2012/03/02(金) - 23:56
100.8km、競技時間2時間13分というとても短いレースだった第8ステージ。この日も序盤からミスターランカウイ、福島晋一(トレンガヌプロアジア)が強力に逃げを牽引し、地元トレンガヌで大きな見せ場を作った。
「安息日」に開催されたショートステージ
自転車レースは開催地の気候や地形、文化のうえに成り立つスポーツ競技だ。それはほかのスポーツではあまりないことで、長いステージレースは「旅」に例えられることもある。
ツール・ド・ランカウイは赤道直下の熱帯で開催されるため、毎日選手たちは大量の水分補給をしながら戦っているが、もうひとつ、この土地の特徴としてマレーシアの国教であるイスラム教が挙げられるだろう。
今日は金曜日であり、金曜日はイスラム教の「安息日」であり、基本的には何もしていけない日と定められている。実際には、午後になると男性を中心にモスクに行き集団礼拝を行う。とても大切な宗教行事で、レースに帯同するマレーシア人の多くが、会場近くにあるモスクへと足を運ぶのだ。
そのため金曜日にこのエリアでレースを行う場合、午前中もしくは夕方にかけて、つまり礼拝の時間を避けて開催されるのが暗黙の了解となっている。
レースに帯同していると、このほかにも宗教色を感じる出来事がある。まずは毎朝オートバイのドライバーたちの朝礼で行われるお祈り。朝礼の最後に必ず、両手を広げて、みんなで声を揃えてお祈りをするのだ。
またイスラム教徒の女性と同室になると、1日に何度もメッカの方角に向かってお祈りをしている姿を目撃する。そして、アルコールが禁じられているため、表彰式でのシャンパンファイトなども厳禁。またここでは仕事終わりのビールも調達に苦労する……。こんな文化の違いに触れることができるのも自転車レースの大きな魅力だと思う。
福島晋一が魅せる渾身のアタック
そんなバックグラウンドがあるショートステージは、「逃げに乗りたいなら彼の動きをマークすべき」とも言われている福島晋一(トレンガヌプロアジア)を含むアジア人5選手の逃げが決まった。
集団とのタイム差は1分程度しか開かなかったが、福島とアッバース・サイディタナハ(イラン、アザド大学クロスチーム)は最後まで逃げ切りをめざし全力で踏み続けた。
福島はレースをこう振り返る。
「残りのメンバーがスプリントポイントのたびに全力でもがく。そしてそのあとはペースが落ちるという状況だった。ゴールまで残り約20km、最後のスプリントポイントで周りが踏んだら、そのすきにアタックをかけようと思った。しかし、最後に周りの脚はさほど残ってなく、自分が踏んだらそのまま先行する形になり、サイディタナハだけが自分についてきた。
逃げ切ることが難しい、コントロールされているタイム差だったが、すぐ後ろに集団が迫っていても諦めずに踏み続けるというコージのスタイルに習って、最後まで何が起こるかわからない、実際に強い雨が降ってきたので、もしかもしたらリーダーが落車するかもしれないと思い、諦めないで全開でゴールをめざした。
結果的に自分は残り5kmで吸収され、チームメイトのハリフ・サレー(マレーシア、トレンガヌプロアジア)がスプリントで2位に入ったのでチームとしては良かったが、彼が優勝できれば完璧だった。地元トレンガヌでのステージでは、やはり勝利を狙いたい。サレーも今日入賞したことで調子を上げて、チームの雰囲気も盛り上がってきているので、残り2ステージも頑張りたいと思う」。
今日のゴール地点からはトレンガヌプロアジアの拠点であるトレンガヌ州になる。ときおり強い雨が降る悪天候にも関わらず、ゴール地点には多くのファンが集まった。チームのキャプテンである福島への人気も高く、ゴールするとあっと言う間に彼の周りに人垣ができた。その盛り上がりは「ジャパンカップ以上だよね」と福島。
トレンガヌ州の中心地・クラアトレンガヌにゴールする明日、明後日は週末も重なりさらに盛り上がる予感。「地元をがっかりさせたくない」とチームのエーススプリンター、サレーは話す。今日も会場には彼の家族が駆けつけ、レース後はテレビの生放送にも出演した。地元の期待を大きな力に変えてくれるだろう。
愛三工業「グアルディーニの連勝を止めたい」
一方の愛三工業レーシングは西谷泰治が6位、UCIポイント圏内でフィニッシュした。チームとしての連係がうまくいき、ベストなポジションではなかったが、残り300m、まずまずの位置からスプリントを掛けることができたと言う。
西谷は言う「あくまでも目標はステージ優勝。そこに届かないもどかしさはあるが、UCIポイントを取れたことは良かったと思う。最低でも1ケタ、UCIポイント圏内でゴールしたかった。チームメイトが機能したおかげ。明日から、残り2ステージになるが目標を見失わず、チームで連係して勝利をめざしたい」。
また、別府匠監督からは「グアルディーニの連勝を止めるのは愛三工業レーシングしかいない、という気持ちで挑みたい」との頼もしいコメントも。
レースはいよいよクライマックスへ向かっていく。
photo&text:Sonoko.Tanaka
「安息日」に開催されたショートステージ
自転車レースは開催地の気候や地形、文化のうえに成り立つスポーツ競技だ。それはほかのスポーツではあまりないことで、長いステージレースは「旅」に例えられることもある。
ツール・ド・ランカウイは赤道直下の熱帯で開催されるため、毎日選手たちは大量の水分補給をしながら戦っているが、もうひとつ、この土地の特徴としてマレーシアの国教であるイスラム教が挙げられるだろう。
今日は金曜日であり、金曜日はイスラム教の「安息日」であり、基本的には何もしていけない日と定められている。実際には、午後になると男性を中心にモスクに行き集団礼拝を行う。とても大切な宗教行事で、レースに帯同するマレーシア人の多くが、会場近くにあるモスクへと足を運ぶのだ。
そのため金曜日にこのエリアでレースを行う場合、午前中もしくは夕方にかけて、つまり礼拝の時間を避けて開催されるのが暗黙の了解となっている。
レースに帯同していると、このほかにも宗教色を感じる出来事がある。まずは毎朝オートバイのドライバーたちの朝礼で行われるお祈り。朝礼の最後に必ず、両手を広げて、みんなで声を揃えてお祈りをするのだ。
またイスラム教徒の女性と同室になると、1日に何度もメッカの方角に向かってお祈りをしている姿を目撃する。そして、アルコールが禁じられているため、表彰式でのシャンパンファイトなども厳禁。またここでは仕事終わりのビールも調達に苦労する……。こんな文化の違いに触れることができるのも自転車レースの大きな魅力だと思う。
福島晋一が魅せる渾身のアタック
そんなバックグラウンドがあるショートステージは、「逃げに乗りたいなら彼の動きをマークすべき」とも言われている福島晋一(トレンガヌプロアジア)を含むアジア人5選手の逃げが決まった。
集団とのタイム差は1分程度しか開かなかったが、福島とアッバース・サイディタナハ(イラン、アザド大学クロスチーム)は最後まで逃げ切りをめざし全力で踏み続けた。
福島はレースをこう振り返る。
「残りのメンバーがスプリントポイントのたびに全力でもがく。そしてそのあとはペースが落ちるという状況だった。ゴールまで残り約20km、最後のスプリントポイントで周りが踏んだら、そのすきにアタックをかけようと思った。しかし、最後に周りの脚はさほど残ってなく、自分が踏んだらそのまま先行する形になり、サイディタナハだけが自分についてきた。
逃げ切ることが難しい、コントロールされているタイム差だったが、すぐ後ろに集団が迫っていても諦めずに踏み続けるというコージのスタイルに習って、最後まで何が起こるかわからない、実際に強い雨が降ってきたので、もしかもしたらリーダーが落車するかもしれないと思い、諦めないで全開でゴールをめざした。
結果的に自分は残り5kmで吸収され、チームメイトのハリフ・サレー(マレーシア、トレンガヌプロアジア)がスプリントで2位に入ったのでチームとしては良かったが、彼が優勝できれば完璧だった。地元トレンガヌでのステージでは、やはり勝利を狙いたい。サレーも今日入賞したことで調子を上げて、チームの雰囲気も盛り上がってきているので、残り2ステージも頑張りたいと思う」。
今日のゴール地点からはトレンガヌプロアジアの拠点であるトレンガヌ州になる。ときおり強い雨が降る悪天候にも関わらず、ゴール地点には多くのファンが集まった。チームのキャプテンである福島への人気も高く、ゴールするとあっと言う間に彼の周りに人垣ができた。その盛り上がりは「ジャパンカップ以上だよね」と福島。
トレンガヌ州の中心地・クラアトレンガヌにゴールする明日、明後日は週末も重なりさらに盛り上がる予感。「地元をがっかりさせたくない」とチームのエーススプリンター、サレーは話す。今日も会場には彼の家族が駆けつけ、レース後はテレビの生放送にも出演した。地元の期待を大きな力に変えてくれるだろう。
愛三工業「グアルディーニの連勝を止めたい」
一方の愛三工業レーシングは西谷泰治が6位、UCIポイント圏内でフィニッシュした。チームとしての連係がうまくいき、ベストなポジションではなかったが、残り300m、まずまずの位置からスプリントを掛けることができたと言う。
西谷は言う「あくまでも目標はステージ優勝。そこに届かないもどかしさはあるが、UCIポイントを取れたことは良かったと思う。最低でも1ケタ、UCIポイント圏内でゴールしたかった。チームメイトが機能したおかげ。明日から、残り2ステージになるが目標を見失わず、チームで連係して勝利をめざしたい」。
また、別府匠監督からは「グアルディーニの連勝を止めるのは愛三工業レーシングしかいない、という気持ちで挑みたい」との頼もしいコメントも。
レースはいよいよクライマックスへ向かっていく。
photo&text:Sonoko.Tanaka
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