2012/09/30(日) - 11:03
ゴールまで10km。雨脚が強まる中、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が「ヴィッラ・ヴェルガノ(平均勾配7.4%・登坂距離3.3km)」の登りで単独アタックを成功させ、ゴールまで独走に成功した。アルカンシェルデビューを果たしたフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)はリタイアに終わっている。
雨降るロンバルディア州で開催された第106回ジロ・ディ・ロンバルディア。ハイペースな展開や相次ぐ落車により、出走者199名のうち完走者54名(完走率27%)というタフなレースとなった。
レース序盤のアタック合戦に加わったのは、自身2度目の出場を迎えた別府史之(オリカ・グリーンエッジ)。
「序盤の逃げに乗るために、ハイスピードの中、何度もジャンプ。集団から離れて吸収されてを繰り返し粘った」とフミはレース後にツイートしている。しかし決定的な逃げに乗ることは叶わなかった。「山で遅れてチームリーダーのゲランスと共に補給ポイントで降りた。TVで見ててもかなり激しいレースになった今年のロンバルディア。走り切った選手にリスペクト!」
逃げに乗ったのはクリスティアーノ・サレルノ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)やエマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)、スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)ら10名。これに対し、メイン集団は90km地点の標高1336mヴァルカーヴァの登りで60名ほどに絞られた。
やがて、今年50年ぶりに復活した最大勾配30%(公式発表は27%)の「ソルマーノの壁(平均勾配15.8%・登坂距離1.92km)」に向けた登りが始まると、BMCレーシングチームが集団のペースコントロールを開始。逃げグループとのタイム差は早くも1分を切った。
霧に包まれた林を抜けるこの激坂で、逃げグループは崩壊。ロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル)とアルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)だけが生き残り、激坂をダンシングでこなしていく。
30秒後方にまで迫ったメイン集団では、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)やアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がペースアップ。
この日アルカンシェルを着て初めてレースに挑んだジルベールは、少し番手を下げてしまう。
ロドリゲスらから20秒遅れで「ソルマーノの壁」をクリアしたジルベール。問題なく下りで再合流したが、雨によって濡れた危険な下りでジルベールはチームメイトのアレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)らとともに落車してしまう。大きな怪我は無かったものの、ゴールまで80kmを残して、優勝候補の筆頭に挙げられた世界チャンピオンはレースを去った。
危険な下りで少しペースを落としたメイン集団は30名ほどの膨れ上がり、次なる登り「マドンナ・デル・ギザッロ(平均勾配6.2%・登坂距離8.6km)」に向けてコモ湖畔沿いのワインディングロードを走る。
カチューシャがペースを作るメイン集団は、単独になってなお先頭で逃げ続けたバルデを「マドンナ・デル・ギザッロ」の登り中腹でキャッチ。続いて飛び出したケヴィン・デウェールト(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)が、メイン集団から30秒のリードを稼いで「マドンナ・デル・ギザッロ」をクリアした。
メイン集団内で走るニーバリやパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)がテクニカルなダウンヒルで落車。同じく落車した先頭のデウェールトは吸収されてしまう。
残された登りは、ゴール9km手前の「ヴィッラ・ヴェルガノ」のみ。中継ぎの平坦路でルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)が独走したが、勝負を決める登りを前に、ゴールまで13kmを残して吸収。約30名の精鋭集団が、本降りの「ヴィッラ・ヴェルガノ」に突入した。
マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)やアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)、ゴルカ・ベルドゥーゴ(スペイン、エウスカルテル)らのアタックは決まらず、頂上1km手前の最大勾配15%区間でついにロドリゲスが動く。道が細く、路面も悪いこの登りで、ロドリゲスが一人で飛び出した。
後続を10秒ほど引き離し、ロドリゲスは独走のままゴール地点レッコへの下りに入る。後方ではコンタドールやマウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)、そしてディフェンディングチャンピオンのオリバー・ザウグ(スイス、レディオシャック・ニッサン)らが追走グループを形成したが、ロドリゲスとの距離が縮まらない。
ただ前を見て踏み続けたロドリゲス。後続の追い上げは届かず、9秒リードのままレッコのフィニッシュラインを駆け抜けた。
スペイン人初のジロ・ディ・ロンバルディア制覇。2位にはサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、3位には直前のジロ・デル・ピエモンテの覇者ウランが入り、表彰台はスペイン語圏の選手が独占した。
優勝したロドリゲスは「雨のレースは危険を伴うので好きじゃない」と言いながらも「でも雨が降ると自分の走りが出来る」とコメント。今年初めて優勝した春のフレーシュ・ワロンヌも、雨が降る中でのレースだった。
「ボトルを手にしてゴールしたのは、おまじないのようなもの。キャリアの中でずっと勝ちたいと思っていたレースに勝てたんだ。夢が叶ったようで本当に嬉しい。世界選手権でアルベルト(コンタドール)は好調だったし、彼はミラノ〜トリノでも勝った。でも僕にはアルベルトが少し疲れているように見えた。出場選手が豪華だっただけに、勝利の喜びもひとしおだ」。
今年、ティレーノ〜アドリアティコ総合6位(ステージ1勝)、ブエルタ・アル・パイスバスコ総合2位(ステージ2勝)、フレーシュ・ワロンヌ優勝、ジロ・デ・イタリア総合2位(ステージ2勝)、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位(ステージ3勝)という好成績を残してきたロドリゲス。このロンバルディアの勝利により、UCIワールドツアーランキングの首位に躍り出た。
選手コメントはレース公式リリースより。
ジロ・ディ・ロンバルディア2012結果
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 6h36'27"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +09"
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
4位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)
5位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
6位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
7位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)
8位 オリバー・ザウグ(スイス、レディオシャック・ニッサン)
9位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)
10位 フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)
DNF フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
DNF 別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)
text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla
雨降るロンバルディア州で開催された第106回ジロ・ディ・ロンバルディア。ハイペースな展開や相次ぐ落車により、出走者199名のうち完走者54名(完走率27%)というタフなレースとなった。
レース序盤のアタック合戦に加わったのは、自身2度目の出場を迎えた別府史之(オリカ・グリーンエッジ)。
「序盤の逃げに乗るために、ハイスピードの中、何度もジャンプ。集団から離れて吸収されてを繰り返し粘った」とフミはレース後にツイートしている。しかし決定的な逃げに乗ることは叶わなかった。「山で遅れてチームリーダーのゲランスと共に補給ポイントで降りた。TVで見ててもかなり激しいレースになった今年のロンバルディア。走り切った選手にリスペクト!」
逃げに乗ったのはクリスティアーノ・サレルノ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)やエマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)、スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)ら10名。これに対し、メイン集団は90km地点の標高1336mヴァルカーヴァの登りで60名ほどに絞られた。
やがて、今年50年ぶりに復活した最大勾配30%(公式発表は27%)の「ソルマーノの壁(平均勾配15.8%・登坂距離1.92km)」に向けた登りが始まると、BMCレーシングチームが集団のペースコントロールを開始。逃げグループとのタイム差は早くも1分を切った。
霧に包まれた林を抜けるこの激坂で、逃げグループは崩壊。ロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル)とアルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)だけが生き残り、激坂をダンシングでこなしていく。
30秒後方にまで迫ったメイン集団では、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)やアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がペースアップ。
この日アルカンシェルを着て初めてレースに挑んだジルベールは、少し番手を下げてしまう。
ロドリゲスらから20秒遅れで「ソルマーノの壁」をクリアしたジルベール。問題なく下りで再合流したが、雨によって濡れた危険な下りでジルベールはチームメイトのアレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)らとともに落車してしまう。大きな怪我は無かったものの、ゴールまで80kmを残して、優勝候補の筆頭に挙げられた世界チャンピオンはレースを去った。
危険な下りで少しペースを落としたメイン集団は30名ほどの膨れ上がり、次なる登り「マドンナ・デル・ギザッロ(平均勾配6.2%・登坂距離8.6km)」に向けてコモ湖畔沿いのワインディングロードを走る。
カチューシャがペースを作るメイン集団は、単独になってなお先頭で逃げ続けたバルデを「マドンナ・デル・ギザッロ」の登り中腹でキャッチ。続いて飛び出したケヴィン・デウェールト(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)が、メイン集団から30秒のリードを稼いで「マドンナ・デル・ギザッロ」をクリアした。
メイン集団内で走るニーバリやパオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)がテクニカルなダウンヒルで落車。同じく落車した先頭のデウェールトは吸収されてしまう。
残された登りは、ゴール9km手前の「ヴィッラ・ヴェルガノ」のみ。中継ぎの平坦路でルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)が独走したが、勝負を決める登りを前に、ゴールまで13kmを残して吸収。約30名の精鋭集団が、本降りの「ヴィッラ・ヴェルガノ」に突入した。
マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)やアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)、ゴルカ・ベルドゥーゴ(スペイン、エウスカルテル)らのアタックは決まらず、頂上1km手前の最大勾配15%区間でついにロドリゲスが動く。道が細く、路面も悪いこの登りで、ロドリゲスが一人で飛び出した。
後続を10秒ほど引き離し、ロドリゲスは独走のままゴール地点レッコへの下りに入る。後方ではコンタドールやマウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)、そしてディフェンディングチャンピオンのオリバー・ザウグ(スイス、レディオシャック・ニッサン)らが追走グループを形成したが、ロドリゲスとの距離が縮まらない。
ただ前を見て踏み続けたロドリゲス。後続の追い上げは届かず、9秒リードのままレッコのフィニッシュラインを駆け抜けた。
スペイン人初のジロ・ディ・ロンバルディア制覇。2位にはサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、3位には直前のジロ・デル・ピエモンテの覇者ウランが入り、表彰台はスペイン語圏の選手が独占した。
優勝したロドリゲスは「雨のレースは危険を伴うので好きじゃない」と言いながらも「でも雨が降ると自分の走りが出来る」とコメント。今年初めて優勝した春のフレーシュ・ワロンヌも、雨が降る中でのレースだった。
「ボトルを手にしてゴールしたのは、おまじないのようなもの。キャリアの中でずっと勝ちたいと思っていたレースに勝てたんだ。夢が叶ったようで本当に嬉しい。世界選手権でアルベルト(コンタドール)は好調だったし、彼はミラノ〜トリノでも勝った。でも僕にはアルベルトが少し疲れているように見えた。出場選手が豪華だっただけに、勝利の喜びもひとしおだ」。
今年、ティレーノ〜アドリアティコ総合6位(ステージ1勝)、ブエルタ・アル・パイスバスコ総合2位(ステージ2勝)、フレーシュ・ワロンヌ優勝、ジロ・デ・イタリア総合2位(ステージ2勝)、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位(ステージ3勝)という好成績を残してきたロドリゲス。このロンバルディアの勝利により、UCIワールドツアーランキングの首位に躍り出た。
選手コメントはレース公式リリースより。
ジロ・ディ・ロンバルディア2012結果
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 6h36'27"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル) +09"
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、チームスカイ)
4位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、BMCレーシングチーム)
5位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
6位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
7位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)
8位 オリバー・ザウグ(スイス、レディオシャック・ニッサン)
9位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)
10位 フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)
DNF フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
DNF 別府史之(日本、オリカ・グリーンエッジ)
text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla
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