2012/09/07(金) - 04:07
ジョン・デゲンコルブ(ドイツ)のスプリント5勝目を目指し、土井雪広(アルゴス・シマノ)が最も長時間プロトンを牽引した一日。しかし勝利の女神はダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)に微笑んだ。
今大会唯一の200km超えステージ。アストゥリアスやカンタブリアの山岳地帯を離れ、ブエルタは終着地であるマドリードに向けて南下を始める。
カスティーリャ・イ・レオン州の平野に敷かれたコースはほぼフラット。カテゴリー山岳は一つも登場しない。
「風が弱くて良かった」と、スタート地点でチームバスから降りてきた土井雪広は最初に笑顔を見せる。それもそのはず、カスティーリャ・イ・レオン州の平原は、頻繁に強風が吹き荒れる。その風を利用する風力発電の風車を縫うように、選手たちは高速で平原を駆け抜けた。
スタート直後のアタック合戦で集団から飛び出したのはルイスアンヘル・マテマルドネス(スペイン、コフィディス)、ガティス・スムクリス(ラトビア、カチューシャ)、マルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)、ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシングチーム)、グスタボ・セサル(スペイン、アンダルシア)の5人。
するとメイン集団はすぐさまスプリンターチームの指揮下に置かれる。タイム差は5分まで拡大したが、土井をはじめとするアルゴス・シマノ勢とレディオシャック・ニッサン勢が集団先頭に陣取り、逃げグループとのタイム差に目を光らせる。
気温30度強の暑さの中、刻々と逃げグループのリードはスプリント狙いの2チームによって削られていく。緩い追い風も影響し、1時間毎の平均スピードは常に47〜48km/h。ゴールまで50kmを切ると、タイム差は早くも2分を割り込んだ。
ラスト32km地点でリーナス・ゲルデマン(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)やナイロ・クインターナ(コロンビア、チームスカイ)、アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ・ビッグマット)を含む落車が発生し、ゲルデマンが左肩の打撲でリタイアしている。
ここからはレディオシャック・ニッサンやリクイガス・キャノンデール、チームスカイが集団先頭に入り乱れる展開。落車を避けるために総合系チームも集団先頭に上がったため、必然的に集団のスピードは上がっていく。
集団牽引を終えた土井はチームカーに下がってボトルを受け取ったが、「最後のエネルギー振り絞って『皆に冷たい飲み物を!』と意気込んで集団を上がっていたけど、突如現れた登りで集団がバラバラになり、チームメイトのところまでたどり着けなかった」と話す。ここで集団から遅れた土井は6分18秒遅れの集団でゴールした。
ラスト16km地点で逃げを捉えたメイン集団は、チームスカイが主導権を握った状態でバリャドリドの街へ。イギリスチャンピオンジャージのイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)を先頭に、ラスト600mの最終コーナーを曲がった。
ラスト300mで5番手につけていたロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)が真っ先に仕掛けたが、好位置につけていたベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)が落ち着いてこれに反応する。
その後ろにベンナーティ、アラン・デーヴィス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が続く。ステージ5勝目が懸かったデゲンコルブは、発射台役のクーン・デコルト(オランダ、アルゴス・シマノ)とともに最終コーナーで番手を下げてしまう。
スウィフトは先頭でゴールに向かって突き進んだが、その後ろからベンナーティが上がってくる。スウィフトとベンナーティがハンドルを投げ込んでゴール。ベンナーティが射しきった。
ブエルタと相性の良いベンナーティは、これがステージ通算6勝目。表彰台では空を何度も指差してみせる。昨年のジロ・デ・イタリアで事故死したチームメイトのワウテル・ウェイラント(ベルギー)に勝利を捧げるポーズだ。
「この勝利をウェイラントに捧げる。チームメイトとして、そして友として、長い時間をともにした彼に続くことが出来て感極まる」。最後にバリャドリドがブエルタのステージを迎えた2008年、同地でステージ優勝を飾った選手こそウェイラントだった。
「去年のブエルタでも大会終盤のステージで優勝した。キャリアを見ても、グランツールの3週目でいつも結果を残している。今年もレース序盤は調子が上がらなかったけど、マドリードが近づくにつれて勝てるコンディションになってきたんだ」。
デゲンコルブはギャップを埋めることが出来ずにステージ5位。10ポイントを獲得したが、ポイント賞トップのホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)とは46ポイント差。グリーンジャージ獲得は厳しい状態だ。
「今日はハードワークだったけど、脚は良い感じ」と、最長ステージで長時間集団牽引した土井。「あと3日しかないステージを大切に楽しみたい。明日も一応スプリンターステージだけど、小刻みなアップダウンを繰り返すため、どうなるかは前半の展開次第」と読んでいる。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第18ステージ結果
1位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン) 4h17'17"
2位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
3位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
4位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
5位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)
6位 ダヴィデ・ヴィガノ(イタリア、ランプレ・ISD)
7位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、ラボバンク)
8位 クーン・デコルト(オランダ、アルゴス・シマノ)
9位 ミッチェル・ドッカー(オーストラリア、アルゴス・シマノ)
10位 グレゴリー・ラスト(スイス、レディオシャック・ニッサン) +06"
163位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +6'18"
敢闘賞
ガティス・スムクリス(ラトビア、カチューシャ)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 72h25'21"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'52"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2'28"
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +9'40"
5位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +11'36"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +12'02"
7位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +12'55"
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +13'06"
9位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) +13'49"
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +14'10"
125位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +2h39'32"
ポイント賞(プントス)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 170pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 159pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 152pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 38pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 36pts
3位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) 33pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 6pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 8pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 9pts
チーム総合成績
1位 モビスター 217h03'21"
2位 エウスカルテル +17'32"
3位 ラボバンク +25'06"
text&photo:Kei Tsuji in Valladolid, Spain
今大会唯一の200km超えステージ。アストゥリアスやカンタブリアの山岳地帯を離れ、ブエルタは終着地であるマドリードに向けて南下を始める。
カスティーリャ・イ・レオン州の平野に敷かれたコースはほぼフラット。カテゴリー山岳は一つも登場しない。
「風が弱くて良かった」と、スタート地点でチームバスから降りてきた土井雪広は最初に笑顔を見せる。それもそのはず、カスティーリャ・イ・レオン州の平原は、頻繁に強風が吹き荒れる。その風を利用する風力発電の風車を縫うように、選手たちは高速で平原を駆け抜けた。
スタート直後のアタック合戦で集団から飛び出したのはルイスアンヘル・マテマルドネス(スペイン、コフィディス)、ガティス・スムクリス(ラトビア、カチューシャ)、マルティン・ケイゼル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)、ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシングチーム)、グスタボ・セサル(スペイン、アンダルシア)の5人。
するとメイン集団はすぐさまスプリンターチームの指揮下に置かれる。タイム差は5分まで拡大したが、土井をはじめとするアルゴス・シマノ勢とレディオシャック・ニッサン勢が集団先頭に陣取り、逃げグループとのタイム差に目を光らせる。
気温30度強の暑さの中、刻々と逃げグループのリードはスプリント狙いの2チームによって削られていく。緩い追い風も影響し、1時間毎の平均スピードは常に47〜48km/h。ゴールまで50kmを切ると、タイム差は早くも2分を割り込んだ。
ラスト32km地点でリーナス・ゲルデマン(ドイツ、レディオシャック・ニッサン)やナイロ・クインターナ(コロンビア、チームスカイ)、アルノー・ジャネソン(フランス、FDJ・ビッグマット)を含む落車が発生し、ゲルデマンが左肩の打撲でリタイアしている。
ここからはレディオシャック・ニッサンやリクイガス・キャノンデール、チームスカイが集団先頭に入り乱れる展開。落車を避けるために総合系チームも集団先頭に上がったため、必然的に集団のスピードは上がっていく。
集団牽引を終えた土井はチームカーに下がってボトルを受け取ったが、「最後のエネルギー振り絞って『皆に冷たい飲み物を!』と意気込んで集団を上がっていたけど、突如現れた登りで集団がバラバラになり、チームメイトのところまでたどり着けなかった」と話す。ここで集団から遅れた土井は6分18秒遅れの集団でゴールした。
ラスト16km地点で逃げを捉えたメイン集団は、チームスカイが主導権を握った状態でバリャドリドの街へ。イギリスチャンピオンジャージのイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)を先頭に、ラスト600mの最終コーナーを曲がった。
ラスト300mで5番手につけていたロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)が真っ先に仕掛けたが、好位置につけていたベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)が落ち着いてこれに反応する。
その後ろにベンナーティ、アラン・デーヴィス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が続く。ステージ5勝目が懸かったデゲンコルブは、発射台役のクーン・デコルト(オランダ、アルゴス・シマノ)とともに最終コーナーで番手を下げてしまう。
スウィフトは先頭でゴールに向かって突き進んだが、その後ろからベンナーティが上がってくる。スウィフトとベンナーティがハンドルを投げ込んでゴール。ベンナーティが射しきった。
ブエルタと相性の良いベンナーティは、これがステージ通算6勝目。表彰台では空を何度も指差してみせる。昨年のジロ・デ・イタリアで事故死したチームメイトのワウテル・ウェイラント(ベルギー)に勝利を捧げるポーズだ。
「この勝利をウェイラントに捧げる。チームメイトとして、そして友として、長い時間をともにした彼に続くことが出来て感極まる」。最後にバリャドリドがブエルタのステージを迎えた2008年、同地でステージ優勝を飾った選手こそウェイラントだった。
「去年のブエルタでも大会終盤のステージで優勝した。キャリアを見ても、グランツールの3週目でいつも結果を残している。今年もレース序盤は調子が上がらなかったけど、マドリードが近づくにつれて勝てるコンディションになってきたんだ」。
デゲンコルブはギャップを埋めることが出来ずにステージ5位。10ポイントを獲得したが、ポイント賞トップのホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)とは46ポイント差。グリーンジャージ獲得は厳しい状態だ。
「今日はハードワークだったけど、脚は良い感じ」と、最長ステージで長時間集団牽引した土井。「あと3日しかないステージを大切に楽しみたい。明日も一応スプリンターステージだけど、小刻みなアップダウンを繰り返すため、どうなるかは前半の展開次第」と読んでいる。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第18ステージ結果
1位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン) 4h17'17"
2位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
3位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
4位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
5位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)
6位 ダヴィデ・ヴィガノ(イタリア、ランプレ・ISD)
7位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、ラボバンク)
8位 クーン・デコルト(オランダ、アルゴス・シマノ)
9位 ミッチェル・ドッカー(オーストラリア、アルゴス・シマノ)
10位 グレゴリー・ラスト(スイス、レディオシャック・ニッサン) +06"
163位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +6'18"
敢闘賞
ガティス・スムクリス(ラトビア、カチューシャ)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 72h25'21"
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'52"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +2'28"
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +9'40"
5位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +11'36"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +12'02"
7位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +12'55"
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +13'06"
9位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) +13'49"
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター) +14'10"
125位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ) +2h39'32"
ポイント賞(プントス)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 170pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 159pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 152pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 38pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 36pts
3位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) 33pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 6pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 8pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) 9pts
チーム総合成績
1位 モビスター 217h03'21"
2位 エウスカルテル +17'32"
3位 ラボバンク +25'06"
text&photo:Kei Tsuji in Valladolid, Spain
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