーションを後にすると、いよいよジャパンカップの勝負どころ、鶴カントリーと古賀志林道の上りが参加者を待ち受ける。古賀志林道には「BLITZEN CUPサイピク山岳賞」としてタイム計測区間が設けられており、ロングライドイベントながらもシリアスサイクリストが本気で踏める区間も用意される、まるでUWCT登録の海外グランフォンドイベントのような仕組み。
サイピク山岳賞が設定されてから4回目となる今年はついにチップ計測が導入され、より正確なタイムを知ることができるようになった。ちなみに今回のトップタイムは3分台のタイムということでかなりハイレベルな戦いが繰り広げられた模様。
とはいえ、古賀志林道も、鶴カントリーも距離は約1kmと初心者サイクリストでもゆっくり登れば登りきれる上、押しても15分程度で登りきれるため、そんなに構えずチャレンジできる。頂上では元気な声援を送ってもらい、最後の一踏みに力をもらって進むこともできる。
頂上を通過すると、テクニカルなダウンヒル。落車しないように慎重に下り終えれば、ゴールまではもうすぐ。と言いたいところだが、最後に鞍掛トンネルへのヒルクライムが待ち受けている。古賀志で頑張りすぎると、斜度は緩やかながらもまっすぐ続く坂道に心が負けてしまうかもしれない。トンネルの中は歩道を走るが、暗い下りであると同時に、ゴミが落ちていることもあるため注意して下りたい。トンネルを抜ければ、ゴール地点はもうすぐそこだ。
ゴール後に完走賞を受け取れば、あとは地元ブースでグルメに舌鼓をうつも、ステージイベントを観覧するもよし。ステージでは山岳賞の表彰や豪華賞品がもらえる大じゃんけん大会などが行われており、たくさんの参加者がステージ周辺に集まっていた。メイン会場となったロマンチック村には温泉もあり、ロングライドの疲れをいやすこともでき、大会後はサイクリストで大盛況。ちなみに私たちもひとっ風呂浴びてから帰宅しました。
開催日の前倒しにより、新しい魅力を得てパワーアップした「サイピク」。110km・800mアップという適度なコースプロフィールに加え、暑すぎず、寒すぎない絶好の気温にも恵まれ、最高のサイクリングができる。宇都宮ブリッツェンによるサポート、豊富なエイドステーションの用意など、初めての100km越えロングライドイベントとして、脱ビギナーを目指すサイクリストにぴったりの大会だ。
text:Naoki.YASUOKA
photo:CW編集部
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