2010/08/21(土) - 21:19

ピナレロというメーカーは、いつも話題に事欠かないブランドだ。2010年モデルとして発表したドグマ60.1は、世界初となる左右非対称のフレーム形状を採用して、大いに世間を騒がせたものだ。
その衝撃も冷めやらぬ2010年夏、今度は2011年モデルとして発表した全てのニューモデルにアシンメトリック(左右非対称)デザインを搭載したのだ。シクロワイアードでは日本に上陸して間もない「PARIS 50-1.5」のインプレッションをお届けしたが、今回は左右非対称デザインの末弟となるQUATTRO(クアットロ)のインプレをお届けしよう。


このQUATTRO(クアットロ)は、そのアシンメトリック(左右非対称)デザインと、適度な剛性の30HMハイモジュラスカーボンを組み合わせ、アマチュアライダーに最適なオールラウンドモデルとしてデビューした。
従来のピナレロラインナップを知っている方なら、ミドルレンジのカーボンバイクであるFP3と、ドグマ60.1のアシンメトリック(左右非対称)デザインを融合したバイクといえば判りやすいだろう。従来モデルのFP3は扱いやすい剛性バランスと抜群のコストパフォーマンスでベストセラーとなったモデルだ。
このクアットロの目指すところもアマチュアライダーに扱いやすい剛性バランスという点で、ちょうどFP3と同等のポジションになると言っていいだろう。結果として、週末のサイクリングからグランフォンドやヒルクライムなどのサイクリングイベントまで、使用する範囲を限定しない、オールラウンドにこなす性能を備えているという。



やはり一番の注目は左右非対称デザインだ。確かに説明を受ければ、左右で力の掛かり方が違うことを理屈の上では理解する。そこに最適化した設計を施すことにも納得する。しかし実際に左右でボリュームの違うフレームを見るにつけ、奇抜とも思えるそのデザインには、「やはりピナレロは違う」、あるいは「ドグマは特別な存在だ」と決めつけてはいなかっただろうか?
ところが、ピナレロにとって左右非対称デザインとは、決して特別なものではなく、とても理にかなった設計思想ということだ。なぜなら、2011年モデルとして発表したニューモデルの全てに、アシンメトリック(左右非対称)デザインを搭載し、今後もこの技術がピナレロのロードバイクにおいて中核となることを公言しているのだから。
ちなみに、ピナレロが2011年モデルとして登場させたロードバイクは「KOBH 60.1」「PARIS 50-1.5」そしてこの「QUATTRO」の3台だ。これら全てにドグマ60.1譲りのアシンメトリック(左右非対称)デザインが採用されている。


完成車販売のクアットロは、予算や好みに合わせて3種類のコンポーネントから選べる設定となる。搭載されるコンポーネントは、シマノ 105 ブラックの10速仕様 、シマノ アルテグラ 10速仕様、カンパニョーロ アテナ 11速仕様の3種類。なお、クランクやブレーキキャリパーまで、同一コンポーネントでまとめられるということなので、この点は安心感が高い。(※試乗車のクランクとブレーキキャリパーは、市販品とは異なる)
ホイールセットは、アルテグラ、アテナ仕様にはMOst Wildcat F3(カムシンG3同等)がセットされ、105仕様にはシマノ WH-R500がセットされる。すべてのグレードのハンドルバーはMOst XYLON ALコンパクトが標準装備される。
カラーはバリエーション豊かな全6カラーが用意されているが、組み合わされるコンポによって設定されるカラーが決まっているので注意してほしい。



今回の試乗車はアルテグラ10速仕様で、MOst Wildcat F3のホイールが組み合わされていた。しかしブレーキやクランクは市販品と異なるパーツが付いていたが、その点はご了承いただきたい。なお、インプレ中のブレーキやクランクに関わるコメントは、誤解の無いように削除して掲載する。
それでは、2011年の最新モデル、ピナレロ クアットロのインプレッションを、早速お届けしよう!
―インプレッション
「用途を限定しない懐の広さを備えている」 鈴木祐一(Rise Ride)

カーボンフレームの中には、じつは良質のカーボンから廉価版まで様々なものが存在している。このクアットロは剛性感やパワーロスの少なさなどの点で、フレームとしてのレベルは非常に高いことが実感できる。
一部のロードバイクには、レース向きやコンフォート向きとフレームが分かれているモデルもあるけれど、これはそのちょうど中間的なところを備えているので、用途を限定しないでどちらに使ってもバッチリハマる。
例えばロングライドに使うか、あるいはレースに使うかで、用途に相応しいホイールやタイヤに交換するということが購入後には出てくるだろう。そういう楽しみにも対応出来る、懐の広いバイクだと思う。
ただしダンシングや下りでバイクを振ったときに、完成車に付いている純正の「MOst」のハンドルやステムに若干のたわみを感じた。完成車としての販売なので、ユーザーのターゲットは広く取ったパーツ選択をしている。ネガティブなところを捉えると、フレームに比べホイール性能が劣っていたり、ハンドルバーの形状が好みに合わなかったりという点も出てくる。
しかしそれらを含めて、購入後のグレードアップをする楽しみも増えてくるバイクだと思う。また、これをベースにオリジナリティを出す場合にも十分に応えてくれる守備範囲の広さも兼ね備えている。
試乗車のコンポはアルテグラで戦闘力も高いし、ホイールやタイヤを変更することで、ものすごく広い範囲に対応できるバイクだ。
これからロードを始める人にとっては、多少値段が張ってしまう自転車ではあるけど、フレームの出来が非常に良いのでお薦めできる1台だ。
「柔らかいのに真っ直ぐ進む。左右非対称デザインの効果を実感した」 三上和志(サイクルハウス ミカミ)
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ピナレロ パリに比べると、クアットロの方がフレームは明らかにしなやかだ。パワーを掛けると、フレームが柔らかいことがよく判る。でも柔らかいのに「ちゃんと真っ直ぐに進むんだぁ」という素直な驚きがあった。
実は剛性の高いパリでは左右非対称デザインの効果をハッキリとは実感することは出来なかった。でもよりしなやかなクアットロに乗って、その効果を実感した。フレームが受け止めた力を逃がさずに、均等な推進力に補正して前へ進んでいく。あらためて、この設計思想は大きな武器になると感じた。
一方で残念なのは、完成車のホイールがやや剛性不足なところ。荒れた路面では落ち着かないし、加速も鈍く感じる。フレームは駆動力を伝えているけど、車輪とタイヤで重たさを感じてしまう。純正ホイールの剛性不足が原因で、安定しない面もあるけれど、フレーム自体は、しなやかさを伴って前にグングン進んでいく。
フレーム自体の完成度は高いので、もしホイールのグレードアップを考えるなら、平地の巡航に優れたホイールでもいいし、軽量なヒルクライム用ホイールでもいい。どちらを選んでもバランスの取れた運動性能の高いバイクに変わるだろう。
純正サドルも十分な性能が出ていると思う。正直なところ一般的には完成車に付いているパーツは真っ先に交換を薦めることが多いのだけれど、クアットロのパーツは性能的には申し分なく、思う存分使える。
このクアットロは、長く乗り続けたいユーザーに薦めたい。長い間にはロードレースに出ることもあれば、ロングライドに行くこともある。これはどっちに向かったとしても、ホイールの選択だけで対応出来てしまう懐の広さがある。
一般公道では見かける機会が多いピナレロだけど、実業団のレース会場となると「もったいない」とでも思うのか?とても少ない。自分もプリンスカーボンに乗ってレースに出ているけれど、ちょっと寂しいと感じている。ピナレロはレースでこそ素晴らしい性能を発揮するバイクなので、ぜひレースでも使ってほしいと思う。

ピナレロ クアットロ
マテリアル:30HM12Kハイモジュラスカーボンモノコック
フロントフォーク:ONDA FPK1 30HM12Kカーボン
ハンドルバー:MOst XYLON ALコンパクト
ホイール:MOst Wildcat F3(アテナ、アルテグラ仕様)
ホイール:WH-R500(105仕様)
サイズ:44SL, 46SL, 50, 51, 53, 54, 56, 57.5, 59.5 (57.5以上は取寄せ)
カラー:486/ブラックレッド、511/ホワイトグリッター(アテナ仕様)
カラー:511/ホワイトミラー、515/CDE、493レッド、516/SKY(アルテグラ仕様)
カラー:486/ブラックレッド、511/ホワイトグリッター、493/レッド、514/BOB(105仕様)
フレーム重量:約1,100g (54)
希望小売価格:388,000円(アテナ 11S完成車・税込)
希望小売価格:368,000円(アルテグラ 10S完成車・税込)
希望小売価格:298,000円(105 10Sブラック完成車・税込)
インプレライダーのプロフィール
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サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド

埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
text&edit :Takashi.KAYABA
photo:Makoto.AYANO
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