遂に訪れたサイクリングシーズン。その先陣を切るヒルクライムイベントとして愛されてきたツール・ド・八ヶ岳が、4月12日に開催された。晴れ渡る空の下、麦草峠へ多くのクライマーが駆け上がった。



快晴のメルヘン街道に多くのサイクリストが集ったツール・ド・八ヶ岳2026 photo:Naoki Yasuoka

日本で2番目に標高の高い国道地点として知られる麦草峠。埼玉県の入間市から長野県の茅野市を結ぶ国道299号の中で、最も標高の高い地点となる麦草峠を目指すヒルクライムレースがツール・ド・八ヶ岳だ。

冬が去り、重苦しいジャケットを脱ぎ去り、軽快な出で立ちでライドを楽しめるようになってきた4月上旬。ここからのヒルクライムシーズンの幕開けを告げる大会として親しまれてきたイベントであり、八ヶ岳のダイナミックなコースも相まって高い人気を博してきた。

まだ冬季通行止中のメルヘン街道。今日はこの先に行けるのだ。 photo:Naoki Yasuoka

そんなツール・ド・八ヶ岳だが、コロナ禍によって6年間の休止期間を挟み、昨年に満を持して復活開催。しかし、昨年はみぞれ交じりの悪天候によってハーフコースでの開催となり、麦草峠に辿り着くことは叶わず。

しかし、今年の天気予報はどうやら快晴のよう。7年越しのリベンジを果たすべく、春めく八千穂高原へと多くのサイクリストが集まった。

親子で参加されたお二人。お子さんはなんと小学生で、今大会最年少だったよう。 photo:Naoki Yasuoka

大会会場には腕利きのメカニックも常駐。輸送中にトラブルがあっても安心だ photo:Naoki Yasuoka
スタートの時を今か今かと待つ photo:Naoki Yasuoka



ツール・ド・八ヶ岳のユニークな点の一つに、大会のメイン会場および駐車場がコースの中ほどにあることが挙げられる。ハーフコースのゴール地点でもある八千穂高原スキー場とその周辺の駐車場に車を停め、スタート地点のやちほ夢の森へは自転車で下っていく。

ちなみにこの時点での気温は5℃前後。フィニッシュ地点へと送る下山用装備を着用してスタート地点まで下り、そのまま詰め直して荷物車へと預ければ、十分な防寒対策が自動的に出来るという寸法だ。

チャンピオンクラスを先頭に整列 photo:Naoki Yasuoka

佐久穂町の佐々木町長が登壇し開会式がスタート photo:Naoki Yasuoka
ゲストの筧五郎さんとYUKARIさん photo:Naoki Yasuoka



各カテゴリーごとにスタートしていく photo:Naoki Yasuoka

さて、スタート地点のやちほ夢の森にはスタートを心待ちにする参加者がぎっしり。空と同じく、その表情も晴れやか。佐久穂町の佐々木町長による挨拶から始まる開会式には、ゲストのサイクルスポーツ元特別編集長の筧五郎さんやリドレーアンバサダーのYUKARIさんらも登壇し、参加者たちにエールを送った。

チャンピオンクラスを先頭に、年代別クラス毎に整列した参加者たちが2分おきにスタート。スタート直後から直登の斜度がキツめな区間が登場し、一列棒状に。

コンスタントに8%程度の坂が続く。超激坂は登場しないが、常に踏み続ける必要があるコースだ photo:Naoki Yasuoka

一家総出で応援してくれる方も photo:Naoki Yasuoka

その先にはペンションが並ぶ九十九折れ区間へ。地元の方々が沿道に立ち、頑張って!と声援を送ってくれる。笑顔で手を振り返す人、サムズアップを返す人、応援を力に変えてひたすらペダルに力を籠める人。反応はそれぞれだけど、めちゃくちゃ嬉しいことに違いはない。

国道299号線のこの区間は「メルヘン街道」と名付けられており、国道標識とセットで標高を示す看板が設置されている。100m毎に登場するその看板が、2,127mの麦草峠まで近づいていることを教えてくれる。

白樺林の中を標高を上げていく photo:Naoki Yasuoka

メルヘン街道を示す道路標識には標高も記されている。 photo:Naoki Yasuoka
標高を上げるにつれ、だんだん頭上が開けてきた photo:Naoki Yasuoka



パノラマが広がる八ヶ嶺橋 photo:Naoki Yasuoka

白樺林を縫うように曲がりくねった区間を越えると、一気に視界が開けてくる。小海や佐久の町を遠目に見下ろすストレートを駆け抜け、コース唯一の橋となる八ヶ嶺橋を渡り切った先に、ハーフコースフィニッシュの八千穂高原スキー場が見えてきた。

去年はここで全員フィニッシュとなったが、今年はこの先へと進めるのだ。八千穂高原スキー場からしばらく登れば八ヶ岳ビューロードが合流する三叉路に。ここを右に進むと、朝には閉ざされていたゲートが開け放たれている。

ハーフフィニッシュの八千穂高原スキー場が見えてきた photo:Naoki Yasuoka

ハーフフィニッシュを過ぎて、フルコースはここからが正念場 photo:Naoki Yasuoka

朝には閉鎖されていたゲートが開放されている! photo:Naoki Yasuoka

そう、大会当日はメルヘン街道は未だに冬季閉鎖期間中。4月16日の開放の前に、一般車両に先んじて雪解けのメルヘン街道を上り、麦草峠へと到達できるのがこのツール・ド・八ヶ岳の魅力なのだ。

ゲートを越えると、美しい白樺林を何度も折り返していく九十九折区間へ突入。リズムもとりやすく、ヒルクライマーにとっては至福のひと時。ライン取りにも個性が表れるテクニカルな区間を攻略すれば、フィニッシュはもう目と鼻の先。

九十九折れをリズミカルに登っていく photo:Naoki Yasuoka

残雪の中を走っていく photo:Naoki Yasuoka

麦草峠の看板が見えてきた! photo:Naoki Yasuoka

ちょっとしたダウンヒルを挟みつつ、道路脇に残る雪に標高の高さを感じながら一心不乱に走っていくと、頭上に「メルヘン街道最高標高地点 麦草峠」と書かれた看板が見えてきた。

ちょうどその真下に設けられたフィニッシュラインを越えれば、20.8km、獲得標高1,087mのヒルクライムは終わりを告げる。

YUKARIさんもフィニッシュ! photo:Naoki Yasuoka

下山荷物を受け取った後は、八千穂高原スキー場へダウンヒル。ヒルクライムレース後の下山と言えば、ブレーキを握りっぱなしというイメージもあるが、ツール・ド・八ヶ岳の下山は程よいペース。しかもコースの半分程度ということもあり、スムーズに移動できるのは嬉しいところ。

八千穂高原スキー場では、チャンピオンクラスを筆頭に各クラスで入賞したライダー達を讃える表彰式が行われ、この日の全プログラムは終了。入賞者にはメダルと賞状、さらに地元の名産品が副賞として贈られた。

大きなメダルが授与される photo:Naoki Yasuoka
ゲストの筧五郎さんとYUKARIさんも皆さんの健闘を称える photo:Naoki Yasuoka



チャンピオンクラスで競い合った3名 photo:Naoki Yasuoka

ライバルと健闘を称えあう photo:Naoki Yasuoka
野辺山でペンションを営むアテネ五輪XC代表の中込由香里さんが地元レースを制した photo:Naoki Yasuoka



美しいロケーションと走りがいのあるコース、そして工夫された運営と、三拍子そろったツール・ド・八ヶ岳。近年は気候変動の影響で冬が短くなってきた、などと言われているが、このイベントにとっては、むしろプラスとなるかもしれない。

いち早く麦草峠を楽しめる、サイクリストならではの特権が味わえる確率が上がるのだから。