2011/11/28(月) - 13:23
全日本チャンピオンの辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)に「力負け」と言わしめる竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes)の勝利。UCI(国際自転車競技連合)公認レースとなった野辺山シクロクロスは参加者500名に大勢の観戦者が加わり、活況に満ちた大会となった。
暮れなずむ滝沢牧場 試走する選手たち photo:Kei Tsuji2011年11月27日、長野県南佐久郡南牧村野辺山の滝沢牧場で信州シクロクロス第4戦(UCI登録上は関西シクロクロス)「野辺山高原シクロクロスレース」が開催された。
イギリスのハイエンド・サイクリングウェアブランドRaphaやホワイト・インダストリーズ社、スペシャライズド・ジャパンが協賛する同大会は、昨年初開催ながら225名のエントリーを数える大会に。そして今年、国内で2つ目となるUCI登録レースとしてパワーアップして登場した。
本格的な立体交差が設置された photo:Kei Tsuji今年は土曜日に「野辺山シクロクロスEXPO」と題したシクロクロス関連メーカーのブース出展やハンドメイドシクロクロスバイクコレクション、試走、そして小坂親子による初心者を対象にしたシクロクロススクールが行なわれ、日曜日にUCIレースやシングルスピードレースを含む12カテゴリーのレースを開催。UCIレースはUstreamによる映像ライブ配信も。
野辺山高原は八ヶ岳を望む標高1350mの高地。観光牧場である滝沢牧場を駆け巡る2.8kmの周回コースはバリエーションに富んだものとなった。
CM1 独走勝利した筧太一(イナーメ信濃山形) photo:Kei Tsujiシクロクロスレースのためだけに設置された国内初の立体交差や、牧草地のスラローム、脚を苦しめる舗装路の緩斜面、四輪バギー用のサーキット、畑の中を抜ける泥セクション、テクニックが問われる林セクションなど、観光牧場の魅力を最大限活かしたものに。コースの脇では馬や牛、山羊が鳴き声を上げる。
さらにベルギービールやワッフル、コーヒーなどの出店や“観る者を惹き付けるコース”も野辺山シクロクロスの魅力の一つ。首都圏から数時間というアクセスの良さも後押しし、エントリー数500名という日本最大級のシクロクロスレースに成長した。
CL1 泥セクションを走る豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Kei Tsuji国内のもう一つのUCI登録レース「関西シクロクロス第3戦ビワコマイアミランド」が前週の11月20日に開催されたため、1週間強の日本滞在で2つのUCIレース出場を狙う海外選手も。今年はモリー・キャメロン(MetaFilter-Portland BS)やティナ・ブルベイカー(VANILLA BICYCLES/SPEEDVAGEN)らがアメリカから来日し、UCIレースを連戦出場した。
レース当日は澄み渡る快晴。しばらく好天が続いたため、路面はドライなコンディション。土曜日の朝にはマイナス8度まで気温が下がったが、日曜日は最高10度、最低0度という比較的暖かな陽気に包まれた。
午前中に開催されたC3やC2、CL1などのレースは、水分を含んだ泥に苦しめられる選手が続出。しかし午後になると泥セクションには踏み固められた轍が現れ、バイク交換が不要なほどのハイスピードサーキットとなった。
シケイン周辺は絶好の観戦スポット photo:Kei Tsuji
C1 スタート直後の舗装路は池本真也(和光機器・AUTHOR)が先頭 photo:Kei TsujiCL1は前週のビワコマイアミランドで宮内佐季子(CLUBviento)に敗れた豊岡英子(パナソニックレディース)が1周目から大きくリード。2番手に福本千佳(クラブシルベスト/同志社大学)が単独で続いたが、そのタイム差は縮まらない。豊岡は一度も先頭を譲ることなく、最終的に46秒リードで勝利。
3位争いは最終周回にまでもつれ込み、ティナ・ブルベイカー(VANILLA BICYCLES/SPEEDVAGEN)が宮内との接戦を制した。
C1 チームブリヂストン・アンカーの2人を引き離す竹之内悠(Team Eurasia-Fondeiest bikes) photo:Kei TsujiCM1は筧太一(イナーメ信濃山形)が他を寄せ付けない圧勝。2位にはスペシャライズドのアドバイザーを務める竹谷賢二、そして3位にはレースの主管チームである八ヶ岳CYCLOCROSS CLUBのビンセント・フラナガンが入っている。
この日最も会場が沸いたのは、ホワイト・インダストリーズ社がスポンサーについたシングルスピード選手権。もちろん先頭では本格的なレースが繰り広げられるわけだが、その後方はさながら仮装大会。セクシーなスクール水着からメイド服、マニアックなアニメキャラまで盛り沢山。子どもたちにプレゼントを配り歩く(走る)サンタまで登場し、異様な熱気に包まれた。
C1 6番手を走るモリー・キャメロン(MetaFilter-Portland BS) photo:Kei Tsujiそして12時30分、55名がエントリーしたC1がスタートした。
レースには辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)や竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes)、小坂正則(スワコレーシングチーム)、小坂光(TeamZenko/宇都宮ブリッツェン)、丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)ら、日本のトップシクロクロッサーが集結。
C1 新城幸也の声援を受ける畑中勇介(シマノレーシング) photo:Kei TsujiさらにMTB界から山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)や山本和弘(キャノンデール・レーシングチーム)、ロードレース界から宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)、畑中勇介(シマノレーシング)、辻善光(TeamZenko/宇都宮ブリッツェン)らが出場。他に類を見ない、おそらく全日本選手権以上に豪華なメンバーが集った。
スタートと同時に猛烈な勢いで飛び出したのはMTB全日本チャンピオンの山本幸平。これに竹之内悠と辻浦圭一が加わってパックを形成し、そこから竹之内悠が抜け出す。
C1 竹之内を追う辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Kei Tsujiその後方には丸山厚と小坂正則、モリー・キャメロン、小坂光が続く。ポイントの関係で後方スタートを余儀なくされた宮澤崇史や辻善光、山本和弘はジワリジワリと順位を上げる。
竹之内悠は2〜3周目を単独先頭でこなしたが、やがて全日本チャンピオンの辻浦圭一がこれに合流。何度か竹之内悠が先行する場面が見られながらも、2人は互いの様子を伺いながら周回を重ねていく。
C1 立体交差を駆け下りる山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)と丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) photo:Kei Tsujiそして迎えた最終周回。舗装路の緩斜面で一気に仕掛けた竹之内悠が、リードを広げた状態で牧草地のスラロームへ。「残り3周で一回仕掛けたものの、辻浦さんを振り切れなかった。最終周回で仕掛けて、スラロームで後方の距離を確認したので、そこから落ち着いて踏んでいった」と竹之内悠は振り返る。竹之内悠はそのままリードを守り抜き、大歓声のゴールにガッツポーズで飛び込んだ。
「前半に先頭に立ったとき、そのまま行きたかったけど後方から辻浦さんが合流。一旦精神的に自分を落ち着かせて、終盤の勝負どころに備えようと思いました。テクニカルなセクションでは辻浦さんを引き離せないので、勝負をかけるポイントは舗装路の登りしかなかった」と竹之内悠。
C1 9番手を走る宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ) photo:Kei Tsuji八ヶ岳に見下ろされた壮大な表彰台の天辺で、野辺山シクロクロス名物のカウベルを受け取った竹之内悠。「コンディションは上がっています。これから乗り込んでいくので、来週はレース(関西シクロクロス)に出ないかもしれない。まだコンディションは上がると思います」。2週間後の全日本選手権に向けてこの野辺山で弾みを付けた。
一方、敗れた辻浦圭一は「力負けでした」と声のトーンを落とす。1年を通してベルギーを拠点に活動した竹之内悠の走りを「強くなった。アグレッシブになった」と評す。「コンディションは悪くない。残りの2週間で上げられるだけ上げていく。そしてその先にある世界選手権を見据えたい」。
C1 立体交差を駆け上がる竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes) photo:Kei Tsujiレース中盤に丸山厚に抜かれて4番手に下がりながらも、最終的に31秒差の3位にまで上がった山本幸平は「今回シクロクロスバイクでの初レースだったので、分からない部分が多くて最初から我武者らに行きました。でも中盤は回復が追いつかなくて失速してしまった。後半にかけて落ち着いたので踏み続けたけど追いつかなかった」と語る。
「やはりMTBと比べてシクロクロスはシビアで、バイク任せでは走れない。バイクに慣れないと勝負に絡めない」。山本幸平は来週のGPミストラル第3戦に出場し、全日本選手権に備える予定。他選手が警戒するダークホースとして全日本選手権では注目の存在だ。
C1 ガッツポーズでゴールする竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes) photo:Kei Tsuji2年連続出場となったモリー・キャメロンは6位。少しの失望を見せながらも「良い結果ではなかったけど、相変わらずレースの雰囲気が良くて、楽しんで走ることができた。(5位の47歳)小坂正則が速くて驚いたよ。また出場したい」と感想を述べる。
チームサクソバンクへの移籍を決め、レース翌日からチームキャンプに合流する宮澤崇史は9位。「とても辛かったけど、シクロクロスを満喫しました。また来年野辺山で!」と、4年ぶりのシクロクロスレースを堪能した様子だ。
レースの模様はフォトギャラリーにて!
C1 レース後、手を交わす竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes)と辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Kei Tsuji
C1 カウベルを見せるトップスリー photo:Kei Tsuji
野辺山シクロクロス2011結果
C1
1位 竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes) 59'01"
2位 辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) +19"
3位 山本幸平(チームブリヂストン・アンカー) +31"
4位 丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) +1'28"
5位 小坂正則(スワコレーシングチーム) +1'46"
6位 モリー・キャメロン(MetaFilter-Portland BS) +1'55"
7位 山本和弘(キャノンデール・レーシングチーム) +2'11"
8位 小坂光(TeamZenko/宇都宮ブリッツェン) +2'33"
9位 宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ) +2'43"
10位 辻善光(TeamZenko/宇都宮ブリッツェン) +2'55"
CL1
1位 豊岡英子(パナソニックレディース) 40'56"
2位 福本千佳(クラブシルベスト/同志社大学) +46"
3位 ティナ・ブルベイカー(VANILLA BICYCLES/SPEEDVAGEN) +1'34"
4位 宮内佐季子(CLUBviento) +1'59"
5位 田近郁美(GOD HILL) +2'18"
6位 アレクサンドラ・バートン(Upper Echelon Fitness) +2'29"
7位 上田順子(TEAM884獣遊/シルベスト) +4'54"
8位 中道のぞみ(Salata bianca kobe) +6'15"
9位 ハイディ・スウィフト(Sweetpea Ladies Auxiliary) +7'28"
10位 綿貫通穂(臼杵レーシング) -1LAP
CM1
1位 筧太一(イナーメ信濃山形)
2位 竹谷賢二(スペシャライズド・アドバイザー)
3位 ビンセント・フラナガン(八ヶ岳CYCLOCROSS CLUB)
C2
1位 小笠原崇裕(OGA-STYLE.COM)
2位 松本駿(TREK)
3位 前田公平(ENDLESS/ProRide)
text&photo:Kei Tsuji/nobeyamacyclocross.cc
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イギリスのハイエンド・サイクリングウェアブランドRaphaやホワイト・インダストリーズ社、スペシャライズド・ジャパンが協賛する同大会は、昨年初開催ながら225名のエントリーを数える大会に。そして今年、国内で2つ目となるUCI登録レースとしてパワーアップして登場した。
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野辺山高原は八ヶ岳を望む標高1350mの高地。観光牧場である滝沢牧場を駆け巡る2.8kmの周回コースはバリエーションに富んだものとなった。
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さらにベルギービールやワッフル、コーヒーなどの出店や“観る者を惹き付けるコース”も野辺山シクロクロスの魅力の一つ。首都圏から数時間というアクセスの良さも後押しし、エントリー数500名という日本最大級のシクロクロスレースに成長した。
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午前中に開催されたC3やC2、CL1などのレースは、水分を含んだ泥に苦しめられる選手が続出。しかし午後になると泥セクションには踏み固められた轍が現れ、バイク交換が不要なほどのハイスピードサーキットとなった。
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竹之内悠は2〜3周目を単独先頭でこなしたが、やがて全日本チャンピオンの辻浦圭一がこれに合流。何度か竹之内悠が先行する場面が見られながらも、2人は互いの様子を伺いながら周回を重ねていく。
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チームサクソバンクへの移籍を決め、レース翌日からチームキャンプに合流する宮澤崇史は9位。「とても辛かったけど、シクロクロスを満喫しました。また来年野辺山で!」と、4年ぶりのシクロクロスレースを堪能した様子だ。
レースの模様はフォトギャラリーにて!
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野辺山シクロクロス2011結果
C1
1位 竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes) 59'01"
2位 辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) +19"
3位 山本幸平(チームブリヂストン・アンカー) +31"
4位 丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) +1'28"
5位 小坂正則(スワコレーシングチーム) +1'46"
6位 モリー・キャメロン(MetaFilter-Portland BS) +1'55"
7位 山本和弘(キャノンデール・レーシングチーム) +2'11"
8位 小坂光(TeamZenko/宇都宮ブリッツェン) +2'33"
9位 宮澤崇史(ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ) +2'43"
10位 辻善光(TeamZenko/宇都宮ブリッツェン) +2'55"
CL1
1位 豊岡英子(パナソニックレディース) 40'56"
2位 福本千佳(クラブシルベスト/同志社大学) +46"
3位 ティナ・ブルベイカー(VANILLA BICYCLES/SPEEDVAGEN) +1'34"
4位 宮内佐季子(CLUBviento) +1'59"
5位 田近郁美(GOD HILL) +2'18"
6位 アレクサンドラ・バートン(Upper Echelon Fitness) +2'29"
7位 上田順子(TEAM884獣遊/シルベスト) +4'54"
8位 中道のぞみ(Salata bianca kobe) +6'15"
9位 ハイディ・スウィフト(Sweetpea Ladies Auxiliary) +7'28"
10位 綿貫通穂(臼杵レーシング) -1LAP
CM1
1位 筧太一(イナーメ信濃山形)
2位 竹谷賢二(スペシャライズド・アドバイザー)
3位 ビンセント・フラナガン(八ヶ岳CYCLOCROSS CLUB)
C2
1位 小笠原崇裕(OGA-STYLE.COM)
2位 松本駿(TREK)
3位 前田公平(ENDLESS/ProRide)
text&photo:Kei Tsuji/nobeyamacyclocross.cc
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