2012/05/30(水) - 18:31
トップクラス以下の選手たちに出場が制限され行われる2日間の本格的ロードレース「2days race in 木祖村」。第7回大会を制したのはスーパー高校生の西村大輝。全3ステージで完全優勝し、アジアジュニアチャンピオンジャージにリーダージャージを重ね着した。
同じ週末にツアー・オブ・ジャパンが行われていたが、日本の現状ではコンチネンタルチーム所属以上のプロ選手、あるいは限られた大学生選手しか出られず、若い選手やクラブチームの選手たちにとって、なかなかステージレースを経験する機会がない。そんな選手たちのために開催されるステージレースが「2days race in 木祖村」だ。
このレースは「本格的なヨーロッパ式のロードレースを知ってもらいたい」「レースはこんなに楽しいものだと実感してもらいたい」と、UCI審判員として活躍する藤森信行氏が主催している。そのため日本のレースでは珍しいTTでのチームカー伴走や迅速な表彰式、景品がもらえる周回賞やボーナスタイムがつく中間スプリントなど、レースを楽しめる要素がいっぱい詰まっている。
かつては木島平でレースが行われていたが、2005年から木祖村で開催されるようになり「2days race in 木祖村」としては今年で7回目の開催となる。
今年度大会は5月26日、27日に長野県木祖村の味噌川ダム湖周回コースで開催された。この週末は各地で様々なレースイベントが重なっていたため、昨年より参加者は少なかったものの、チームで本格的に走れるステージレースとあって、28チーム132人の選手が参加した。
初日は8.5kmの個人タイムトライアル(ステージ1a)と81kmのロードレース(ステージ1b)で、翌日に126kmのロードレース(ステージ2)、2日間計3レース総距離215,5kmで競われた。
ステージレースなので、リーダージャージも準備されており、総合タイムトップには黄色、23歳より下のU23選手トップには白、スプリント賞トップには緑、そして40歳以上のオーバー40にはもっとも派手なピンクのジャージが与えられる。
ステージ1a 8.5km個人タイムトライアル
26日に行われたステージ1a8.5kmの個人タイムトライアル(個人TT)は、快晴のなか、選手たちは1分おきにスタート。
第14走者でスタートした、今年ジュニアロードでアジアチャンピオンになった西村大輝(パインヒルズ'90)が11分32秒58のタイムを打ち出し、レース序盤からトップタイムをキープし続けた。
昼過ぎから風が吹き始め、後半の走者には少々不利な展開となる中、ラストから3番目にマスターズTT優勝経験もあるポール・ソールズベリー(イナーメ)がスタート。「彼なら西村のタイムを超えるか!」と期待が高まり、最後は前方を走る2人に迫る快走をみせたが、スーパー高校生である西村のタイムを上回ることはできず。7秒遅れの2位となった。
優勝した西村はスタート前に、「このレースに出場するのは初めて。TTは苦手で試走の時もコーナーが上手く回れなかったので少し不安です」と言っていたが、走ってみれば大会ベストタイムを更新するダントツの1位だった。
ゴール後「チームの人にタイムトライアル用のバイクを借りて走らせてもらったので、いい結果が出せてよかったです。この後のレースも頑張ります」と意気込みを語った。
レース後すぐに始まった表彰式で西村は、このレースのために急いで作ってもらったというアジアチャンピオンジャージを着て登場。ステージ優勝で総合トップのため、アジアチャンピオンジャージの上に黄色いリーダージャージが着せられた。人生初のシャンパンファイトに戸惑う場面もあったが、豪快にシャンパンを撒いて勝利を祝った。
ステージ1b 81kmロードレース
14時45分からステージ1bとして味噌川ダム湖を回る9kmの周回コースを9周する81キロのレースが行われた。
UCIルールに沿ってタイムトライアルでトップから120%遅れのタイム(今回は13分52秒)がデットラインとなり、それより遅かった16選手が失格。このため、ステージ1bは116名の出走となった。
今年からトンネル先までの約7kmがニュートラル走行となり、ダム堤防でリアルスタートになると、山口博久(プリンスアクアタマ)がファーストアタックを仕掛けた。その後追走2人が追いつくもゴール前の上りで集団に吸収。
奥木曽大橋を超え軽いアップダウンの区間に入ると、ベテランの大石一夫(ラヴニールあずみの)がここぞとばかりにアタックをかけ単独で飛び出した。「誰かが付いてくるのを待つつもりで自らアタックした」と言う大石の作戦通り、その後追走5名が加わり6名で45秒差を広げた。
このまま逃げが決まるかと思われたが、ポイントジャージ狙いの選手がいる集団は逃げを容認せず。3周目終わりで再び集団は一つになり、スプリントポイントを取りに、安藤光平(オーベストアンビシャス)がアタックし、2回目のスプリント賞がかかったホットスポットをトップで通過した。
3回目のホットスポットでは、安藤と中尾峻(オーベストアンビシャス)のチームメイト同士で激しいデットヒートをみせ、中尾が1位通過し3ポイントリードで暫定トップをキープした。
レース中盤になるとそれまでじっとしていたリーダージャージの西村が集団の前方に積極的に出始め、最後のホットスポットは安藤がトップ通過し、中尾と同じ8ポイントに並んだ。規則によると同ポイントの場合、最後のスプリントでポイントを獲得した安藤がトップとなり、逆転でスプリント賞ジャージを獲得した。
ゴール前の上りで積極的にアタックするリーダージャージの西村は、7周目に入ったところで倉林巧和(日本体育大学)と2人先頭となり、集団を引き離していった。
ラスト周回に入って差は20~25秒、気を抜けばあっさり追いつかれる距離だ。「追いつかれまい」と互いに先頭交代しながらゴールを目指す。追走が近づくのを感じながら、勝負はラストの上りへ。
しかし、西村の登坂力は群を抜いていた。先頭に立つと一気に倉林を引き離し、12秒差をつけゴール。倉林は後続に追いつかれそうになりながらも2位をキープ、鍵本大地(京都産業大学)が追い上げ健闘したが2秒足りず3位に終わった。
TTに続き2連覇した西村は「元々チームプレーの作戦はなく、自分でやりたいように走っていいと言われていたので自信はありました。最後後ろが迫ってきていたので焦りもあったんですが、落ち着いてスプリントに備えました」と高校生とは思えない堂々とした勝ちっぷりを見せた。
総合2位の倉林は、「優勝した西村君はジュニアギア比だったので、下りは自分が前に出てひいていきました。彼は強かったです。後ろが迫ってきたのは分かったので、なんとしても逃げ切ろうと最後は粘りました。明日は高校生には負けません。チームで戦います」とリベンジを誓った。
オーバー40ジャージは、総合4位の小坂正則(スワコレーシングチーム)が獲得した。
ステージ1a結果 個人タイムトライアル 8,5km
1位 西村 大輝(パインヒルズ '90)11分32秒58 平均時速44.18km/h
2位 ポール・ソールズベリー(イナーメ)+7秒05
3位 小坂 正則(スワコレーシングチーム)+14秒65
4位 倉林 巧和(日本体育大学)+15秒01
5位 サミュエル ギルバート(Fast Lane Racing with KM Cycle)+21秒09
ステージ1b結果 ロードレース 81km
1位 西村 大輝(パインヒルズ '90) 2時間03分08秒
2位 倉林 巧和(日本体育大学) +12秒
3位 鍵本 大地(京都産業大学) +14秒
4位 服部 昇平(京都産業大学) +17秒
5位 奈良 浩 (EsperanceStage/WAVEONE山口)+21秒
1日目総合結果
1位 西村 大輝 (パインヒルズ '90) 2時間14分31秒
2位 倉林 巧和 (日本体育大学) +31秒
3位 河内 一晟 (日本体育大学) +57秒
4位 小坂 正則 (スワコレーシングチーム)+58秒
5位 石川 海璃 (日本体育大学) +59秒
2日目 ステージ2 126kmロードレース
日曜日は12時からステージ2が行われ、リアルスタート直後に緑のポイントジャージを着る安藤光平(オーベストアンビシャス)が積極的に動き、山本聖吾(イナーメ)と2人で先頭に立つ。
この日スプリントポイントがかかったホットスポットは5回。集団は逃げを容認したため、先頭2人は着々とポイントを稼いでいった。
レースは5周目、3回目のホットスポット通過で安藤のスプリント賞獲得は確実となり、集団から飛び出していた清水英樹(エスペランスタージュ)が先頭に合流。その後、追走3人山口博久(アクアタマ)、中尾峻(オーベストアンビシャス)、西谷雅史(オーベストジーニアス)が加わり、先頭はいいペースで進んでいく。差が最高3分40秒まで開くと集団のペースも上がり始め、リーダージャージの西村大輝(パインヒルズ '90)含む10人の追走が形成された。
追走メンバーの中には、ピンクジャージ小坂正則(スワコレーシングチーム)や白ジャージの倉林巧和(日本体育大学)、総合3位の鍵本大地(京都産業大学)など強力メンバーが顔を揃える。
追走グループは1周ごとに約1分ほど先頭との差を縮め、11周目で先頭を捕まえた。ペースが上がる後半になってもイエロージャージの西村のパワーは衰えず。下りは付いていくのに必死そうだが、ゴールライン手前補給地点ののぼりで加速し必ず前方で通過。積極的な走りを見せる。
12周目のボーナスタイムを取ろうとする清水英樹(エスペランスタージュ)の加速に、他の選手が苦戦する中、西村は冷静についていくほど完璧な走りだ。
ラスト周回、12人になった先頭はグループのまま、最後の勝負となる上りへ。
「ラストの上りで先にアタックをかけられたので、後追いになってしまい少し焦りました。最後200mの看板を見てアタックをかけました」と西村は自分の力を信じアタックをかけ、追い上げてくる鍵本を気にしつつも"ヒロキコール"が響くゴール地点に独走でゴールした。
完全優勝の西村 大輝(パインヒルズ '90)
1ステージa、bそしてこのステージと完全優勝を果たした西村。「昨日、同じチームで小学生の頃からお世話になっていた人が亡くなったので、その方のためにこの勝利を捧げたかったんです。最初の逃げは、きっと捕まると思っていたので、落ち着いていました。でも、最後ゴールラインを超えたら、すぐに足がつってしまってびっくりしました」と極限まで追い込んでのゴールだったようだ。
足がつってしまったため、かっこいいガッツポーズは見られなかったが、高校生とは思えないほどすばらしい走りを見せた西村大輝。ジュニアのアジアチャンピオンらしい果敢な走りでの勝利だった。完全優勝を遂げたのは、2006年の島田真琴(法政大学)以来の快挙。高校生が総合優勝を果たしたのはこの大会初めてのことだった。
総合2位 倉林巧和(日本体育大学)
ステージ3位、総合2位となった倉林巧和(日本体育大学)は、「周回賞でボーナスタイムがもらえるので残り6周くらいから取りに行こうとしたんですが、足がなくて取れませんでした。逃げとの差が3分くらいあって、追走グループを作って追っていけたのは良かったです。追走には西村君もいましたね~、やっぱり強かったです。
2日間だと、体がキツイですね。昨日追い込んだので今日心配だったんですけど、走っていると足が動いてきたんでいい感じで逃げられました。とりあえず、2週間後の学生選手権で頑張りたいです。去年はぜんぜん走れなかったんですけど、今年はちょっといけそうな気がします。登坂力もついてきているのでチームで頑張ります」と今回勝利は逃したが、同じコースで2週間後に開催される学生選手権にリベンジを誓った。
総合3位&オーバー40賞 清水英樹(エスペランスタージュ)
確実にボーナスタイムで8秒稼いで、総合6位から3位にジャンプアップした獲得した清水英樹(エスペランスタージュ)は、オーバー40(通称オヤジ賞)も獲得。
「無謀にも早い段階で逃げてしまった。ちょっと早すぎたかな~と思ったけれど、行っちゃったものは行くしかないので…。3分差が付いたので、もしかしたらとは思いつつも後ろはリーダーがいるし、リーダーが動いたら確実に追いつかれるなと思ってました。
周回のボーナスタイムを取れば、オヤジ賞も逆転できるし、総合3位にも入れるかな?って頑張りました。追いつかれたら追いつかれたで足を休めて、オヤジ賞と3位を狙ってって淡々と集団の中で最後まで走るようにしました。
昨年チームメイトが総合3位だったんですが、今年はヨーロッパに武者修行に行っていて、エースが抜けたので総合は無理だろうなと思っていたんです。でも、TTの結果が思ったより良く総合3位になれたのでなんとか穴は埋められたかな?」と今年40歳でめでたくオヤジ対象になった清水は初のオヤジ賞に総合3位という成績に満足した様子だった。
「2回目の出場なんですが、このレースは面白いシステムですね。ボーナスタイムなどゲーム性があって、計算しながら走って楽しいです」と清水。裏ではチームスタッフたちがきちんと計算をして伝えていたようで、こういったチームプレーが今後さらにこのレースでは必要となってきそうだ。
スプリント賞 安藤光平(オーベストアンビシャス)
グリーンのスプリント賞ジャージを獲得した安藤光平(オーベストアンビシャス)は、「チームメイトと同ポイントだったので、最初にポイントを取った方が優先ってことになってました。始めのうちに決めておきたかったので、グリーンジャージで先頭からスタートできることを利用して、やれることはやりました。しんどかったですよ。
2人で逃げてて、数名に追いつかれてから凄いペースが上がったので、いつ千切れるか~って。本当にちぎれちゃいましたけど。ジャージは守れて、ちゃんと仕事ができたので良かったです。年々レベルが上がってきて、狙えるところがスプリント賞くらいになってしまいました(笑)。
2008年は総合5位、2009年は総合3位だったんです。でも去年はぜんぜんで、2日目は最後尾から2人目でした。どんどんレベルが上がって大変です。でもレースは楽しいです。また来年も来たいと思います」と、スプリント賞ジャージだけでなく、周回賞の賞金や賞品など沢山ゲットし喜んでいた。
この日ステージ2の前には、コンソレーション(通称残念レース)が行われた。このレースには、前日リタイアとなった選手が再出場できるため残念レースと呼ばれている。このレースはジュニアやスタッフも参加でき、今年は59人が出走し8周72kmを走った。
勝ったのは田代敢大(東北学院)。先輩のアシストを命じられていたのに勝ってしまった彼だが、大喜びだった。ちなみに先輩は周回賞を獲得してこちらも喜んでいた。
若干18歳の西村大輝が完全勝利で幕を閉じた2012年の「2days race in 木祖村」。このレースからツール・ド・フランスに出場できるビッグな選手が誕生する日もそう遠くはないのかもしれない。
ステージ2結果 126km
1位 西村 大輝(パインヒルズ '90)3時間15分17秒
2位 鍵本 大地(京都産業大学) +03秒
3位 倉林 巧和 (日本体育大学)+06秒
4位 森田 雅士(立教大学自転車競技部)+10秒
5位 松本 耀介 (日本体育大学)+12秒
個人総合結果
1位 西村 大輝(パインヒルズ '90)11時間32分58秒
2位 倉林 巧和(日本体育大学)+45秒
3位 清水 英樹(EsperanceStage/WAVEONE山口) +1分18秒
4位 小坂 正則(スワコレーシングチーム) +1分24秒
5位 松本 耀介(日本体育大学)+01分32秒
6位 森田 雅士(立教大学自転車競技部)+1分34秒
7位 鍵本 大地(京都産業大学)+1分53秒
8位 西谷 雅史(オーベスト ジーニアス)+2分00秒
9位 水野 恭兵(Rody Project ★ Ciao! KISOMURA 2012)+2分05秒
10位 服部 昇平(京都産業大学)02:07
スプリント賞 安藤光平(オーベストアンビシャス)
U23 西村大輝(パインヒルズ '90)
オーバー40 清水 英樹(EsperanceStage/WAVEONE山口)
text&photo:Chiho.Iwasa
フォトギャラリー2(Google Picasaウェブアルバム)
同じ週末にツアー・オブ・ジャパンが行われていたが、日本の現状ではコンチネンタルチーム所属以上のプロ選手、あるいは限られた大学生選手しか出られず、若い選手やクラブチームの選手たちにとって、なかなかステージレースを経験する機会がない。そんな選手たちのために開催されるステージレースが「2days race in 木祖村」だ。
このレースは「本格的なヨーロッパ式のロードレースを知ってもらいたい」「レースはこんなに楽しいものだと実感してもらいたい」と、UCI審判員として活躍する藤森信行氏が主催している。そのため日本のレースでは珍しいTTでのチームカー伴走や迅速な表彰式、景品がもらえる周回賞やボーナスタイムがつく中間スプリントなど、レースを楽しめる要素がいっぱい詰まっている。
かつては木島平でレースが行われていたが、2005年から木祖村で開催されるようになり「2days race in 木祖村」としては今年で7回目の開催となる。
今年度大会は5月26日、27日に長野県木祖村の味噌川ダム湖周回コースで開催された。この週末は各地で様々なレースイベントが重なっていたため、昨年より参加者は少なかったものの、チームで本格的に走れるステージレースとあって、28チーム132人の選手が参加した。
初日は8.5kmの個人タイムトライアル(ステージ1a)と81kmのロードレース(ステージ1b)で、翌日に126kmのロードレース(ステージ2)、2日間計3レース総距離215,5kmで競われた。
ステージレースなので、リーダージャージも準備されており、総合タイムトップには黄色、23歳より下のU23選手トップには白、スプリント賞トップには緑、そして40歳以上のオーバー40にはもっとも派手なピンクのジャージが与えられる。
ステージ1a 8.5km個人タイムトライアル
26日に行われたステージ1a8.5kmの個人タイムトライアル(個人TT)は、快晴のなか、選手たちは1分おきにスタート。
第14走者でスタートした、今年ジュニアロードでアジアチャンピオンになった西村大輝(パインヒルズ'90)が11分32秒58のタイムを打ち出し、レース序盤からトップタイムをキープし続けた。
昼過ぎから風が吹き始め、後半の走者には少々不利な展開となる中、ラストから3番目にマスターズTT優勝経験もあるポール・ソールズベリー(イナーメ)がスタート。「彼なら西村のタイムを超えるか!」と期待が高まり、最後は前方を走る2人に迫る快走をみせたが、スーパー高校生である西村のタイムを上回ることはできず。7秒遅れの2位となった。
優勝した西村はスタート前に、「このレースに出場するのは初めて。TTは苦手で試走の時もコーナーが上手く回れなかったので少し不安です」と言っていたが、走ってみれば大会ベストタイムを更新するダントツの1位だった。
ゴール後「チームの人にタイムトライアル用のバイクを借りて走らせてもらったので、いい結果が出せてよかったです。この後のレースも頑張ります」と意気込みを語った。
レース後すぐに始まった表彰式で西村は、このレースのために急いで作ってもらったというアジアチャンピオンジャージを着て登場。ステージ優勝で総合トップのため、アジアチャンピオンジャージの上に黄色いリーダージャージが着せられた。人生初のシャンパンファイトに戸惑う場面もあったが、豪快にシャンパンを撒いて勝利を祝った。
ステージ1b 81kmロードレース
14時45分からステージ1bとして味噌川ダム湖を回る9kmの周回コースを9周する81キロのレースが行われた。
UCIルールに沿ってタイムトライアルでトップから120%遅れのタイム(今回は13分52秒)がデットラインとなり、それより遅かった16選手が失格。このため、ステージ1bは116名の出走となった。
今年からトンネル先までの約7kmがニュートラル走行となり、ダム堤防でリアルスタートになると、山口博久(プリンスアクアタマ)がファーストアタックを仕掛けた。その後追走2人が追いつくもゴール前の上りで集団に吸収。
奥木曽大橋を超え軽いアップダウンの区間に入ると、ベテランの大石一夫(ラヴニールあずみの)がここぞとばかりにアタックをかけ単独で飛び出した。「誰かが付いてくるのを待つつもりで自らアタックした」と言う大石の作戦通り、その後追走5名が加わり6名で45秒差を広げた。
このまま逃げが決まるかと思われたが、ポイントジャージ狙いの選手がいる集団は逃げを容認せず。3周目終わりで再び集団は一つになり、スプリントポイントを取りに、安藤光平(オーベストアンビシャス)がアタックし、2回目のスプリント賞がかかったホットスポットをトップで通過した。
3回目のホットスポットでは、安藤と中尾峻(オーベストアンビシャス)のチームメイト同士で激しいデットヒートをみせ、中尾が1位通過し3ポイントリードで暫定トップをキープした。
レース中盤になるとそれまでじっとしていたリーダージャージの西村が集団の前方に積極的に出始め、最後のホットスポットは安藤がトップ通過し、中尾と同じ8ポイントに並んだ。規則によると同ポイントの場合、最後のスプリントでポイントを獲得した安藤がトップとなり、逆転でスプリント賞ジャージを獲得した。
ゴール前の上りで積極的にアタックするリーダージャージの西村は、7周目に入ったところで倉林巧和(日本体育大学)と2人先頭となり、集団を引き離していった。
ラスト周回に入って差は20~25秒、気を抜けばあっさり追いつかれる距離だ。「追いつかれまい」と互いに先頭交代しながらゴールを目指す。追走が近づくのを感じながら、勝負はラストの上りへ。
しかし、西村の登坂力は群を抜いていた。先頭に立つと一気に倉林を引き離し、12秒差をつけゴール。倉林は後続に追いつかれそうになりながらも2位をキープ、鍵本大地(京都産業大学)が追い上げ健闘したが2秒足りず3位に終わった。
TTに続き2連覇した西村は「元々チームプレーの作戦はなく、自分でやりたいように走っていいと言われていたので自信はありました。最後後ろが迫ってきていたので焦りもあったんですが、落ち着いてスプリントに備えました」と高校生とは思えない堂々とした勝ちっぷりを見せた。
総合2位の倉林は、「優勝した西村君はジュニアギア比だったので、下りは自分が前に出てひいていきました。彼は強かったです。後ろが迫ってきたのは分かったので、なんとしても逃げ切ろうと最後は粘りました。明日は高校生には負けません。チームで戦います」とリベンジを誓った。
オーバー40ジャージは、総合4位の小坂正則(スワコレーシングチーム)が獲得した。
ステージ1a結果 個人タイムトライアル 8,5km
1位 西村 大輝(パインヒルズ '90)11分32秒58 平均時速44.18km/h
2位 ポール・ソールズベリー(イナーメ)+7秒05
3位 小坂 正則(スワコレーシングチーム)+14秒65
4位 倉林 巧和(日本体育大学)+15秒01
5位 サミュエル ギルバート(Fast Lane Racing with KM Cycle)+21秒09
ステージ1b結果 ロードレース 81km
1位 西村 大輝(パインヒルズ '90) 2時間03分08秒
2位 倉林 巧和(日本体育大学) +12秒
3位 鍵本 大地(京都産業大学) +14秒
4位 服部 昇平(京都産業大学) +17秒
5位 奈良 浩 (EsperanceStage/WAVEONE山口)+21秒
1日目総合結果
1位 西村 大輝 (パインヒルズ '90) 2時間14分31秒
2位 倉林 巧和 (日本体育大学) +31秒
3位 河内 一晟 (日本体育大学) +57秒
4位 小坂 正則 (スワコレーシングチーム)+58秒
5位 石川 海璃 (日本体育大学) +59秒
2日目 ステージ2 126kmロードレース
日曜日は12時からステージ2が行われ、リアルスタート直後に緑のポイントジャージを着る安藤光平(オーベストアンビシャス)が積極的に動き、山本聖吾(イナーメ)と2人で先頭に立つ。
この日スプリントポイントがかかったホットスポットは5回。集団は逃げを容認したため、先頭2人は着々とポイントを稼いでいった。
レースは5周目、3回目のホットスポット通過で安藤のスプリント賞獲得は確実となり、集団から飛び出していた清水英樹(エスペランスタージュ)が先頭に合流。その後、追走3人山口博久(アクアタマ)、中尾峻(オーベストアンビシャス)、西谷雅史(オーベストジーニアス)が加わり、先頭はいいペースで進んでいく。差が最高3分40秒まで開くと集団のペースも上がり始め、リーダージャージの西村大輝(パインヒルズ '90)含む10人の追走が形成された。
追走メンバーの中には、ピンクジャージ小坂正則(スワコレーシングチーム)や白ジャージの倉林巧和(日本体育大学)、総合3位の鍵本大地(京都産業大学)など強力メンバーが顔を揃える。
追走グループは1周ごとに約1分ほど先頭との差を縮め、11周目で先頭を捕まえた。ペースが上がる後半になってもイエロージャージの西村のパワーは衰えず。下りは付いていくのに必死そうだが、ゴールライン手前補給地点ののぼりで加速し必ず前方で通過。積極的な走りを見せる。
12周目のボーナスタイムを取ろうとする清水英樹(エスペランスタージュ)の加速に、他の選手が苦戦する中、西村は冷静についていくほど完璧な走りだ。
ラスト周回、12人になった先頭はグループのまま、最後の勝負となる上りへ。
「ラストの上りで先にアタックをかけられたので、後追いになってしまい少し焦りました。最後200mの看板を見てアタックをかけました」と西村は自分の力を信じアタックをかけ、追い上げてくる鍵本を気にしつつも"ヒロキコール"が響くゴール地点に独走でゴールした。
完全優勝の西村 大輝(パインヒルズ '90)
1ステージa、bそしてこのステージと完全優勝を果たした西村。「昨日、同じチームで小学生の頃からお世話になっていた人が亡くなったので、その方のためにこの勝利を捧げたかったんです。最初の逃げは、きっと捕まると思っていたので、落ち着いていました。でも、最後ゴールラインを超えたら、すぐに足がつってしまってびっくりしました」と極限まで追い込んでのゴールだったようだ。
足がつってしまったため、かっこいいガッツポーズは見られなかったが、高校生とは思えないほどすばらしい走りを見せた西村大輝。ジュニアのアジアチャンピオンらしい果敢な走りでの勝利だった。完全優勝を遂げたのは、2006年の島田真琴(法政大学)以来の快挙。高校生が総合優勝を果たしたのはこの大会初めてのことだった。
総合2位 倉林巧和(日本体育大学)
ステージ3位、総合2位となった倉林巧和(日本体育大学)は、「周回賞でボーナスタイムがもらえるので残り6周くらいから取りに行こうとしたんですが、足がなくて取れませんでした。逃げとの差が3分くらいあって、追走グループを作って追っていけたのは良かったです。追走には西村君もいましたね~、やっぱり強かったです。
2日間だと、体がキツイですね。昨日追い込んだので今日心配だったんですけど、走っていると足が動いてきたんでいい感じで逃げられました。とりあえず、2週間後の学生選手権で頑張りたいです。去年はぜんぜん走れなかったんですけど、今年はちょっといけそうな気がします。登坂力もついてきているのでチームで頑張ります」と今回勝利は逃したが、同じコースで2週間後に開催される学生選手権にリベンジを誓った。
総合3位&オーバー40賞 清水英樹(エスペランスタージュ)
確実にボーナスタイムで8秒稼いで、総合6位から3位にジャンプアップした獲得した清水英樹(エスペランスタージュ)は、オーバー40(通称オヤジ賞)も獲得。
「無謀にも早い段階で逃げてしまった。ちょっと早すぎたかな~と思ったけれど、行っちゃったものは行くしかないので…。3分差が付いたので、もしかしたらとは思いつつも後ろはリーダーがいるし、リーダーが動いたら確実に追いつかれるなと思ってました。
周回のボーナスタイムを取れば、オヤジ賞も逆転できるし、総合3位にも入れるかな?って頑張りました。追いつかれたら追いつかれたで足を休めて、オヤジ賞と3位を狙ってって淡々と集団の中で最後まで走るようにしました。
昨年チームメイトが総合3位だったんですが、今年はヨーロッパに武者修行に行っていて、エースが抜けたので総合は無理だろうなと思っていたんです。でも、TTの結果が思ったより良く総合3位になれたのでなんとか穴は埋められたかな?」と今年40歳でめでたくオヤジ対象になった清水は初のオヤジ賞に総合3位という成績に満足した様子だった。
「2回目の出場なんですが、このレースは面白いシステムですね。ボーナスタイムなどゲーム性があって、計算しながら走って楽しいです」と清水。裏ではチームスタッフたちがきちんと計算をして伝えていたようで、こういったチームプレーが今後さらにこのレースでは必要となってきそうだ。
スプリント賞 安藤光平(オーベストアンビシャス)
グリーンのスプリント賞ジャージを獲得した安藤光平(オーベストアンビシャス)は、「チームメイトと同ポイントだったので、最初にポイントを取った方が優先ってことになってました。始めのうちに決めておきたかったので、グリーンジャージで先頭からスタートできることを利用して、やれることはやりました。しんどかったですよ。
2人で逃げてて、数名に追いつかれてから凄いペースが上がったので、いつ千切れるか~って。本当にちぎれちゃいましたけど。ジャージは守れて、ちゃんと仕事ができたので良かったです。年々レベルが上がってきて、狙えるところがスプリント賞くらいになってしまいました(笑)。
2008年は総合5位、2009年は総合3位だったんです。でも去年はぜんぜんで、2日目は最後尾から2人目でした。どんどんレベルが上がって大変です。でもレースは楽しいです。また来年も来たいと思います」と、スプリント賞ジャージだけでなく、周回賞の賞金や賞品など沢山ゲットし喜んでいた。
この日ステージ2の前には、コンソレーション(通称残念レース)が行われた。このレースには、前日リタイアとなった選手が再出場できるため残念レースと呼ばれている。このレースはジュニアやスタッフも参加でき、今年は59人が出走し8周72kmを走った。
勝ったのは田代敢大(東北学院)。先輩のアシストを命じられていたのに勝ってしまった彼だが、大喜びだった。ちなみに先輩は周回賞を獲得してこちらも喜んでいた。
若干18歳の西村大輝が完全勝利で幕を閉じた2012年の「2days race in 木祖村」。このレースからツール・ド・フランスに出場できるビッグな選手が誕生する日もそう遠くはないのかもしれない。
ステージ2結果 126km
1位 西村 大輝(パインヒルズ '90)3時間15分17秒
2位 鍵本 大地(京都産業大学) +03秒
3位 倉林 巧和 (日本体育大学)+06秒
4位 森田 雅士(立教大学自転車競技部)+10秒
5位 松本 耀介 (日本体育大学)+12秒
個人総合結果
1位 西村 大輝(パインヒルズ '90)11時間32分58秒
2位 倉林 巧和(日本体育大学)+45秒
3位 清水 英樹(EsperanceStage/WAVEONE山口) +1分18秒
4位 小坂 正則(スワコレーシングチーム) +1分24秒
5位 松本 耀介(日本体育大学)+01分32秒
6位 森田 雅士(立教大学自転車競技部)+1分34秒
7位 鍵本 大地(京都産業大学)+1分53秒
8位 西谷 雅史(オーベスト ジーニアス)+2分00秒
9位 水野 恭兵(Rody Project ★ Ciao! KISOMURA 2012)+2分05秒
10位 服部 昇平(京都産業大学)02:07
スプリント賞 安藤光平(オーベストアンビシャス)
U23 西村大輝(パインヒルズ '90)
オーバー40 清水 英樹(EsperanceStage/WAVEONE山口)
text&photo:Chiho.Iwasa
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