2011/05/26(木) - 08:57
フェルトレ~ティラーノの230kmで争われたジロ第17ステージ。逃げ切った4人のゴールスプリント勝負は混乱した。ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(ファルネーゼヴィーニ)が先着したが、自分のラインを主張してディエゴ・ウリッシ(ランプレ・ISD)を2度手で押したことで3位に降格処分になり、ウリッシがステージ優勝を手にした。
ドロミテ南部の山岳地帯を東から西へ、230kmかけて移動する第17ステージは、ステージ優勝を狙うハンターたちが序盤から果敢にアタックすることが予想された。
コースは渓谷に沿って標高を上げ、166km地点で2級山岳トナーレ峠、211km地点で3級山岳アプリカをクリアする。
3級山岳アプリカ通過後のダウンヒルはテクニカルで、短い平坦区間を経てスイス国境にほど近いティラーノにゴールする。山岳が厳しい割に距離が長いことで、今日も第3週にしては厳しいステージだ。
マリアローザとポディウム争い、各賞争いにはあまり影響がなく、主力選手は休める日だが、大多数の選手には最後のチャンス。ともかく、大逃げに最適な要素が揃っている。
スタートから無数のアタックが連続し、最初の1時間の平均時速は47.9km/h。約55km地点で約16人の逃げ集団が形成される。
逃げた16人
カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)
ユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)
クリストフ・ルメヴェル(フランス、ガーミン・サーヴェロ)
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)
ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
ヘスス・エルナンデス(スペイン、サクソバンク・サンガード)
パブロ・ラストラス(スペイン、モビスターチーム)
ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・ISD)
エドゥアルト・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)
アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)
ベン・ガスタウアー(ルクセンブルク、アージェードゥーゼル)
マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)
ファビオ・タボッレ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
アディ・エンヘルス(オランダ、クイックステップ)
レオナルド・ジョルダーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)
ステージ前半は小さなアップダウンが連続する起伏に富んだルートで、116km地点の補給所を通過してから、2級パッソ・デルトナーレへ登りだす。平均勾配は6%ほどと難易度は低い。この50kmほど延々と続く登りで、まとまった人数の逃げ集団はコンスタントなリズムを刻み、残り100km地点で7分35秒のタイム差を広げる。
トップから12分05秒遅れ・総合12位のシウトソウ(HTC・ハイロード)が入っているため、大きな差がつくと総合トップ10にも変動が出る可能が出てくる集団はリクイガスが中心となってペースを作り、追う。
逃げグループでは3級山岳アプリカへの平均3.1%・最大勾配9%の上りでステージ優勝に向けたアタックが開始される。ヴィスコンティ(ファルネーゼヴィーニ)、ラストラス(モビスターチーム)らが抜け出しにかかるが、逃げられない。シウトソウはなるべく多くの人数のまま、可能なかぎりペースを上げてタイムを稼ぎたいところだ。
後方ではシウトソウにメンショフの総合順位が脅かされるジェオックスが先頭を引こうとするが、あえなく崩壊。アントン擁するエウスカルテルも前に上がる力はなかった。
マリアローザのコンタドール擁するサクソバンクはチームからエルナンデスを逃げに送り込んでいるため先頭牽引には一切力を貸さなかった。同じ理由でランプレも引かない。結局はリクイガスが終日引き続けることになった。
逃げ集団は10人がまとまったまま、アプリカからの下りへ。峠から始まるダウンヒルは非常にスピードが出るテクニカルで危険な下りで、ゴール前約10kmがとくに難しいとされる。
ゴールまでの残り7kmは平坦路。
ラスト3kmでラストラス、ヴィスコンティ、ウリッシ(ランプレ)、バケランツ(オメガファーマ)の4人が抜けだした。ルーラーのラストラスが抜け出しを図るが、スプリントに持ち込みたいヴィスコンティがそれを許さない。勝負は4人のままスプリントに。
ウリッシが先行し、左バリア側のラインを取る。後ろから加速して迫るヴィスコンティがバリアとウリッシの間に割り込もうと手を使って後ろからウリッシの尻を押した。
最後のスプリント中にもヴィスコンティはウリッシに非難のゼスチャーを向けながらゴール。ゴールラインを先に切った。続いてウリッシ、ラストラスの順でゴール。
ヴィスコンティはゴール後、詰めかけるTVインタビュアーに興奮して主張する。「ウリッシには僕を抜かせるように10回も叫んだんだ!僕のほうが彼の2倍スピードが出ていた。でも彼はバリアに向けて僕に近づいてきた。落車しないように僕は手を出さざるを得なかったんだ!」
しかし審判によるビデオリプレイ審議の結果、ヴィスコンティは3位に降格。ウリッシのステージ優勝が決まった。ラストラスが2位に。
ウリッシはプロ入り1年半の21歳。ジュニア世界戦ロードで2度チャンピオンになっているが2006年と2007年にさかのぼる。まだ走りのタイプも定まらないアシスト選手だ。
ウリッシは言う「ヴィスコンティらのほうがスプリント力があるから、早めのサプライズアタックを仕掛けたんだ。ぼくはずっと左側を走っていたし、バリアに向けて寄せたとは思わない。最後は緩い登り坂になっていて、それが僕向きだった」。
しかしヴィスコンティには厳しい処分が言い渡された。危険行為により3位に降格。知らせを聞いたヴィスコンティは目を潤ませ、頭を抱えた。
そしてコンタドールはマリアローザを楽にキープした。「また1日が過ぎてミラノが近づいてきたからハッピーだ。ファンの応援も素晴らしい。あとはただ注意して走るだけだ。ニーバリとスカルポーニにとってフィネストレが最後のチャンスだね」。
シウトソウが総合5位にジャンプアップ
この日のもうひとりの勝者はカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)だ。スタート前には約12分遅れの総合12位から、総合5位に一気にジャンプアップした。
第17ステージ結果
1位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・ISD) 5h31'51"
2位 パブロ・ラストラス(スペイン、モビスターチーム)
3位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)
4位 ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+0'04"
5位 ファビオ・タボッレ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)+0'08"
6位 エドゥアルト・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)
7位 ユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)
8位 ヘスス・エルナンデス(スペイン、サクソバンク・サンガード)
9位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
10位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+0'10"
23位 別府史之(レディオシャック)+2'59"
個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) 68h18'27"
2位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+4'58"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+5'45"
4位 ジョン・ガドレ(アージェードゥーゼル)+7'35"
5位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+9'12"
6位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトリ)+9'18"
7位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)+9'22"
8位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC)+9'38"
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)+9'47"
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+10'25"
77位 別府史之(レディオシャック)+1h50'35"
ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)
山岳賞 マリアヴェルデ
ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
新人賞 マリアビアンカ
ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)
チーム総合成績
アスタナ
text:Makoto.AYANO
photo:Kei Tsuji,Riccardo Scanferla,CorVos
ドロミテ南部の山岳地帯を東から西へ、230kmかけて移動する第17ステージは、ステージ優勝を狙うハンターたちが序盤から果敢にアタックすることが予想された。
コースは渓谷に沿って標高を上げ、166km地点で2級山岳トナーレ峠、211km地点で3級山岳アプリカをクリアする。
3級山岳アプリカ通過後のダウンヒルはテクニカルで、短い平坦区間を経てスイス国境にほど近いティラーノにゴールする。山岳が厳しい割に距離が長いことで、今日も第3週にしては厳しいステージだ。
マリアローザとポディウム争い、各賞争いにはあまり影響がなく、主力選手は休める日だが、大多数の選手には最後のチャンス。ともかく、大逃げに最適な要素が揃っている。
スタートから無数のアタックが連続し、最初の1時間の平均時速は47.9km/h。約55km地点で約16人の逃げ集団が形成される。
逃げた16人
カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)
ユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)
クリストフ・ルメヴェル(フランス、ガーミン・サーヴェロ)
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)
ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
ヘスス・エルナンデス(スペイン、サクソバンク・サンガード)
パブロ・ラストラス(スペイン、モビスターチーム)
ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・ISD)
エドゥアルト・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)
アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)
ベン・ガスタウアー(ルクセンブルク、アージェードゥーゼル)
マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)
ファビオ・タボッレ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
アディ・エンヘルス(オランダ、クイックステップ)
レオナルド・ジョルダーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)
ステージ前半は小さなアップダウンが連続する起伏に富んだルートで、116km地点の補給所を通過してから、2級パッソ・デルトナーレへ登りだす。平均勾配は6%ほどと難易度は低い。この50kmほど延々と続く登りで、まとまった人数の逃げ集団はコンスタントなリズムを刻み、残り100km地点で7分35秒のタイム差を広げる。
トップから12分05秒遅れ・総合12位のシウトソウ(HTC・ハイロード)が入っているため、大きな差がつくと総合トップ10にも変動が出る可能が出てくる集団はリクイガスが中心となってペースを作り、追う。
逃げグループでは3級山岳アプリカへの平均3.1%・最大勾配9%の上りでステージ優勝に向けたアタックが開始される。ヴィスコンティ(ファルネーゼヴィーニ)、ラストラス(モビスターチーム)らが抜け出しにかかるが、逃げられない。シウトソウはなるべく多くの人数のまま、可能なかぎりペースを上げてタイムを稼ぎたいところだ。
後方ではシウトソウにメンショフの総合順位が脅かされるジェオックスが先頭を引こうとするが、あえなく崩壊。アントン擁するエウスカルテルも前に上がる力はなかった。
マリアローザのコンタドール擁するサクソバンクはチームからエルナンデスを逃げに送り込んでいるため先頭牽引には一切力を貸さなかった。同じ理由でランプレも引かない。結局はリクイガスが終日引き続けることになった。
逃げ集団は10人がまとまったまま、アプリカからの下りへ。峠から始まるダウンヒルは非常にスピードが出るテクニカルで危険な下りで、ゴール前約10kmがとくに難しいとされる。
ゴールまでの残り7kmは平坦路。
ラスト3kmでラストラス、ヴィスコンティ、ウリッシ(ランプレ)、バケランツ(オメガファーマ)の4人が抜けだした。ルーラーのラストラスが抜け出しを図るが、スプリントに持ち込みたいヴィスコンティがそれを許さない。勝負は4人のままスプリントに。
ウリッシが先行し、左バリア側のラインを取る。後ろから加速して迫るヴィスコンティがバリアとウリッシの間に割り込もうと手を使って後ろからウリッシの尻を押した。
最後のスプリント中にもヴィスコンティはウリッシに非難のゼスチャーを向けながらゴール。ゴールラインを先に切った。続いてウリッシ、ラストラスの順でゴール。
ヴィスコンティはゴール後、詰めかけるTVインタビュアーに興奮して主張する。「ウリッシには僕を抜かせるように10回も叫んだんだ!僕のほうが彼の2倍スピードが出ていた。でも彼はバリアに向けて僕に近づいてきた。落車しないように僕は手を出さざるを得なかったんだ!」
しかし審判によるビデオリプレイ審議の結果、ヴィスコンティは3位に降格。ウリッシのステージ優勝が決まった。ラストラスが2位に。
ウリッシはプロ入り1年半の21歳。ジュニア世界戦ロードで2度チャンピオンになっているが2006年と2007年にさかのぼる。まだ走りのタイプも定まらないアシスト選手だ。
ウリッシは言う「ヴィスコンティらのほうがスプリント力があるから、早めのサプライズアタックを仕掛けたんだ。ぼくはずっと左側を走っていたし、バリアに向けて寄せたとは思わない。最後は緩い登り坂になっていて、それが僕向きだった」。
しかしヴィスコンティには厳しい処分が言い渡された。危険行為により3位に降格。知らせを聞いたヴィスコンティは目を潤ませ、頭を抱えた。
そしてコンタドールはマリアローザを楽にキープした。「また1日が過ぎてミラノが近づいてきたからハッピーだ。ファンの応援も素晴らしい。あとはただ注意して走るだけだ。ニーバリとスカルポーニにとってフィネストレが最後のチャンスだね」。
シウトソウが総合5位にジャンプアップ
この日のもうひとりの勝者はカンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)だ。スタート前には約12分遅れの総合12位から、総合5位に一気にジャンプアップした。
第17ステージ結果
1位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・ISD) 5h31'51"
2位 パブロ・ラストラス(スペイン、モビスターチーム)
3位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・ネーリソットリ)
4位 ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+0'04"
5位 ファビオ・タボッレ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)+0'08"
6位 エドゥアルト・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)
7位 ユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)
8位 ヘスス・エルナンデス(スペイン、サクソバンク・サンガード)
9位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)
10位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+0'10"
23位 別府史之(レディオシャック)+2'59"
個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード) 68h18'27"
2位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)+4'58"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+5'45"
4位 ジョン・ガドレ(アージェードゥーゼル)+7'35"
5位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)+9'12"
6位 ホセ・ルハノ(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトリ)+9'18"
7位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)+9'22"
8位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC)+9'38"
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)+9'47"
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+10'25"
77位 別府史之(レディオシャック)+1h50'35"
ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)
山岳賞 マリアヴェルデ
ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)
新人賞 マリアビアンカ
ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)
チーム総合成績
アスタナ
text:Makoto.AYANO
photo:Kei Tsuji,Riccardo Scanferla,CorVos
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