2010/10/18(月) - 09:08
ツアー・オブ・ハイナン第7ステージは、悪天候により64kmに短縮されて開催された。そしてスプリントを制し、ステージ優勝を手にしたのはまたもケニー・ファンヒュメル(スキル・シマノ、オランダ)。無敵ともいえる勢いで3連勝達成だ!
雨が一向に降り止まず、現在進行形で“被災”しているハイナン島。朝起きるとスタート地点のチェンマイはすっかり水たまりに沈んでいた。幹線道路はかろうじてクルマが通れるが、1本路地に入ると人の膝くらいまで水が上がっている。
メディアは「日本チームは今夜のフライトで日本に帰るんだろ?」なんて冗談を言っていたが、その異様な光景にはただただ唖然とするばかり。レースがキャンセルされた第6ステージの賞金16,930USドル(約140万円)はチャリティに寄付されたというが、状況はひどくなる一方のようにも感じる。
当然そんな状況下でのレースは不可能だ。結局、第7ステージは冠水地帯を避け、安全が確保できたコース途中の烏石から64.7kmの距離で開催されることになった。本来の172.8kmから大幅に短縮された。
そこまで選手たちはバスに乗って移動。10時にスタートする予定のレースだったが、烏石をスタートしたのは12時35分だ。
悪天候にも関わらずレースは速いスピードで進んでいく。アタックがかかっても決まらずに吸収されてしまう。そしてコースのショートカットに伴い、残されたスプリントポイントは1ヶ所。そこを「総合順位を少しでも上げたかった」という西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)が1位で通過し、ボーナスタイムを3秒獲得した。
その後もアタックは決まらずに、集団は平均時速45.474kmというハイペースでゴールへと向かう。そしてまたもゴールラインに真っ先に飛び込んできたのはケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)。危なげないスプリントで堂々と3勝目、自身シーズン5勝目となる勝ち星を挙げた。
「今日のスプリントはどうだった?」と質問すると、急に笑い出すファンヒュメル。
「今日のスプリントね!じつはゴールまでの距離をずっと知らなかったんだ。距離看板を探していたんだけど、どうも見つからない。気がついたら残り数百メートルで、後ろからたくさんの選手が加速してきたんだ。で、そこから自分も踏み始めたんだよ」。
200メートルのロングスプリントを単独で成功させたケニー。そしてゴール写真を見るとラインよりも手前でガッツポーズをしている。もはや余裕を感じる域だ。
一方、ゴール後渋い表情を浮かべる愛三工業レーシングチームのエーススプリンター、西谷泰治。後スプリントに向けていいラインが築けたが、最後に塞がれてしまい力を出すことができなかったと言う。
同チームの盛一大に今日のスプリントを振り返ってもらった。「綾部さんを先頭に、自分、真平、西谷さんというトレインが組めて、カザフスタンに並ぶ形でいいラインが取れた。前に誰もいないいいラインだった。それでもうまく機能できなかった要因の1つは自分の後ろに真平がいると知らなかったこと。西谷さんを残り200メートルで発射させるなら、アシストの選手は逆算して自分がどこまで引くかなどを考える。でもトレインが何人で形成されているかわかるのはエースの前にいる選手だけ。後ろを振り向くことはできませんから。そのあたりのコミュニケーションが取れれば、もっとうまく機能したはずですね。あとはちょっとしたタイミングも大事ですが」。
今日は悔しい思いをした愛三工業レーシングチームだが、課題を見つけているので今後に活かされてくるだろう。
そして総合5位につける土井雪広(スキル・シマノ)はとてもリラックスした雰囲気でレースに挑んでいる。
3位のキエル・レジネン(アメリカ、ジェリーベリー・サイクリング)と2位のジョニー・ウォーカー(オーストラリア、フットオン・セルヴェット)がボーナスタイムを獲得したため、3位とは6秒、2位とは8秒と若干差が広がってしまったが、まだ順位を上げることは不可能ではない。マークが厳しくなるというが果敢にチャンスを狙ってくれるだろう。
チームのオーダーは残り3kmまで土井をアシストし、残り3kmを切ったらファンヒュメルのスプリントをアシストするというものだそう。まだまだチームメンバーはフレッシュな状態でパワーがたくさん余っていると言う。
ファンヒュメルのステージ3勝と土井の総合5位をマークするスキル・シマノは、リーダージャージをキープするアスタナに負けずと今大会絶好調だ。チームの雰囲気は“ナーバス”や“シリアス”という言葉から正反対のもの。
記者会見場から大きなビール瓶を2本ほど笑顔で持ち去っていったファンヒュメル。間違いなくこのチームがハイナン島でのレースをさまざまな角度から(!?)もっとも楽しんでいる。「We'll see!(なるようになるさ)」そう言う土井の言葉がどこか頼もしい。
ツアー・オブ・ハイナン2010第7ステージ結果
1位 ケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)1h25'22"
2位 マティシアク・バルトロミエイ(ポーランド、CCCポルサット・ポルコウィス)
3位 ユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ、ウクライナ・ナショナルチーム)
14位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)
16位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)
27位 福田真平(愛三工業レーシングチーム)
43位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
76位 土井雪広(スキル・シマノ)
82位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)
個人総合成績
1位 ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)16h57'20"
2位 ジョニー・ウォーカー(オーストラリア、フットオン・セルヴェット)+19"
3位 キエル・レジネン(アメリカ、ジェリーベリー・サイクリング)+21"
5位 土井雪広(スキル・シマノ)+27"
14位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)+33"
19位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)+42"
31位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+48"
51位 福田真平(愛三工業レーシングチーム)+3'02"
79位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+3'59"
アジア最高位
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
ポイント賞
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
山岳賞
アルカイス・ドゥーラン(スペイン、フットオン・セルベット)
text&photo:Sonoko Tanaka
雨が一向に降り止まず、現在進行形で“被災”しているハイナン島。朝起きるとスタート地点のチェンマイはすっかり水たまりに沈んでいた。幹線道路はかろうじてクルマが通れるが、1本路地に入ると人の膝くらいまで水が上がっている。
メディアは「日本チームは今夜のフライトで日本に帰るんだろ?」なんて冗談を言っていたが、その異様な光景にはただただ唖然とするばかり。レースがキャンセルされた第6ステージの賞金16,930USドル(約140万円)はチャリティに寄付されたというが、状況はひどくなる一方のようにも感じる。
当然そんな状況下でのレースは不可能だ。結局、第7ステージは冠水地帯を避け、安全が確保できたコース途中の烏石から64.7kmの距離で開催されることになった。本来の172.8kmから大幅に短縮された。
そこまで選手たちはバスに乗って移動。10時にスタートする予定のレースだったが、烏石をスタートしたのは12時35分だ。
悪天候にも関わらずレースは速いスピードで進んでいく。アタックがかかっても決まらずに吸収されてしまう。そしてコースのショートカットに伴い、残されたスプリントポイントは1ヶ所。そこを「総合順位を少しでも上げたかった」という西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)が1位で通過し、ボーナスタイムを3秒獲得した。
その後もアタックは決まらずに、集団は平均時速45.474kmというハイペースでゴールへと向かう。そしてまたもゴールラインに真っ先に飛び込んできたのはケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)。危なげないスプリントで堂々と3勝目、自身シーズン5勝目となる勝ち星を挙げた。
「今日のスプリントはどうだった?」と質問すると、急に笑い出すファンヒュメル。
「今日のスプリントね!じつはゴールまでの距離をずっと知らなかったんだ。距離看板を探していたんだけど、どうも見つからない。気がついたら残り数百メートルで、後ろからたくさんの選手が加速してきたんだ。で、そこから自分も踏み始めたんだよ」。
200メートルのロングスプリントを単独で成功させたケニー。そしてゴール写真を見るとラインよりも手前でガッツポーズをしている。もはや余裕を感じる域だ。
一方、ゴール後渋い表情を浮かべる愛三工業レーシングチームのエーススプリンター、西谷泰治。後スプリントに向けていいラインが築けたが、最後に塞がれてしまい力を出すことができなかったと言う。
同チームの盛一大に今日のスプリントを振り返ってもらった。「綾部さんを先頭に、自分、真平、西谷さんというトレインが組めて、カザフスタンに並ぶ形でいいラインが取れた。前に誰もいないいいラインだった。それでもうまく機能できなかった要因の1つは自分の後ろに真平がいると知らなかったこと。西谷さんを残り200メートルで発射させるなら、アシストの選手は逆算して自分がどこまで引くかなどを考える。でもトレインが何人で形成されているかわかるのはエースの前にいる選手だけ。後ろを振り向くことはできませんから。そのあたりのコミュニケーションが取れれば、もっとうまく機能したはずですね。あとはちょっとしたタイミングも大事ですが」。
今日は悔しい思いをした愛三工業レーシングチームだが、課題を見つけているので今後に活かされてくるだろう。
そして総合5位につける土井雪広(スキル・シマノ)はとてもリラックスした雰囲気でレースに挑んでいる。
3位のキエル・レジネン(アメリカ、ジェリーベリー・サイクリング)と2位のジョニー・ウォーカー(オーストラリア、フットオン・セルヴェット)がボーナスタイムを獲得したため、3位とは6秒、2位とは8秒と若干差が広がってしまったが、まだ順位を上げることは不可能ではない。マークが厳しくなるというが果敢にチャンスを狙ってくれるだろう。
チームのオーダーは残り3kmまで土井をアシストし、残り3kmを切ったらファンヒュメルのスプリントをアシストするというものだそう。まだまだチームメンバーはフレッシュな状態でパワーがたくさん余っていると言う。
ファンヒュメルのステージ3勝と土井の総合5位をマークするスキル・シマノは、リーダージャージをキープするアスタナに負けずと今大会絶好調だ。チームの雰囲気は“ナーバス”や“シリアス”という言葉から正反対のもの。
記者会見場から大きなビール瓶を2本ほど笑顔で持ち去っていったファンヒュメル。間違いなくこのチームがハイナン島でのレースをさまざまな角度から(!?)もっとも楽しんでいる。「We'll see!(なるようになるさ)」そう言う土井の言葉がどこか頼もしい。
ツアー・オブ・ハイナン2010第7ステージ結果
1位 ケニー・ファンヒュメル(オランダ、スキル・シマノ)1h25'22"
2位 マティシアク・バルトロミエイ(ポーランド、CCCポルサット・ポルコウィス)
3位 ユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ、ウクライナ・ナショナルチーム)
14位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)
16位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)
27位 福田真平(愛三工業レーシングチーム)
43位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
76位 土井雪広(スキル・シマノ)
82位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)
個人総合成績
1位 ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)16h57'20"
2位 ジョニー・ウォーカー(オーストラリア、フットオン・セルヴェット)+19"
3位 キエル・レジネン(アメリカ、ジェリーベリー・サイクリング)+21"
5位 土井雪広(スキル・シマノ)+27"
14位 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)+33"
19位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)+42"
31位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+48"
51位 福田真平(愛三工業レーシングチーム)+3'02"
79位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+3'59"
アジア最高位
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
ポイント賞
ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
山岳賞
アルカイス・ドゥーラン(スペイン、フットオン・セルベット)
text&photo:Sonoko Tanaka
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