2013/01/06(日) - 01:44
台湾・花蓮市近くの温泉宿に投宿した日本隊のメンバーたちは、翌日瑞穂より台湾一周900kmの旅へと出発する。台湾の充実した自転車事情、自転車先進国ぶりを知る1日が待っていた。
DAY1のコース
(花蓮)瑞穗→(宜蘭)羅東:瑞穗-光復糖廠-林榮-鳳林-北迴鐵路-(宜蘭)蘇澳-羅東
騎遇福爾摩沙(Formosaサイクリング隊) 日本四国グループはこの日、まず花蓮市の近くの瑞穂にある「北回帰線地標」に移動してスタートを待つ。
スタート地点では台湾の原住民の子どもたちの舞踊による歓迎ダンスが迎えてくれる。そのうちに皆が一緒に輪になって踊り出した。もうすでに楽しい雰囲気である。
Formosa900では、我々日本隊を含めた10の団体が、台湾の9か所の異なる場所から同時に出発し、台湾を1周する。この場所には他の隊は居ないが、この日、10隊が台湾各地を走り出し、それぞれ台湾一周900kmの完走を目指すのだ。
愛媛県議会議員の黒川洋介さんと、地元花蓮市長の挨拶の交換をすませ、走りだす。すぐに自転車で走りやすい、十分な路肩を備えた道に気づく。
やがて、「瑞穂自行車道」の入り口へ。台湾で自転車のことは「自行車」と書く。つまり瑞穂サイクリングロードだ。台湾のサイクリングロードは初めての体験。
自動車進入禁止の柵の間から入ったそのサイクリングロードは、かつて鉄道が通っていた線路、つまり廃線跡につくられたものだという。なるほど、頭の上には高架となって新設された鉄道が走っている。かつて線路が敷かれた道を整備し、自転車専用道路にしたというわけだ。
自転車専用のクローズドコースなので安全・快適。皆がおしゃべりしながら走れるゆったりしたものだ。そして、途中にかつての駅だった建物を再生したサイクリングステーションが点在する。水場やトイレの心配もなしだ。
高架の下を通るので、時間帯にもよるが台湾の暑い日差しを遮ってくれるありがたい日除けにもなっている。
台湾にはこうしたサイクリングロードが主要なものだけでも20余りあり、現在までに約600km余が完成。台湾政府は約2,000kmにも及ぶ自転車道整備を計画しており、現在着々と整備が進んでいるという。1周わずか約900kmの島で、この数字の大きさが想像できるだろうか? とにかく、走りだしたしょっぱなから驚いた。
警察署がサイクリングステーション?!
瑞穂サイクリングロードを抜けて一般道に戻り、次に驚かされたのは警察署だ。サイクリングリーダーの台湾人女性に導かれ、警察署の敷地内に入っていった時には皆が思わず緊張した。何か悪いことでもしてしまったのか?と。
しかし、そこに待っていたのはお巡りさんの歓待だった。冷たいタピオカミルクをいただき、警察署の建物内に入ってみると、なんとそこにはパンク修理キットや機材トラブルに対応できる工具セット、空気入れのポンプ、地図、救急・怪我治療セットなどが用意してあるのだ。しかも駐輪場には自転車を立てかけるラックが楽々20台分以上が用意され、立派にサイクリングステーションになっているのだ!
サイクリング中に何かトラブルがあれば警察署を頼れるなんて、コレ以上の安心感はないだろう。この立ち寄った警察署がサイクリングステーション警察署第1号とのこと。日本隊の皆と警察署の前で記念撮影し、お礼を言って走りだす。
次に立ち寄ったのは大きな、体育館のような建物。ここもかつて駅舎だったようだが、広々とした建物を生かしたサイクリングステーションになっていて、大人数での休憩も自由にできる。
亜熱帯気候の暑い台湾では、こうした屋根のある休憩所の存在はとてもありがたい。もちろんトイレも備えてあり、十分休むことができた。ここにはサイクリングロードの地図や近隣のサイクリング観光マップが備え付けてあり、情報収集も十分できるのだ。
参加者の皆が驚きの連続で、「うらやましい」の声が立て続けに起こる。
3台で横に並んで走れる!バイクレーンの広さに驚く
郊外の道を走っても、驚くのはバイクレーンがどこの道にもしっかりついていることだ。しかもその広さは、なんと自転車3台で並んで走るにも十分な広さなのだ。これにはびっくり。台湾じゅうの主要な道路がこうした広いバイクレーンを備えており、台湾は今もっとも自転車で安全に走れる国のひとつだ。
これだけ広いバイクレーンになっているのにはワケもある。台湾はもともとスクーターの国。都市部ではもっとも便利な庶民の脚として、スクーターが多く見られる。バイクレーンはたいてい、スクーターと自転車の並走が可能な広さが確保してあるのだ。しかし郊外や田舎ではスクーターレーンまでほぼ自転車専有レーンとなる。広々として、サイクリングには最高だ。
レンタル専門のジャイアントストアがある!
一行は花蓮に到着。ここで午後からの電車を待つため、駅近くのジャイアントストアに立ち寄る。お店の奥が休憩スペーになっていて、お弁当をいただく。
このジャイアントストア花蓮店では、近郊のサイクリングのためのレンタサイクルが充実している。ショップの前、店内にあるたくさんの自転車はすべてレンタサイクルで、販売している自転車はほとんど無いのだ。しかも、MTBやライフスタイル系バイクを始めとして、荷物満載で走れるキャンピング車から高級ロードバイクまでほとんどすべてのニーズを満たす車種が用意されているのだ。
ちなみに平日のレンタル料金は、1元は約3円程度のレートとして、高級ロードバイク(パフォーマンスバイク)が1時間500元、4時間1100元、2日目より1日550元。
中級バイク(スポーツバイク)が1時間200元、4時間800元、2日目より1日400元。
ライフスタイルバイク、フォールディングバイク、女性用コンフォートバイクなどが1時間100元、4時間250元、2日目より1日250元。
休日はそれぞれやや割高になる。つまり平日なら1日1700円程度あれば高級ロードバイクがレンタルできるのだ。
レンタルの際にはヘルメットやグローブなど必要な物は借りることができるほか、店内にはアクセサリー類が充実して展示されており、こちらは購入することができる。
お店にはひっきりなしにレンタル客がやってくる。大勢で返却に来たグループは男女高校生グループ。半日ほどレンタルして、花蓮近郊のサイクリングを楽しんだそうだ。ごくフツーの高校生たちがサイクリングを楽しんでいる姿を普通に見られることが、ちょっと新鮮だった。
自転車を列車にそのまま乗せるサイクルトレイン
花蓮で小一時間休み、時間が来たので花蓮駅へと向かう。予定では自転車を列車に乗せて羅東まで向かうのだ。
花蓮から羅東の道は「清水崖」と呼ばれ、断崖絶壁で知られる。同時にがけ崩れが日常的に起こる危険なエリア。ここを列車で安全にスキップすることになっていたのだ。
花蓮駅の脇の入口から、自転車を押してそのままホームへと入る。自転車ごと乗れる列車は、いわゆる日本の通勤電車のようなシートの配置の客車だ。この客車にどんどんと、自転車ごと乗り込む。自転車の運賃は大人の半額程度だとのこと。
日本でも小湊鉄道などがサイクルトレインを展開しているが、ここ台湾でも同じ。いや、もっとラフで、もっと気軽かもしれない。チェーンの油などでシートを汚さないように気をつけ、あとはのんびり車窓の眺めを楽しむ。途中の駅では何組もサイクリストが自転車ごと乗り込んでくる。「流行の」台湾一周中のサイクリストも!
羅東に着き、ここからはホテルまで夜の自走。すっかり暗くなっているが、台湾のギラギラのネオンサインで市街地走行はライト要らず。
ホテルに到着すると、今日別のルートで走ってきた愛媛隊の方々がもうすぐ到着するというので、お出迎えすることに。すると、なにやらVIPな感じ。サイクルジャージを着た愛媛県知事の中村時広さんの姿も。中村知事はこの日、台北から別ルートで約100kmほどの峠越えルートを走って羅東に到着。1日だけのFormosa900を堪能したようだ。
中村知事が着ているのはしまなみ海道の橋をデザインしたオリジナルジャージ。中村知事は地元のしまなみ海道を走り、サイクリングに夢中だとのこと。愛媛のPRにと、美味しい温州みかんも用意されていた。
この日はジャイアントの社長トニー・ロー氏もやってきて、豪華でVIPな晩餐になった。四国隊のメンバーは愛媛県や今治市の関係者が多いので、台湾と愛媛の自転車交流の話で大いに盛り上がる。
そして元気あふれる一行は台湾名物の夜市へと出かけていく。この夜市のパワフルなこと。このあたりの名物のネギお好み焼きやパパイヤミルクなど、様々な味を楽しむ。台湾料理は美味しい。サイクリングで走っても、太りそうだ!
サイクリング実走1日目は、台湾の自転車を取り巻く環境の充実度、素晴らしさ、そして先進ぶりを見せつけられる驚くべき1日になった。しばらくぶりに走った台湾は、驚くべき自転車先進国になっていたのだ。
続く
photo&text:Makoto.AYANO
撮影・文 綾野 真
DAY1のコース
(花蓮)瑞穗→(宜蘭)羅東:瑞穗-光復糖廠-林榮-鳳林-北迴鐵路-(宜蘭)蘇澳-羅東
騎遇福爾摩沙(Formosaサイクリング隊) 日本四国グループはこの日、まず花蓮市の近くの瑞穂にある「北回帰線地標」に移動してスタートを待つ。
スタート地点では台湾の原住民の子どもたちの舞踊による歓迎ダンスが迎えてくれる。そのうちに皆が一緒に輪になって踊り出した。もうすでに楽しい雰囲気である。
Formosa900では、我々日本隊を含めた10の団体が、台湾の9か所の異なる場所から同時に出発し、台湾を1周する。この場所には他の隊は居ないが、この日、10隊が台湾各地を走り出し、それぞれ台湾一周900kmの完走を目指すのだ。
愛媛県議会議員の黒川洋介さんと、地元花蓮市長の挨拶の交換をすませ、走りだす。すぐに自転車で走りやすい、十分な路肩を備えた道に気づく。
やがて、「瑞穂自行車道」の入り口へ。台湾で自転車のことは「自行車」と書く。つまり瑞穂サイクリングロードだ。台湾のサイクリングロードは初めての体験。
自動車進入禁止の柵の間から入ったそのサイクリングロードは、かつて鉄道が通っていた線路、つまり廃線跡につくられたものだという。なるほど、頭の上には高架となって新設された鉄道が走っている。かつて線路が敷かれた道を整備し、自転車専用道路にしたというわけだ。
自転車専用のクローズドコースなので安全・快適。皆がおしゃべりしながら走れるゆったりしたものだ。そして、途中にかつての駅だった建物を再生したサイクリングステーションが点在する。水場やトイレの心配もなしだ。
高架の下を通るので、時間帯にもよるが台湾の暑い日差しを遮ってくれるありがたい日除けにもなっている。
台湾にはこうしたサイクリングロードが主要なものだけでも20余りあり、現在までに約600km余が完成。台湾政府は約2,000kmにも及ぶ自転車道整備を計画しており、現在着々と整備が進んでいるという。1周わずか約900kmの島で、この数字の大きさが想像できるだろうか? とにかく、走りだしたしょっぱなから驚いた。
警察署がサイクリングステーション?!
瑞穂サイクリングロードを抜けて一般道に戻り、次に驚かされたのは警察署だ。サイクリングリーダーの台湾人女性に導かれ、警察署の敷地内に入っていった時には皆が思わず緊張した。何か悪いことでもしてしまったのか?と。
しかし、そこに待っていたのはお巡りさんの歓待だった。冷たいタピオカミルクをいただき、警察署の建物内に入ってみると、なんとそこにはパンク修理キットや機材トラブルに対応できる工具セット、空気入れのポンプ、地図、救急・怪我治療セットなどが用意してあるのだ。しかも駐輪場には自転車を立てかけるラックが楽々20台分以上が用意され、立派にサイクリングステーションになっているのだ!
サイクリング中に何かトラブルがあれば警察署を頼れるなんて、コレ以上の安心感はないだろう。この立ち寄った警察署がサイクリングステーション警察署第1号とのこと。日本隊の皆と警察署の前で記念撮影し、お礼を言って走りだす。
次に立ち寄ったのは大きな、体育館のような建物。ここもかつて駅舎だったようだが、広々とした建物を生かしたサイクリングステーションになっていて、大人数での休憩も自由にできる。
亜熱帯気候の暑い台湾では、こうした屋根のある休憩所の存在はとてもありがたい。もちろんトイレも備えてあり、十分休むことができた。ここにはサイクリングロードの地図や近隣のサイクリング観光マップが備え付けてあり、情報収集も十分できるのだ。
参加者の皆が驚きの連続で、「うらやましい」の声が立て続けに起こる。
3台で横に並んで走れる!バイクレーンの広さに驚く
郊外の道を走っても、驚くのはバイクレーンがどこの道にもしっかりついていることだ。しかもその広さは、なんと自転車3台で並んで走るにも十分な広さなのだ。これにはびっくり。台湾じゅうの主要な道路がこうした広いバイクレーンを備えており、台湾は今もっとも自転車で安全に走れる国のひとつだ。
これだけ広いバイクレーンになっているのにはワケもある。台湾はもともとスクーターの国。都市部ではもっとも便利な庶民の脚として、スクーターが多く見られる。バイクレーンはたいてい、スクーターと自転車の並走が可能な広さが確保してあるのだ。しかし郊外や田舎ではスクーターレーンまでほぼ自転車専有レーンとなる。広々として、サイクリングには最高だ。
レンタル専門のジャイアントストアがある!
一行は花蓮に到着。ここで午後からの電車を待つため、駅近くのジャイアントストアに立ち寄る。お店の奥が休憩スペーになっていて、お弁当をいただく。
このジャイアントストア花蓮店では、近郊のサイクリングのためのレンタサイクルが充実している。ショップの前、店内にあるたくさんの自転車はすべてレンタサイクルで、販売している自転車はほとんど無いのだ。しかも、MTBやライフスタイル系バイクを始めとして、荷物満載で走れるキャンピング車から高級ロードバイクまでほとんどすべてのニーズを満たす車種が用意されているのだ。
ちなみに平日のレンタル料金は、1元は約3円程度のレートとして、高級ロードバイク(パフォーマンスバイク)が1時間500元、4時間1100元、2日目より1日550元。
中級バイク(スポーツバイク)が1時間200元、4時間800元、2日目より1日400元。
ライフスタイルバイク、フォールディングバイク、女性用コンフォートバイクなどが1時間100元、4時間250元、2日目より1日250元。
休日はそれぞれやや割高になる。つまり平日なら1日1700円程度あれば高級ロードバイクがレンタルできるのだ。
レンタルの際にはヘルメットやグローブなど必要な物は借りることができるほか、店内にはアクセサリー類が充実して展示されており、こちらは購入することができる。
お店にはひっきりなしにレンタル客がやってくる。大勢で返却に来たグループは男女高校生グループ。半日ほどレンタルして、花蓮近郊のサイクリングを楽しんだそうだ。ごくフツーの高校生たちがサイクリングを楽しんでいる姿を普通に見られることが、ちょっと新鮮だった。
自転車を列車にそのまま乗せるサイクルトレイン
花蓮で小一時間休み、時間が来たので花蓮駅へと向かう。予定では自転車を列車に乗せて羅東まで向かうのだ。
花蓮から羅東の道は「清水崖」と呼ばれ、断崖絶壁で知られる。同時にがけ崩れが日常的に起こる危険なエリア。ここを列車で安全にスキップすることになっていたのだ。
花蓮駅の脇の入口から、自転車を押してそのままホームへと入る。自転車ごと乗れる列車は、いわゆる日本の通勤電車のようなシートの配置の客車だ。この客車にどんどんと、自転車ごと乗り込む。自転車の運賃は大人の半額程度だとのこと。
日本でも小湊鉄道などがサイクルトレインを展開しているが、ここ台湾でも同じ。いや、もっとラフで、もっと気軽かもしれない。チェーンの油などでシートを汚さないように気をつけ、あとはのんびり車窓の眺めを楽しむ。途中の駅では何組もサイクリストが自転車ごと乗り込んでくる。「流行の」台湾一周中のサイクリストも!
羅東に着き、ここからはホテルまで夜の自走。すっかり暗くなっているが、台湾のギラギラのネオンサインで市街地走行はライト要らず。
ホテルに到着すると、今日別のルートで走ってきた愛媛隊の方々がもうすぐ到着するというので、お出迎えすることに。すると、なにやらVIPな感じ。サイクルジャージを着た愛媛県知事の中村時広さんの姿も。中村知事はこの日、台北から別ルートで約100kmほどの峠越えルートを走って羅東に到着。1日だけのFormosa900を堪能したようだ。
中村知事が着ているのはしまなみ海道の橋をデザインしたオリジナルジャージ。中村知事は地元のしまなみ海道を走り、サイクリングに夢中だとのこと。愛媛のPRにと、美味しい温州みかんも用意されていた。
この日はジャイアントの社長トニー・ロー氏もやってきて、豪華でVIPな晩餐になった。四国隊のメンバーは愛媛県や今治市の関係者が多いので、台湾と愛媛の自転車交流の話で大いに盛り上がる。
そして元気あふれる一行は台湾名物の夜市へと出かけていく。この夜市のパワフルなこと。このあたりの名物のネギお好み焼きやパパイヤミルクなど、様々な味を楽しむ。台湾料理は美味しい。サイクリングで走っても、太りそうだ!
サイクリング実走1日目は、台湾の自転車を取り巻く環境の充実度、素晴らしさ、そして先進ぶりを見せつけられる驚くべき1日になった。しばらくぶりに走った台湾は、驚くべき自転車先進国になっていたのだ。
続く
photo&text:Makoto.AYANO
撮影・文 綾野 真
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