ロードバイクビギナー層に向けてラインナップされるスコットのアルミバイク、スピードスターシリーズ。今回のインプレッションでは、グリーンエッジのチームカラーを纏った「スピードスターS25」のテストを行なった。15万円以下の激戦価格帯にスコットが放つそのバイクの魅力とは。

スコット Speedstar S25スコット Speedstar S25 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

1958年にスキー競技のストック製造ブランドとして発足したスコットが、初めて自転車に携わったのは1986年のこと。当時盛り上がりを見せていたMTB界に乗り出して注目を集めると、1991年には世界で初となるエアロバーを投入。それを使ったグレッグ・レモンがツール・ド・フランスで優勝したことはあまりにも有名だ。

2003年に発表された超軽量フルカーボンバイクCR1、更に重量を削ぎ落したアディクト、そして現在の最高峰エアロレーシングモデルであるフォイルなど、常に時代を先取りするバイクをデビューさせてきたことは、スコットの高い技術レベルを証明することにほかならない。

鮮やかなチームカラーに彩られるS25。アイキャッチも高い鮮やかなチームカラーに彩られるS25。アイキャッチも高い 上下1-1/8インチのオーバーヘッドチューブを採用する上下1-1/8インチのオーバーヘッドチューブを採用する フォイルに採用されるものと同様のエアロ形状で形作られるフロントフォークフォイルに採用されるものと同様のエアロ形状で形作られるフロントフォーク


別府史之が所属するオリカ・グリーンエッジのメインバイクであるフォイルや、振動吸収性を高め現在もラインナップされるCR1に注目が行きがちだが、エントリーモデルやMTBはもちろん、女性用モデルやフラットバーロードまで、様々なジャンルを揃えることも特徴の一つ。ウインタースポーツやモータースポーツ、アウトドア関連に至るまでを取り揃える、総合ブランドとしての威信が現れている部分かもしれない。

今回のテストバイクは、そんなスコットのエントリーグレードに当たるアルミロード、スピードスターだ。グレードはコンポーネントにシマノ・105ミックスを採用した「S25」。126,000円のプライスを掲げ、これからロードバイクライフを始めるビギナーをターゲットとしたバイクである。

カムテールデザインによるエアロ形状を取り入れたダウンチューブカムテールデザインによるエアロ形状を取り入れたダウンチューブ エントリーモデルながらグラフィックも凝った造りエントリーモデルながらグラフィックも凝った造り


サドルはシンクロス製。柔らかい座りごごちが特徴だサドルはシンクロス製。柔らかい座りごごちが特徴だ ハンドルやステムはシンクロスのアルミ製パーツでまとめられるハンドルやステムはシンクロスのアルミ製パーツでまとめられる


ハイドロフォーミングによって成形される6061ダブルバテッドアルミニウムを採用するスピードスター。特筆すべきはエントリーグレードながら、エアロ形状のチューブをダウンチューブとフロントフォークに採用している点だ。

ダウンチューブは翼断面の後端を切り落としたカムテールデザインに則って形取られ、極薄扁平チューブに見られるような横剛性不足を解消しつつ、丸断面に近いシェイプとすることで軽量化にも繋げている。その結果ダウンチューブ周辺では一般的な丸チューブと比較して、20%の空力向上と5%のパワーセーブを可能とする数値を得られたという。

コンポーネントはシマノ 105でコストパフォーマンスに優れるコンポーネントはシマノ 105でコストパフォーマンスに優れる 派手さは無いが、基本に忠実なBB周りの造り。溶接痕もフラットに仕上げられる派手さは無いが、基本に忠実なBB周りの造り。溶接痕もフラットに仕上げられる


カーボン製のフロントフォークもフォイルに近いシェイプを採用し、ダウンチューブと併せて空力の向上に期待できるところ。コラムとドロップアウトはアルミ製で、コストダウンを図りながら耐久性の不安を解消している。ヘッドコラム径は上下1-1/8インチ。ヘッドチューブ長は52サイズで130mmと長めで、リラックスしたポジションを取ることができる。

各チューブの溶接痕を平滑にする処理はオリカ・グリーンエッジのチームカラーをより一層引き立てる点。全てのワイヤー類がインナールーティンとされているのも、この価格帯のエントリーバイクではあまり見られない工夫と言えるだろう。フレームの各部は質実剛健かつ不安を感じさせない造りで、バイクの扱いに慣れないビギナーでも全く問題無いはずだ。

シンプルなストレート形状が採用されるリアバック。堅実な造りで耐久性を意識しているシンプルなストレート形状が採用されるリアバック。堅実な造りで耐久性を意識している ブレーキはシマノBR-R561 Blackを採用するブレーキはシマノBR-R561 Blackを採用する ホイールはシンクロスのRace 28 Aero Profile。フレームと同じカラーがあしらわれるホイールはシンクロスのRace 28 Aero Profile。フレームと同じカラーがあしらわれる


エアロフォルムのフレームをレーシーな雰囲気のチームカラーで包み、買い求めやすい価格を実現したスピードスターS25。アンダー15万円というロードバイク激戦区においてアイキャッチの高い存在だ。そんなエントリーアルミバイクの実力をテストライダー両氏が検証する。




―インプレッション

「価格以上の走り。エンデューロやビギナークラスのレースまで対応する」諏訪孝浩(BIKESHOP SNEL)

かなり踏みごたえがあって、アルミフレームとしてみた場合にもかなり硬い部類に入るバイクだと感じました。ただ不思議なのですが、重量がある割には上りでは思った以上に軽快なフィーリングで走らせることができ、その点が強く印象に残りました。もちろんエントリーのアルミバイクですので硬く、細かい振動も伝えてきますが、値段以上の走りが感じられるバイクですね。

脚力が十分で、重ためのギアでトルクを掛けて踏み込んでいった時に一番良く走ってくれます。例えば上りでもシッティングでグイグイ踏んでいけば思い通りに加速してくれる印象でした。ロングヒルクライムだと重量的にハンデになるでしょうが、短い上りではカーボンバイクと遜色無く走ってくれるでしょう。

「価格以上の走り。エンデューロやビギナークラスのレースまで対応する」諏訪孝浩(BIKESHOP SNEL)「価格以上の走り。エンデューロやビギナークラスのレースまで対応する」諏訪孝浩(BIKESHOP SNEL)

さすがに手に持つとずっしりと重量感がありますが、走っている分にはチューブの肉厚感などは感じることが無く、よくできているなと思ったポイントです。振動吸収に関して言うとリアバックはガッチリと硬いのですが、カーボンのフォークは良く路面の振動を吸収してくれました。ハンドル周りに感じるストレスは少ないですね。

少しまったりとしたジオメトリーに感じ、ホイールベースの長さから生まれる安定感が感じられます。下りコーナーでの旋回中も挙動は安定していますが、前述した通りリアが硬いため、荒れた路面ではやや跳ねる傾向にあります。しかし総じてあまりクセも無く、乗りやすいと思いますよ。

初めてロードバイク買った人とか、JCRCなどの草レースに出てみようと思った時にはこれで出ても問題ないと思います。20万円ぐらいの価格のバイクやカーボンバイクに対して乗り心地や性能で比べられちゃうと酷かな、と思うのですが、走る・走らないで言うと良く走りますね。

初めてのアルミロードバイクとしてはとても良い選択だと思います。コストパフォーマンスも高いと言えますし、スペック以上に走ってくれるバイクです。カラーもチーム仕様でビギナーにはグッとくる所があるのではないでしょうか。2、3年かけて乗り倒して、次のステップに進むのが正しい乗り方でしょう。

エントリーバイクですが、エンデューロやビギナークラスのレースなら走らせることができるでしょう。その場合、よりゴツゴツした性格が目立つとは思いますが、カッチリとしたホイールを合わせるとより走ってくれるはずです。しなやかなホイールだとフレームに負けてしまうかもしれません。

加えて、ステップアップとともにブレーキキャリパーは付け替えたいポイントです。ハンドリングも良好ですので、ストッピングパワーだけ確保しておけばダウンヒルでの安心感も増し、ビギナー用バイクとして必要十分な性能を発揮してくれるでしょう。


「レース参加を考える若いライダーに最適な一台」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

「レース参加を考える若いライダーに最適な一台」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)「レース参加を考える若いライダーに最適な一台」戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 前後の剛性バランス、全体の性能バランスがキチンと取られているバイクだと感じました。単純な乗り心地や剛性については、ゴチッとした硬さではなく「芯」が感じられる柔軟性ある味付けになっていると感じました。重量もありますので、決して飛ぶような走りがあるわけではありませんが、良くまとめられていますね。

様々なシチュエーションを試してみましたが、どんな場合でも極端にふらついたり、せっかちなフィーリングも特にありませんでした。

踏み始めからの加速やギアの掛かりは金属バイクらしい軽さが感じられます。そこから先は踏みごたえがズシッと硬いので、ハイスピードを維持するにはある程度の脚力が必要だと感じました。突き上げに関して言うと前後とも振動を伝えてくる傾向が強いですね。ある程度乗りなれてショックを身体でいなせれば問題ありませんが、バイク任せに走りたいライダーはストレスを感じてしまうかもしれません。

ハンドリングはクイック気味で、イメージしているよりもややインに切れ込んで行くイメージがありました。若干神経を使うかもしれませんが、慣れですむ範囲だと思います。他に目立つクセは無かったので、安さ故のコーナリングにおける不安も少なかったと思います。

ダッシュ力に光るものを感じたので、レース用途として見た場合はクリテリウムなど加速の多い場面において良いのではないでしょうか。あまりのんびりと走らせるのに向くバイクでは無いような雰囲気もありますね。フレームは決して重すぎないので、レスポンスの良いホイールに変更すれば走りの質も変わってくると思います。

溶接などはごく普通の標準的なレベルです。しかしインナールーティンのワイヤー類など最新のトレンドを盛り込んであって、感度の高い方へのアピールは高いと思います。コストパフォーマンスも平均点ですが、細部を見ても高耐久性が感じられます。価格的、性能的にも、レース出場へのステップアップを考えている若いライダーの最初の一台にピッタリフィットする一台です。


スコット Speedstar S25スコット Speedstar S25 (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp


スコット Speedstar S25
フレーム素材:6061ダブルバテッドアルミニウム
サイズ:XXS、XS、S、M、L、XL、XXL
カラー:チーム
フォーク:カーボン、アルミドロップアウト
コラム:1-1/8インチ
コンポーネント:シマノ 105
ブレーキ:シマノ BR-R561 Black
ホイール:シンクロス Race 28 Aero Profile
価 格:126,000円(税込)

スコットジャパン
メール info@scott-sports.jp
ウエブサイトURL www.scott-sports.jp (日本語サイトは準備中)





インプレライダーのプロフィール

戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート) 戸津井俊介(OVER-DOバイカーズサポート)

1990年代から2000年代にかけて、日本を代表するマウンテンバイクライダーとして世界を舞台に活躍した経歴を持つ。1999年アジア大陸マウンテンバイク選手権チャンピオン。MTBレースと並行してロードでも活躍しており、2002年の3DAY CYCLE ROAD熊野BR-2 第3ステージ優勝など、数多くの優勝・入賞経験を持つ。現在はOVER-DOバイカーズサポート代表。ショップ経営のかたわら、お客さんとのトレーニングやツーリングなどで飛び回り、忙しい毎日を送っている。09年からは「キャノンデール・ジャパンMTBチーム」のメカニカルディレクターも務める。

OVER-DOバイカーズサポート


諏訪孝浩諏訪孝浩 諏訪 孝浩(BIKESHOP SNEL)
バイクショップSNEL代表。自転車歴26年、過去にオランダのアマチュアチームに3シーズン在籍しクリテリウムに多数参戦。オランダクラブ内クリテリウム選手権3位など。
2008年3月に東京都大田区にショップをオープン。オランダで色々なショップを見てきた経験を元に、独自のセンスでショップを経営中。主にシクロクロスをメインに参戦し、クラブ員の約半数がシクロクロスに出場している。

BIKESHOP SNEL


ウェア協力:biciBISLEY 


text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano

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