筑波連山を舞台にした「ヒートキャラバンつくば」が3月15日に開催された。「チームで挑むエピックライド」をコンセプトに、100kmで獲得標高3,000mの過酷なルートの完走を目指したユニークなライドイベントの1日をレポート。



「チームで走る冒険」をコンセプトに掲げるHEAT CARAVAN(ヒートキャラバン)は、茨城県のサイクリストのメッカ、筑波山一帯をチームで走るグループライドイベントだ。

廃校を利用した複合施設「サイクルパークつくば」
女性ライダーが「人生でもっとも厳しいライドにチャレンジ」と言うTeamモカ



地元つくばのSPADE ACEチームもチャレンジ
なんとファットバイクで参加のチーム「パンダ練」



チームは4〜5名で編成。タイムや順位を競うレース形式ではなく、チーム全員で力を合わせて完走を目指す。そして各チームには弱虫ペダルサイクリングチームと群馬マンモスレーシングの現役プロライダーがサポートライダーとして伴走し、一緒に走ってくれる。

群馬マンモスレーシングチーム
ホストの弱虫ペダルサイクリングチーム



主催のHEAT CARAVAN実行委員会は、弱虫ペダルサイクリングチームと群馬マンモスレーシング、サイクルウェアメーカーのChampion System Japanによって構成される。速さではなく「全員でゴールすること」を価値の中心に据えたチームライドイベントだ。前回大会はロングコースのみだったが、今回はショートコースを新設し、より多くのチームが挑戦可能に。

舞台は筑波山・加波山・吾国山の一帯。発着地となる「サイクルパークつくば」を拠点に、仲間とともに挑戦する一日だ。用意されるルートはロングとショートの2パターン。

ロング:約104km/獲得標高約2,948m・制限時間8時間以内 AM7:30スタート
ショート:約46km/獲得標高約1,132m・制限時間6時間以内 AM9:30スタート


筑波山を見上げる「サイクルパークつくば」は廃校を利用した施設で、本格的なBMXコースもある。参加は8チーム・34選手。それに加えてサポート役の弱虫ペダルサイクリングチームと群馬マンモスレーシングの選手たちが集った。

新チームの群馬マンモスはこの日がほとんど初お目見え。そしてサプライズに弱虫ペダル作者の渡辺航先生も登場! 飛び入り参加で皆と一緒に走ることに。

筑波山を背景に参加者+サポートライダーで記念撮影 photo:Makoto AYANO

サイクルパークつくばの校舎の屋上で、筑波山を背景に記念撮影を撮ってから一斉スタート。まず最初に登り始めるのは、筑波近郊のサイクリストなら誰でも知ってる定番ヒルクライムコースの不動峠だ。

サイクルパークつくばを7:30に一斉スタート! photo:Makoto AYANO

一斉に走り出した参加者はそれぞれのペースで不動峠を目指す。距離3.8km/標高差270m。この日登る峠の多くは「いばらき自転車ネットワーク」選定の峠道ヒルクライムルートにもなっているため、峠までの道にはカーブ毎に距離などの表示サインが付けられている。

筑波一帯でもっともポピュラーな不動峠 photo:Makoto AYANO

不動峠に全員が難なく登頂。朝のウォームアップをすませた参加者たちは尾根道の表筑波スカイラインで風返し峠へ。筑波山が間近に迫る峠から石岡市側へと長いダウンヒルを降り、今度は上曽峠へと登り返す。

不動峠から風返峠へ表筑波スカイラインを走る参加者たち photo:Makoto AYANO

以降、この山麓一帯の主要な峠をループするように登っては降ってを繰り返すルートが引かれているのだ。

どの峠も上り下りともに勾配がきついが、この日のロングコースの参加者はよく脚が揃っていたし、伴走する選手たちがうまくペースを作ってくれ、ときには背中を押してヘルプしてくれるので、まとまって走れる。

ヒルクライムする渡辺航先生
獲得標高3,000mのライドは初という女性もチャレンジ!



驚くのはファットバイクで参加の「パンダ練」チームの皆さん。普通のMTBよりもさらに太いファットタイヤでブリブリと坂道を登る。不動峠の一番クリアもファットバイクだったし、峠ではロードバイクの参加者を差し置いて速く登ってしまうのには皆が驚かされた。

ロードバイクより速くファットバイクでぶりぶり登るパンダ錬の隊長さん photo:Makoto AYANO

訊けば日頃から激坂イベントのTHE PEAKSを走っているとのこと。「THE PEAKSに比べればこのルートは易しい方」と言うが、ロードより速いのには参ってしまった。スタート前に「ファットバイクじゃ完走は無理ですよ」なんて言ってしまってすみませんm(_ _)m。

上曽峠から真壁へと降る photo:Makoto AYANO

上曽峠へと登る峠道はこの日2回走った photo:Makoto AYANO

この麓の一帯には藁葺き屋根の古民家も多く、日本の原風景とも言えるのどかな田園風景が広がっている。そして山側にはグライダーの滑空場がいくつも点在し、この日は快晴・無風の絶好のフライト日和とあって、空にはたくさんのパラ&ハンググライダーが舞っていた。

県道150号線を弱虫ペダルチームの選手の一本引きで北上する photo:Makoto AYANO

渡辺先生もこの一帯は走り尽くしているとか photo:Makoto AYANO

石岡市と桜川市を隔てる筑波山を東西に貫通する上曽トンネルができたことで、もともと交通量が多かった旧道の上曽峠にはクルマの往来が少なくなった。それで自転車にとってはさらに走りやすくなったようだ。

雰囲気のある上曽宿を抜けてヒルクライムへとかかる photo:Makoto AYANO

ルート全体に商店や自販機などが無く、補給できるポイントがほとんどないが、この日は複数回通過する上曽峠の分岐点にエイドステーションが設けられ、バナナやマフィン、スポーツドリンクなどが用意された。

山中の分岐スポットに設けられたエイドで一休み
エイドに用意されたマフィンが人気だった



山麓の風景を眺めながらのヒルクライムだ photo:Makoto AYANO

参加者たちはサポートの選手たちに上手な走り方を聞いたり、フォームをチェックしてもらったり。はたまたレースのことを聞いたり自転車のパーツの話をしたりと、走りながらいろんな会話が弾んでいた。

パラグライダー飛行場になっているパノラマスポットが最高のご褒美だ photo:Makoto AYANO

きのこ山の展望スポットからは関東平野が360°見渡せる photo:Makoto AYANO

最高標高のきのこ山周辺には道の両側がパラグライダー滑空場になっている稜線区間があり、両側の下界が見下ろせる絶景ポイントがあった。関東平野を一望するロケーションでしばし小休止。皆で記念撮影タイムとなった。

この日のルートのハイライトは一本杉峠への尾根を行く林道丸山線。この区間はクルマもほとんど居ないマイナー林道の細道で、ひたすら走りに集中できるヒルクライムルート。

一本杉峠へ通じる林道は険しい photo:Makoto AYANO

一本杉峠から先は、さらに細い林道へ。厳しい勾配のアップダウンが連続する区間でサポート選手の押しのヘルプが入ることも。このあたりになると各チームはバラバラに。しかしいくつかのグループごとに助け合って走る様子が見られた。

「切り通し」へ向かう細道はとても荒れた林道で路面には木の枝が積もる photo:Makoto AYANO

加波山からの長くて険しいダウンヒルを降って平地へと出るが、すぐさま隣の山塊の吾国山(わがくにさん)へと登る。頂上の峠である「切り通し」へ向かう細道はとても荒れた林道で、路面には木の枝が積もり、路面に穴も多い(全線舗装路でグラベルとまではいかない)。

吾国山の切通し峠を登る photo:Makoto AYANO

道祖神峠へと降り、そこからは幹線道路で南下するように戻る。そして後半、74km地点にあるセイコーマートでほとんどの参加者が大休止。お弁当やドリンクなどを各自で買い物しての補給後、フィニッシュまで残り30kmに臨むことに。

吾国山の切通し峠が北端の折り返しだ
74km地点にあるセイコーマートで買い出し補給。大事なエイドだ



しかし「残り30km」と舐めてはいけない。ここから再び上曽峠を登って真壁へと下り、再び筑波山の風返し峠へと登るから、まだまだ先は長くて厳しいのだ。長時間の過酷なライドでエネルギー消費が激しいから、このセコマが無かったら補給計画はかなり厳しくなっただろう。

筑波山一帯を走り尽くしたライドも後半へ photo:Makoto AYANO

3度目の上曽峠を経て真壁へ。そして2度目の湯袋峠へと登り、そこから序盤に降った長いダウンヒル区間を逆走するように、長い長いヒルクライムで筑波山へと登っていく。

筑波山目指して風返峠へと登る急坂ヒルクライム photo:Makoto AYANO

橋本英也選手にサポートされてヒルクライム
筑波山を臨む風返峠に登ったらフィニッシュはあと少し



斜光に輝く筑波山の山頂が間近に臨める風返峠まで登れば、完走が近いのを実感できる。尾根道の236号線から不動峠を経てのダウンヒルで、フィニッシュへ。

仲間たちに迎えられてフィニッシュ。完走できました! photo:Makoto AYANO

仲間たちに拍手で迎えられるサイクルパークつくばへフィニッシュすれば、ご褒美に本格的なドリップコーヒーとジェラートがいただける。このメニューは普段から教室のカフェで楽しめるのだとか。

サイクルパークつくばのコーヒーとジェラート
ジェラートとコーヒーがご褒美です



仲間と一緒に完走証を手にニッコリ photo:Makoto AYANO

初の獲得標高3000mを達成して完走証を手にニッコリ
完走賞のヒートキャラバンキャップ



そして日向ぼっこしながら、この日を一緒に走りきった仲間たちとおしゃべり。渡辺先生や選手たちとも交流できる楽しい時間だ。

フィニッシュ時間に少し開きがあったものの、見事に参加者全員がフィニッシュ。実測で104.56 km・獲得標高3,024mの厳しいルートなのに、途中で完走を諦めて回収された参加者は誰も居なかったのは素晴らしいことだ。

金子宗平選手にうまく走るアドバイスをもらうという贅沢! photo:Makoto AYANO

棈木亮二さん(チャンピオンシステム代表)
2014年夏に初回をやって、昨年のPADAL DAY GO Mt. TSUKUBAイベント内の1コンテンツとしてやって以来の今回で3回目の開催です。夏の暑さのHeat、仲間たちでCaravanを組んで、助け合いながらグループライドを楽しんで欲しいという願いを込めています。今後は定期開催していきたいと思っています。次回がいつになるか分かりませんが、気候のいい時期にやりたいですね!

棈木亮二さん(チャンピオンシステム代表)と佐藤成彦さん(弱虫ペダルサイクリングチームGM) photo:Makoto AYANO

佐藤成彦さん(弱虫ペダルサイクリングチームGM)
弱虫ペダルチームが拠点にしている筑波の自然と環境を体感して、その魅力を知って欲しい。そして接点があまりない選手のことを一般サイクリストの方々に知ってもらい、コミュニケーションをとれる場をつくりたい、という狙いがあります。プロと一般サイクリストは少し遠い存在ですが、一緒に走ったら近くなれる。今回は渡辺先生まで来てくれた。

ロングコースは弱虫ペダルの選手たちが普段から練習で走っているコースそのままです。選手だとTSS(トレーニングストレススコア)が300前後。普通のサイクリストには大変なコースだけど、歴代の岡篤志、織田聖、前田公平選手らもこのコースを走って強くなりました。ときに週に2回やったり(笑)。

そんなタフなコースですが、仲間と一緒なら頑張れば誰でも走り切れます。達成感は格別でしょう。ルート的にたくさんの人が一斉に走れるイベントではないので、限定10チームぐらいが限界かなと思っています。こうして皆さんが走り終えて皆で一緒にコーヒーを飲んでいる様子を見ていると、このイベントをやって良かったなと思います。走ればレアな体験ができますよ!
 
text&photo:Makoto AYANO