シンカラ名物獲得44コの九十九折りが連続する「ケロック44」が組み込まれた今大会のキーとなる第3ステージ。 その「ケロック44」を制したのは、イラン、アサド大学だった。第2ステージの1・2フィニッシュに続き、驚異的な登坂力で1・2・3フィニッシュを達成。ライバルに大きく差をつける形となった。

ケロック44で先頭を走る4人の選手たちケロック44で先頭を走る4人の選手たち photo:Sonoko.Tanaka

強豪イランが表彰台を独占!

昨年から登場し、選手たちを驚かせた「ケロック44」と呼ばれる獲得標高1000m超えの登坂区間が今年もしっかりとレースに組み込まれた。走行距離125.2km、80km地点から上り始め、96km地点で頂上を越えると、ゴールに向けて緩やかな下りとなるコースレイアウトだ。

朝早くにスタート地点へバスを使って移動する朝早くにスタート地点へバスを使って移動する photo:Sonoko.Tanakaスタート前に笑顔を見せる別府匠監督(愛三工業レーシングチーム)スタート前に笑顔を見せる別府匠監督(愛三工業レーシングチーム) photo:Sonoko.Tanaka朝9時のスタートであくびをするレースリーダー、アミール・ザルガリ(イラン、アサド大学)朝9時のスタートであくびをするレースリーダー、アミール・ザルガリ(イラン、アサド大学) photo:Sonoko.Tanaka

連日炎天下が続く西スマトラ。海沿いのパリアマンをスタートした連日炎天下が続く西スマトラ。海沿いのパリアマンをスタートした photo:Sonoko.Tanaka風光明媚なマンジョウ湖を横目に左へ大きく曲がると壁のような坂道がそびえ立ち、44のスイッチバックへと続くこの坂の特徴は、直線区間の勾配はそれほどでもないが、カーブになると急勾配になるというもの。イン側の最大勾配はおそらく25%に近い…。

そんな「ケロック44」を前に、レースは特別大きな動きはなく、集団は1つのままで登坂区間へとさしかかった。最初の坂でイランや香港ナショナルチームが急加速。そこで一気に集団は分かれた。

半分ほど上りきった時点で、先頭はイランのアサド大学の3選手と香港期待の星、チョイ・キー・ホーの4人に絞られのどかな田園地帯を抜けるプロトンのどかな田園地帯を抜けるプロトン photo:Sonoko.Tanakaる。そしてそれをボッシュ・マント・ベルケン(オランダ、グローバルサイクリング)と綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)がそれぞれ単独で追い掛ける展開に。

そして、そのままの順で頂上を越えて、下りでチョイ・キー・ホーがメカニックトラブルにより脱落すると、イラン勢が1・2・3位でフィニッシュ。表彰台を独占するという結果に。


機材アクシデントで後退した綾部勇成

「上りのトレーニングをずっとしてきたから、上れると思っていた」と話す綾部勇成。総合上位を狙う彼にとって、第3スゴールに向かう登坂区間を走るアミール・ザルガリ(イラン、アサド大学)ら先頭集団ゴールに向かう登坂区間を走るアミール・ザルガリ(イラン、アサド大学)ら先頭集団 photo:Sonoko.Tanakaテージはとても大切なステージだった。しかし、順調に山頂を6位通過したあと、下り区間で後ろからきたインドネシア人選手を多く擁する集団と合流すると、前を走る選手の後輪と綾部の前輪がカーブで接触するというアクシデントに見舞われる。

スポークだけでなくリムも損傷したため、立ち止まって機材サポートを待つが、道幅の狭い「ケロック44」では、なかなかチームカーが上がって来れなかった。
「停まってからチームカーが到着するまで3分から4分かかってしまった」と言うが、愛三工業レーシングチームにとってそれはとても長く感じる時間だっただろう。

アサド大学の3選手が先頭でゴールアサド大学の3選手が先頭でゴール photo:Sonoko.Tanaka「アジアツアーでチームカーが前に上がれないのは仕方ないことだと思っています。悔しくても凹んでいる時間はないので、前を見て走り続けます。総合順位を落としたことで、今後動きやすくなったのは事実ですし」と別府匠監督は話す。

そのようなトラブルにより、登坂区間で獲得したリードを失ってしまった綾部だったが、タイミング良く後ろからチームメイトの中島康晴と伊藤雅和が合流する。
下りが得意な中島のリードで前との差をできるかぎり詰めて、先頭から7分22秒差でゴールした。


「上りの手応えはいい」と話すキャプテン綾部勇成

 山頂を6位通過した綾部勇成(愛三工業レーシングチーム) 山頂を6位通過した綾部勇成(愛三工業レーシングチーム) photo:Sonoko.Tanakaアクシデントによる後退でタイムを失ってしまい、なんとも悔やまれる結果となったが、チームは今日の結果を前向きに捉えている。綾部勇成にレースの感想を伺った。

「下から付いていって離されてしまったという展開で、やはりもう一歩何かが足りないと感じますが、今日のレースで自分が“上れる”メンバーの中に入っていることがわかりました。トラブルは悔やまれますが、まだUCIポイント圏内である総合8位以内まで上がれるチャンスはあります。上りの日で仕掛けて、一つ一つ順位を上げられるよう、最後まで集中して走りたいと思います。

またイランが大きなリードを獲得したことで、今後ステージ優勝を狙うチャンスも高くなったと思っています。チーム内でも遅れてしまった選手がいるので、順位を狙う選手とアシストする選手の役割分担が明確になってきました。前半戦では見えてこなかったことなので、このままチームとしてうまく連係してチャンスを狙っていきたいと思います。スプリントでもエースになるのは自分。勝負できるコンディションだと思っているし、チームとしても一度上位に入れれば、勢いがついてくるはずです」


ステージ優勝を狙う愛三工業レーシングチーム

次の山岳ステージは最終日の午前中に開催される7Aステージだ。それまでは平坦基調ながら、小さなアップダウンを含むレースが続く。緩い上りのスプリントが得意な綾部と、下りが得意な中島。この2人のタッグがうまく機能すれば、いい結果が出てくるはずです!と別府監督は笑顔を見せる。

明日、第4ステージは59kmの短いステージとなり、スプリントの可能性が高い。第1ステージで多くの課題が見つかったスプリントで、愛三工業はどう動くのか、ちょっと楽しみなステージになる。

総合リーダーはアミール・ザルガリ(イラン、アサド大学)が守る総合リーダーはアミール・ザルガリ(イラン、アサド大学)が守る photo:Sonoko.Tanaka


ステージ順位
1位 ゴラクー・プールウシェイディ(イラン、アサドユニバーシティ) 3h21'40"
2位 アミール・ザルガリ(イラン、アサドユニバーシティ)
3位 ラヒン・エマミ(イラン、アサドユニバーシティ)
4位 キー・ホー・チョイ(香港、香港ナショナルチーム)+3'53"
5位 マイント・ベルケンボッシュ(オランダ、グローバルサイクリング)+4'40"
6位 シェリー・アリスチャ(インドネシア、プトラプルジュアンガン)+5'14"
7位 ハリ・フィットリアント(インドネシア、プリマウタマ)
8位 アグン・アリシャバーナ(インドネシア、プトラウタマ)
9位 ライアンアリーハン・ヒルマント(インドネシア、プトラウタマ)+5'21"
10位 パルノ・パルノ(インドネシア、カスタムズサイクリングクラブ)+6'56"
13位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+7'22"
17位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)
18位 松尾修作(フジ・サイクリングタイムドットコム)
20位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
28位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+10'26"
43位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+12'09"
88位 五十嵐丈士(フジ・サイクリングタイムドットコム)+26'25"



総合順位

1位 アミール・ザルガリ(イラン、アサドユニバーシティ)7h09'47"
2位 ラヒン・エマミ(イラン、アサドユニバーシティ)+06"
3位 ロガン・カルデール(オーストラリア、プランB)+1'48"
4位 キー・ホー・チョイ(香港、香港ナショナルチーム)+5'25"
5位 マイント・ベルケンボッシュ(オランダ、グローバルサイクリング)+6'14"
6位 アグン・アリシャバーナ(インドネシア、プトラウタマ)+6'53"
7位 シェリー・アリスチャ(インドネシア、プトラプルジュアンガン)+7'12"
8位 ハリ・フィットリアント(インドネシア、プリマウタマ)
9位 ライアンアリーハン・ヒルマント(インドネシア、プトラウタマ)+7'19"
10位 ヘルウィン・ジャヤ(インドネシア、ポリゴンスイートネイス)+8'52"
13位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)+8'56"
15位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+9'20"
17位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)
34位 松尾修作(フジ・サイクリングタイムドットコム)+15'31"
47位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+10'04
54位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+22'22"
69位 五十嵐丈士(フジ・サイクリングタイムドットコム)+28'23"

チーム総合首位
アサドユニバーシティ

ポイント賞
ジャー・ジャン・チャン(韓国、テレンガヌ・プロアジア)

photo&text Sonoko.Tanaka

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