愛媛県八幡浜市で行われたJ八幡浜インターナショナルクロスカントリーは、ロンドン五輪のマウンテンバイク日本代表派遣選手選考会を兼ねて行われた。日本男子チームが自力で獲得した日本代表の一人枠は、歴代最強選手の山本幸平(Specialized)が優勝してほぼ手中に収めた形になった。

また、北海道十勝で幼い頃から練習してきた兄の山本和弘(キャノンデールレーシングチーム)とのワンツー、そして同じ北海道の札幌から共にレースを走ってきた小野寺健(TEAM SPECIALIZED)と、三人で表彰台を独占する、道産子たちの夢の舞台となった。

男子エリートのスタート男子エリートのスタート (c)Akihiro.NAKAO

5月27日に愛媛県八幡浜市市民スポーツパークで行われた「J八幡浜インターナショナル クロスカントリー」は、ロンドンオリンピック競技大会におけるマウンテンバイク日本代表派遣選手選考会を兼ねて行われた。オリンピック出場獲得枠は既に男子1枠を確保しており派遣選考が行われる。選考基準は以下のとおりだ。

前日に行われた会見前日に行われた会見 (c)Akihiro.NAKAO日本代表派遣選手選考基準
1 国別ランキングによる参加枠獲得の場合
2012/5/22付UCI個人ランキング100位以内、かつオリンピックフォーマットによるUCIポイント(2010/5/23~ 2012/5/22)の最高獲得者。

2 大陸選手権による参加枠獲得の場合
ロンドンオリンピック国内選考会対象者最上位の日本国籍者。
ただし国内選考会対象者は2011年度JCFナショナルランキング上位20名、2011年度XCOエリートクラス全日本チャンピオン、およびMTB小委員会推薦者(最大2名)の最大23名とする。

・獲得枠2名の場合
上記1、2の各1名。1、2が同一選手の場合、2の次点の選手を選考する。
・獲得枠3名の場合(男子のみ)
上記1、2および2の次点の選手。合計3名に満たない場合、2の次々点の選手を選考する。

2011年のアジア大陸選手権において大陸代表の1枠確保しており、そして2010〜2012年においてのオリンピックUCI国別ランキング(1〜5が3人・6〜13が2人・14〜24人が1人)で17位に入っている。
今回は国別ランキングでの1枠確保となったので(国別が優先されるので大陸枠はアジア大会次点国に回る)、1の選考基準に当てはめるとUCIランキングで30位以内にいる山本幸平が有利となる。
女子枠は18位までが参加枠圏内で22位と確保はできなかった。今後はUCIが各国のエントリー状況から、キャンセルが出た場合は再度参加枠を振り分けることがある(2008年北京オリンピックの際に山本幸平がキャンセル枠で出場している)。そのため男女ともこのレースの結果が重要となる。今回のレース結果を踏まえてJCF(日本自転車競技連盟)は6月4日に正式に代表を発表する。

海外遠征選手が全て揃うのはこの八幡浜と次週の全日本MTB富士見で、国内で初めてスペシャライズドの日本ナショナルチャンピオンジャージを披露する山本幸平に注目が集まる。また山本和弘と平野星矢(ブリヂストンアンカー)も今季初めて国内レースに参加する。
有力選手とUCIカテゴリー3でUCIポイントがつくため、レース前日には韓国のナショナルチャンプNA SANGHOON(Calvisson VTT)選手も交えての報道会見が催された。
山本和弘は言う「2年間の枠獲得のための遠征で感じたのは、日本とコースが全然違うこと。日本人選手も海外で走ることによってレベルアップしている。戦えるはず」。


ハイスピードな展開の男子エリート 
山本兄弟・小野寺の北海道出身ライダーの1・2・3


一周目の桜坂を登るトップ集団一周目の桜坂を登るトップ集団 (c)Akihiro.NAKAO

八幡浜のコースは地元の努力でできたMTBレース専用のサーキット。「ゴジラの背中」と呼ばれる木の根区間等が特徴だ。スピードの出る高速コースで、海外のハイレベルなレースに慣れている海外遠征選手らはさらに速く走れるらしく、逆に危ないと感じるようだ。男子エリートは5.6kmを6周回するレースだ。

力強い走りを披露する山本幸平(Specialized Racing Team)が先行力強い走りを披露する山本幸平(Specialized Racing Team)が先行 (c)Akihiro.NAKAO山本和弘(キャノンデールレーシングチーム)が弟・幸平を追う山本和弘(キャノンデールレーシングチーム)が弟・幸平を追う (c)Akihiro.NAKAO


スタートから怒濤の勢いで選手達が舗装路を駆け上がる。観衆の多い桜坂では平野、山本幸平、山本和弘が先行し、遅れて斉藤亮(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)らが懸命に付く。
2周目は小野寺が前に出るなど順位は入れ替わり、3周目には山本幸平がトップに立つ。その後は山本和弘が2番手をキープし、6番手にまで落ちた小野寺が最終回で先行する選手たちを追い抜く。

小野寺健(TEAM SPECIALIZED)小野寺健(TEAM SPECIALIZED) (c)Akihiro.NAKAO斉藤亮(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)斉藤亮(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM) (c)Akihiro.NAKAO


優勝は山本幸平。2位に山本和弘、3位は小野寺と、北海道出身の3人が表彰台を独占した。山本幸平は「3人の道産子で小さい頃から競技をしていて、山本兄弟でワンツーを初めて達成できて嬉しい」と語る。
山本和弘は「幸平の次の2位に入れてとても嬉しい」、小野寺は「3位に入れば道産子でワン・ツー・スリーが頭にあったからがんばった」と表彰台で語った。

優勝した山本幸平(Specialized Racing Team)優勝した山本幸平(Specialized Racing Team) (c)Akihiro.NAKAO2位を掲げる山本和弘(キャノンデールレーシングチーム)2位を掲げる山本和弘(キャノンデールレーシングチーム) (c)Akihiro.NAKAO


初の山本幸平・和弘兄弟でのワン・ツーフィニッシュを喜ぶ初の山本幸平・和弘兄弟でのワン・ツーフィニッシュを喜ぶ (c)Akihiro.NAKAO山本幸平(Specialized Racing Team)が優勝 2位山本和弘(キャノンデールレーシングチーム) 3位小野寺健(TEAM SPECIALIZED)山本幸平(Specialized Racing Team)が優勝 2位山本和弘(キャノンデールレーシングチーム) 3位小野寺健(TEAM SPECIALIZED) (c)Akihiro.NAKAO


山本和弘はレースを振り返って「幸平のアップダウンのペースに着いて行こうにもあまりに速くて、2周目後半で着いていけなくなった。あとは自分のペースでいきました。いつもの自分より速いペースで走ったダメージが5周目に来て、暑さにやられて脱水になった。最後は脚が攣った状態で走って、ゴールした瞬間に攣りました。ただ、ヨーロッパのレースよりコースが簡単で、余裕を持って走れました」。

次の大舞台は6月3日の全日本選手権富士見パノラマ大会となる。再び道産子たちが表彰台を独占するのか、あるいは誰かが一矢報いるのか、再び熱い争いを期待しよう。


女子は片山梨絵が制する 五輪遠征の終わりに涙

ゴール前でファンに手を伸ばす片山梨絵(SPECIALIZED)ゴール前でファンに手を伸ばす片山梨絵(SPECIALIZED) (c)Akihiro.NAKAO

片山梨絵(SPECIALIZED)は「五輪遠征」の最後となる八幡浜で危なげないレース運びで優勝。ゴール後は支えてくれた仲間達の前で涙を流した。
「思うよりは順調にいかなかったし、やらないよりかはやって良かったし、得たもの多いので満足しています。ヨーロッパを回れば強くなれるのは分かったので、旅の手配などもすべて自分でこなして頑張ってきた。若い選手にもっと外に出てほしい。そういう人が現れたら、私が今までに得たノウハウを渡したいと思います。UCIポイントは男子は幸平がほとんどポイントを獲りましたが、カズや星矢のポイントも利いているので、UCIポイントでの男子2枠と女子1枠は可能だと思った2年間でした」。
全日本ロード女子2位の與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)がエントリーしていたものの、試走で怪我をしたため欠場となった。

轍屋店長の鏑木さんの前で涙ぐむ片山梨絵(SPECIALIZED)轍屋店長の鏑木さんの前で涙ぐむ片山梨絵(SPECIALIZED) (c)Akihiro.NAKAO女子エリート表彰女子エリート表彰 (c)Akihiro.NAKAO


ジュニアは横山航太が勝利 沢田が降格に

ジュニアはジュニアチャンプとしてナショナルチャンピオンジジャージを着る沢田時(ブリヂストンアンカー)がスタートから独走を決めるものの、2周目でパンク。そして機材交換が認められていないレースで、ルールの周知の不備からチームでホイール交換をしてしまい、降格となった。

沢田時(ブリヂストンアンカー)沢田時(ブリヂストンアンカー) (c)Akihiro.NAKAO前田公平(ENDLESS/ProRide)前田公平(ENDLESS/ProRide) (c)Akihiro.NAKAO


沢田は「パンクをしたのは自分のミス」と、次の全日本制覇へと気持ちを切り替えている。
レースは前田公平(ENDLESS/ProRide)が先行。しかし遅れていた横山航太(CLUB Grow)が追いつき、最後のゴールスプリントで前田を振り切って優勝となった。

ジュニアは横山航太(CLUB Grow)と前田公平(ENDLESS/ProRide)スプリント勝負にジュニアは横山航太(CLUB Grow)と前田公平(ENDLESS/ProRide)スプリント勝負に (c)Akihiro.NAKAO

男子エリート
1位 山本 幸平(Specialized racing team)1:39:06.66
2位 山本 和弘(Cannondale Racing Team )+3:31.12
3位 小野寺 健(TEAM SPECIALIZED)+4:05.19
4位 斉藤 亮(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)+4:40.00
5位 平野 星矢(BRIDGESTONE ANCHOR CYCLING TEAM)+5:01.24
6位 NA SANGHOON(Calvisson VTT )+6:44.83
7位 門田 基志(TEAM GIANT)+7:33.11
8位 千田 尚孝(KHS japan)+8:38.53
9位 大江 良憲(TEAM轍屋)+10:48.84
10位 合田 正之(サイクルクラブ3UP )+11:19.33

女子エリート
1位 片山 梨絵(SPECIALIZED )1:19:24.49
2位 中込 由香里(team SY-Nak)+8:01.86
3位 田近 郁美(GOD HILL 1:27:44.99 +8:20.50
4位 岩出 愛未(clubSY-nak名産大)+17:56.03
5位 広瀬 由紀(ckirin.com)+20:05.16

男子ジュニア
1位 横山 航太(CLUB Grow)1:12:50.04
2位 前田 公平(ENDLESS/ProRide)+0.50
3位 山田 誉史輝(HAPPY RIDE)+3:23.69
4位 沢田 時(BRIDGESTONE ANCHOR CYCLING TEAM)1:11:40.84

男子エキスパート
1位 市川 哲也(ヒルクライム)1:17:26.79
2位 竹本 颯太(Team BSC / K&b)+43.30
3位 棟保 祐介(TeamYRS)+58.04

エキスパート優勝 市川哲也(ヒルクライム)エキスパート優勝 市川哲也(ヒルクライム) (c)Akihiro.NAKAO吉元健太郎(ckirin.com)吉元健太郎(ckirin.com) (c)Akihiro.NAKAO


男子スポーツ
1位 吉元 健太郎(ckirin.com)0:40:54.62
2位 日野 竜嘉(ボンシャンス飯田)+13.48
3位 山根 大輔(高知CTC)+25.85

女子スポーツ
1位 中村 千鶴(Team UKYO) 0:23:07.92
2位 日野 友葵(ボンシャンス飯田)+1:40.63
3位 鈴木 美香子(ckirin.com)+5:54.47

中村千鶴(Team UKYO)中村千鶴(Team UKYO) (c)Akihiro.NAKAO最後は餅まきで締める最後は餅まきで締める (c)Akihiro.NAKAO


text&photo:Akihiro.NAKAO
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