2012/03/19(月) - 07:12
1995年に設立されたサーヴェロ。その原点にあるのがタイムトライアルバイクだ。フィル・ホワイトとジェラルド・ヴルーメンの2人のエンジニアの手により誕生した「Baracchi(バラッキ)」は最高のエアロダイナミクスと軽さ、さらには強靱さを兼ね備えたバイクであり、プロ選手へ供給するためだけに作られたものだった。
Baracchiが最高の評価を獲得したことでサーヴェロ社を創業するに至り、多くのライダーの支持を集めてきた。サーヴェロが優れた製品を供給し続けられるのは、自社設計による革新的な技術の投入をレースの世界からのフィードバックが支えていることにほかならない。かつてはサーヴェロテストチーム、現在ではガーミン・バラクーダにより、バイク開発に必要なデータのフィードバックを得て日々進化を続けている。
そして、プロライダーのために誕生した意欲作といえるRシリーズ。かつて自転車レースの頂点ツール・ド・フランスを制した名車「R3」が祖となる。そして現在の最高峰であるこのR5は、さらにブラッシュアップされた同社のテクノロジーの粋を結集したピュアレーシングバイクといえる。
R5は簡単に言うならサーヴェロの優れたカーボンテクノロジーを結集して生まれたオールラウンドロードバイクだ。2012モデルで登場したR5 VWDには、前作R5よりもさらに進化した性能が与えられている。フレーム重量は56サイズで780gと前作よりも約10パーセントの軽量化を実現しているのだ。
並みいるライバルメーカーのなかでもその重量は最軽量クラスに位置し、その軽さを生かしきるだけの剛性が与えられ、グランツールをはじめとした山岳ステージで最高の結果を得られるポテンシャルを秘めているといえるだろう。この性能はプロのステージレースで発揮されることはもとより、市民レーサーに対してもロードレースやヒルクライムをもターゲットとしている。
R5シリーズにはどんな方向からの力にも対応できる丸形のオーバルチューブと、縦方向と横方向からの力に対して耐性のあるスクエアチューブ、それぞれ両方の利点を採り入れたスクオーバルカーボンチュービングを採用している。これはR3誕生からほとんど変わることがない、完成度の高い構造といえるだろう。
この伝統的な角型チューブの角をスムージングしたような形状が与えられたR5は、求められる剛性を最適化することに成功している。そして2012モデルにはさらなるブラッシュアップが施された2世代目となるチューブ構造が用いられる。
軽量かつ高剛性というロードバイクの理想を具現化するために、R5 VWDには随所に独創性溢れるギミックが施される。卓越したクライミング性能や、安定感のあるコーナリング性能を実現するために上下異径のテーパーヘッドが採用されるが、下ワンは多くのバイクに用いられる1-1/4"よりも大径化した1-3/8"を採用した。
対して最新エアロモデルのS5は上下共に1-1/8"を用いている(エアロ効果を高めるためだろう)。これは両車でコンセプトをはっきりと分けている証拠で、サーヴェロの強い意志が伺い知れる。わずか290gという軽さの超軽量を実現しながらも、剛性を損なわぬように設計を最適化して生まれた、まさに独自の規格である。
さらにライダーの疲労を軽減するためにシートステーは横方向に扁平加工され、極限までシェイプされた細身の形状とすることで、卓越した振動吸収性も確保されている。フロント部の太さと比較すると頼りなく思えるが、パワー伝達性能を左右するチェーンステーの大ボリュームを見れば安心できるだろう。
R5が採用するテクノロジーのなかで注目すべきはオリジナル規格のBBrightであろう。乱立する新型BBの規格のなかで登場したBBrightは、自由度の高いフレーム設計を可能にし、ライダーのパワーを余すことなく推進力へと変換してくれる。
現在、新型BB規格のなかで主流となっているのがプレスフィットBBとBB30の2規格である。プレスフィットBBがハンガー幅の拡張によりダウンチューブとシートチューブ、さらに連結されるチェーンステーの横幅を広げることで剛性を向上させたものであるのに対して、BB30はクランクシャフト径を30mmへと拡大することで剛性の向上を狙っている。この2つの規格のメリットを採り入れたのがBBright規格といえる。
クランクシャフト径をBB30同様の30mmに拡大すると同時に、反ドライブ側シェル幅を11mm拡大した左右非対称形状を採用した。クランクシャフト径やBBシェル幅を拡大することは、BB部分に絞った性能向上はもちろんのこと、全体での軽量化や剛性の向上にも貢献する。そしてQファクターを広げることなく剛性を向上させたBB規格がBBrightなのだ。さらに2012モデルのR5 VWDでは、BB付近の剛性を前作よりも5パーセント向上させているのだという。
このハイスペックを実現したスーパーバイクをテストライダー両氏はどのように評するのだろうか?早速、インプレッションをお届けしよう。
―インプレッション
「すべてにおいて"軽さ"を感じられるバイク」 鈴木祐一(RiseRide)
またがった瞬間に軽さを感じられる。まさにこれは説得力のある特長といえる。「すべてにおいて軽い」と言うとにわかに信じがたい表現に感じられるかもしれないが、R5に関してはそれが的確な表現。乗って軽く、持って軽い。
それは踏み出しの軽さであったり、巡航しているときからのスピードの上げ下げ、ステアリングフィール、コーナリングでのコントロール性などあらゆる場面で「軽さ」を感じられる。
さらに、テスト車両はレース用の決戦ホイールではなく、むしろ、日常で使い倒すような汎用ホイールが付いており、驚異的な踏み出しの軽さを証明している。
ただしこの軽さゆえにスキルに自信がないライダーが乗ると、軽さのギャップを感じるだろう。自分自身もこの軽さに対しての驚きがあったのは事実で「軽さの次元が変わったな」という印象を受けた。「軽さ」に関しては他社のフラッグシップなどいろいろなバイクと比べても半歩、または1歩先を進んでいるだろう。
前に進むための「道具」として自転車を見ると、前に進むためのオモリのひとつともいえる。大げさにいえばこのオモリの存在を感じないくらいの軽さがある。
R5は「軽さ」がもっとも感じられるのは、低速から中速域だ。踏み出しの加速力は圧倒的に有利だろう。最初の立ち上がり加速感は秀逸だ。低速から中速域の加速感、というとゆったりとしたイメージがあるが、実は一生懸命頑張っても低速なのは上りである。必然的に上りでは、軽さのメリットで軽やかに進んでくれる。
カタログスペックだけ見てみると他のバイクでも軽いモデルはあるだろう。だが実際に乗ったときに感じる、数字では表すことができない部分での「軽さ」がある。軽さを生み出すためのフレーム全体の設計、ジオメトリーのようなところも実に煮詰まっている。R5から感じられるのは安定感というよりは軽快感だ。軽さを際立たせるような重量バランスをフレームとフォークの設計から感じられる。踏み出しの軽さ、低速から中速域あたりにベストな設計コンセプトがあるのだろう。
軽さを追求すると華奢になるというイメージがつきまとうが、一世代前のカーボフレームだと、軽いカーボンを使っていると硬さが若干出てしまっていた。形状によって剛性を発揮するために、チューブ形状を大口径化するなどして、剛性を出しつつ軽さを両立するという設計が流行し、軽くて硬いバイクが市場にあふれていた。
R5の場合は、適度な快適性も兼ね備えている。路面からの突き上げをマイルドにしてくれるところがある。バイク上からはペダリングによってペダルを踏みつけていると、ホイール下側から振動が突き上げてきて衝撃で自転車が板挟みにあい、スピードがダウンしてしまうところを、フレーム素材や構造で衝撃をうまく緩和して、推進力を損なわないようにしている。
またフレームのジオメトリーが軽さを生み出す要因になっている気もする。その反面、高速域での安定感や高速コーナリング、高速巡航させるようなバイクと比べると、安定感にはかける。このあたりの運動性能はSシリーズに委ねているという考察もできる。
使い分けというか、コンセプトが逆に明確なのがサーヴェロのセールスポイントというか、面白さともいえる。自分の使い方を把握して、適切な自転車を選ぶことができそうだ。R5の場合はもちろんヒルクライムに最適だろう。また、このバイクはある程度バイクコントロール自体を楽しめるような、バイクを振ったの軽快感、操作性を楽しめる技量があるサイクリストであると、バイク性能がものすごく活きるのではないだろうか。
「あらゆる軽さが感じられるバイク」 山本健一(ロードバイクジャーナリスト)
これまでのサーヴェロRシリーズの特長を引き継ぐ、素晴らしい軽さと剛性レベルだ。700g台の軽量フレームとは思えないほどのたくましさと共に、しなやかに加速していく。踏み出しの軽さはこれまで乗ったバイクの中でもトップクラスに入る。
フレームの絶対剛性レベルは近年の高剛性フレームと比較すると及ばないものの、絶妙なウィップ感が鋭い反応性を示し、最高レベルの加速を繰り出す。この爽快感はブラッシュアップされたR5だけのものだ。
この重量の軽さも加わって、上りでは無性にペースアップしたくなってしまう。重力に抗い頂を目指すために新生R5が得たのは、軽さだけでなく、優れたフレーム剛性とバランスだ。ライダーの全体重がかかったトルクフルなペダリングパワーをダイレクトに受け止め軽やかな加速フィールへと変換していく。低速でもぶれないステアリング性能。逆にハードなコーナリングでもしっかりとバイクを安定させる。
コーナリングではキレの良いハンドリングでスパスパとこなすことができる。フォーク剛性が最適なこともおおいに貢献しているだろう。フォークもフレームと良くマッチしている。フレームのしなりに合わせた剛性感で、一体感がある。300g以下という軽さには思えない逸品だ。
Rシリーズ最大の特長といえるスクオーバルチューブや、横方向に扁平したバックステーなど、ユニークな形状であることを忘れるほど自然なフィーリングを生み出している。部分的に特定の機能を担っているのではなく、剛性感やショック吸収性といった求められる性能をバイク全体で醸し出しているイメージがある。
カーボンの積層も入念に行われているのだろう。フレームの外観が同じであるにもかかわらず、10%も軽量化したということは、積層などで工夫を加えるほかないはずだ。
剛性感だけなら軽さを忘れてしまうようなたくましさがあるが、中速~高速域では細かいアンジュレーションを伝えるところもあり、軽く鋭いハンドリング性能もあって神経質にも感じられる。レーシングスピードでは上級者向きのスペックといえる。ヒルクライムオンリーに使うにも効果的な戦力となるが、ロードレースで乗りこなせたときの攻撃力は無二の存在となりえる。
アッセンブルするパーツのうち、やはりホイールが気になる存在と言える。試乗車の場合はトレーニング用ホイールに近いパフォーマンスだったにも関わらず、それ以上の性能に感じさせる。超軽量ホイールよりも、ある程度剛性重視のホイールが向いていると思われる。
前述したとおり、ヒルクライムにはもってこいで、トルクをかけた走りも許容する。これらからオールラウンド系ヒルクライムモデルといえるだろう。
CERVELO R5 VWD
カラー:ブラック×ホワイト
チューブ:R5VWD・スクオーバルカーボン
サイズ:48、51、54、56
重量: (フレーム、フォーク)
カーボンフォーク:トップ:1-1/8" ボトム:1-3/8"
価格:フレームセット 525,000円(税込み)
カンパニョーロ・スーパーレコード完成車 1,050,000円(税込み)
スラム・レッド 787,500円(税込み)
※オプション:BBright用Rotor 3D Crank Set 60,900円(税込み)
インプレライダーのプロフィール
鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
山本健一(バイクジャーナリスト)
身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。
ウェア協力:ビエンメB+(フォーチュン)
text:Kenichi.YAMAMOTO
photo:Makoto AYANO
Baracchiが最高の評価を獲得したことでサーヴェロ社を創業するに至り、多くのライダーの支持を集めてきた。サーヴェロが優れた製品を供給し続けられるのは、自社設計による革新的な技術の投入をレースの世界からのフィードバックが支えていることにほかならない。かつてはサーヴェロテストチーム、現在ではガーミン・バラクーダにより、バイク開発に必要なデータのフィードバックを得て日々進化を続けている。
そして、プロライダーのために誕生した意欲作といえるRシリーズ。かつて自転車レースの頂点ツール・ド・フランスを制した名車「R3」が祖となる。そして現在の最高峰であるこのR5は、さらにブラッシュアップされた同社のテクノロジーの粋を結集したピュアレーシングバイクといえる。
R5は簡単に言うならサーヴェロの優れたカーボンテクノロジーを結集して生まれたオールラウンドロードバイクだ。2012モデルで登場したR5 VWDには、前作R5よりもさらに進化した性能が与えられている。フレーム重量は56サイズで780gと前作よりも約10パーセントの軽量化を実現しているのだ。
並みいるライバルメーカーのなかでもその重量は最軽量クラスに位置し、その軽さを生かしきるだけの剛性が与えられ、グランツールをはじめとした山岳ステージで最高の結果を得られるポテンシャルを秘めているといえるだろう。この性能はプロのステージレースで発揮されることはもとより、市民レーサーに対してもロードレースやヒルクライムをもターゲットとしている。
R5シリーズにはどんな方向からの力にも対応できる丸形のオーバルチューブと、縦方向と横方向からの力に対して耐性のあるスクエアチューブ、それぞれ両方の利点を採り入れたスクオーバルカーボンチュービングを採用している。これはR3誕生からほとんど変わることがない、完成度の高い構造といえるだろう。
この伝統的な角型チューブの角をスムージングしたような形状が与えられたR5は、求められる剛性を最適化することに成功している。そして2012モデルにはさらなるブラッシュアップが施された2世代目となるチューブ構造が用いられる。
軽量かつ高剛性というロードバイクの理想を具現化するために、R5 VWDには随所に独創性溢れるギミックが施される。卓越したクライミング性能や、安定感のあるコーナリング性能を実現するために上下異径のテーパーヘッドが採用されるが、下ワンは多くのバイクに用いられる1-1/4"よりも大径化した1-3/8"を採用した。
対して最新エアロモデルのS5は上下共に1-1/8"を用いている(エアロ効果を高めるためだろう)。これは両車でコンセプトをはっきりと分けている証拠で、サーヴェロの強い意志が伺い知れる。わずか290gという軽さの超軽量を実現しながらも、剛性を損なわぬように設計を最適化して生まれた、まさに独自の規格である。
さらにライダーの疲労を軽減するためにシートステーは横方向に扁平加工され、極限までシェイプされた細身の形状とすることで、卓越した振動吸収性も確保されている。フロント部の太さと比較すると頼りなく思えるが、パワー伝達性能を左右するチェーンステーの大ボリュームを見れば安心できるだろう。
R5が採用するテクノロジーのなかで注目すべきはオリジナル規格のBBrightであろう。乱立する新型BBの規格のなかで登場したBBrightは、自由度の高いフレーム設計を可能にし、ライダーのパワーを余すことなく推進力へと変換してくれる。
現在、新型BB規格のなかで主流となっているのがプレスフィットBBとBB30の2規格である。プレスフィットBBがハンガー幅の拡張によりダウンチューブとシートチューブ、さらに連結されるチェーンステーの横幅を広げることで剛性を向上させたものであるのに対して、BB30はクランクシャフト径を30mmへと拡大することで剛性の向上を狙っている。この2つの規格のメリットを採り入れたのがBBright規格といえる。
クランクシャフト径をBB30同様の30mmに拡大すると同時に、反ドライブ側シェル幅を11mm拡大した左右非対称形状を採用した。クランクシャフト径やBBシェル幅を拡大することは、BB部分に絞った性能向上はもちろんのこと、全体での軽量化や剛性の向上にも貢献する。そしてQファクターを広げることなく剛性を向上させたBB規格がBBrightなのだ。さらに2012モデルのR5 VWDでは、BB付近の剛性を前作よりも5パーセント向上させているのだという。
このハイスペックを実現したスーパーバイクをテストライダー両氏はどのように評するのだろうか?早速、インプレッションをお届けしよう。
―インプレッション
「すべてにおいて"軽さ"を感じられるバイク」 鈴木祐一(RiseRide)
またがった瞬間に軽さを感じられる。まさにこれは説得力のある特長といえる。「すべてにおいて軽い」と言うとにわかに信じがたい表現に感じられるかもしれないが、R5に関してはそれが的確な表現。乗って軽く、持って軽い。
それは踏み出しの軽さであったり、巡航しているときからのスピードの上げ下げ、ステアリングフィール、コーナリングでのコントロール性などあらゆる場面で「軽さ」を感じられる。
さらに、テスト車両はレース用の決戦ホイールではなく、むしろ、日常で使い倒すような汎用ホイールが付いており、驚異的な踏み出しの軽さを証明している。
ただしこの軽さゆえにスキルに自信がないライダーが乗ると、軽さのギャップを感じるだろう。自分自身もこの軽さに対しての驚きがあったのは事実で「軽さの次元が変わったな」という印象を受けた。「軽さ」に関しては他社のフラッグシップなどいろいろなバイクと比べても半歩、または1歩先を進んでいるだろう。
前に進むための「道具」として自転車を見ると、前に進むためのオモリのひとつともいえる。大げさにいえばこのオモリの存在を感じないくらいの軽さがある。
R5は「軽さ」がもっとも感じられるのは、低速から中速域だ。踏み出しの加速力は圧倒的に有利だろう。最初の立ち上がり加速感は秀逸だ。低速から中速域の加速感、というとゆったりとしたイメージがあるが、実は一生懸命頑張っても低速なのは上りである。必然的に上りでは、軽さのメリットで軽やかに進んでくれる。
カタログスペックだけ見てみると他のバイクでも軽いモデルはあるだろう。だが実際に乗ったときに感じる、数字では表すことができない部分での「軽さ」がある。軽さを生み出すためのフレーム全体の設計、ジオメトリーのようなところも実に煮詰まっている。R5から感じられるのは安定感というよりは軽快感だ。軽さを際立たせるような重量バランスをフレームとフォークの設計から感じられる。踏み出しの軽さ、低速から中速域あたりにベストな設計コンセプトがあるのだろう。
軽さを追求すると華奢になるというイメージがつきまとうが、一世代前のカーボフレームだと、軽いカーボンを使っていると硬さが若干出てしまっていた。形状によって剛性を発揮するために、チューブ形状を大口径化するなどして、剛性を出しつつ軽さを両立するという設計が流行し、軽くて硬いバイクが市場にあふれていた。
R5の場合は、適度な快適性も兼ね備えている。路面からの突き上げをマイルドにしてくれるところがある。バイク上からはペダリングによってペダルを踏みつけていると、ホイール下側から振動が突き上げてきて衝撃で自転車が板挟みにあい、スピードがダウンしてしまうところを、フレーム素材や構造で衝撃をうまく緩和して、推進力を損なわないようにしている。
またフレームのジオメトリーが軽さを生み出す要因になっている気もする。その反面、高速域での安定感や高速コーナリング、高速巡航させるようなバイクと比べると、安定感にはかける。このあたりの運動性能はSシリーズに委ねているという考察もできる。
使い分けというか、コンセプトが逆に明確なのがサーヴェロのセールスポイントというか、面白さともいえる。自分の使い方を把握して、適切な自転車を選ぶことができそうだ。R5の場合はもちろんヒルクライムに最適だろう。また、このバイクはある程度バイクコントロール自体を楽しめるような、バイクを振ったの軽快感、操作性を楽しめる技量があるサイクリストであると、バイク性能がものすごく活きるのではないだろうか。
「あらゆる軽さが感じられるバイク」 山本健一(ロードバイクジャーナリスト)
これまでのサーヴェロRシリーズの特長を引き継ぐ、素晴らしい軽さと剛性レベルだ。700g台の軽量フレームとは思えないほどのたくましさと共に、しなやかに加速していく。踏み出しの軽さはこれまで乗ったバイクの中でもトップクラスに入る。
フレームの絶対剛性レベルは近年の高剛性フレームと比較すると及ばないものの、絶妙なウィップ感が鋭い反応性を示し、最高レベルの加速を繰り出す。この爽快感はブラッシュアップされたR5だけのものだ。
この重量の軽さも加わって、上りでは無性にペースアップしたくなってしまう。重力に抗い頂を目指すために新生R5が得たのは、軽さだけでなく、優れたフレーム剛性とバランスだ。ライダーの全体重がかかったトルクフルなペダリングパワーをダイレクトに受け止め軽やかな加速フィールへと変換していく。低速でもぶれないステアリング性能。逆にハードなコーナリングでもしっかりとバイクを安定させる。
コーナリングではキレの良いハンドリングでスパスパとこなすことができる。フォーク剛性が最適なこともおおいに貢献しているだろう。フォークもフレームと良くマッチしている。フレームのしなりに合わせた剛性感で、一体感がある。300g以下という軽さには思えない逸品だ。
Rシリーズ最大の特長といえるスクオーバルチューブや、横方向に扁平したバックステーなど、ユニークな形状であることを忘れるほど自然なフィーリングを生み出している。部分的に特定の機能を担っているのではなく、剛性感やショック吸収性といった求められる性能をバイク全体で醸し出しているイメージがある。
カーボンの積層も入念に行われているのだろう。フレームの外観が同じであるにもかかわらず、10%も軽量化したということは、積層などで工夫を加えるほかないはずだ。
剛性感だけなら軽さを忘れてしまうようなたくましさがあるが、中速~高速域では細かいアンジュレーションを伝えるところもあり、軽く鋭いハンドリング性能もあって神経質にも感じられる。レーシングスピードでは上級者向きのスペックといえる。ヒルクライムオンリーに使うにも効果的な戦力となるが、ロードレースで乗りこなせたときの攻撃力は無二の存在となりえる。
アッセンブルするパーツのうち、やはりホイールが気になる存在と言える。試乗車の場合はトレーニング用ホイールに近いパフォーマンスだったにも関わらず、それ以上の性能に感じさせる。超軽量ホイールよりも、ある程度剛性重視のホイールが向いていると思われる。
前述したとおり、ヒルクライムにはもってこいで、トルクをかけた走りも許容する。これらからオールラウンド系ヒルクライムモデルといえるだろう。
CERVELO R5 VWD
カラー:ブラック×ホワイト
チューブ:R5VWD・スクオーバルカーボン
サイズ:48、51、54、56
重量: (フレーム、フォーク)
カーボンフォーク:トップ:1-1/8" ボトム:1-3/8"
価格:フレームセット 525,000円(税込み)
カンパニョーロ・スーパーレコード完成車 1,050,000円(税込み)
スラム・レッド 787,500円(税込み)
※オプション:BBright用Rotor 3D Crank Set 60,900円(税込み)
インプレライダーのプロフィール
鈴木 祐一(Rise Ride)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド
山本健一(バイクジャーナリスト)
身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。
ウェア協力:ビエンメB+(フォーチュン)
text:Kenichi.YAMAMOTO
photo:Makoto AYANO
フォトギャラリー
リンク