5月27日に長野県で開催された「セルフディスカバリーアドベンチャー・イン(SDA)王滝」。途中転倒しながらも、史上最速タイムで優勝を飾った池田祐樹(TOPEAK・ERGON)から届いた喜びの優勝レポートをお届けしよう。

朝6時、一斉に選手たちがスタートを切る朝6時、一斉に選手たちがスタートを切る (c)Akihiko.Harimoto

今回の王滝の目標は優勝、そして、最速タイムを出したいという思いがあった。しかし、王滝直前まで行っていたアメリカ5週末連続レース遠征からのダメージが予想以上に深く、気をつけてはいたが帰国後、不覚にも体調を崩してしまった。

トレーニングも行わず、休養してとにかく健康な状態戻ろうと努めたが、焦りは募るばかりだった。オフの間に必死に積み上げたあの苦しいトレーニングはこんなものでは絶対消えない、自分がやってきたことを信じ、王滝に現地入りをした。ここまで来たらやるしかない。レースに言い訳は一切通用しない。

先頭を独走する池田祐樹(ERGON・TOPEAK)先頭を独走する池田祐樹(ERGON・TOPEAK) (c)Akihiko.Harimoto会場では応援してくれるスポンサーの方、たくさんの友人、ファンの方々の声に勇気づけられ、元気をたくさんもらった。自分の目標はもちろん、みんなの期待にも絶対応えたい。今回はトピーク・エルゴンのブース+サポートもいるので非常に心強い。

当日、午前3時半に起きて朝食を詰め込み、身体のシステムにエネルギーを注入。レース直前にNewハレさんにテーピングと気合を注入してもらいました!スタートは前年度の順位が反映されて最前列に並ぶことができた。この瞬間には迷いもなく、レースに集中することができていた。

先導車が消えると同時に山中選手(GT)、國井選手(BMC)と私の3人で積極的にペースアップして先頭集団を形成。最初の長い登りで前に出て、後続を突き放しにかかる。序盤でリードを作ったあとに自分のペースに落ち着く戦法をとった。

池田祐樹を追う2位 山中真(GT/One on One)池田祐樹を追う2位 山中真(GT/One on One) (c)Akihiko.Harimoto徐々に離れていく後続を確認しながら速いペースで登り続けた独走態勢からはタイムとの戦い。

過去の優勝タイムを見ると大体5時間が100キロの壁。この壁を打ち破りたかったのでトップチューブに5時間切りを基にした各チェックポイントの目標タイムを貼り、それを上回るようにチェックポイントを通過した。終始オーバーペースギリギリで自分を追い込んだ。タイムの意識、後ろから追い上げてくるかもしれないプレッシャーも影響していたと思う。

42キロ分岐地点で焦りからくる判断ミスで転倒。自分が情けないと怒りを覚えるが、すぐに起き上がりバイクにまたがった。左膝からの流血は気になったが、その時はレース後に何針も縫うことになるケガとはつゆ知らず、かすり傷程度だと思い、バイクも幸いトラブルもなさそうなのでそのまま走り続けた。アドレナリンのチカラはすごいと改めて思い知らされた。

長距離レースでは心をいかに強く保つかが非常に重要。わかっていてもポジティブとネガティブの心の波を繰り返してしまう。そこでいかにポジティブな精神をキープし、多くすることができるかが鍵。どんな選手だって頑張って追い込んでいれば同じように辛いし、足を止めてしまいたい気持ちにもなる。

上位2名を追う國井敏夫(Mile Post Racing)上位2名を追う國井敏夫(Mile Post Racing) (c)Akihiko.Harimoto今回もオーバーペースから来る疲労で足が攣り、何度足のチカラを緩めて止めようか迷ったことか。鼻づまりで息が苦しく、何度スピードを緩めようか迷ったことか。ゴール後に準優勝した山中選手(GT/One on One)も「モチベーションを保つのに必死だった。」とコメントしていたがフィジカルよりもメンタルが大きく問われるのが長距離レース。

大会記録で優勝した池田祐樹(TOPEAK・ERGON)大会記録で優勝した池田祐樹(TOPEAK・ERGON) (c)PowerSportsそこをあきらめずに乗り越え、全てを出し切った先にあるのが感動のフィニッシュであり、順位である。レース終盤、心身共に疲弊しきっているところで42km/20kmのレーサーの方たちとコース合流をする。抜いて行くときに、たくさんの人たちが自分も辛いレース中のはずなのに応援の声をかけてくれた。なんて嬉しいことだろうか。

これにより枯渇していたはずのエネルギーが再び充電されて、最後の最後までペダルに力を踏みこむことができた。フィニッシュまでの下りは足を攣りながらの高速ダウンヒルで気が抜けない状態だったが、ゲートをくぐる瞬間まで攻め続けた。

フィニッシュの瞬間は何とも言えない感動。

セルフディスカバリーアドベンチャー・イン・王滝 クロスマウンテンバイク100km 総合表彰台セルフディスカバリーアドベンチャー・イン・王滝 クロスマウンテンバイク100km 総合表彰台 photo:So.Isobe昨年は春3位、秋2位で苦汁を舐めたが、ようやく念願の王滝の優勝を手に入れることができた。同時に私にとって日本国内初優勝の瞬間でもあった。そして、フィニッシュを迎えてくれた人たち、この初優勝を自分のことのように喜んでくれる人たちもいて最高の気分だ。

表彰式で喜びを語る池田祐樹(TOPEAK・ERGO)表彰式で喜びを語る池田祐樹(TOPEAK・ERGO) photo:So.Isobe特にチームスポンサーの安達さんは貴重な時間を割いてサポートに駆けつけてくれました。メカはもちろん、精神的にも安心してレースに臨めました。ありがとうございました!

タイムも目標の5時間を大幅に切り、4時間42分46秒。過去の大会結果を見る限りだとベストなタイムなはずだ。不安要素はたくさんあったが自分自身も驚くほどの良い走りができた。今年は例年以上にオフの時期のトレーニングを頑張り、オーバートレーニングぎりぎりのところまで追い込んで練習を重ねた。

そして今その成果を実感することができている。

今週末の全日本選手権を始め、まだまだ大きなレースが残っているが決して気を抜かず、長いシーズンを最後まで右上がりで戦い抜いていきたい。

多大なるサポートと応援、誠に感謝しています。この感謝は言葉では言い表せないほどです!本当にありがとうございました!


池田祐樹(TOPEAK・ERGON)の優勝後コメント
レース後インタビューより


最初の登坂で抜け出し、自分のペースでレースメイクを試みました。勝った今だから言えることですが、アメリカへと1ヶ月半の遠征を行い5週末連続でレースに出場し、このレースの直前に帰国しました。

疲れと体調を崩していたことで不安要素は多くありましたが、コンディションを整えることができ、脚の調子も比較的良く大会に臨めました。途中、脚の攣りや落車によるケガはありましたが、幸いバイクトラブルもなくゴールすることができました。

レース中は5時間切りを目指し、チェックポイントなどでタイムの確認をしつつ走り、結果好タイムに繋げることができました。今回は王者・松本選手が参加していませんでしたが、皆が納得してくれるタイムを出せたことに満足しています。

セルフディスカバリーアドベンチャー・イン・王滝 クロスマウンテンバイク100km 総合順位
1位 池田祐樹(TOPEAK・ERGON) 4h42'46"
2位 山中真(GT/One on One) 4h49'35"
3位 國井敏夫(Mile Post Racing) 5h04'30"
4位 毛利元(One on One) 5h13'11"
5位 北山恵一(e-Bridge) 5h16'31"


text:Yuki.Ikeda,So.Isobe
photo:Akihiko.Harimoto,powersports,So,Isobe

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