2日前の登りスプリントで勝利した若手が、今度は大集団のスプリントで勝利した。ジョン・デゲンコルブ、22歳。今シーズン6勝目をマークしたHTC・ハイロード所属のドイツ人スプリンターは、憧れのマイヨヴェールに袖を通した。

保養地として知られるブルジェ湖の畔を進む保養地として知られるブルジェ湖の畔を進む photo:Cor Vosクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第4ステージは大会唯一の平坦ゴール。前半に2級山岳が設定されているものの、ゴールまでは概ね平坦なコースが続く。最後はソーヌ川に沿って進み、河畔に位置するマコンにゴールする。

第1ステージと第2ステージと同様、この日もジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)のファーストアタックでレースは幕開けた。3度目の正直と言わんばかりの勢いで飛び出したロワには、2008年ロード世界選手権U23個人TTチャンピオンのアドリアーノ・マローリ(イタリア、ランプレ・ISD)が合流する。

ブドウ畑の広がる丘陵地帯を進むプロトンブドウ畑の広がる丘陵地帯を進むプロトン photo:Cor Vosエスケープデュオは69km地点で4分25秒のリードをマーク。しかしチームスカイのコントロール下から抜け出すことはできず、更に集団スプリントに興味を示すHTC・ハイロードとガーミン・サーヴェロの追撃によってリードを失っていく。

パリ〜ルーベ覇者ヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、ガーミン・サーヴェロ)らの集団牽引により、10kmにつき1分のペースで縮小するタイム差。独走力のある2人は歯を食いしばって逃げを継続したが、ラスト2kmアーチ手前で無念の吸収。集団はハイスピードのままマコンの街に突入した。

チームメイトに守られて走るマイヨジョーヌのブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)チームメイトに守られて走るマイヨジョーヌのブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Cor Vos最も積極的に集団をリードしたガーミン・サーヴェロだったが、肝心のタイラー・ファラー(アメリカ)がラスト1kmでポジションを落としてしまう。ラスト200mで早めに仕掛けたエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)を先頭にスプリントがスタート。

得意の展開に持ち込んだボアッソン。しかし別ラインで勢い良く加速したデゲンコルブが、余裕の1車差で勝利した。エーススプリンターであるセバスティアン・シャヴァネル(フランス)のポジショニングに力を尽くした新城幸也(ユーロップカー)は、スプリントに絡むことなく44位でフィニッシュしている。

スプリント2勝目のジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード)が両手を挙げるスプリント2勝目のジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード)が両手を挙げる photo:Cor Vosデゲンコルブは第2ステージに続く2勝目。「今日も良い一日だった。スプリントに向けてのポジショニングはイマイチだったけど、パンチ力が残っていたので食らいついた。そしてボアッソンとの接戦に勝ったんだ。彼やファラーに勝ったことは別に驚きじゃないよ。僕が負けることもあるだろう。でも世界屈指のスプリンターと呼ばれる彼らに勝ったことは大きな自信に繋がる」。

今年プロ入りしたばかりの弱冠22歳のネオプロとは思えない、落ち着いた態度でインタビューに答えるデゲンコルブ。大舞台UCIワールドツアーのドーフィネでポイント賞トップに立ったが、自分が置かれた状況を冷静に分析する。

表彰台で喜びを爆発させるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード)表彰台で喜びを爆発させるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード) photo:Cor Vos「ツール・ド・フランスでマイヨヴェールを着るのが長年の夢なんだ。でもツールには出場しない予定。このジャージは充分その気分にさせてくれるよ。でもこの先の3ステージは、これまでのステージとは話が違う。ハードな闘いになるだろうし、ドーフィネのマイヨヴェールを家に持ち帰るのは不可能だと思っている」。

シーズン勝利数で首位を独走中のHTC・ハイロードは、デゲンコルブの台頭でスプリンターチームとしての厚みが増した。デゲンコルブは今やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)とマシュー・ゴス(オーストラリア)に続く第3のスプリンター。しかし登りを含むコースでは、2人の先輩スプリンターを凌駕するほどの強さを見せる。

前日の個人タイムトライアルでステージ優勝を逃しながらもマイヨジョーヌを手にしたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)は、危なげなく集団内でゴール。「昨日の疲労が残っていたので、今日は良いリカバリーになった。リーダーチームにとって2人の逃げは理想的な展開だった」。

チームスカイは2日連続でHTC・ハイロードに敗れてステージ2位。しかしウィギンズはスプリントで2位に入ったボアッソンに太鼓判を押す。「ボアッソンほど才能に溢れた選手を他に知らない。一般的にはスプリンターとして知られているけど、どんなレースにも対応可能。そして人間的にもナイスガイだ」。

ウィギンズは総合下位を1分以上引き離している。「ドーフィネは最後まで全力で闘い抜く。マイヨジョーヌを守るための脚は揃っている。本当のドーフィネは明日から始まる」。ウィギンズはドーフィネ初制覇に向けて、翌日から始まる3連続山岳ステージに挑む。

選手コメントはレース公式サイトより。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2011第4ステージ結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード)       4h15'41"
2位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
3位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク・サンガード)
4位 トーマス・ヴァイクス(リトアニア、アスタナ)
5位 ウィリアム・ボネ(フランス、FDJ)
6位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)
7位 マルコ・バンディエラ(イタリア、クイックステップ)
8位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)
9位 ピム・リヒハルト(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
10位 ケニー・デハース(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
44位 新城幸也(日本、ユーロップカー)

個人総合成績
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)       12h57'18"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)    +1'11"
3位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)     +1'21"
4位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)      +1'56"
5位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)              +2'12"
6位 ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ)         +2'25"
7位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +2'28"
8位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル)      +2'45"
9位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック)          +2'46"
10位 ジェローム・コッペル(フランス、ソール・ソジャサン)      +2'52"
83位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                +9'38"

ポイント賞
ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード)

山岳賞
レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)

新人賞
ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)

チーム総合成績
チームスカイ

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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