2011/06/10(金) - 18:40
2日前の登りスプリントで勝利した若手が、今度は大集団のスプリントで勝利した。ジョン・デゲンコルブ、22歳。今シーズン6勝目をマークしたHTC・ハイロード所属のドイツ人スプリンターは、憧れのマイヨヴェールに袖を通した。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第4ステージは大会唯一の平坦ゴール。前半に2級山岳が設定されているものの、ゴールまでは概ね平坦なコースが続く。最後はソーヌ川に沿って進み、河畔に位置するマコンにゴールする。
第1ステージと第2ステージと同様、この日もジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)のファーストアタックでレースは幕開けた。3度目の正直と言わんばかりの勢いで飛び出したロワには、2008年ロード世界選手権U23個人TTチャンピオンのアドリアーノ・マローリ(イタリア、ランプレ・ISD)が合流する。
エスケープデュオは69km地点で4分25秒のリードをマーク。しかしチームスカイのコントロール下から抜け出すことはできず、更に集団スプリントに興味を示すHTC・ハイロードとガーミン・サーヴェロの追撃によってリードを失っていく。
パリ〜ルーベ覇者ヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、ガーミン・サーヴェロ)らの集団牽引により、10kmにつき1分のペースで縮小するタイム差。独走力のある2人は歯を食いしばって逃げを継続したが、ラスト2kmアーチ手前で無念の吸収。集団はハイスピードのままマコンの街に突入した。
最も積極的に集団をリードしたガーミン・サーヴェロだったが、肝心のタイラー・ファラー(アメリカ)がラスト1kmでポジションを落としてしまう。ラスト200mで早めに仕掛けたエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)を先頭にスプリントがスタート。
得意の展開に持ち込んだボアッソン。しかし別ラインで勢い良く加速したデゲンコルブが、余裕の1車差で勝利した。エーススプリンターであるセバスティアン・シャヴァネル(フランス)のポジショニングに力を尽くした新城幸也(ユーロップカー)は、スプリントに絡むことなく44位でフィニッシュしている。
デゲンコルブは第2ステージに続く2勝目。「今日も良い一日だった。スプリントに向けてのポジショニングはイマイチだったけど、パンチ力が残っていたので食らいついた。そしてボアッソンとの接戦に勝ったんだ。彼やファラーに勝ったことは別に驚きじゃないよ。僕が負けることもあるだろう。でも世界屈指のスプリンターと呼ばれる彼らに勝ったことは大きな自信に繋がる」。
今年プロ入りしたばかりの弱冠22歳のネオプロとは思えない、落ち着いた態度でインタビューに答えるデゲンコルブ。大舞台UCIワールドツアーのドーフィネでポイント賞トップに立ったが、自分が置かれた状況を冷静に分析する。
「ツール・ド・フランスでマイヨヴェールを着るのが長年の夢なんだ。でもツールには出場しない予定。このジャージは充分その気分にさせてくれるよ。でもこの先の3ステージは、これまでのステージとは話が違う。ハードな闘いになるだろうし、ドーフィネのマイヨヴェールを家に持ち帰るのは不可能だと思っている」。
シーズン勝利数で首位を独走中のHTC・ハイロードは、デゲンコルブの台頭でスプリンターチームとしての厚みが増した。デゲンコルブは今やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)とマシュー・ゴス(オーストラリア)に続く第3のスプリンター。しかし登りを含むコースでは、2人の先輩スプリンターを凌駕するほどの強さを見せる。
前日の個人タイムトライアルでステージ優勝を逃しながらもマイヨジョーヌを手にしたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)は、危なげなく集団内でゴール。「昨日の疲労が残っていたので、今日は良いリカバリーになった。リーダーチームにとって2人の逃げは理想的な展開だった」。
チームスカイは2日連続でHTC・ハイロードに敗れてステージ2位。しかしウィギンズはスプリントで2位に入ったボアッソンに太鼓判を押す。「ボアッソンほど才能に溢れた選手を他に知らない。一般的にはスプリンターとして知られているけど、どんなレースにも対応可能。そして人間的にもナイスガイだ」。
ウィギンズは総合下位を1分以上引き離している。「ドーフィネは最後まで全力で闘い抜く。マイヨジョーヌを守るための脚は揃っている。本当のドーフィネは明日から始まる」。ウィギンズはドーフィネ初制覇に向けて、翌日から始まる3連続山岳ステージに挑む。
選手コメントはレース公式サイトより。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2011第4ステージ結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード) 4h15'41"
2位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
3位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク・サンガード)
4位 トーマス・ヴァイクス(リトアニア、アスタナ)
5位 ウィリアム・ボネ(フランス、FDJ)
6位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)
7位 マルコ・バンディエラ(イタリア、クイックステップ)
8位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)
9位 ピム・リヒハルト(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
10位 ケニー・デハース(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
44位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
個人総合成績
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) 12h57'18"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +1'11"
3位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック) +1'21"
4位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) +1'56"
5位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター) +2'12"
6位 ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +2'25"
7位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +2'28"
8位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル) +2'45"
9位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック) +2'46"
10位 ジェローム・コッペル(フランス、ソール・ソジャサン) +2'52"
83位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +9'38"
ポイント賞
ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード)
山岳賞
レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)
新人賞
ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)
チーム総合成績
チームスカイ
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第4ステージは大会唯一の平坦ゴール。前半に2級山岳が設定されているものの、ゴールまでは概ね平坦なコースが続く。最後はソーヌ川に沿って進み、河畔に位置するマコンにゴールする。
第1ステージと第2ステージと同様、この日もジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)のファーストアタックでレースは幕開けた。3度目の正直と言わんばかりの勢いで飛び出したロワには、2008年ロード世界選手権U23個人TTチャンピオンのアドリアーノ・マローリ(イタリア、ランプレ・ISD)が合流する。
エスケープデュオは69km地点で4分25秒のリードをマーク。しかしチームスカイのコントロール下から抜け出すことはできず、更に集団スプリントに興味を示すHTC・ハイロードとガーミン・サーヴェロの追撃によってリードを失っていく。
パリ〜ルーベ覇者ヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、ガーミン・サーヴェロ)らの集団牽引により、10kmにつき1分のペースで縮小するタイム差。独走力のある2人は歯を食いしばって逃げを継続したが、ラスト2kmアーチ手前で無念の吸収。集団はハイスピードのままマコンの街に突入した。
最も積極的に集団をリードしたガーミン・サーヴェロだったが、肝心のタイラー・ファラー(アメリカ)がラスト1kmでポジションを落としてしまう。ラスト200mで早めに仕掛けたエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)を先頭にスプリントがスタート。
得意の展開に持ち込んだボアッソン。しかし別ラインで勢い良く加速したデゲンコルブが、余裕の1車差で勝利した。エーススプリンターであるセバスティアン・シャヴァネル(フランス)のポジショニングに力を尽くした新城幸也(ユーロップカー)は、スプリントに絡むことなく44位でフィニッシュしている。
デゲンコルブは第2ステージに続く2勝目。「今日も良い一日だった。スプリントに向けてのポジショニングはイマイチだったけど、パンチ力が残っていたので食らいついた。そしてボアッソンとの接戦に勝ったんだ。彼やファラーに勝ったことは別に驚きじゃないよ。僕が負けることもあるだろう。でも世界屈指のスプリンターと呼ばれる彼らに勝ったことは大きな自信に繋がる」。
今年プロ入りしたばかりの弱冠22歳のネオプロとは思えない、落ち着いた態度でインタビューに答えるデゲンコルブ。大舞台UCIワールドツアーのドーフィネでポイント賞トップに立ったが、自分が置かれた状況を冷静に分析する。
「ツール・ド・フランスでマイヨヴェールを着るのが長年の夢なんだ。でもツールには出場しない予定。このジャージは充分その気分にさせてくれるよ。でもこの先の3ステージは、これまでのステージとは話が違う。ハードな闘いになるだろうし、ドーフィネのマイヨヴェールを家に持ち帰るのは不可能だと思っている」。
シーズン勝利数で首位を独走中のHTC・ハイロードは、デゲンコルブの台頭でスプリンターチームとしての厚みが増した。デゲンコルブは今やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)とマシュー・ゴス(オーストラリア)に続く第3のスプリンター。しかし登りを含むコースでは、2人の先輩スプリンターを凌駕するほどの強さを見せる。
前日の個人タイムトライアルでステージ優勝を逃しながらもマイヨジョーヌを手にしたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)は、危なげなく集団内でゴール。「昨日の疲労が残っていたので、今日は良いリカバリーになった。リーダーチームにとって2人の逃げは理想的な展開だった」。
チームスカイは2日連続でHTC・ハイロードに敗れてステージ2位。しかしウィギンズはスプリントで2位に入ったボアッソンに太鼓判を押す。「ボアッソンほど才能に溢れた選手を他に知らない。一般的にはスプリンターとして知られているけど、どんなレースにも対応可能。そして人間的にもナイスガイだ」。
ウィギンズは総合下位を1分以上引き離している。「ドーフィネは最後まで全力で闘い抜く。マイヨジョーヌを守るための脚は揃っている。本当のドーフィネは明日から始まる」。ウィギンズはドーフィネ初制覇に向けて、翌日から始まる3連続山岳ステージに挑む。
選手コメントはレース公式サイトより。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2011第4ステージ結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード) 4h15'41"
2位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)
3位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク・サンガード)
4位 トーマス・ヴァイクス(リトアニア、アスタナ)
5位 ウィリアム・ボネ(フランス、FDJ)
6位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)
7位 マルコ・バンディエラ(イタリア、クイックステップ)
8位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)
9位 ピム・リヒハルト(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
10位 ケニー・デハース(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
44位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
個人総合成績
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) 12h57'18"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +1'11"
3位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック) +1'21"
4位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) +1'56"
5位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター) +2'12"
6位 ジェレイント・トーマス(イギリス、チームスカイ) +2'25"
7位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +2'28"
8位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル) +2'45"
9位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック) +2'46"
10位 ジェローム・コッペル(フランス、ソール・ソジャサン) +2'52"
83位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +9'38"
ポイント賞
ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード)
山岳賞
レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)
新人賞
ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)
チーム総合成績
チームスカイ
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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