3月16日(月)〜17日(火)、伊東温泉競輪場にて競輪選手養成所129・130回生の卒業記念レースが行われた。レースは16日の予選1・2回戦を経て、17日に男子準決勝〜決勝、女子決勝を迎え、男子は沢田桂太郎(大分)、女子は川上いちご(千葉)が養成所生活最後の競走を優勝で締めくくった。

晴れ空の下、養成所最後のレースを選手候補生たちが駆けた photo: Yuichiro Hosoda



卒業記念レース 130回生 女子決勝

男子決勝に先立って行われた女子決勝。まずはこちらから振り返っていく。前日の予選1-2回戦を上位で勝ち抜いた7名の選手候補生が発走機に並び、14:20、号砲とともにバンクへと駆け出した。車番は以下の通り。

ガッツポーズで決勝選手紹介に並ぶ女子候補生たち photo: Yuichiro Hosoda
卒業記念レース女子決勝 出走表
車番 氏名
1 小原乃亜(岩手)
2 川上いちご(千葉)
3 山田南(千葉)
4 栗山百香(神奈川)
5 伊藤梨里花(愛知)
6 松下彩也香(青森)
7 露谷菜々花(高知)
最初に前へと出ていったのは、3番車の山田南(千葉)と5番車の伊藤梨里花(愛知)。その後ろから6番車の松下彩也香(青森)が追走。最初のコーナーをこなすうちに先頭に出たのは松下。バックストレッチで2人の前に出切って、Sを取った。伊藤、山田、川上と続き、女子で唯一3回連続ゴールデンキャップを獲った小原乃亜(岩手)が5番手。後方には栗山百香(神奈川)、露谷菜々花(高知)が並んで周回を重ねた。

構えの号令で、女子候補生たちがハンドルを握る photo: Yuichiro Hosoda
発走し、山田南(千葉)と伊藤梨里花(愛知)が並んで前へ。松下彩也香(青森)がそれに続く photo: Yuichiro Hosoda


松下彩也香(青森)を先頭に、7車が隊列を作る photo: Yuichiro Hosoda


残り2周回に入り、最初に動きを見せたのは6-7番手の栗山と露谷。2人が徐々に前進していく。バックストレッチで先頭誘導員がコース内側へと離脱していくと、前の松下も踏み出し、レースが活性化。しかし2センター付近で栗山がこれをかわして先頭に躍り出る。最終のホームストレッチも先頭でクリアし、山田も栗山を抜き去って2番手に付けた。

そして最終1コーナーに差し掛かった時に後方でアクシデントが起きる。一旦最後方に下げて踏み上げを開始したかに見えた小原が、前輪を露谷の後輪にハスって落車。優勝候補の一角がここでレースを去ることになった。

最終周回へ、栗山百香(神奈川)が先頭で入っていく photo: Yuichiro Hosoda
最後方に構えていた小原乃亜(岩手)。この直後に落車を喫する photo: Yuichiro Hosoda


川上いちご(千葉)がイエローライン付近から捲り上げていく photo: Yuichiro Hosoda

6名に人数を減らしたレースは、バックストレッチも栗山と山田が前を駆けていく中、外から黄色の5番車・伊藤がそれを捲りにかかり、さらには川上もイエローライン付近まで車を持ち出して踏み上げていく。3コーナーを過ぎると川上が前段の2名と併走する形となり、そのまま4コーナーを立ち上がる。ストレートでも勢い衰えぬ川上は、そのまま前に出切り、後方から全車捲り切って女子決勝の勝利を掴み取った。

「いつも通りを意識したが、正直緊張した。神山所長の『最後まで全力で走る』と言う言葉を守って走った」と言う川上。小学校の教師から競輪選手を目指して養成所に入り、在所2位の成績を残すまでになった(1位は小原乃亜)。レースは、打鐘が鳴る前辺りで誰も来なかったら自分で仕掛ける事を考えていたと言うが、栗山と露谷が上がって来たため、その後ろから自分のタイミングで行ったと言う。「優勝はうれしいですが、デビューはここから。ここがスタート地点だと思って努力していきたい。大谷翔平選手のような、圧倒的な実力と素敵な人間性を兼ね備えた選手になりたい」と気を引き締めつつも大きな夢を語った。

2センターで栗山、山田、川上の3車が前で並ぶ photo: Yuichiro Hosoda
川上いちご(千葉)が後方一気の捲りで卒業記念レースを制した photo: Yuichiro Hosoda


女子1位・川上いちご(千葉)、2位・山田南(千葉)、松下彩也香(青森) photo: Yuichiro Hosoda
卒業記念レース女子決勝 結果
着順 車番 氏名 着差
1着 2 川上いちご(千葉)
2着 3 山田南(千葉) 1/2車身
3着 6 松下彩也香(青森) 1車身
4着 5 伊藤梨里花(愛知)
5着 4 栗山百香(神奈川)
6着 7 露谷菜々花(高知)
落車棄権 1 小原乃亜(岩手)


卒業記念レース 129回生 男子決勝

午前3つの準決勝で1〜3着となった計9名が決勝へと勝ち上がった。在所中の記録会で3回全てのゴールデンキャップを獲得した沢田桂太郎(大分)と伊藤京介(三重)が、それぞれ最内1番車と大外9番車に収まって相まみえ、選手紹介のコメントでも火花を散らして声援を浴びた。準決勝3着までの結果と、それを受けて決定された決勝の並びは、以下の通りとなった。

決勝選手紹介に登場した男子候補生たち photo: Yuichiro Hosoda
卒業記念レース男子準決勝 結果
第5R準決勝 車番 氏名 着差
1着 3 中村嶺央(千葉)
2着 2 田崎隼翔(栃木) 1車身
3着 1 髙佐龍太郎(宮崎) 1/8車輪
第6R準決勝 車番 氏名
1着 4 伊藤京介(三重)
2着 9 榊枝天旺(福島) 2車身
3着 7 川村琢磨(青森) 1/2車輪
第7R準決勝 車番 氏名
1着 7 沢田桂太郎(大分)
2着 9 柳沼鼓太朗(福島) 1車身
3着 1 兒島直樹(福岡) 1/2車身
男子決勝 出走表
車番 氏名
1 沢田桂太郎(大分)
2 柳沼鼓太朗(福島)
3 髙佐龍太郎(宮崎)
4 田崎隼翔(栃木)
5 川村琢磨(青森)
6 榊枝天旺(福島)
7 中村嶺央(千葉)
8 兒島直樹(福岡)
9 伊藤京介(三重)
スタート直後に先頭へ出たのは、3番車の髙佐龍太郎(宮崎)だったが、意図した位置ではなかったと見え、後ろを振り返りながら内から進出してきた沢田桂太郎に前を譲り、自身は位置を下げて行く。

Sを取ったのは1番車の沢田で、2番手も2番車の柳沼鼓太朗(福島)が入って、ここは車番通りの並びに。4番車・田崎隼翔、6番車・榊枝天旺(福島)がこれに続くと、5番手に伊藤京介(三重)が付けて前を伺う体制を取る。そこから内の中村嶺央(千葉)と外の高佐が併走、8番車の兒島直樹(福岡)、5番車の川村琢磨(青森)と続いて1周回目を終えた。

スタート直後、3番車の髙佐龍太郎(宮崎)が一旦前に出るも、様子を伺いながら位置を下げていく photo: Yuichiro Hosoda
沢田桂太郎(大分)がSを獲り、柳沼鼓太朗(福島)、田崎隼翔(栃木)と続いた photo: Yuichiro Hosoda


2周回目で高佐は最後方まで位置を下げていくも、次の周回の1コーナー過ぎから再び前進を開始。これに反応した兒島を連れて上がって行き、バックストレッチで先頭誘導員が離れると、榊枝と伊藤もこれを阻むような形で外に車を振って踏み込み、前へと上がって行く。そして4コーナーで榊枝が先頭の沢田に並びかけ、残り2周へと入るホームストレッチで番手に付けた伊藤ともに前に出切る。外からは髙佐も沢田の前に出る格好で1コーナーへ。

ジャンが鳴らされる中、2コーナー出口に差し掛かり、榊枝の前に出たのは伊藤。抵抗を見せる榊枝の横に髙佐も並びかけ、3コーナーから2センターでは沢田もそれの後を追って外へ持ち出し、中村と柳沼、兒島と田崎がそれぞれ併走しながら追走して行った。

榊枝天旺(福島)が髙佐龍太郎(宮崎)の先手を取って前へと踏み出す photo: Yuichiro Hosoda
榊枝天旺(福島)が先頭で残り2周回へ photo: Yuichiro Hosoda


バックで伊藤京介(三重)が前に出て、ジャンが鳴り始める photo: Yuichiro Hosoda

最終周回へのホームで髙佐が後退を始めると、代わって先頭・伊藤の横へと出ていったのは沢田。負けなしで勝ち上がり、選手紹介で「完全優勝を目指す」と闘志を燃やした伊藤との戦いの火蓋が切って落とされた。内の伊藤、外の沢田、それぞれが前を譲らぬまま1コーナー、2コーナーと過ぎて行く。

だが、その勝負もバックストレッチ半ばまで。沢田の勢いが伊藤に勝り、3コーナー入口では沢田が前を獲りきった。4コーナーを駆けるうちに中村も伊藤に並びかけ、柳沼も中村をマークしながら最後の直線へ。勢い衰えぬ沢田は、そんな後続の争いを振り切り、ハンドルを投げながら先頭でフィニッシュ。2着中村に1車身2分の1差を付け、卒記チャンプの座を勝ち取った。中村の後ろを取った柳沼が3着。道中、沢田との競り合いで魅せた伊藤は4着となった。

打鐘が鳴り響く中、伊藤京介(三重)が先頭で4コーナーを抜ける photo: Yuichiro Hosoda
最終1-2コーナーで、沢田桂太郎(大分)と伊藤京介(三重)が先頭で激しく競り合う photo: Yuichiro Hosoda


バックストレッチで沢田桂太郎(大分)が先頭に出る photo: Yuichiro Hosoda
沢田桂太郎(大分)が先頭で最後の4コーナーを抜ける photo: Yuichiro Hosoda


バックから先頭に立った沢田桂太郎(大分)が、そのまま押し切って卒記チャンプの座を勝ち取った photo: Yuichiro Hosoda

在所1位で129回生の自治会長も務めた沢田は「最強最速の自治会長であることを証明できた」と話し、「この2日間色々な人から応援して頂いて楽しかった。決勝は1番車なのでS獲りをしっかり、自分のタイミングでと思っていた。(先頭に)出切った後は最後まで誰も来ないでくれ、と走りました。」

最後に「ファンの方々に愛される、他の選手の方から頼って頂ける先行選手になりたい」と抱負を語った沢田。ロードレーサーとしてはスパークルおおいたに籍を置き、今後もロードを走りたいとも。師匠もかつてロードレースを走った一丸尚伍だ。窪木一茂や橋本英也に続く、競輪とロードレースの両輪を回すスケールの大きな選手を目指す。

男子1位・沢田桂太郎(大分)、2位・中村嶺央(千葉)、3位・柳沼鼓太朗(福島) photo: Yuichiro Hosoda
卒業記念レース男子決勝 結果
着順 車番 氏名 着差
1着 1 沢田桂太郎(大分)
2着 7 中村嶺央(千葉) 1-1/2車身
3着 2 柳沼鼓太朗(福島) 3/4車身
4着 9 伊藤京介(三重)
5着 8 兒島直樹(福岡)
6着 5 川村琢磨(青森)
7着 4 田崎隼翔(栃木)
8着 6 榊枝天旺(福島)
9着 3 髙佐龍太郎(宮崎)


神山雄一郎所長の講評

先のJKAのリリースにもあった通り、3月中の競輪選手養成所における訓練中の落車事故により、129回選手候補生の1人が命を落とすと言う痛ましい出来事があった。

神山所長は、表彰式後の講評冒頭でこの件に触れ「卒業を目前にして、たいへん残念で、痛ましい出来事がありました。ここに亡くなられた候補生に対し、心より哀悼の意を表したいと思います」と、時折言葉を詰まらせながら話した。

講評を行う神山雄一郎所長 photo: Yuichiro Hosoda

また、選手候補生達の気持ちを汲み取り、「君達にとって、この卒業記念レース、非常に悲しく厳しい2日間だったと思います。よく乗り切ってくれたと思います。また開催するにあたり、悲しみの中、君達に正直な気持ちを話して頂いたことを所長として感謝いたします。そんな辛い中で、各々が気持ちを強く持って走ってくれた結果、とても迫力のある、質の高い競走を皆様に提供出来たと思います」と続けた。

最後にはこれからプロになる彼らに対し「お客様、ファンを背負って走ると言うことをしっかり頭に入れて走って欲しい。それは常々言ってきました通り、ゴールまでしっかり走り切る、諦めない、全力を出し切る、そういう事だと思ってください。そして、ファンの皆様が君達に賭けた大事なお金です。ファンが自分の力で働いて稼いだお金を自分達に賭けるんです。その事を忘れず、ファンの方がゴールまでその車券を握り続けていられる、そういう信頼される選手になって欲しい」と、公営競技を走る選手としての心構えを話し、エールを贈った。

勝者の証、倉茂杯と神山杯を持つ沢田桂太郎(大分)と川上いちご(千葉)の優勝を讃える神山雄一郎所長 photo: Yuichiro Hosoda

選手候補生たちは、3月19日(木)に卒業式を迎え、養成所からプロの競輪選手として旅立つ。ここに改めて亡くなられた選手候補生の御冥福をお祈りするとともに、ご遺族へ哀悼の意を表し、記事を締めくくらせて頂きます。

text&photo: Yuichiro Hosoda