有力勢にパンクが相次ぐも、過去最速をマークしたパリ〜ルーベ。精鋭集団をポガチャルと抜け出し、一騎打ちスプリントに持ち込んだワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が、パリ〜ルーベで悲願の初優勝を果たした。

4月12日に行われたパリ〜ルーベ・オー・ド・フランス photo:CorVos

達成すれば史上初の4連覇を目指すファンデルプール photo:CorVos 
モニュメント全制覇を狙うポガチャル photo:CorVos
石畳を舞台にした「北のクラシック」を締めくくるのは、今年もパリ〜ルーベ。今年から「パリ〜ルーベ・オー・ド・フランス」が正式名称となった「北の地獄」は、初開催の1896年から今年で123回目を迎えた。総距離258.3kmに対しパヴェと呼ばれる石畳区間は30箇所。選手たちは、握りこぶし大の石が不規則に敷き詰められた総延長54.8kmに及ぶ悪路を駆け抜けなければならない。
追い風に背中を押されて走り出したのは、計25チーム175名の選手たち。創設1年目で出場権を得たアメリカ籍のプロチーム、モダンアドベンチャープロサイクリングがファーストアタックから逃げを試みたものの、100kmにわたり逃げ集団は形成されなかった。そのため集団は大きく崩れることなく、ジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)を先頭に1つ目の石畳区間に突入した。

スタートから100kmに渡り、逃げ集団が形成されなかった photo:CorVos

パンクし、ニュートラルにまたがるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.
この日は特に有力選手たちのパンクが頻発した。まず最初にマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)がパンクで遅れ、直後にワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)もパンク。その約20km後には、世界王者の証、アルカンシエルジャージを着るタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)もパンクでスペアバイクを待つ。しかしチームカーはすぐには到着せず、渡されたニュートラルバイクに跨り前を追いかけた。
しばらく走ったのち、ようやく代わりのバイクを受け取ったポガチャルを、チームメイトが総出で牽引。3名のアシストを使ったポガチャルは、残り98km地点でヴィスマ・リースアバイクが先導する先頭集団に合流を果たす。そしてこの日1つ目の最高難易度である5つ星セクター「No.19 アランベール」に突入。大会を象徴する総距離2.3kmの石畳区間では、ファンアールトが自ら先頭を走る一方、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)がパンクに見舞われた。

アランベールで集団先頭を行くファンアールトと、パンクしたファンデルプール photo:CorVos

チームカーを待つマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック) photo:A.S.O.
すぐにチームメイトであるヤスペル・フィリプセン(ベルギー)のバイクに跨った前回王者だが、クリートがペダルに合わず、ティボール・デルフロッソ(オランダ)から前輪を受け取り、ようやく走り出す。その時点で先頭集団とは2分以上の差が開き、大会史上初の4連覇達成は不可能かと思われた。
一方、強敵が遅れた先頭集団は、アランベールでファンアールトやポガチャル、ピーダスンなど有力勢による7名に絞られる。クリストフ・ラポルト(フランス)も入り、ヴィスマ・リースアバイクが数的優位を築いた先頭集団には、その後ヨルディ・メーウス(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)も合流。しかし直後にガンナはパンクし、遅れを喫した。
さらにその約10km後、先頭集団を走る世界王者が再びパンクに見舞われたものの、直後にファンアールトもパンクしたため、集団のペースは一時的に落ち、2名はすぐに精鋭集団へ復帰する。残り60.1kmから始まる「No.13 オルシ」に入った時点で先頭集団は8名まで増え、この時点でファンデルプールが自らペースを作り、ガンナも加えた追走集団は55秒差。この区間を終える頃には37秒まで縮めた。

先にバイク交換を済ませたポガチャルが、パンクしたファンアールトを抜く photo:A.S.O.

飛び出したワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)に、唯一追従したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.
そして続く「No.12 オシー・レ・オルシ-ベルセ」の直前からレースは大きく動いた。ファンアールトが加速し、単独先頭で石畳区間に入ると、ハイペースについていけたのはポガチャルとピーダスンの2名のみ。そこからポガチャルが前に出るとピーダスンが遅れ、残り53km地点で先頭は2名に絞られた。
一方、驚異的なスピードで牽引するファンデルプールら追走集団からは、ガンナが再びパンクし、舗装路で止まりきれず落車する不運に見舞われる。2つ目の5つ星、「No.11 モンサン・ぺヴェル」を先頭2名が走り終えた時点で、ファンデルプールらとの差は37秒。その後もファンアールトとポガチャルは、追走する前回王者の気配を感じながらローテーションを回し、共に初優勝を目指してパヴェセクターを丁寧にクリアしていく。

追走集団を牽引し、先頭2名を追いかけるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック) photo:CorVos

ローテーションを回しながらフィニッシュを目指すファンアールトとポガチャル photo:CorVos
ポガチャルは昨年曲がり切れず落車し、2位に甘んじる要因となったコーナーを先頭で通過する。最後の5つ星、「No.4 カルフール・ド・ラルブル」でも両者の勝負はつかず、ファンデルプール・グループもその差を縮めきることはできない。その結果、過去最速となった平均48.91km/hをマークしたレースは、ヴェロドロームを舞台とした、ポガチャルとファンアールトのスプリント勝負に持ち込まれた。
先行するポガチャルの背後にファンアールトがつき、まず半周を消化。ラスト1周の鐘が鳴り、最後のコーナーを前に最初に腰を上げたのはファンアールト。外側から追い抜かれたポガチャルはその背後でもがいたものの、さらに加速したファンアールトには届かず、ファンアールトは後ろを振り返り、右手の人差し指を突き上げながらフィニッシュした。

ヴェロドロームに突入し、ファンアールトの様子を伺うタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

スプリントでポガチャルを退けたワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

ファンアールトの勝利を、永遠のライバルであるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)が祝福 photo:CorVos
過去2度表彰台に上がり、最高順位は2022年の2位だったファンアールト。悲願のパリ〜ルーベ初優勝を、「信じられない。目が覚めてこれが夢だったらと思うと怖いぐらい。ここでの優勝は無理かもしれないと思った時もあった。でも僕に諦めるという選択肢はなかった。家族もチームも、そして僕自身も、本当に多くのことを乗り越えてきた。それでも進み続け、ずっとみんなの支えを感じていた。僕にとってこの勝利は、人生をかけて積み上げてきた努力が結実したものなんだ」と喜んだ。
また、「僕のアタックにポガチャルだけがついてこられ、本当にいろんなことが起こるクレイジーなレースだった。だけど脚の感触はよく、僕らは上手く協力することができた。彼のような世界王者と勝利を争うことができ、特別な思いがある」とレースを振り返った。
13秒遅れの3位には追走集団を飛び出したヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が入り、表彰台に上がった。そして懸命に追いかけ、4連覇を逃したファンデルプールは4位だった。

悲願の初優勝を掴んだワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

石のトロフィーを掲げ、雄叫びを上げたワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos
元チームメイトで2018年の大会中に命を落としたマイケル・ホーラールツ(ベルギー)に思いを寄せるファンアールトや、敗れたポガチャル、追走の届かなかったファンデルプールらのコメントは別記事にて伝える。



石畳を舞台にした「北のクラシック」を締めくくるのは、今年もパリ〜ルーベ。今年から「パリ〜ルーベ・オー・ド・フランス」が正式名称となった「北の地獄」は、初開催の1896年から今年で123回目を迎えた。総距離258.3kmに対しパヴェと呼ばれる石畳区間は30箇所。選手たちは、握りこぶし大の石が不規則に敷き詰められた総延長54.8kmに及ぶ悪路を駆け抜けなければならない。
追い風に背中を押されて走り出したのは、計25チーム175名の選手たち。創設1年目で出場権を得たアメリカ籍のプロチーム、モダンアドベンチャープロサイクリングがファーストアタックから逃げを試みたものの、100kmにわたり逃げ集団は形成されなかった。そのため集団は大きく崩れることなく、ジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)を先頭に1つ目の石畳区間に突入した。


この日は特に有力選手たちのパンクが頻発した。まず最初にマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)がパンクで遅れ、直後にワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)もパンク。その約20km後には、世界王者の証、アルカンシエルジャージを着るタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)もパンクでスペアバイクを待つ。しかしチームカーはすぐには到着せず、渡されたニュートラルバイクに跨り前を追いかけた。
しばらく走ったのち、ようやく代わりのバイクを受け取ったポガチャルを、チームメイトが総出で牽引。3名のアシストを使ったポガチャルは、残り98km地点でヴィスマ・リースアバイクが先導する先頭集団に合流を果たす。そしてこの日1つ目の最高難易度である5つ星セクター「No.19 アランベール」に突入。大会を象徴する総距離2.3kmの石畳区間では、ファンアールトが自ら先頭を走る一方、マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック)がパンクに見舞われた。


すぐにチームメイトであるヤスペル・フィリプセン(ベルギー)のバイクに跨った前回王者だが、クリートがペダルに合わず、ティボール・デルフロッソ(オランダ)から前輪を受け取り、ようやく走り出す。その時点で先頭集団とは2分以上の差が開き、大会史上初の4連覇達成は不可能かと思われた。
一方、強敵が遅れた先頭集団は、アランベールでファンアールトやポガチャル、ピーダスンなど有力勢による7名に絞られる。クリストフ・ラポルト(フランス)も入り、ヴィスマ・リースアバイクが数的優位を築いた先頭集団には、その後ヨルディ・メーウス(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)も合流。しかし直後にガンナはパンクし、遅れを喫した。
さらにその約10km後、先頭集団を走る世界王者が再びパンクに見舞われたものの、直後にファンアールトもパンクしたため、集団のペースは一時的に落ち、2名はすぐに精鋭集団へ復帰する。残り60.1kmから始まる「No.13 オルシ」に入った時点で先頭集団は8名まで増え、この時点でファンデルプールが自らペースを作り、ガンナも加えた追走集団は55秒差。この区間を終える頃には37秒まで縮めた。


そして続く「No.12 オシー・レ・オルシ-ベルセ」の直前からレースは大きく動いた。ファンアールトが加速し、単独先頭で石畳区間に入ると、ハイペースについていけたのはポガチャルとピーダスンの2名のみ。そこからポガチャルが前に出るとピーダスンが遅れ、残り53km地点で先頭は2名に絞られた。
一方、驚異的なスピードで牽引するファンデルプールら追走集団からは、ガンナが再びパンクし、舗装路で止まりきれず落車する不運に見舞われる。2つ目の5つ星、「No.11 モンサン・ぺヴェル」を先頭2名が走り終えた時点で、ファンデルプールらとの差は37秒。その後もファンアールトとポガチャルは、追走する前回王者の気配を感じながらローテーションを回し、共に初優勝を目指してパヴェセクターを丁寧にクリアしていく。


ポガチャルは昨年曲がり切れず落車し、2位に甘んじる要因となったコーナーを先頭で通過する。最後の5つ星、「No.4 カルフール・ド・ラルブル」でも両者の勝負はつかず、ファンデルプール・グループもその差を縮めきることはできない。その結果、過去最速となった平均48.91km/hをマークしたレースは、ヴェロドロームを舞台とした、ポガチャルとファンアールトのスプリント勝負に持ち込まれた。
先行するポガチャルの背後にファンアールトがつき、まず半周を消化。ラスト1周の鐘が鳴り、最後のコーナーを前に最初に腰を上げたのはファンアールト。外側から追い抜かれたポガチャルはその背後でもがいたものの、さらに加速したファンアールトには届かず、ファンアールトは後ろを振り返り、右手の人差し指を突き上げながらフィニッシュした。



過去2度表彰台に上がり、最高順位は2022年の2位だったファンアールト。悲願のパリ〜ルーベ初優勝を、「信じられない。目が覚めてこれが夢だったらと思うと怖いぐらい。ここでの優勝は無理かもしれないと思った時もあった。でも僕に諦めるという選択肢はなかった。家族もチームも、そして僕自身も、本当に多くのことを乗り越えてきた。それでも進み続け、ずっとみんなの支えを感じていた。僕にとってこの勝利は、人生をかけて積み上げてきた努力が結実したものなんだ」と喜んだ。
また、「僕のアタックにポガチャルだけがついてこられ、本当にいろんなことが起こるクレイジーなレースだった。だけど脚の感触はよく、僕らは上手く協力することができた。彼のような世界王者と勝利を争うことができ、特別な思いがある」とレースを振り返った。
13秒遅れの3位には追走集団を飛び出したヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が入り、表彰台に上がった。そして懸命に追いかけ、4連覇を逃したファンデルプールは4位だった。


元チームメイトで2018年の大会中に命を落としたマイケル・ホーラールツ(ベルギー)に思いを寄せるファンアールトや、敗れたポガチャル、追走の届かなかったファンデルプールらのコメントは別記事にて伝える。
パリ〜ルーベ2026結果
| 1位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | 5:16:52 |
| 2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | |
| 3位 | ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +0:13 |
| 4位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・プレミアテック) | +0:15 |
| 5位 | クリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク) | |
| 6位 | ミック・ファンダイケ(オランダ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | |
| 7位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | |
| 8位 | シュテファン・ビッセガー(スイス、デカトロンCMA CGM) | +0:20 |
| 9位 | ニルス・ポリッツ(ドイツ、UAEチームエミレーツXRG) | +2:36 |
| 10位 | マイク・トゥーニッセン(オランダ、XDSアスタナ) |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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