2009/04/20(月) - 16:10
フィジークの名を世に知らしめたサドル「アリオネ」。アリオネとは逆転の発想で誕生した「アリアンテ」。そして今回 "第三のA"である「アンタレス」が発表された。この3種を、フィジークが用意するテストライドサドルで乗り比べてみた。
新モデルのアンタレスは、アリオネとアリアンテという対極に位置するサドルの中間点にあたるモデルであり、上記の二つのモデルから様々なポテンシャルを引き継いでいるという。
今回のインプレをするにあたって、フィジークが用意したテストライドサドルの3つのサドルを、アリオネ、アリアンテ、アンタレスの順番にロードバイクに装着して使ってみた。
日常のトレーニングからロングライド、レースなどのシーンで改めてアリオネ、アリアンテに乗り、比較して感じられたフィーリングから新型アンタレスの特徴を挙げていこう。
インプレの前にまず、アンタレスの主な特徴を以下に挙げておこう。いずれも超軽量レーシングサドルのカテゴリーにおいて、競合ブランドのサドルに比べて以下の特長があると謳われている。
・3倍以上のパッド量
・7平方センチメートルも広いサドル面積
・3.6倍以上も優れたパッド量/重量比
・先端部分のパッド厚で3倍以上の数値
以上から、まずアンタレスは、硬いアリオネと柔らかいアリアンテの中間に位置するサドルであるので、硬さが「アリオネ>アンタレス>アリアンテ」というイメージを持つかもしれない。
しかしながら実際に使ってみると、予想に反してアンタレスのパット部分はアリオネよりも硬く感じる。だが硬いサドルと言うと、座っているとお尻が痛くなるイメージを与えるかもしれないが、アンタレスにはそんなイメージをまったく感じない。
その理由は、硬さの種類だ。アンタレスの硬さは、一般的な硬いサドルと違い、固体のような硬さではなく、密度の高いスポンジやクッションの硬さを持っているのだ。
それにより、実際に座ったとき、尾てい骨や骨盤をただ支えるのでなく、「わずかな沈み込みを持たせて支えている」という感じなのだ。
また、サドル全体がとても薄いので、全体がしなるような動きを持つ。これにより、表面の硬さ以上の快適性を生み出している。
アンタレスは、アリアンテの形状を受け継いだ大きなサドル面積を持っている。フィジーク側の見解によると、従来の形状のサドルよりも15%の面積アップに成功したという。
座面の面積が増えることにより、尻を支える面積が増え、圧迫する力が分散することは周知の事実。ただそれにより重量というハンデを背負うことになるのが通常だ。
現在、快適性よりも軽量性を求めたサドルは多数存在する。しかしながらアンタレスならば、快適性と軽量性の共存が可能になる。
アンタレスの重量は145gと、数値的には驚くほど軽い。ヒルクライムレースのようなスタイルなら、この「表面積を確保した上での軽さ」は大きな武器になるだろう。
今回のインプレのまとめとして、テスターである筆者が個人的にこの3種のサドルをどう使うかを考えてみることにした。ユーザーによって感じ方は様々で、個人の好みが印象を左右するだろうが、ひとつの参考にして欲しい。
また筆者はロードバイクに乗る際、サドルに対して腰の位置を動かすことをあまり好まないタイプの乗り方をする。それを踏まえて読んでいただけると、よりサドルを選ぶときの基準にしやすいだろうと思う。
アリオネは三種のサドルの中ではもっともオールマイティだと感じる。パットの硬さもちょうどよく、腰がもっとも落ち着くイメージを与えられた。そして、レースでどうしても腰の位置を変えなければ対応できないシーンであっても、腰の位置の動きにおけるストレスをあまり感じない。
アリオネはまさにフィジークの代表作として歴史に残る名作サドルだろう。使用目的なら、
アリアンテには驚きを感じる。まさにベッドに乗っているような安定感があり、ロングライドにおける尾てい骨周りの痛みは、このサドルにおいては皆無。まさにロングライドにはうってつけのモデルと言えるだろう。
しかし一方で、サドル後方部がとても大きく・広く、腰の位置の移動距離に限界が出やすいため、腰の位置を移動することを重視するライダーには少々使いづらいサドルになってしまうかもしれない。
また一見、レースには向かないようなフォルムに見えるが、レールのタイプを選べば200gを切る軽量のものもあり、十分にレースで活躍するだろう。
使用目的は
最後にアンタレスの印象を記そう。このサドルはまさに「日本の短いレースで活躍できるサドルだ」と感じた。
重量が145~175gという超軽量クラスでありながら、パットの安定感を損なうことなく、快適に走らせることができるサドルは数少ない。また、独特なサドル形状を利用した様々なポジショニングとペダリングをすることができる。
尾てい骨をサドル前部のアーチにかけることによって、脚を前に押し出すハイパワーペダリングを体感することができた。
しかしながら、私のように腰の位置を変えずに乗る方々には、少々サドルが硬く感じるかもしれない。逆に言えば、腰の位置を変えることを好むライダーには、最高のサドルになる可能性がある。
使用目的なら、
また、フィジークからサドルの選び方について新しい提案がされている。今までサドルを選ぶには、使用しているサドルや乗り方をもとにカタログや店頭で"見るor触る"程度で判断するしかなかった。しかし、これからは実際に乗って試すことができる。
フィジークが用意するテストサドル設置店でなら、簡単な手続きを済ませれば、現在登場している"3種のA"すべてを実際に乗って試すことができるのだ。
このシステムを使えば、3つのうちから自分にとって最適なサドルを見つけることができるだけでなく、3種のサドルのもつ違った特性と走行感によって、自分に適した乗り方のスタイル(腰の移動をするのか、しないのか)等を、判断するきっかけにもなるのだ。これはやや逆説的だが、普段使っていない機材をあえて使うことで発見できる乗り方もあると思う。
実際に体に触れる部分のパーツを選ぶには、やはり実際に使うことに勝る選択方法はない。ぜひテストライド設置店で3つのAを体感して欲しい。
中曽佑一(なかそ・ゆういち)
クラブOVER DO(オーバードゥ)所属。MTBクロスカントリー&ロードレースとなんでもこなす。MTBでの入賞経験多数。ロードでの入賞経験は2009JCRCロードE2クラス6位ほか。機材テストに貪欲であらゆるパーツをテストしては交換して試す性格の持ち主だ。テストバイクはスペシャライズド・ターマックSL2。
新モデルのアンタレスは、アリオネとアリアンテという対極に位置するサドルの中間点にあたるモデルであり、上記の二つのモデルから様々なポテンシャルを引き継いでいるという。
今回のインプレをするにあたって、フィジークが用意したテストライドサドルの3つのサドルを、アリオネ、アリアンテ、アンタレスの順番にロードバイクに装着して使ってみた。
日常のトレーニングからロングライド、レースなどのシーンで改めてアリオネ、アリアンテに乗り、比較して感じられたフィーリングから新型アンタレスの特徴を挙げていこう。
アンタレスのファーストインプレッション
硬めながら「しなり」が快適性を生み出す
インプレの前にまず、アンタレスの主な特徴を以下に挙げておこう。いずれも超軽量レーシングサドルのカテゴリーにおいて、競合ブランドのサドルに比べて以下の特長があると謳われている。
・3倍以上のパッド量
・7平方センチメートルも広いサドル面積
・3.6倍以上も優れたパッド量/重量比
・先端部分のパッド厚で3倍以上の数値
以上から、まずアンタレスは、硬いアリオネと柔らかいアリアンテの中間に位置するサドルであるので、硬さが「アリオネ>アンタレス>アリアンテ」というイメージを持つかもしれない。
しかしながら実際に使ってみると、予想に反してアンタレスのパット部分はアリオネよりも硬く感じる。だが硬いサドルと言うと、座っているとお尻が痛くなるイメージを与えるかもしれないが、アンタレスにはそんなイメージをまったく感じない。
その理由は、硬さの種類だ。アンタレスの硬さは、一般的な硬いサドルと違い、固体のような硬さではなく、密度の高いスポンジやクッションの硬さを持っているのだ。
それにより、実際に座ったとき、尾てい骨や骨盤をただ支えるのでなく、「わずかな沈み込みを持たせて支えている」という感じなのだ。
また、サドル全体がとても薄いので、全体がしなるような動きを持つ。これにより、表面の硬さ以上の快適性を生み出している。
面積の広さ・軽量性
アンタレスは、アリアンテの形状を受け継いだ大きなサドル面積を持っている。フィジーク側の見解によると、従来の形状のサドルよりも15%の面積アップに成功したという。
座面の面積が増えることにより、尻を支える面積が増え、圧迫する力が分散することは周知の事実。ただそれにより重量というハンデを背負うことになるのが通常だ。
現在、快適性よりも軽量性を求めたサドルは多数存在する。しかしながらアンタレスならば、快適性と軽量性の共存が可能になる。
アンタレスの重量は145gと、数値的には驚くほど軽い。ヒルクライムレースのようなスタイルなら、この「表面積を確保した上での軽さ」は大きな武器になるだろう。
3種のサドルが得意とする使用シーンは?
今回のインプレのまとめとして、テスターである筆者が個人的にこの3種のサドルをどう使うかを考えてみることにした。ユーザーによって感じ方は様々で、個人の好みが印象を左右するだろうが、ひとつの参考にして欲しい。
また筆者はロードバイクに乗る際、サドルに対して腰の位置を動かすことをあまり好まないタイプの乗り方をする。それを踏まえて読んでいただけると、よりサドルを選ぶときの基準にしやすいだろうと思う。
オールマイティーなアリオネ
アリオネは三種のサドルの中ではもっともオールマイティだと感じる。パットの硬さもちょうどよく、腰がもっとも落ち着くイメージを与えられた。そして、レースでどうしても腰の位置を変えなければ対応できないシーンであっても、腰の位置の動きにおけるストレスをあまり感じない。
アリオネはまさにフィジークの代表作として歴史に残る名作サドルだろう。使用目的なら、
レース全般・ロングライド(50~150km)
で使うのに良いイメージだ。快適性重視のアリアンテ
アリアンテには驚きを感じる。まさにベッドに乗っているような安定感があり、ロングライドにおける尾てい骨周りの痛みは、このサドルにおいては皆無。まさにロングライドにはうってつけのモデルと言えるだろう。
しかし一方で、サドル後方部がとても大きく・広く、腰の位置の移動距離に限界が出やすいため、腰の位置を移動することを重視するライダーには少々使いづらいサドルになってしまうかもしれない。
また一見、レースには向かないようなフォルムに見えるが、レールのタイプを選べば200gを切る軽量のものもあり、十分にレースで活躍するだろう。
使用目的は
レース(ツール・ド・おきなわ等の100km越え)・ロングライド(150km以上)
が適しているだろう。日本のレースに最適なアンタレス
最後にアンタレスの印象を記そう。このサドルはまさに「日本の短いレースで活躍できるサドルだ」と感じた。
重量が145~175gという超軽量クラスでありながら、パットの安定感を損なうことなく、快適に走らせることができるサドルは数少ない。また、独特なサドル形状を利用した様々なポジショニングとペダリングをすることができる。
尾てい骨をサドル前部のアーチにかけることによって、脚を前に押し出すハイパワーペダリングを体感することができた。
しかしながら、私のように腰の位置を変えずに乗る方々には、少々サドルが硬く感じるかもしれない。逆に言えば、腰の位置を変えることを好むライダーには、最高のサドルになる可能性がある。
使用目的なら、
短距離レース・ヒルクライム
だろう。フィジークの新たな展開 テストライドサドル
また、フィジークからサドルの選び方について新しい提案がされている。今までサドルを選ぶには、使用しているサドルや乗り方をもとにカタログや店頭で"見るor触る"程度で判断するしかなかった。しかし、これからは実際に乗って試すことができる。
フィジークが用意するテストサドル設置店でなら、簡単な手続きを済ませれば、現在登場している"3種のA"すべてを実際に乗って試すことができるのだ。
このシステムを使えば、3つのうちから自分にとって最適なサドルを見つけることができるだけでなく、3種のサドルのもつ違った特性と走行感によって、自分に適した乗り方のスタイル(腰の移動をするのか、しないのか)等を、判断するきっかけにもなるのだ。これはやや逆説的だが、普段使っていない機材をあえて使うことで発見できる乗り方もあると思う。
実際に体に触れる部分のパーツを選ぶには、やはり実際に使うことに勝る選択方法はない。ぜひテストライド設置店で3つのAを体感して欲しい。
インプレッションライダーのプロフィール
中曽佑一(なかそ・ゆういち)
クラブOVER DO(オーバードゥ)所属。MTBクロスカントリー&ロードレースとなんでもこなす。MTBでの入賞経験多数。ロードでの入賞経験は2009JCRCロードE2クラス6位ほか。機材テストに貪欲であらゆるパーツをテストしては交換して試す性格の持ち主だ。テストバイクはスペシャライズド・ターマックSL2。